残業時間が長いと、仕事をするのが嫌になったり、肉体的な負担が大きくなったりすることが心配です。残業時間の平均が分かると、自分の状況と比較して問題を明確にできます。残業に関する基本知識や、残業が少ない・多い職種をチェックしましょう。
この記事のポイント
- 残業時間についての基本知識
- 残業とは、「定時を超えて働く労働」を意味し、早く出勤して業務を行う場合も、時間外労働に当てはまります。所定の労働時間を超えて働くことを「所定外労働」といい、法律によって定められた労働時間を超えて働くことを「法定外労働」といいます。
- 残業の平均時間はどれくらい?
- 厚生労働省が発表している、月間の所定外労働時間の平均は「10.7時間」という結果が発表されています。ただ、平均となるため企業や職種によって大きな偏りがあります。
- 残業何時間から違法?
- 所定時間を超えていても法定労働時間内の場合は違法とはなりません。法定労働時間は「1日8時間」「週40時間」と定められており、36協定を締結していない企業が法定外労働をさせた場合や、上限の「月45時間」「年間360時間」を超える場合は違法となります。
残業の平均時間はどれくらい?
残業時間が長いと感じる人は、平均時間が気になることでしょう。日本の事業所で働いている人は、どの程度の残業をこなしているのかを解説します。
月間の所定外労働時間は10.7時間
残業の平均時間を知るには、厚生労働省が発表しているデータを参考にする方法があります。厚生労働省は労働時間や雇用の変動を知るため、無作為に選んだ事業所を対象に調査し、その結果を公表しています。
2022年4月現在の「毎月勤労統計調査」を見ると、月間の所定外労働時間の平均は「10.7時間」です。残業が慢性化している人は、「意外に少ない」と感じるのではないでしょうか?
政府が2019年から順次施行した働き方改革により、残業時間を減らす努力をしている企業が増えている一方で、経営の悪化などが原因でサービス残業が常態化している企業もあると考えられます。
企業によって偏りが大きい
企業や職種によって残業時間の偏りは大きく、一概に平均何時間と言い切れない部分もあります。
残業時間の長さに苦しんでいる人が厚生労働省が発表したデータを見ると、周囲で残業をしている人の話と違うと思ったり、自分の状況と照らし合わせたときに偏りがあると感じたりするはずです。
職場への不満が大きい人は、残業時間を過大に表現している可能性がゼロではないので、ネット上の口コミを信じ過ぎるのもよくありません。
毎月勤労統計調査は、雇用主が厚生労働省に提出したデータを基に作成されており、現状がありのままに報告されていない可能性も考慮した方がよいでしょう。
残業時間についての基本知識
残業時間が長いと、精神的にも肉体的にも疲労がたまりがちです。法律上、度を超えた長時間の労働は認められていません。残業に関するルールを知らなかったことで損をしないように、残業時間の基本知識を押さえておきましょう。
定時を超えて働くこと
残業を、居残りして働くことだと認識している人は多いでしょう。正確には、「定時を超えて働く時間外労働」を意味します。早く出勤して業務を行う場合も、時間外労働に当てはまるのです。
定時は、会社と労働者それぞれの契約内容によって異なり、会社の就業規則や雇用契約書などに明記されています。
決められた定時を超えて働くことを「所定外労働」といい、例えば9〜17時までが定時の契約である場合、18時まで働いたときの所定外労働時間は1時間です。
法律によって定められた労働時間を超えて働くことを「法定外労働」といい、所定外労働とは区別されています。同じ残業であっても、意味が異なる点を押さえておきましょう。
サービス残業とは
定時で終わらない業務量を割り当てられて大変な思いをしていても、「残業代がもらえるから」と納得している人もいるでしょう。しかし中には、残業代が支払われないサービス残業を強いられるケースもあります。
雇用形態や業種によって例外はあるものの、法定労働時間を超えて働いたときは「割増賃金」が支払われる決まりです。
本来あってはならないことですが、従業員に虚偽の勤務時間を報告させたり、本来もらえるはずの残業代が支払われない状態になったりしている企業も存在します。業績の悪化や、法律への認識不足などが原因で引き起こされることも少なくないようです。
残業何時間から違法なのか
労働時間が法定労働時間内の場合、違法とはいえません。法定労働時間は「1日8時間」「1週間に40時間」と定められています。
法定労働時間を超えて雇用主が従業員を働かせるときは、企業は労働組合との間で、労働基準法36条に基づく「36協定」を締結して、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
労働基準監督署への届け出をしている場合でも時間外労働の上限はあり、「月45時間」「年間360時間」を超えると違法になります。
特別な事情がある際は届け出をすると上限が緩和されますが、それでも時間外労働時間は年間で「720時間以内」「時間外労働と休日労働の合計が月間で100時間未満」などのルールが設けられています。
届け出もなく上限を超える労働時間を強いられているのであれば、企業に罰則が与えられる決まりです。
残業時間が平均を上回る場合の対処法
残業時間の平均を知り、自分のケースと比べてあまりにも差があると感じた人は多いかもしれません。長時間の労働は負担が大きいので、疲れ切ってしまう前に、対処すべきです。残業時間が多過ぎる場合、どんな対処法があるのか見ていきましょう。
原因の特定と業務の効率化
残業しなければならない理由には、さまざまなものがあります。まずは原因を特定することから始めましょう。スムーズな業務を妨げている理由を特定し、改善すれば残業時間を減らせる可能性はあります。
原因を把握するとともに、業務の効率化をするためにできることがないかも検討してみましょう。ほかの人と業務量が変わらないのに自分だけ残業をしているのであれば、やり方が間違っていることもあり得ます。
仕事に必要な道具や資料などを整理整頓するだけでも、作業効率がアップするので、心当たりがある人は試してみましょう。優先順位が高い仕事から手を付けるようにすると、時間を無駄にせずに済みます。
上司に相談
残業の原因によっては、1人では解決が難しいといえます。人手不足や明らかに作業量が多いなどの問題があるときは、上司に相談し仕事の進め方に問題がないか、アドバイスをもらいましょう。
「残業が続いていて、つらい」と訴えたくなるかもしれませんが、感情的になるとうまく現状を伝えられず、業務上の問題を明らかにできない心配があります。
気持ちを抑えて、現在の業務量と仕事を終わらせるまでにかかっている時間などを冷静に報告し、問題点や改善策があれば伝えることが大事です。
状況が改善しなければ転職も視野に
仕事のやり方など、本人の方法が間違っていることが原因ではないと明らかなのに、会社側に改善する動きが見られない場合や、サービス残業を強いられる場合などには、転職も視野に入れることをおすすめします。
無理をし続けて体を壊してしまい、働けなくなってしまうことだけは避けたいものです。現在の職業に強い思い入れがないのであれば、ほとんど残業がない職種に転職してもよいでしょう。
会社のしきたりで残業をしなければならない状況が続いている場合は、会社が変われば状況が改善する可能性は高いといえます。
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残業時間が平均より少ない職種
残業時間が平均よりも多いことが原因で転職するなら、残業が少ない職種を選ぶのがおすすめです。比較的残業が少ない職種をチェックしましょう。
秘書・受付
秘書は、経営陣をサポートする役割を持っています。職場によって仕事内容や残業の程度は異なりますが、特定の部署や秘書室などに配属される「グループ秘書」は、残業が少ない傾向です。
複数の秘書が複数の役員をサポートしたり、複数人の秘書が1人を受け持ったりします。個人秘書は担当する役員のスケジュールに合わせて行動しますが、グループ秘書は仕事を分担できるので、比較的希望の勤務時間に合わせた働き方がしやすいでしょう。
また受付は、施設の営業時間に合わせて働ける特徴があります。退勤時間ぎりぎりに来客対応をするときに残業が発生するケースもありますが、大幅な残業はほぼないと考えてよいでしょう。
事務職
事務職は、書類作成や来客・電話対応などが主な仕事です。銀行や役所に行って手続きをする際も受付時間が決まっているので、残業は発生しづらいといえます。
繁忙期は残業が発生するケースもありますが、予期せず業務量が急激に増えることは少ない傾向です。ただし、平社員や一般職以外は「業務内容が多岐にわたる」「業務量の割り振りが多い」などの理由で残業が多くなる場合もあります。
工場スタッフ
工場のスタッフは、さまざまな製品・部品の加工や生産に関わる作業を担当します。仕事内容は機械のオペレーターやライン作業などで、淡々と作業をするのが好きな人や、ものづくりが好きな人におすすめです。
工場は生産数や機械の稼働時間が明確であるケースが多く、担当する作業も決まっており、残業は発生しづらいといえます。稼働時間が長時間になる場合は交代制で勤務するので、定時を超えて働く機会は少ないでしょう。
残業時間が平均より多くなりやすい職種
残業時間が平均よりも少ない職種がある一方で、多い職種も存在します。プライベートの時間を大切にしたい人や、早く帰らなければならない事情がある人が、残業が多い職種に就くとうまくいきません。どんな職種が残業時間が多いのか見ていきましょう。
建築・土木系エンジニア
設備施工や建築施工の管理は、残業が発生しやすい職種です。災害が多い日本では建築・土木系の仕事の需要が高く、老朽化した建造物やインフラのメンテナンスなど、緊急性が高い仕事である点も残業が多くなりやすい理由だといえます。
誰でも作業できるわけではなく、専門的な資格を持っていないと成り立たない仕事が多く、人手不足に陥りやすい点も残業が多い理由の1つです。
営業職・コンサルタント
営業職・コンサルタントは、顧客の都合や要望に応える仕事である都合上、残業時間が平均よりも長くなりがちです。
営業方法や種類にもよりますが、営業職はノルマをこなさなければならず、顧客の元へ行って仕事をすることも少なくありません。そのため、どうしても勤務時間が長くなってしまいます。
コンサルタントの役割は、企業が抱える課題や解決法を見つけ出し、経営を支えることです。長引く景気の悪化に伴い、コンサルタントを必要とする企業は増えています。
顧客が抱えているさまざまな問題や課題などに対応するため、休日であっても出勤しなければならないケースが多くなっています。1人で複数の企業を担当する場合は、さばき切れないほどの業務量を抱えることも珍しくありません。
残業の少ない働き方を目指そう
どんな仕事でも残業しなければならないことはあり、完全に残業なしというケースはまれです。しかし、残業時間が平均を大きく上回る場合は、体がつらくて続けられない原因になります。
現状、法定労働時間を大幅に上回っており、月45時間以上の時間外労働が当たり前という場合は、違法である可能性も考えてみましょう。
サービス残業が常態化している会社に勤務している人や、業務の効率化に尽力しても改善が見込めない人は転職も視野に入れ、残業の少ない職種に転職するのも1つの方法です。体を壊してしまう前に、対策しましょう。