大手企業とは?メリット・デメリットや転職するために必要なことも

大手企業と一般企業との違いを的確に答えられる人はそれほど多くありません。大手企業に転職したいと思っているなら、明確な違いを知っていた方がよいでしょう。正しい言葉の意味や、大企業に勤めるメリット・デメリットを紹介します。

大手企業とは?

大人数の会議の様子

(出典) photo-ac.com

大手企業は似た意味の言葉が多く、憧れを持っている人でも意味を間違えて覚えている場合があります。転職を考えているなら、正確な意味が分からないと不利です。どのような企業を大手と呼ぶのかチェックしましょう。

業界の中での知名度が高い

大手企業とは、その業界の中でよく知られている企業のことです。従業員数や資本金などに対する、明確な決まりはありません。

大手と省略して使うこともあり「○○業界の最大手」「大手の警備会社」というような使い方をします。

大手企業と大企業と混同されがちですが、大企業もはっきりとした定義があるわけではありません。中小企業よりも資本金や従業員数の規模が大きい企業を大企業というケースが大半です。

大手企業の中に大企業が含まれる場合はありますが、大企業だからといって必ずしも大手企業とは限らないということになります。

経営規模が大きく投資額や生産性が高い

大手企業は、業界内における知名度が高いだけでなく、業界内でのシェア率が高い企業を指します。同種の企業の中でも、特に規模が大きく投資額や生産性が高い企業を大手企業と呼んでいるのです。

数字に関する具体的な決まりはありませんが、業界内でのシェア率がトップクラスだと認識されている企業を大手企業といいます。

例えば、電気機械器具製造業なら、パナソニックや日立製作所、ソニーなどが大手企業と呼べるでしょう。情報通信業なら、NTT、ソフトバンク、KDDIなどが該当します。

準大手企業の意味

準大手企業は、大手企業と中堅企業の中間程度に位置する企業のことです。大手企業以外の、業界内でシェア率が高く有名な企業をイメージすると分かりやすいでしょう。

中堅企業とは、大企業には及ばないものの、従業員数や資本金が中小企業の定義よりも大規模な企業のことです。地方都市などで、地域の中核を担う位置付けである場合が少なくありません。

中小企業の定義は、業種によって該当する条件が異なるものの、サービス業の場合で従業員数が100人以下、資本金・出資の総額が5,000万円以下というように、具体的な数字が決まっています。

上場企業や有名企業との違い

パソコンを操作する男性

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大手企業は大企業だけでなく、上場企業や有名企業とも混同されがちです。間違った認識を持っていると、社会人として恥ずかしい思いをしてしまいます。それぞれの意味の違いを見ていきましょう。

上場企業は株式を公開している企業のこと

大企業や有名企業が、上場企業であるイメージを持っている人もいるでしょう。上場企業は株式を公開しているかどうかで決まるので、会社のシェア率や知名度は関係ありません。

株式が公開されていれば、投資家が証券取引所で株を購入できるので資金を集めやすくなります。しかし、上場するには株式市場ごとに定められている、厳しい条件をクリアする必要があります。

また、株を買い占められれば買収されてしまうリスクもあるのです。株主総会では、株主が自由に発言できるので経営に口出しをされることもあり、企業にとって必ずしもよい部分ばかりとはいえません。

非上場企業は株式を公開していない企業のことで、創業者や社員などが株を保有しているのが一般的です。

有名企業は世間の知名度が高い企業を指す

有名企業は業界でのシェア率に関係なく、消費者が名前をよく知っている企業のことです。従業員数や資本金などの決まりはなく、名前が知られていれば有名企業だと呼べます。

中小企業であっても、有名企業として認知されている例も少なくありません。「地元の有名企業は○○だ」「海外に進出している日本の有名企業」というように使用します。

また、有名企業だからといって必ずしも上場しているわけではなく、自由な経営をしたいという理由で、あえて株式を非公開にしている場合もあるのです。

非公開であれば買収のリスクがなく、株主の意見にも左右されずに済みます。株主に横やりを入れられることなく、スムーズに経営できる点がメリットです。

大手企業のメリット

複数人の会社員

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大手企業に就職するメリットには、さまざまなものがあります。詳しいことはよく知らなくても、働く上で何となくよい要素ばかりだとイメージしている人もいるでしょう。具体的にどのようなメリットがあるのか紹介します。

専門的な仕事ができる

大手企業では専門的な仕事に集中でき、専門性を突き詰められる点がメリットです。従業員が少ない企業だと、仕事をうまく回すために1人で何役もこなさなければならないことがあります。

例えば、経理の仕事を極めたいのに、一般事務や労務なども担当しなければならないケースは珍しくありません。

小さな企業は、人件費を大きく設定できないので専門の部署を立ち上げる余裕がなく、会社の規模に関係なく発生する業務を分担しなければならないのです。

しかし大手企業は、十分な数の従業員を雇い入れられるので、専門外の仕事をしなければならない事態にはほぼなりません。分業化が進んでいることから、自分の専門に特化した仕事ができるのです。

自分がやりたいことだけに集中し、専門的な技術を高めてその道のプロと呼ばれる技術を身に付けられるでしょう。

給与や福利厚生などの待遇が手厚い

給与が高く待遇がよい求人情報を探していたら、大手企業に巡り合ったという人もいるでしょう。大手企業は一般的な企業に比べ、給与が高く福利厚生が充実している傾向です。

待遇面を理由に大事に育てた人材が辞めてしまうと、企業にとっては痛手になります。優秀な人材の流出を防ぐため、従業員への待遇を手厚くしているのです。

家賃補助や資格取得への支援などを受けられる大手企業もあり、待遇面を重視する人にとって魅力的な条件がそろっています。産休や育児休暇などを取得しやすくするための、取り組みを行っている企業も少なくありません。

社会的信用度の高さや安定感

大手企業は業界内で名前を知られており、経営規模も大きいので社会的信用度が高いといえます。簡単には倒産しない安定感が、信用を強固なものにしているのです。

世間からの信用度が高い企業に勤めると、勤務外の生活におけるメリットも大きく、各種ローンを利用する際や、クレジットカードの審査などが通りやすくなります。

また、認知度が低い企業で働くよりも、世間的な注目度が高い企業で働いた方がモチベーションを高く維持でき、世間からの勤め先への信頼感がそのまま仕事へのやりがいにつながるケースも少なくありません。

転職をすることになった際も、大手企業で働いていた経歴が採用担当者にとって魅力的な要素になる場合が多く、有利に働きます。

大手企業のデメリット

書記をしている女性

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大手企業に就職するとよいことばかりのように思えますが、人によってはデメリットだと感じる部分もあります。採用された後で理想との違いに落胆しないように、よくない部分も押さえておきましょう。

自分の意見が通らないことが多い

社風に合わない考えを排除する傾向が強いところは、大手企業のデメリットの1つです。人によっては、自分の意見がなかなか採用されなかったり、否定されたりすることに戸惑う場合があります。

たとえ同じ業界であっても、仕事をする上で重視していることは異なるものです。品質や顧客への還元を大切にする企業もあれば、スピード感を重要だと考える企業もあります。

大手企業だからといって、必ずしも自分の理想や目指す働き方ができるとは限りません。ネームバリューで選ばず、社風が自分にマッチしているかも考えないと後悔することになります。

業務が限定される

大手企業に就職すると専門性が高い仕事ができる代わりに、幅広い業務ができなくなるところをデメリットだと感じる人もいます。

例えば、小規模な企業では経理部が独立しておらず、人事や一般事務も兼ねていることは珍しくありません。しかし大手企業では、経理部の中でもさらに原価計算や連結決算などに分業化されています。

事業規模が大きい大手企業では、部署の中でも業務をさらに限定して行うので、業務全般をこなせるスキルを身に付けることは難しく、業務が単調になりがちな点もデメリットです。

大手企業へ就職するために必要なもの

履歴書とスーツと時計、就活のイメージ

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大手企業に実力を認めてもらい、採用にこぎ付けるのは簡単ではありません。大手企業への転職を目指す人に、必要なものをチェックしましょう。

大手企業でしかかなえられない目標

大手企業は、知名度が高い上に就職するとさまざまなメリットがあるので、求人を出すと多くの応募者が集まります。

即戦力となるスキルがあれば採用される可能性が高いですが、選考基準は非常に厳しいと考えるべきです。スキルだけでなく、その企業でしかかなえられない目標を明確に持っているかも重要となります。

採用担当者を納得させられるような志望動機やキャリアプランがないと、採用されるのは困難です。募集人数を大幅に超えて応募者が集まることも珍しくなく、狭き門だといえるでしょう。

中小企業での十分な経験

中途採用の場合、中小企業で十分な経験を積んでいることが強みとなります。大手企業が相手だったとしても、専門性が高いスキルを習得すれば即戦力としてアピールできるのです。

有名大学を卒業した高学歴の人であっても、大手企業への就職を諦めなければならないケースは少なくありません。そもそも、募集要項に掲載されている条件が、通常の企業よりも厳しく設定されている場合が一般的です。

並大抵のスキルでは、条件を満たすことは難しいといえます。企業によっては、マネジメントの経験や語学力などを求められることもあるでしょう。

大量募集を見逃さない

募集人数が多い方が、採用される確率がアップします。大手企業は社員に求めるレベルが高く、付いていけずに途中で辞める人も多いのです。

また、新規事業の立ち上げや事業拡大などで、大量募集するタイミングを見逃さないことも重要となります。

頻繁に社員を募集するよりも、一度に多くの人材を確保してから育成した方が、新人教育をまとめて行うことができて効率がよいので、定期的に大量募集をする大手企業は少なくありません。チャンスを見逃さないように、目を光らせておきましょう。

大手企業を目指すなら経験を積みスキルを磨こう

パソコンを前に勉強する手元

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大手企業は、似た言葉が多く混乱しがちですが、業界内での知名度が高く規模が大きな企業を指します。正しい意味を押さえておかないと、面接で業界の動向などを答える際に誤った回答をしてしまいかねないので、しっかりと覚えましょう。

大手企業では専門性が高い仕事に取り組むことができ、給与や待遇がよいなどメリットが豊富です。一方で、社風に合わないと理想とのギャップに苦しんだり、業務内容が単調になったりといったデメリットもあります。

大手企業への転職は簡単ではありませんが、十分な経験を積んで特別なスキルを身に付ければ夢ではありません。スキルを高める努力を続けながら、チャンスを見逃さないようにしましょう。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー