「子どもが成長したから本格的に働きたい」「パートから正社員へキャリアアップしたい」といった理由で、転職を考える40代の女性も多いでしょう。40代女性の転職事情は、実際どうなっているのでしょうか?成功につなげるポイントとともに解説します。
40代女性の転職事情
転職を考えているなら、同じ年代・性別の転職者のデータを見てみると、実態をつかみやすくなります。総務省のデータから、40代の女性の転職事情を大まかに把握しておきましょう。
30代までと比べれば転職者数が少ない
子どもの成長や自身のキャリアアップなどを理由に、転職を考える40代の女性は多いでしょう。一方で、現実には40代の女性は転職しにくい、難しいという認識も広まっています。
総務省が2023年に発表した「労働力調査」を見ると、2022年に転職した人35~44歳の女性は56万人、45~54歳の女性は54万人となっています。
25〜34歳の女性(75万人)よりは少なく、年齢が上がるにつれて転職者は減少する傾向があるものの、40代の女性も転職意欲は旺盛と言えます。ただ、30代までの女性の中には、まだライフイベントが落ち着かず転職に踏み切る人も多くいます。年代ごとの背景が違うので、数字だけを見て一概に「○○歳からは転職しにくい」とはいえません
転職者の比率をはじめとした各種データは、あくまでも目安として大まかな傾向を知るために活用しましょう。
参考:総務省「労働力調査(詳細集計) 2022年(令和4年)1~3月期平均結果 第1-2表 年齢階級別転職者数及び転職者比率(エクセル)」
40代女性が転職しにくいといわれる理由
40代女性の転職が難しいといわれる原因として、何が挙げられるのでしょうか?求人数・一部の企業が持つイメージという2つの理由を、それぞれ詳しく見ていきましょう。
若い世代に比べて求人が少ない
40代が応募できる求人数が30代以下の若い世代に比べて少ないことが、理由の1つです。これは女性に限った話ではありません。
厚生労働省がまとめた関東圏の有効求人倍率(一般常用・2022年3月)を見ると、35歳以上の有効求人倍率は1.10倍と、34歳以下(1.43倍)に比べて低くなっています。45歳以上では0.75倍とさらに低く、求職者が求人を上回っているのが現状です。
原則として、求人に年齢制限を設けることは禁止されています。しかし、長期勤続によるキャリア形成をはじめとした例外事由があれば、求人に年齢制限を設けてもよい決まりです。このため、年齢が上がるにつれて有効求人倍率は下がります。
ただ、2025年3月31日までは就職氷河期世代に限った募集も認められており、この措置がない期間に比べると40代の求人が増える可能性もあるでしょう。
参考:
関東労働市場圏有効求人・有効求職 年齢別バランスシート(一般常用)|厚生労働省
その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?|厚生労働省
就職氷河期世代の方々への支援のご案内|厚生労働省
厚生労働省「就職氷河期世代を対象とする募集・採用について、特例措置の期限が令和6年度末まで延長となります。」 | 全国民営職業紹介事業協会
扱いづらいという偏見を持つ企業も
企業によっては、転職希望の40代女性に対して偏見を持っている場合もあります。特にフルタイムで仕事をしていない期間が長いと、採用しても即戦力にはならないのではないかと思われることも少なくありません。
40代が正社員に転職するなら、性別を問わず基本的に即戦力となるようなスキルや経験が求められます。パートをはじめとした非正規雇用から正社員を目指す場合、資格や証明できるスキルがないと、即戦力のある人材として評価されるのは難しいでしょう。
40代になると親の介護を視野に入れる人が多くなるため、家庭との両立が難しいのではないかというイメージを持たれることも少なくありません。
また、正社員として働いていたキャリアをライフイベントで中断した女性だと、過去の職歴から逆に扱いづらいという偏見を持つ企業も残念ながらあるようです。
面接では、転職後のキャリアプランや経歴以外の強みについて、しっかりと伝えておいた方がよいでしょう。
40代女性の転職を成功させるポイント
転職を成功させるには、企業が自分の年代に求めることを理解した転職活動が必要です。40代女性の転職に必要な4つのポイントについて、具体的に解説します。
経験や資格を生かした職種を選ぶ
即戦力となる人材として評価されるには、経験や持っている資格を生かせる職種を選ぶことがポイントです。現職と同じ業界に転職する方が、実務経験を生かせるとして採用される可能性が高くなります。
正社員としての職歴がなくても、派遣社員として複数の企業で同じ職種の実務経験がある場合は、1社で働き続けている人より幅広い知識や経験があると評価されるかもしれません。
逆に未経験の職種・業界への転職は難しいケースが多いでしょう。どうしても飛び込みたい分野がある場合は、関連する資格を取っておいた方が有利になります。
転職する際に譲れない条件を決める
雇用形態や収入など、どの条件もかなえようとすると転職を成功させることは困難になってしまいます。最低限これだけは譲れないというポイントを絞って、転職先を探しましょう。
結婚している場合は、夫の扶養範囲内で働くかフルタイムで働くかによって、選ぶべき雇用形態も違ってきます。フルタイムでも、平日勤務のみ・土日出勤ありといった働き方を考慮しつつ、プライベートとの両立を考えた仕事選びも大切です。
譲れない条件を軸に仕事を探し、他の条件については多少希望と合わなくても妥協する意識が必要になるでしょう。
自分の市場価値を把握する
40代で転職を成功させるには、転職市場での自分の価値を知っておくことも大切です。ライフイベントで第一線を離れた人なら、過去に輝かしい経歴があったとしても、当時の企業内でのみ通用していたというケースも少なくありません。
転職先の企業でどのように活躍できるかをしっかりアピールするためには、これまでの経験やスキルを棚卸しして、現在の市場価値を客観的に把握しておきましょう。
希望に近い仕事の求人を見て、どのような人材を求めているかチェックするのがおすすめです。自分のスキル・経歴と照らし合わせれば、設定した希望条件が適切なのかも判断しやすくなります。
求人サイトをうまく活用する
40代女性の転職活動には、求人サイトやアプリをフル活用して積極的に動きましょう。求人サイトには転職者向けの求人情報も豊富に掲載されているため、自分の希望をかなえられる企業を見つけやすいのがメリットです。
好きな時間に仕事を探せるのも、自分で応募する求人サイト・アプリがおすすめな理由として挙げられます。求人情報を見比べながら、納得がいくまでじっくりと仕事を探せるでしょう。
スタンバイなら、条件を絞った仕事探しがアプリで手軽にできます。Web上の求人を効率的に検索できるため、忙しい人にもおすすめです。
40代女性が転職するときの注意点
転職活動を積極的に進めていても、なかなか採用に至らないこともあります。40代の女性が転職を成功につなげるには、何に注意すればよいのでしょうか?気を付けたいポイントを3つ紹介します。
スキルに自信がない人は根気が必要
特に家庭の都合でブランク期間・フルタイムで働けない期間ができやすい女性の場合、40代で即戦力になれる経験がないと転職が難しくなります。
ただ、特定の職種で長い経験がなくスキルや資格に自信がない人もいるはずです。どうしてもアピールポイントが見つからないなら、職種・業種未経験を受け付けている求人を探しましょう。
介護・営業・ドライバーなど人手が不足しがちな業界では、未経験OKの求人が多い傾向にあります。
経験やスキルではなく人柄・意欲などを重視する会社も多くあります。応募する母数を増やしつつ、採用に至らなくてもあきらめずに応募する根気・行動力も必要です。
謙虚さを忘れない
40代になると、転職先の採用担当者が年下というケースも多くなります。現職や過去の職場で何かしらの役職に就いていた人も、転職活動で経歴をアピールしすぎたり、プライドを高く持ちすぎたりすることは禁物です。
ただし、あまりに謙遜しすぎると、能力が足りないと受け取られる可能性があります。謙虚な姿勢を見せつつ、事実を伝えることが大切です。
会社都合退職だった場合も、前職の文句や愚痴を言ったり必要以上にへりくだったりするのは避けましょう。「事業縮小に伴って部長を任されていた○○部が閉鎖することになり、退職する運びとました」と、事実を客観的に伝えるだけで問題ありません。
転職先が決まるまでは現職を辞めない
40代女性の転職活動は求人数の減少もあり、長期戦になるケースが少なくありません。転職先が決まる前に会社を退職すると、次の就職先が決まるまで無収入となり、生活に不安や焦りを感じてしまいます。
現在の仕事に不満があったとしても、在職中に転職活動を始め、転職先が決まってから現職を辞めるのがおすすめです。
在職中に転職活動するときは、有給休暇や午前休・午後休をうまく活用して、面接の時間に充てましょう。後任への引継ぎをしっかり済ませておくことも、社会人としてのマナーです。
また、転職活動には交通費や面接用の服装など、何かとお金がかかります。転職活動が長期化することも考えて、どの程度お金が必要になるか事前に計算しておくと安心でしょう。
40代の女性は経験やスキルを考慮した転職を
40代は、子育てが一段落したり新たなキャリアへの挑戦を考え始めたりする女性が多い年齢です。同じ40代女性でも、それまでのライフイベントやキャリアによって、転職活動への取り組み方も変わってきます。
どのような場合でも大切なのは、自分の経験やスキルを考慮して転職先を選ぶことです。現職までに得た経験やスキル・資格を整理して、応募する求人を選びましょう。優先順位をしっかり決めておけば、よりスムーズに転職活動が進みます。
官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務を経て、キャリアカウンセラーとして独立。こころとキャリアの専門家として、女性のキャリアデザイン、ダイバーシティ、女性の働き方を中心に幅広く活動中。今までに20000人以上をカウンセリング。
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