パワハラの相談はどこにすればよい?必要な証拠の集め方も紹介!

現在上司からパワハラを受けているものの、誰にも相談できずに困っていませんか?パワハラ被害を相談できる窓口や、相談するときの準備を解説します。証拠を集める方法も紹介するので、1人で悩まずに行動を起こしましょう。

パワハラかもと思ったら取るべき行動

パソコンを前に悩む男性

(出典) photo-ac.com

もし自分がパワハラを受けていると思ったときは、どのような行動を取ればよいのでしょうか。パワハラを受けている可能性があるときに取るべきアクションを解説します。

1人で我慢しなくてOK

パワハラを受けていると思ったときは、我慢せずに周囲の人に相談することが大切です。なんでもかんでも「パワハラだ」と騒ぐのはよくありませんが、かといって不必要に我慢し続ける必要はありません。

上司から否定される状況が常態化してしまうと、次第に無気力状態に陥ってしまう可能性があります。これは「学習性無力感」といい、自分でも気付かぬうちに抵抗することを諦め、やる気が失われてしまうため注意が必要です。

また、パワハラを放っておくと、相手の言動がエスカレートする恐れもあります。状況が悪化する前に、手を打つことが重要といえます。

パワハラの定義をチェック

自分がパワハラを受けているかを判断するには、パワハラの定義を知っておく必要があります。以下の行為は厚生労働省により、パワハラに当たると定義されています。

  • 精神的・身体的な攻撃
  • 過大・過小な要求
  • 人間関係からの切り離し
  • 個の侵害

必要以上の叱責を受ける、物を投げられる、胸ぐらを掴まれるといった攻撃はイメージしやすいでしょう。

それだけでなく、自分の能力に見合っていない要求をすることもパワハラです。能力に見合っていないとは、1人ではこなせないような量の業務を与えることや、逆にレベルの低すぎる業務しか与えないことも含みます。

無視をするといった周囲から孤立させる行動や、私用のスマホをのぞいたり不在中に机を物色したりすることも、プライバシーの侵害としてパワハラに当たります。

参考:パワハラ 6類型 - 厚生労働省

パワハラの相談はどこでできる?

電話をかける

(出典) photo-ac.com

パワハラ被害について誰かに相談したいと思っていても、どこに相談するべきか分からない人もいるでしょう。パワハラの相談ができる機関を4つ紹介します。電話やインターネットで相談できるところもあるので、仕事で窓口に行く時間のない人もぜひ参考にしましょう。

社内の相談窓口

社内に相談窓口があるなら、そこが一番身近な相談先となります。もっとも、「パワハラ防止法」とも呼ばれる「労働施策総合推進法」により、企業には相談窓口の設置が義務付けられているので、よほどのことがない限りは窓口があるはずです。

社内の窓口ではしっかりと対応してくれる場合もありますが、窓口の運用の仕方によっては、相談したことが加害者に伝わるなどのリスクも考えられます。

そのため、過去にパワハラを解決した実績があるならすぐにでも相談してよいでしょう。もし社内の窓口で不安な場合は、外部の相談先を検討することをおすすめします。

参考:「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化 | 厚生労働省

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーとは、各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの379カ所に設置されている国が設けた相談窓口です。

パワハラだけでなく、雇用や賃金などあらゆる労働問題を相談できる窓口です。予約不要、かつ無料で利用できます。対面だけでなく、電話での相談も可能なので、忙しい人でも利用しやすいでしょう。

国が設置している機関であることと、秘密厳守で対応してくれることから、安心して相談できます。必要に応じて適切な紛争解決機関の情報も提供してくれるので、相談先に迷ったらひとまず総合労働相談コーナーに問い合わせるのもおすすめです。

総合労働相談コーナー|厚生労働省

みんなの人権110番

差別や虐待、パワハラなど人権問題の観点で相談に乗ってくれる機関です。法務省により、法務局および各地方法務局に常設されている相談所なので、安心して利用できるでしょう。

対面だけでなく、電話やインターネットでの相談も受け付けています。相談に乗ってくれるのは、法務局の職員または人権擁護委員です。

相談を聞いた後は、必要に応じて調査を行ったり、人権が侵害されたと判断される場合には救済措置を取ってくれたりします。

無料・秘密厳守なので、まずは気軽に相談してみましょう。

みんなの人権110番|法務省

労働相談ホットライン

全国労働組合総連合(全労連)が設置している相談窓口です。日本における労働組合の中心的組織のため、労働者の立場に寄り添った対応をしてくれることが特徴です。

相談は無料で、電話だけでなくメールでの相談もできます。フリーダイヤルにかけると、地域の労働相談センターにつながります。

パワハラ問題だけでなく、雇用に関する相談をしたい人にもおすすめです。ただし、具体的な解決には労働組合への加入が条件となる場合がある点には注意が必要です。

労働相談ホットライン|全労連

相談するときに必要なもの

打ち合わせをするデスクの様子

(出典) photo-ac.com

第三者にパワハラの相談をするときは、状況を知らない相手に正しい情報を伝えることが重要です。そのためには、事前の準備が大切です。パワハラの相談をする際に必要なものを解説します。

パワハラの証拠

まずは、パワハラがあったことを証明する情報を用意しましょう。パワハラの証拠となるものには、下記が挙げられます。

  • 暴言や人格否定などの音声データ
  • パワハラに当たるメールやメッセージ
  • 被害の内容を記録した日記やノート
  • 受診した場合は病院の診断書

これらはパワハラがあったことと、その程度を客観的に証明するものです。本人の説明だけでは、本当にパワハラがあったのか、被害を大げさに言っていないかといった疑問が残ってしまいます。

状況を正確に伝えることで初めて、適切な対処をしてもらえます。

経緯や状況を整理しておく

証拠と合わせて、パワハラを受けた経緯や、現在の自分の状況を整理しておくことも重要です。具体的には、以下のような情報をまとめておくとよいでしょう。

  • 誰から・いつからパワハラを受けているのか
  • 被害内容
  • パワハラが始まったきっかけと思われるもの
  • 毎日パワハラをされているのか、それとも特定の条件下でされるのか

証拠とともに、時系列に沿って自分がどのような経緯で被害を受けたかを伝えることで、相談先からも適切なアドバイスをもらうことができます。

また、現在の自分の状態についても整理しておきましょう。寝つきが悪くなった、出社前になると気分が悪くなるなど、心身への影響を記録しておくことも重要です。

パワハラの証拠を集める方法

ボイスレコーダーを掲げる男性

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パワハラの証拠を集める際は、できるだけデータとして残すことがポイントです。具体的な方法を三つ紹介します。

音声の録音・動画の録画

録音や録画は、パワハラを証明する強力な証拠です。音声データは裁判でも証拠として認められるほど、重要で客観的な証拠といえます。

やり方はスマホの録音機能や小型のICレコーダー、ペン型のボイスレコーダーを使うのがよいでしょう。

なお、会話の録音・録画をするのに上司の許可を取る必要はありません。証拠取得のために秘密裏に録音・録画することは違法ではなく、きちんと証拠として認められます。

ただし、記録したデータをSNS等に勝手にアップロードするのはプライバシーの侵害に当たる可能性があります。あくまで相談先に提示するのためのデータとして、個人で保管しておきましょう。

チャットやメールの文章

チャットやメールの文章も客観性が高く、信頼度の高い証拠になりえます。特に個人間でのチャットやメールは、ほかの人に見られていないことからパワハラの言動が出やすいでしょう。

そのため、不快に思っても削除せずに、スクリーンショットを撮っておくことをおすすめします。LINEなど相手がメッセージの取り消しができるアプリを使っている場合は、相手に消される前にスクリーンショットを残しておくことも重要です。

なお、SNSでの発言も証拠として認められる可能性があります。SNSでも投稿が消される前に、速やかにスクリーンショットを保存しておきましょう。

目撃証言も有効

同僚やほかの社員の目の前でパワハラが行われていた場合は、目撃者の証言も証拠になりえます。本人の証言と目撃者の証言の整合性が取れれば、証拠として認められる可能性が高いといえます。

同僚に協力を得られないか、たずねてみましょう。ただし、加害者がすでに同僚に根回しをしており、思うように協力を得られない可能性も考えられます。その場合は、パワハラを目撃していた退職者を頼るのも有効です。

退職者なら会社との利害関係がないため、協力を得やすいでしょう。

相談するのも怖い場合は?

泣いているスーツの女性

(出典) photo-ac.com

パワハラ被害の相談をしたいものの、加害者や周囲に知られるのが心配でなかなか一歩を踏み出せない人もいるかもしれません。そんなときの対処法を二つ紹介します。

匿名で利用できる窓口もある

どうしてもバレることが怖くて名前を出すのに抵抗がある場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなど、匿名で相談できる窓口を利用しましょう。

ただし、匿名での相談の場合、アドバイスはもらえるかもしれませんが、調査など具体的なアクションを取ってもらえる可能性は低めです。実名での相談の方が緊急性や信頼性が高いと判断されるためです。

相談することをためらっている場合、各窓口の相談フォームに内容を記入するだけでも効果があります。自分の思いを文字にして客観的に見ることで「解決しなければ」という気持ちが高まることもあります。問題解決のためには、何らかのアクションを起こすことが重要です。

転職・退職も視野に入れよう

パワハラを受けている現状をどうしても解決できない場合は、転職や退職も選択肢に入ります。

上司のパワハラがおさまったところで会社での居心地が悪くなりそうなときや、パワハラを受ける以前の状況に戻れないと思ったら、一度環境をリセットすることも有効です。

上司だけでなく、職場自体にネガティブな印象を持っているケースもあるでしょう。これらの理由で転職することは逃げではありません。追い詰められて正常な判断ができなくなる前に、問題の原因から離れることも大切です。

自分を守るための第一歩を踏み出して!

会議室にいるスーツの男性

(出典) photo-ac.com

仕事をしていれば、誰でもミスをするものです。しかし、それを必要以上に叱責したり、周囲から孤立させたりすることはパワハラに該当します。

パワハラを我慢するのはよくありません。もし自分がパワハラを受けていると思ったら、この記事を参考にできることからアクションを起こしてみましょう。

中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」