転職に備えて、何か資格を取得しようと考える人もいるでしょう。資格が有利に働く場合もあればそうでない場合もあるので、注意が必要です。どんな資格を取得すべきか悩んでいる人に向けて、選び方やおすすめの資格を紹介します。
資格を取ると転職は有利になる?
資格を持っていると転職活動に有利だといわれるケースも多いですが、本当なのでしょうか。転職で有利になる資格を取得するために知っておきたい、基礎知識を紹介します。
資格を取るだけでは転職活動は成功しない
資格を持っているからといって、必ずしも転職活動が有利に運ぶとは限りません。中途採用では資格の有無よりも、キャリアやスキルが重視されるケースが多いといえます。
応募する職種との関連が薄い資格を持っていても、高評価は得られません。応募要項に記載されている資格以外を取得しても、あまり意味はないと考えましょう。
資格を取得するには努力が必要なので、勉強熱心で向上心がある点をプラスに受け取ってもらえる可能性はありますが、性格面のアピールは自己PRや長所などでも可能です。
業務独占資格の場合は取得が必須
業務独占資格とは、その仕事をする上で必須となる資格のことです。資格があることを前提として働く職業では、資格取得が必須となります。例えば、医師・看護師・薬剤師などの専門性が高い仕事は、資格がなければ業務を行えません。
その仕事をする上で必要とされる知識を十分に備えていると証明するために、職種ごとに資格を取得しなければならないことが各種法律に明記されています。もし、無資格で仕事をすれば法律違反になり、処罰を受ける結果になります。
資格を取得するメリット
資格を取得するメリットを知ると、本当に必要な行動なのか見えてきます。利益が大きいなら、挑戦したいと考える人は多いでしょう。資格を取得すると、どのように役立つのか紹介します。
応募する選択肢が増える
職業と関連が深く実用性のある資格を持っていると、応募先の選択肢が増えるのがメリットです。特定の資格を持っている人が優遇されるケースは少なくありません。
例えば不動産業界では、「宅地建物取引士」の資格を持っている人が優遇されます。有資格者がいないと、契約を進める上で必須となる重要事項の説明ができないためです。
宅地建物取引士は不動産業者に勤務している人の誰もが所有しているわけではないので、転職時に資格を持っていれば有利に働きます。
年収アップの可能性がある
応募先にとって重要性が高い資格を持っていれば、交渉次第で年収がアップする可能性がある点もメリットです。給与や待遇の交渉をする際にアドバンテージとなるでしょう。
年収アップを目指すなら、自分のキャリアに生かせる資格は何かを考えて選びましょう。キャリアと無関係な資格を所有しても、有効活用できない可能性があります。
何も知識がない状態から難度の高い資格に挑戦するのは大変なので、自分が経験してきた業務との関連性が高く、応募先で役立つものを取得するのがおすすめです。
資格手当をもらえる場合がある
資格手当をもらえる可能性がある点も、メリットの1つです。企業によっては、該当する資格の所有者を対象に資格手当を支給している場合があります。
資格手当は従業員のスキルアップを図り、業務の質を高めるために取り入れられている福利厚生の一種です。
企業によって詳細は異なりますが、毎月の給与に数千円から数万円が加算されて支給されるほか、合格した際にお祝い金として一時金が支給されます。
資格手当の対象となる資格は、企業側が任意で決めるものです。電気工事士・危険物取扱者・管理栄養士などの国家資格のほか、インテリアコーディネーターや秘書検定などの民間資格を対象にしている企業もあります。
転職のための資格取得の注意点
転職活動を有利に進めたいと考えて資格を取得するなら、押さえておきたいポイントがあります。どんな点に注意すればよいのか、見ていきましょう。
資格取得より転職活動を優先する
転職活動をしながら資格取得を目指すか、資格の取得後に転職すべきかで悩む人もいるでしょう。その職業に就く上で必須の資格でない限り、転職活動を優先させるか並行して行うのがおすすめです。
募集のタイミングを逃すと、どんなに有利とされる資格を持っていても、転職先が見つからない可能性があります。
転職活動では実務経験が重視されるケースが多く、無職の期間が長引いてブランクが大きくなってしまうと不利になる場合があるのです。
業務との関連が低い資格は有利にならない
さまざまな資格を持っていても、転職活動で有利にならない場合もあります。業務との関連性が低い資格を、わざわざアピールする意味はあまりありません。
例えば、一般事務に転職する人が電気工事士の資格を持っていたとしても、業務に直接生かせるわけではないので、採用担当者からの評価を受けにくいでしょう。
採用担当者によっては、資格を生かして働こうとしない理由が気になってしまう人もいるかもしれません。関連性がまったくない資格の場合は、むしろアピールしない方が無難です。
資格選びのポイント
仕事に役立つ資格はさまざまなものがあるので、どれを選べばよいのか悩む人は多いでしょう。選び方を間違えると、時間を無駄にしてしまったり転職に役立てられなかったりするリスクが生じます。資格選びのポイントをチェックしましょう。
自分のキャリアプランに合致しているか
希望の職種への関連性が高く、自分のキャリアプランに合った資格を取得しましょう。自分のキャリアプランをはっきりとさせてから、資格の種類を絞り込む方法がおすすめです。
例えば、金融・保険・証券業界でキャリアアップを目指すなら、投資や貯蓄に関するアドバイスの技能を認定する資格である「ファイナンシャル・プランニング技能士」の資格を持っていると、仕事の幅が広がります。
資格を取得するには受検料や勉強時間などが必要です。キャリアと結び付かないものに挑戦すると無駄が大きくなってしまうので、迷ったときには仕事の幅が広がるかどうかで選びましょう。
取得にかかる費用や時間はどの程度か
目当ての資格を取得するまでにかかる費用や、時間も考えて選びましょう。在職中に転職活動をしながら資格取得を目指す場合、多くの勉強時間を捻出できない恐れがあります。
資格取得までの準備時間が短ければ、なかなか合格できません。専門性が高い資格に挑戦する場合は、学校に通う費用が必要になるケースもあります。
現実的に無理がない計画を立てないと、転職活動に生かせなくなってしまうので注意しましょう。
自分の能力や関心とマッチしているか
資格取得を目指す際は、自分の能力に見合ったものを選ぶ点も重要です。初心者向け・上級者向けというように級が分かれている資格の場合、簡単な資格は重要視されないケースが多いので、難しい方を選択する人は少なくありません。
しかし、自分の実力に見合っていなければなかなか合格できず、多くの時間が必要になってしまいます。また、興味がない分野だと勉強の時間が苦痛になり、続けられません。
興味や関心が薄い分野の資格を必要とする仕事は、向いていない可能性があります。どんなに転職に有利でも、関心を持てない資格を取得するために時間やお金を費やすと、後悔する可能性が高いでしょう。
事務・企画職におすすめの国家資格
目標とする仕事に関連性が高い資格を選ばないと、取得する意味がありません。事務・企画職を目指す人におすすめの国家資格を見ていきましょう。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントの資格は、就職・転職・起業・仕事と家庭の両立など、キャリアに関して悩む人々にアドバイスや指導を行う専門家になるために必要です。
資格を得てキャリアコンサルタント技能士になれば、一般企業の人事職や人材紹介・派遣会社などで活躍できます。
キャリアに関するアドバイスができる能力は、さまざまな人材が活躍する機会が増えたことで需要が高まっているのです。受検するには、下記のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 厚生労働大臣が認定する講習を修了する
- 企業の人事部もしくは採用業務に3年以上従事する
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験もしくは実技試験に合格している
キャリアコンサルティング技能検定2級の学科試験の合格率は66.77%、実技試験の合格率は19.01%です。
参考:2021年度|後期|2級(第27回)|キャリアコンサルティング技能検定
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対する解決法を探り、経営計画のアドバイスをするために必要な資格です。
合格するには経営に関する幅広い知識が必要で、経営コンサルタントとしての実力が試されます。マネジメント能力を身に付けたい人や、キャリアアップを目指す人に人気です。
実務経験がなくても受験できますが、合格率は4~5%程度となっており簡単には合格できません。1次・2次の筆記試験に加えて面接試験もあり、経営コンサルタントの経験がある人や学習時間に余裕がある人向けです。
未経験から取得を目指す人は、中小企業診断士の登録養成機関での養成課程やオンライン講座などを利用し、効率よく学習するとよいでしょう。
参考:令和3年度中小企業診断士第1次試験の結果について|一般社団法人 中小企業診断協会
参考:令和3年度中小企業診断士第2次試験の筆記試験の結果について|一般社団法人 中小企業診断協会
事務・企画職におすすめの民間資格
民間資格の中にも、知名度が高く事務や企画職の仕事に役立つものはたくさんあります。事務・企画職の転職活動におすすめな資格を見ていきましょう。
日商簿記2級
日商簿記2級は簿記検定の中でも知名度が高く、転職で経理職・財務職を目指すなら有利になる資格です。合格すれば、企業の経済活動を記録・計算・整理する技能を持っている証拠になります。
数字でビジネスを語るために必要なお金の流れを理解できるようになるので、さまざまなビジネスシーンで知識を生かしやすく、実用性が高い資格です。
試験は年に3回行われ、受験のチャンスが多いところも人気がある理由の1つといえます。個人差はありますが、資格を取得するには半年から1年程度の勉強期間が必要とされ、2022年6月の合格率は26.9%です。
TOEIC
TOEICは英語力を証明するための入門的な試験として知られ、外資系企業や語学力が必要な企業で活躍したいなら押さえておきたい検定です。
試験は990点満点で評価され、600点以上で日常会話ができるレベルと判断されるので、履歴書に書けるギリギリのラインになります。転職活動でアピールするなら650点以上を目指したいところです。
英語で書かれたビジネス文書の内容を深く理解でき、仕事に関する説明ができる点をアピールしたいなら、700点以上が必要とされます。試験日は月1回とチャンスが多いところも、挑戦しやすいポイントです。
秘書検定
秘書検定は基本的なビジネスマナーを身に付けられる資格で、1~3級と準1級の4段階に分けられています。準1級以上は面接試験があり、立ち居振る舞いや言葉遣いなどもチェックされるので、転職の面接対策として活用する人も少なくありません。
1級のレベルになると、上司が動きやすいように常に先を読んで行動する能力が求められます。特別な受験資格はなく、年齢制限などもありません。2021年3月の合格率は1級が34.0%、準1級が41.7%です。
マーケティング検定
マーケティング検定は2017年に創設された新しい資格で、1~3級に分けられています。3級はマーケティングに必要な基礎知識が出題され、未経験からマーケティング業界を目指す人や企画・営業などにマーケティングスキルを生かしたい人におすすめです。
2級は応用や実務能力、1級になるとより高度な知識や実務能力が求められ、面接試験を通過しなければなりません。特に受検資格はなく、マーケティングについて幅広く学びたい人や、実力を試したい人に利用されています。
1級以外は受検申し込みは随時募集され、全国各地のテストセンターで受けられます。テストセンターのパソコンからテストを行うCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)を採用しており、都合のよい時間と場所を選べる形式です。
実務に直結するおすすめ国家資格
国家資格は実務に直結する資格が多く、職種によっては持っていると転職に有利に働くものがあります。特定の実務を遂行する上で、価値が高い資格にはどんなものがあるのか見ていきましょう。
宅地建物取引士
宅地建物取引士は宅地や建物の売買をする際に、重要事項の説明などを行うために必要な資格です。宅地建物取引士に合格するには、土地・建物の権利や法令上の制限など、宅地建物取引業に関する実用的な知識が求められます。
宅地建物の取引をする業者は、事業所1つにつき5人中1人の有資格者を必要とするので、需要が高い資格です。不動産業界や金融業界では資格手当の対象としている企業も多く、転職の際にも有利に働きます。
必要な受験資格は特に定められていませんが、試験日は毎年1回とチャンスが少なく、合格率は例年15%程度とされます。
参考:試験実施概況(過去10年間)|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
通関士
通関士は輸出入を行う商社やメーカーなどから依頼を受けて、物品が税関を通るために必要な通関書類の審査や記名・押印などの業務を代行します。
通関業法や関税法といった税関を通すために必要な法律の知識や、通関書類の作成などの実務的な技能を身に付けている人だけが合格できる資格です。
通関業者は通関士の設置が義務付けられており、今後も需要が見込まれる資格だといえます。難易度はやや高めで、2021年の試験の合格率は15.8%です。
参考:第55回通関士試験の結果について|通関士試験|税関 Japan Customs
旅行業務取扱管理者
旅行業務取扱管理者は、旅行業者の営業所1カ所につき1名以上が必要です。10名以上の営業所の場合は2人以上が必要なので需要が高く、旅行業界に転職を考えているなら取得して損はありません。
合格するには旅行契約における事務作業や企画といった、実務との関連が深い知識が求められます。旅行業界では、資格手当の支給対象となっているケースが珍しくありません。
販売する旅行商品の範囲によって資格の名称が異なり、「総合旅行業務取扱管理者」「国内旅行業務取扱管理者」「地域限定旅行業務取扱管理者」の3種類に分けられています。総合旅行は国内・海外の両方を取り扱うので、出題範囲が広く難易度が高い傾向です。
衛生管理者
衛生管理者は、労働者の健康や作業環境の管理などを行います。作業や衛生状態に問題がある場合は、労働者を守るために必要な処置を行わなければなりません。
50~200人の労働者がいる事業所で1名以上の選任が必要になり、規模が大きいほど必要な衛生管理者の数が増えます。
資格は第1種と第2種の2つがあり、2つの違いは有害業務が含まれるかどうかです。電気・水道・ガスなどのライフラインや運送・医療・清掃などの分野では、有害業務が含まれます。
有害業務は健康被害や労働災害などが発生する可能性が高いので、より幅広い知識を必要とする第1種衛生管理者が必要です。第2種は有害業務との関連性が低い業種に対応しています。
2021年度でみると、第1種の合格率は42.7%、第2種の合格率は49.7%とされ、難易度はそれほど高くありません。
非エンジニアもチャレンジできるIT系資格
IT系の資格は、エンジニアの経験がなければ挑戦が難しいと考える人もいます。エンジニアの経験がなくても、比較的簡単に挑戦できる資格を見ていきましょう。
ITパスポート
ITパスポートは、情報処理技術における入門的な位置付けの資格です。情報セキュリティー・情報モラルなどのIT分野の知識だけでなく、マーケティングや経営戦略など、試験を通じて学習できる内容は多岐にわたります。
ITパスポートを取得していると基礎的なITの知識を備えていると判断してもらえるので、ビジネススキルの一環として取得する人が少なくありません。
国家資格の中では比較的難易度が低く、2022年6月に行われた試験における社会人の合格率は57.7%です。
基本情報技術者
基本情報技術者は、ITエンジニアを目指す人に必要な、基礎的な情報処理技術の知識・技能を証明する資格です。ITエンジニア向けの入門的な資格ですが、特に受験資格はなく誰でも受検できます。
試験は毎年春と秋に開催され、形式はCBTです。全国の試験会場で行われるので、最寄りの会場を選べます。
2021年春期の合格率は41.6%です。ただし、試験ごとに合格率のばらつきがあり、過去には25%を下回った回もあります。現役のエンジニアでも勉強を怠ると不合格となる場合があるので、しっかりと準備をして臨みましょう。
参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 統計資料|情報処理出師機構|
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、WordやExcelなどのマイクロソフト社のソフトを扱うスキルを証明する資格です。
取得すれば、書類作成や各種表の作成などの事務作業を一通りこなせるとアピールできるでしょう。多くの企業でマイクロソフト社の製品を使用しているので、事務系の職種に転職するのであれば、取得しておきたい資格です。
試験の種類は一般レベルと上級レベルがあり、特別な受験資格はありません。合格率は公表されていませんが、一般レベルは事務職での実務経験があれば比較的合格しやすいとされます。
医療・福祉関連の資格
医療や福祉系の資格は学歴や実務経験が必須となっているものが多いですが、未経験者でも取得できるものもあります。医療・福祉系の中から、特別な知識や学歴がなくても受検できるものを見ていきましょう。
医療事務
医療事務は診療報酬に関する知識を身に付け、診療報酬請求業務や受付業務を行います。診療報酬明細書(レセプト)の作成は重要な作業で、医療事務として働くなら実務的な基礎知識を持っていなければなりません。
受検資格は定められておらず、実務経験がなくても受検できます。医療事務に関する資格にはさまざまなものがありますが、以下の4つが代表的です。
- 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
- 医療事務管理士技能認定試験
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医療事務認定実務者
医療事務技能審査試験と、医療事務管理士技能認定試験の合格率は50~60%程度となっています。診療報酬請求事務能力認定試験は4つの中では最も難易度が高く、合格率は40%程度です。
医療事務認定実務者は初心者向けで、受検した人の80%程度が合格しています。
参考:医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)|資格試験/技能認定|日本医療教育財団
参考:医科医療事務管理士|試験結果|_ JSMA 技能認定振興協会
参考:診療報酬請求事務能力認定試験|試験実績|公益財団法人日本医療保険事務協会
参考:医療事務関連資格の試験実績紹介|全国医療福祉教育協会主催の各認定試験状況
登録販売者
登録販売者は医薬品の販売を行う仕事です。ドラッグストアや調剤薬局で働きたい人にとって有利となる資格で、医薬品を扱うスーパーやコンビニエンスストアなどでも需要があります。
合格するには、健康と薬に関する知識を身に付けていなければなりません。また、販売できる医薬品の種類は第2類・第3類医薬品に限ります。
学歴や実務経験を問わず受験できますが、登録販売者には「正規の登録販売者」と「登録販売者研修生」があり注意が必要です。正規の登録販売者は直近5年間で2年以上の実務経験が求められます。登録販売者研修生は、試験に合格しただけで実務経験がない場合に用いられ、正規の登録販売者になるには実務経験が必要となります。
医療系の資格の中でも比較的取得しやすいものとして知られています。2023年度に東京都で行われた登録販売者試験の合格率は、44.0%(受験者数3,729人・合格者数1,639人)です。
将来の独立開業も狙える資格
転職に役立つだけでなく、取得することで独立も狙える資格もあります。転職活動だけでなく、将来独立を目指している人にもおすすめな資格を見ていきましょう。
行政書士
行政書士は官公署に提出する書類の作成や提出を、企業や個人に代わって代行するために必要な国家資格です。請負契約書や消費貸借契約書など、権利の発生や消滅の際に手続き上で必要な書類の作成・提出が主な仕事となります。
行政書士の資格を取得すれば会社法や商法についての知識を証明でき、企業の法務部や総務部などで即戦力になれるでしょう。企業や行政書士事務所に勤めるだけでなく、独立して業務を行うといった選択肢もあります。
受験資格がなく初めて法律を学ぶ人でも挑戦しやすいですが、合格率は10%程度と決して簡単ではありません。
参考:令和 3 年度行政書士試験実施結果の概要 |一般財団法人 行政書士試験研究センター
社会保険労務士
社会保険労務士は人事や労務の仕事に携わり、キャリアアップしたい人におすすめな資格です。
取得すれば企業が人を雇う上で欠かせないさまざまな法律の知識を持っていると証明できます。受験するには、以下の中からいずれか1つを満たすことが必要です。
- 公務員として、または社労士や弁護士の補助として3年以上従事している
- 大学・短期大学・高等専門学校のいずれかを卒業している
- 行政書士あるいは厚生労働大臣が認めた国家試験に合格
合格するには、社会保険関連の法律を幅広く身に付けていなければなりません。合格率は6~7%とされ難易度は高いですが、労務に関する書類作成や労働分野のコンサルティングを必要とする企業にとって需要が大きく、将来性は高いといえます。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、顧客の家族構成・ライフプランなどに合った資産運用や資産計画をアドバイスする職業です。
資格を取得すれば、保険・金融・不動産などのさまざまな業界で活躍が期待できるほか、生きていく上で重要なお金に関する知識を身に付けられます。独立開業を目指せる点も人気がある理由の1つです。
国家資格の「ファイナンシャルプランナー技能士」と、民間資格の「AFP(国内資格)」「CFP(国際資格)」に分けられます。
ファイナンシャルプランナー技能士の試験は1~3級に分かれており、試験を実施している日本FP協会が発表しているデータによると、2022年5月に開催された2級の試験の合格率は学科が49.2%、実技が62.11%です。
参考:2022年5月実施2級FP技能検定試験結果 | 日本FP協会
資格取得は選択肢を増やすチャンス
応募先での需要が高い資格を持っていれば、転職活動をする際に有利です。どの資格を取得するか悩んでいる人は、仕事の幅が広がりそうなものを選ぶと転職先の選択肢が広がります。
関心がある分野やこれまでのキャリアに即した資格なら、キャリアアップに生かせる可能性が高いでしょう。資格手当を採用している企業も多く、対象となる資格を持っていれば収入アップも見込めます。
受検資格をよく確認してから、希望の資格に狙いを定めることが大事です。難易度も参考にしながら、無理のない勉強期間を設けましょう。
国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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