転職時には、履歴書や面接で志望理由を確認されることがよくあります。志望理由の書き方やポイントを押さえて、入社意欲を伝えましょう。作成時のコツや、職種別の例文も紹介します。魅力的な志望理由を書くことで、評価が上がるはずです。
志望理由の書き方の基本
履歴書に志望理由を書くとき、どのようにまとめればよいのでしょうか?文字数や基本的な書き方を解説します。
文字数は200〜300文字程度が目安
志望理由は、履歴書と面接の両方で確認されやすい項目です。一般的な履歴書では、志望理由を書くための欄が設けられています。
数行程度でまとめることを考えると、200~300文字程度が目安です。面接でも志望理由は1~2分程度で伝えるため、簡潔な説明が求められるでしょう。
反対に、「志望理由は、給与や年間休日などの条件がよかったからです」のように、短くまとめすぎると熱意が伝わりにくくなります。
条件面で選んだことが事実であったとしても、なぜその会社を選んだのかを、自分のビジョンとともに伝える必要があるでしょう。
結論から始める
志望理由を考える段階では、自分の考えをまとめるために、思いついたことからノートに書き出す作業を行います。書く前の段階では順番は問いませんが、履歴書に書くときは「結論から書き出す」ことを意識しましょう。
最初に採用担当者が見るのは、書き出しの部分です。まずは、結論となる「その会社に応募した動機」を最初に入れ込みましょう。「自分の能力を生かしたい」「接客業が好き」など、自分なりの動機があるはずです。
続けて、具体的なエピソードなどを入れ込むと説得力が増します。エピソード以外にも、応募先の会社を選んだ理由も、説得力を付け加えるために重要な要素です。
志望動機や選んだ理由を述べた後に、入社後のビジョンも書き添えるとよいでしょう。入社後の目標を記載すると、採用担当者も今後の活躍を想像しやすくなります。
読みやすいレイアウトも意識
履歴書に志望理由を書く際は、読みやすさも大切です。多くの場合、白い空欄にそのままペンで記入することになるため、書く前に文字の大きさや文量を意識しましょう。
数行に分けて書くときは、文字と文字との行間も読みやすさに関わってきます。1行に何文字書くのかを決め、定規で下書きの線を書いて文字の位置をそろえるなど工夫しましょう。
下書きをすることで、誤字脱字や文章の間違いも防げます。手書きが基本となる履歴書は、時間をかけて丁寧な字を書くことで印象アップにもつながるでしょう。
転職の志望理由は何をチェックしている?
転職時には、よく「志望理由」を確認されます。履歴書や面接での志望理由は、何を確認するために聞かれるのでしょうか?採用担当者が気にしているポイントを解説します。
応募者の志望度や熱意の強さ
企業は、志望理由から「応募者の熱意」を判断します。あまり深く考えず応募している人より、「この会社で働きたい」と強く希望している人は離職率が低く、前向きに仕事をしてくれると考えられるためです。
採用するからには、本当に入社したいと考えている人を選び、長く働いてほしいと採用担当者は考えています。
どこをチェックしているのかを考えると、書類や面接での志望理由はどの会社でも通用するものではなく、「応募先の企業だからこそ通用するもの」が好ましいでしょう。
商品やサービスの魅力、仕事内容など「応募先で働きたい」という熱意を見せることが重要です。
自社とマッチしているか
志望理由は、「その企業に応募した理由、きっかけ」です。自己PRは「自分の強みをアピールする場」となります。
志望理由では「価値観が一致していて貴社でなら自分の目標が達成できる」のように「応募の理由」をメインに考えましょう。
採用担当者は、志望理由を見ることで自社が求めている人材かどうかも判断しています。社風と考え方が一致しているかは、重要な要素です。
年功序列や実力重視など、会社の風土によって方向性も変わります。新しい挑戦を大切にする企業なら、自分からアイデアを出して積極的に行動する人材が求められるでしょう。
採用担当者は、いろいろな観点から自社で今後活躍できる人材なのかを判断しています。
志望理由のまとめ方
志望理由を書く前に、まずは書く内容をはっきりさせましょう。志望理由を考えるときは、転職理由や応募先企業の研究から始めるのがポイントです。
なぜ転職したいかを深堀りする
自分がなぜ転職したいと考えたのか、きっかけの部分を掘り下げると志望理由につながります。ただし、「退職のきっかけ」がそのまま志望理由になるわけではありません。
給与や待遇面、スキルを生かした仕事がしたいなど、転職を思い立った理由をもう一度考えてみましょう。
退職理由が「仕事への熱意の低下」といったネガティブなものであれば、「新しい分野や業界に興味を持った」と前向きな理由に置き換えることが重要です。
前職の人間関係や待遇面の不満は「退職理由」で、応募先企業を選んだ理由とは異なります。転職をしようとした理由を深掘りした上で、なぜ応募先を選んだのかを考えていきましょう。
業界や企業を研究
応募先企業が求める人材に合わせて志望理由を考えることで、採用担当者にアピールができます。自分が持つスキルや経験から、入社後に何ができるのか考えましょう。
どんなスキルが求められているのか、社風や企業方針はどのようなものなのか調べることが大切です。企業のホームページやインタビュー、製品情報など確認できるところは多数あります。
また、応募先企業だけでなく、業界全体もチェックすることで何が求められているのか把握できるはずです。
応募先企業を研究すると、「ホームページで〇〇のサービスについてインタビューを読み、〇〇というところに興味を持った」など志望理由にもつなげられます。
募集要項からニーズを読み取る
募集要項には、企業が求める人材についてのヒントがあります。必要な資格やあると望ましいスキル、仕事内容などを見るだけでも何を求めているのか分かるはずです。
また、コメント欄もチェックしておきましょう。生かせる経験・志向・今後のキャリアなどの補足があります。
募集要項を見た後は、自分に何が当てはまるか考えましょう。企業が求めているスキルや経験があれば、積極的にアピールできる材料になります。
他社との違いを見つけ、入社意欲が伝わる志望理由を作成しましょう。
効果的な志望理由作成のコツ
採用担当者が注目する志望理由を書くには、コツがあります。書き方のポイントと、具体例を見ていきましょう。
どこに魅力を感じたか具体的に述べる
志望理由として、その企業ならではの強みを挙げるのが効果的です。他社との違いを明確にすることで「この企業だから入社したい」という意欲が伝わります。
自分がどこに魅力を感じ、なぜそう思ったのかを具体的に伝えましょう。企業の魅力を挙げるだけでなく、自分が何を感じたかを伝える姿勢が重要です。
【例文】
貴社の〇〇というサービスに惹かれました。〇〇の強みは、〇〇だと感じています。自分も、このように新しい発想でサービスを作り上げていく仕事に関わりたいと感じ、応募を決めました。
スキルや経験の生かし方を明記する
自分のスキルや経験を交えて志望理由を説明すると、自分を採用することのメリットも伝えられます。
携わってきた仕事を振り返り、企業が求める人物像に近いものをピックアップしましょう。志望理由とともに、「自分が貢献できる理由」を添える形でスキルを伝えます。
【例文】
貴社はベトナム・フィリピンといったアジア諸国へ向けて事業展開するとうかがいましました。前職でもベトナムとの取引があり、基礎的な言語を習得したため、お役に立てるのではないかと考えています。
やりがちな志望理由のNG例
志望理由には、書かない方がよいこともあります。正直な気持ちだったとしても、伝えるときに注意した方がよい例を知っておきましょう。熱意をアピールするつもりでも、逆効果になる動機もあります。
どの企業でも当てはまる内容
企業の魅力や、なぜその業界に興味を持ったのかは重要です。しかし、どの企業でも当てはまる内容では、「自社に入社したいという意欲が低い」と判断されます。
例えば、「接客業がやりたい」だけでは、同業他社との差別化ができません。応募先企業が力を入れている分野に言及するなど、ほかの企業では得られない魅力を伝えましょう。
経営理念や社風に引かれたという理由も、具体例がなければ使い回しができる内容です。その企業について知らない人でも言える内容は、評価を下げてしまいます。
給与や待遇など条件面ばかり触れている
給与や待遇は、転職する上で欠かせない要素です。多少であれば志望理由として触れることはNGではありませんが、仕事への熱意が感じ取れない内容は避けましょう。
「給与やボーナスが高いから」「有休が全部取れると書かれていたので」といった理由は、事実であっても高評価にはなりません。
志望理由の全てを給与や待遇で埋めてしまうと、熱意を疑われます。「貴社の福利厚生やキャリアアップ制度に魅力を感じている」「実力に見合った評価制度がある」程度の表現にとどめ、意欲や熱意を感じさせる理由を付け加えましょう。
学習意欲・成長意欲をアピールする
入社後の意欲を伝えようとして、「業務を通して勉強していきたい」と伝えるのはリスクがあります。
極端な悪い例としては、「いずれ独立を考えているため、貴社で経営や営業について学びたい」というようなケースです。応募先企業で長く働くつもりがなく、ステップアップの目的で入社しようとしていると判断されます。
独立でなくても、最終目標がほかの企業や業界と捉えられるような発言は避けましょう。
また、「業界未経験なので、上司や同僚に分からないことをどんどん質問していきたい」のような一見積極的に感じられる発言も、自主的に学ぶ意欲がないと判断される可能性があります。
職種別に作成ポイントと例文を解説
志望理由を書くときは、職種によって必要な要素が変わってきます。営業職や事務職に応募するときの例文を見てみましょう。また、未経験職種へ転職するときのポイントも解説します。
営業職の志望理由の書き方
営業職には、商品販売の仕事に対する熱意や、コミュニケーション能力が欠かせません。志望理由でも、熱意と能力のアピールを心掛けましょう。
過去の経験や、なぜ応募先を選んだのかも盛り込むと、採用担当者の関心を引く内容になるはずです。
【例文】
これまで〇年間、〇〇株式会社で営業の仕事を経験する中で、お客様に合ったプランや製品をご提案し、喜んでもらえることにやりがいを感じてきました。前職では営業職員が対応する分野が広く設定されていたこともあり、事務や商品発注といった細かな作業も行っています。貴社では職員の仕事がそれぞれ細分化され、エキスパートを育てる環境が整っているところに魅力を感じました。
事務職の志望理由の書き方
事務職の志望理由では、基本的な事務経験や資格など、スキル面の強みをアピールできます。
事務の仕事内容は、多くの会社で共通する部分がありますが、なぜこの企業で働きたいと思ったのかを付け加えると説得力が増すでしょう。
【例文】
貴社は社員同士の交流を大切にする風土で、経理に加え他部署とのコミュニケーションを重視しているとおうかがいしました。私は経理担当者を目指して〇年間営業事務に携わり、経理補助や営業社員のサポートを行ってきました。簿記の資格や調整役としての経験を生かし、貢献したいと考えております。
未経験職種の志望理由の書き方
未経験の職種に応募する場合、これまでの経験と応募した職種の共通点を挙げることが大切です。
経験上、結び付く要素がないときは、性格面や資質の部分でもよいでしょう。未経験でも、熱意や入社意欲をアピールすれば、魅力的な志望理由が書けます。
【例文】
お客様に商品をご提案し、喜んでいただける営業職という仕事に興味を持ち、転職を決めました。〇〇がきっかけで貴社の〇〇サービスに強く引かれ、お客様へその素晴らしさを伝えたいと考えました。現職では、カスタマー部門で顧客対応を行っています。お客様の疑問や不安を解消し、満足度を高める部分は営業職でも共通しており、経験が生かせると思っています。
志望理由で熱意をアピールしよう
志望理由には、応募先企業を選んだ理由を書きます。「この企業で働きたい」という熱意が伝わるよう、惹かれた部分を具体的に述べることが重要です。
入社後のビジョンを明確にするため、採用後に貢献できるスキルを伝えるのもよいでしょう。志望理由は、職歴や経験以外で自分をアピールできる大切な項目です。じっくり考えて作成しましょう。
官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務を経て、キャリアカウンセラーとして独立。こころとキャリアの専門家として、女性のキャリアデザイン、ダイバーシティ、女性の働き方を中心に幅広く活動中。今までに20000人以上をカウンセリング。
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