選考が進み、内定もしくは内々定するとオファー面談が行われます。すでに選考が終わっているため、その目的や、どのように振る舞えばよいかがわからない人もいるでしょう。
この記事では、企業がオファー面談を実施する目的や合否への影響の有無、応募者が確認すべきことを解説します。
オファー面談とは?
まず知っておきたいのは、オファー面談は選考を目的とした面談ではないということです。だからといって気を抜いてよいわけではなく、入社前の最後の双方確認の場としてのぞむことが重要です。
労働条件や業務内容のすり合わせをする
オファー面談の一番の目的は、採用後のミスマッチ(お互いの認識のズレ)を防止することです。応募者が入社後に「思っていたのと違う」と思い、早期退職となることは、応募者と企業双方にとってよくない結果でしょう。
そのため、入社の意思決定の直前に労働条件や業務内容を細かくすり合わせることで、企業は入社前と後のギャップをできるだけ埋めようとします。だからこそ、応募者側も積極的に情報を収集する姿勢が大切です。
オファー面談が有意義なものになるかどうかは、応募者がどれだけ情報を引き出せるかにかかっているといっても過言ではないでしょう。
入社意思の確認や不安の解消をする
オファー面談はミスマッチ防止と同時に、入社の意思を確認する面談でもあります。
内定を出した段階では、応募者が実際に入社してくれるかはまだわかりません。内定者にとっても「このまま入社して良いのか」と不安に思うことも珍しくないでしょう。
そこで、内定者の不安解消や入社意思の確認のためにオファー面談が設けられている場合もあります。
ここで「印象を悪くしたらどうしよう」と踏み込んだ質問をためらう必要はありません。ミスマッチによる早期退職の方が、自分にとってダメージが大きいでしょう。
企業側にもふるいにかける意図はないため、積極的に質問をしてくれた方が良い印象を持つ可能性もあります。気になることがあれば、遠慮なく質問しましょう。
労働条件通知書のみの企業もある
すべての企業がオファー面談を実施するわけではありません。しかし、内定者には労働条件通知書を必ず渡さなければいけないと法律で決められています(労働基準法第十五条[労働条件の明示]/労働基準法施行規則第五条[明示すべき労働条件])。
そのため、オファー面談がない場合は労働条件通知書で各種条件を確認することになります。
内定を承諾することは通知書に記載された条件に合意したことを意味するため、内容は必ず確認し、不明点や申し立てがあれば企業に問い合わせましょう。
なお、オファー面談がある場合は、面談の場にて労働条件通知書が渡されることがほとんどです。オファー面談を行わない場合でも、不安があれば応募者から面談を申し出ることもできます。
参考:e-Gov法令検索
オファー面談で確認すべきこと
オファー面談は入社の意思決定をするために重要だということがわかりました。書面だけでは知り得ない情報を得られることが、オファー面談のメリットです。オファー面談で確認しておきたい、入社の意思決定をするための判断材料となる情報を解説します。
給与と評価制度
年収は転職活動において重要な要素のため、面接の段階ですり合わせている人がほとんどでしょう。しかし、募集要項と提示額が一致しているかを念のため確認しておくことをおすすめします。
オファー面談で特に確認すべきことは、入社時の年収からどれだけ上がる見込みがあるかです。併せて評価制度も必ず確認しましょう。昇進の制度も確認しておくと、長期的なキャリアを描きやすくなります。
また、年収にみなし残業代や賞与が含まれているかも確認しておくと、入社後のトラブル防止につながります。
業務内容
大まかな業務内容は、面接ですり合わせ済みのケースが多いでしょう。しかし、実際に扱う商材や入社後の配属はオファー面談の場で明かされることが少なくありません。
同じ営業職でも新規開拓中心なのか、既存顧客向けの営業が中心なのかで業務内容は変わります。特に大手企業の場合は扱っている商材が幅広いので、自分が惹かれない商材を任されてしまう可能性もないとは言えません。
同様に、同じ事務職でも人事系と会計系では業務内容はほぼ別物です。入社後の業務内容が自分の想定と異なっていないか、確認する必要があります。
福利厚生
会社で長く働くためには、福利厚生も重要な要素です。各種手当の有無や産休・育休の有無および実績が主なチェックポイントになるでしょう。有休の消化率も聞いておきたいところです。
手当については、住宅手当や家族手当があれば実質の年収を上げることができます。産休や育休に関しては、制度の有無だけでなく実績まで確認することがポイントです。企業によっては、昨今の時流に従って制度自体は作ったものの、実態が伴っていない可能性があるかもしれません。
有休制度は従業員なら誰でも使える権利です。しかし消化率が低ければ、有休を取りづらい雰囲気が流れている職場だと推測できます。
就業時間
就業時間は労働条件通知書にも書かれている内容ですが、就業規則上の就業時間だけでなく、実態の確認も必要です。社員がいつもどの時間に退社しているか、繁忙期と閑散期の稼働量の違いなど、多方面から確認するのがおすすめです。
みなし残業分を超過した場合の手当の支給可否も、確認しておくべきと言えます。残業代の計算方法も、企業によってさまざまです。1分単位で支払われるところもあれば、15分単位や1時間単位のところもあります。
就業場所や転勤の有無
自宅から通える距離にあるか、車通勤の場合は駐車場の有無も確認しましょう。
また、転勤はライフスタイルに大きな影響を与えます。転勤の可能性は、通常なら求人票に書いてありますが、不安なら確認しておくべきです。その際、転勤の期間や頻度も確認しておきましょう。希望する場合は、在宅勤務の可否についても確認しておくと安心です。
内定前と内定後のオファー面談がある
オファー面談には、内定前に実施するものと内定後に実施するものがあります。オファー面談をいつ実施するか、またその目的は企業によって異なります。それぞれの一般的な目的や内容の違いを見ていきましょう。
内定前のオファー面談
内定前に実施されるオファー面談は、内定を出すかどうかの最終判断をする目的で設けられるケースが多くなっています。応募者の入社意思を確認して内定を出すか判断する傾向にあるので、実質応募者が入社を決めるための面談ともいえるでしょう。
条件交渉をするなら、このタイミングがチャンスです。事前に自分の希望する条件を整理して臨むことをおすすめします。
内定後のオファー面談
内定後のオファー面談は、選考というよりは労働条件をすり合わせるための面談の意味合いが強くなっています。内定後は一定期間内に承諾するかどうかの回答を出さなければいけないので、入社するかどうかを判断するための重要な面談です。
そのため、不明点はここで全て解消するくらいの気持ちを持って臨むべきと言えるでしょう。条件交渉というよりは、入社に向けて実務的な調整の色が強くなりますが、オファー面談が内定後にしか実施されない場合は、条件交渉をする唯一の機会となります。
オファー面談での注意点
オファー面談が直接合否に関係しないとはいえ、入社後のギャップを解消するための重要な面談です。面談を無駄な時間に終わらせないためにも、注意すべき点を解説します。
条件交渉は常識の範囲内で
オファー面談は、条件交渉というよりは認識合わせの場であるため、過度な要求はNGと心得ましょう。例えば年収を提示額から大幅に上げる、私的な休日を要望するといったことは、難しい場合も多いです。
そのため、条件交渉をする場合は必ず根拠に基づいた主張をし、説得力を持たせる必要があります。募集要項に記載されている年収と実際の提示額が違う、面接時に伝えた希望通りになっていないなど、相手に納得してもらえるような伝え方をすることがポイントです。
待遇に関する質問は言葉選びも重要
待遇面は、転職先選びにおいて非常に重要な要素です。しかし、質問の仕方によっては合否には影響がないとしても印象や入社前の評判にも影響する可能性があるので気をつけたほうが良いでしょう。
たとえば残業について聞きたいときは「残業はありますか?」ではなく、「繁忙期と閑散期の残業時間にはどの程度の差がありますか?」と聞いたり、有給休暇について聞きたい場合は、「〇〇の都合で、前職では年に◯日ほど有給を取っていたのですが、御社でも同じような働き方は可能ですか?」といった確認の仕方にすることで印象が変わります。
このような言い回しは、とっさに出てくるものではありません。聞きたいことをもれなく聞くためにも、事前に質問リストを作っておくことをおすすめします。
入社日の確認は念入りに行う
転職活動において、入社日の調整は重要です。企業には「いつまでに何人採用する」といった採用計画があり、それに基づいて採用活動を行っています。入社日がずれることで、社内の受け入れ態勢を調整する必要も出てくるため、入社日はスムーズに固めたいところです。
応募者にとっても、入社日が決まらないと現職の退職日の調整ができません。退職調整の際は、慰留や引き継ぎのボリュームによって、転職先の入社日に影響が出る可能性があります。ある程度余裕を持ってスケジュールを立てる必要があるでしょう。
オファー面談のFAQ
オファー面談についてよくある質問に回答します。ここで疑問点を解消し、万全な状態でオファー面談に臨みましょう。
オファー面談で落ちることはある?
オファー面談で落ちることは原則ありません。オファー面談は選考ではないためです。もっとも、企業は重大な理由がない限りは、内定を取り消すことができません。そのため「面談中のやり取りによっては評価が変わるのではないか」といった心配は無用です。
ただし、選考過程での虚偽の申告や、SNSなどで不適切な投稿をしていると確認された場合は、この限りではないでしょう。また、過度な交渉により条件が折り合わない場合も同様です。
常識的な振る舞いをしていれば、まずは落ちることはないと考えておきましょう。
オファー面談の適切な服装は?
服装については、これまでの面接で着ていたものと同じで問題ありません。特に指定がなければ、スーツで行くことが望ましいでしょう。
ただし、企業によっては選考でないことを強調するために、カジュアルな服装で良いと言ってくる場合もあります。その場合は、パンツとジャケットといったオフィスカジュアルが無難です。服装が自由だからといって、ダメージジーンズや肌の露出が多い服装はNGです。
オフィスカジュアルが指す範囲は企業によって異なるため、服装に迷ったら実際に働いている社員を参考にしても良いでしょう。
内定承諾期限はいつまで?
一般的には、1週間以内の回答を求められることが多いです。ただし、やむを得ない事情で期限内の回答が難しい場合は、理由を添えて企業に相談することも十分可能です。
内定を出した時点で、企業は採用活動をストップしているかもしれません。そのため、内定を辞退する場合、理由もなく遅めに回答を出すことは、企業に迷惑をかけることだと心得ましょう。
ですが、オファー面談で条件等に問題がないと確認できても、よほどの入社意思がない限りは面談の場での即決は避けた方がよいといえます。
採用担当の話を聞いた結果、以前よりも入社意欲が高まることもあるかもしれませんが、一度持ち帰って、冷静に判断をすることが重要です。もしかしたら、面談の場では気づかなかった大切なポイントを見落としているかもしれません。
内定後も油断せず条件面の確認をしよう
企業が実施するオファー面談は選考ではなく、入社するにあたって諸条件のすり合わせを目的とした面談です。応募者の入社意思を確認する場でもありますが、油断は禁物です。
オファー面談で伝えられた条件が、募集要項やこれまで面接で聞いた内容と100%同じとは限りません。もし事前に聞いていた内容と異なるものがあれば、確認する最後のチャンスとなるオファー面談を活用しましょう。
内定を承諾すると労働条件に合意したとみなされるため、その後の交渉は極めて難しくなります。内定後も気を抜かず、オファー面談ではしっかりと情報を引き出すことが大切です。