公務員から民間企業への転職には、高い壁があると感じるかもしれません。確かに厳しい側面もありますが、ポイントを押さえることで転職は可能です。おすすめの転職先のほか、公務員からの転職のメリットやデメリットも確認しましょう。
公務員から民間企業に転職するメリット
公務員から民間企業に転職したいと考えているのは、現状を改善したいからではないでしょうか。公務員として働いている人が民間企業に転職することのメリットは、2つあります。
仕事の幅が広がる
公務員では配属や異動の希望提出は形式的な場合が多く、やりたい仕事に就ける可能性は低くなる傾向があります。
一方で民間企業では、社員のキャリアを踏まえた上で上司や人事担当者と面談を行い、配属の希望を伝えられます。民間企業に転職することで、やりたい仕事ができる可能性は高くなるでしょう。
公務員は個人が担当する業務の範囲が限られている点に加えて、関係者を平等に扱う必要があるため裁量の範囲が狭くなってしまいます。
民間企業では成果を上げることが優先されるのが一般的なため、実力次第では裁量の大きな仕事を任せられるケースが増えると想定されます。
やりたい仕事に取り組み、裁量が大きく魅力的な案件を取り扱えれば、仕事にやりがいを感じることにもつながるでしょう。
年収アップを目指せる
公務員は決められた作業を正確にこなすことが求められる場合が多いのに対して、民間企業では収益アップに貢献するために、成果を上げることが評価されます。
特にベンチャー企業においては、成果主義の社風が強い傾向にあります。成果主義の民間企業では、年齢に関係なく十分な成果を上げることで年収アップが可能です。
民間企業の中にも、年功序列の社風が根強く残っている企業も見受けられます。転職先を探すときは、社風と評価制度をきちんと確認することが欠かせません。自分に合った転職先を見つけるには、スタンバイを利用するのがおすすめです。
公務員から民間企業に転職するデメリット
公務員から民間企業に転職すれば、必ずしも状況が好転するわけではありません。民間企業に転職した場合に直面する可能性の高い問題を紹介します。
転勤する可能性がある
公務員は勤務エリアが限られているのが一般的なため、遠方に転勤するケースは少ないといえます。民間企業に転職すると、公務員と比べて遠くへの転勤を迫られる可能性があります。
全国展開している企業ではエリアの縛りなく転勤があるほか、海外にも支社がある場合は海外勤務になるケースもあるでしょう。転勤の頻度が多くなり、さまざまな地域を飛び回ると、環境の変化に対応できず体調を崩す恐れがあります。
福利厚生が手薄になる可能性がある
公務員として働いていると、景気に関係なく比較的安定して福利厚生が提供されます。民間企業に転職すると、安定した福利厚生を享受できなくなる可能性があります。
民間企業では家賃補助のない企業も多く、福利厚生が充実していても、景気に左右されて待遇が変わる可能性もあるのです。さらに、収入が上がっても、福利厚生も考慮した場合には使えるお金が減っているケースも見受けられます。
実力がないと昇給が難しい
民間企業では実力主義の傾向が強いため、確かに実力次第では年収アップも夢ではありません。しかし十分な実力が伴っていないと成果を上げることは難しく、むしろ年収が下がってしまう可能性もあります。
民間企業で取り組む業務は、公務員のものとは大きく異なります。スキル不足で、うまく立ち回れるようになるまでには時間もかかるでしょう。民間企業に転職したことで、将来的にもらえる年金の額が減る可能性がある点も、覚悟しておく必要があります。
雇用が安定しない
民間企業では、業績が優れないと従業員を雇用し続けるのが難しくなります。経営状況によっては、従業員をリストラしなければならない状況に追い込まれる可能性も考えられます。
公務員と比べて雇用が安定しないことから、社会的信用が低下するリスクもあります。住宅や自動車の購入時にローンを組めなくなる恐れもあるので、購入の予定がある人は注意が必要です。
公務員から民間企業への転職が厳しい理由
公務員から民間企業に転職することで、恩恵を受けられる可能性もありますが、実際にはデメリットが際立ってしまうことも少なくありません。民間企業への転職がうまくいかないケースが見られる理由を解説します。
評価基準が異なるから
公務員と民間企業では評価基準が異なるため、転職後にうまくなじめず挫折するケースが見られます。公務員は公共性の高い事業の推進が目的ですが、民間企業では利益を上げることが第一の目的です。
目的が異なるため、評価基準も異なります。転職したばかりの頃はビジネス思考が身に付いていない状態ことから、果を求める姿勢や生産性を向上する意欲が足りないと評価され、昇給につなげるのが困難な日々が続く可能性が考えられます。
生かせるスキルが少ないから
目的や評価基準が異なることから、業務をこなすのに必要なスキルも同じではありません。一般的なビジネスパーソンが身に付けているスキルを十分に会得できていない点も、公務員から民間企業への転職のハードルが高くなる原因の1つです。
民間企業で働いていると、自然とパソコンスキルやプレゼンテーションスキルのほか、必要に応じて営業スキルやマーケティングスキルが身に付いていきます。質の高いサービスを提供するために、業界の最先端の知識に触れる機会も多くなります。
公務員から民間企業に転職した場合、基本的なビジネスマナーやスキルを身に付けることから始める必要があるため、どうしてもスタートダッシュが遅れてしまいます。
民間企業への年代別転職成功ポイント
公務員から民間企業への転職を成功させるには、ポイントを押さえて適切なアピールを心掛けることが欠かせません。アピールするポイントは年代によって異なります。20代・30代・40代のそれぞれの年代における成功のポイントを解説します。
20代は熱意を示す
20代はまだ若いため、将来性を見込んで採用する企業が多く、まだまだチャンスがあります。公務員からの転職でも、別の民間企業からの転職を目指しているライバルと、区別される心配もありません。
特に第二新卒の採用を行っている企業が狙い目です。スキルや能力、実績があるに越したことはありませんが、熱意を示すことが重要です。応募先の企業への入社意欲を示し、入社後にどうやって会社に貢献するかアピールしましょう。
30代は調整能力をアピールする
30代まで公務員として働いていると、公務員の働き方になじんでいる人だと判断され、20代と比べて転職のハードルは高くなります。転職に成功するためには、公務員時代に培った能力をうまくアピールすることが重要です。
公務員として働いた経験のうち、30代でのアピールに適した経験は調整能力です。人材や部署間の調整能力は、公務員の方が優れているケースも多く見られます。調整能力の高さが分かる経験を積極的に伝えることを意識しましょう。
30代での転職は、公務員の仕事で磨いたスキル・能力を生かせる企業を狙うと、スムーズに採用までたどり着きやすいでしょう。特に行政相手の事業を行っている企業を狙うのがおすすめといえます。
40代はマネジメント経験をアピールする
40代では十分な能力がないと、転職が難航しがちです。40代では入社後に管理職に就くケースが一般的なため、マネジメント経験をアピールすることが大切です。
公務員は高い成果を求めるのが目的ではない仕事であるため、部下のモチベーションを上げるのは至難の業といえます。公務員として部下のモチベーションアップに成功した経験を示すと好印象につながるでしょう。
スキル・能力に欠けていると、転職できたとしても周囲にうまくなじめず、非正規雇用になる恐れもあります。覚悟を持って転職活動を行うことが必要です。
公務員におすすめの転職先
公務員が転職するのはどうしてもハードルが高くなりがちですがが、公務員におすすめの転職先もあります。公務員の転職先としておすすめの転職先を3つ紹介します。
団体職員や特殊会社
民間企業に転職したいけれど、利益を追求する企業のあり方になじめるか不安な場合は、団体職員や特殊会社への転職だと、ギャップがそれほど大きくありません。
団体職員とは独立行政法人や国公立大学法人、NPO法人などで働く職員のことです。これらの団体は公務員と同様に、利益の追求を目的としないことから、なじみやすい環境といえるでしょう。
特殊会社とはもともと国営企業だったものが、民営化して現在は民間企業になっている企業のことをいいます。例えばNTTやJR、日本政策金融公庫などが挙げられます。
利益を最大化するために活動しているとはいえ、最初から民間企業として始まった企業よりも、公務員に近い部分が残っているのも特徴です。
資格が生かせる専門職
資格を持っていて専門職として公務員の業務に取り組んでいる場合は、資格を生かして転職活動を行うことが重要です。資格を持っていることで、専門職に転職するハードルが下がります。
例えば法務局員なら司法書士や行政書士、税務署職員なら税理士など士業に転職しやすく、教師なら予備校講師、警察官なら警備会社社員への転職がおすすめです。
資格を持っていたり専門的な業務に従事していたりした経験があると、転職のハードルが低くなる点に加えて、将来的な収入アップにつながる可能性も期待できます。
公務員
民間企業へ転職してリスクを負うことを避ける方法として、別の形で公務員として再就職する選択肢もあります。公務員として働いてきた経験を生かせるため、民間企業に転職するよりもなじみやすいでしょう。
公務員に転職する方法には別の自治体に応募する方法と、別の職種の公務員を目指して受験する方法があります。転職時は民間経験者採用枠、あるいは大卒程度一般採用枠に応募します。
年齢制限が設けられているケースもあるため、応募時は詳細をよく確認することが大切です。
公務員から転職して新しい働き方を
公務員から民間企業に転職するには、大きなハードルを乗り越える必要があります。公務員と民間企業では評価基準が異なるほか、求められるスキル・能力が異なるため、転職を成功させるのが難しい実情があるのは確かです。
転職後は仕事の裁量権が大きくなり、年収が上がる可能性がありますが、成果主義であることと雇用が安定しないことからメリットばかりではありません。転勤が多くなって環境に慣れるのが大変なことに加えて、福利厚生が手薄になる恐れもあります。
民間企業への転職を目指す場合は、年代別に適切なアピールを行うことが重要です。20代では熱意、30代では調整能力、40代ではマネジメント能力を示すといいでしょう。
転職を成功させるには、公務員として働いていた経験を生かせる団体職員や特殊会社、専門職にアプローチするのがおすすめです。公務員からの転職で新しい働きをスタートし、キャリアアップを目指しましょう。