転職に年齢制限はある?30代以上の転職を成功に導くポイントとは

「30代以上になると転職が難しくなる」という話を聞いたことがある人も多いかもしれません。実際、転職に有利な年齢はあるのでしょうか?転職と年齢の関係について詳しく解説します。年代で変わる、転職を成功させるためのポイントも参考にしましょう。

転職に年齢制限はある?

履歴書と封筒

(出典) photo-ac.com

転職を進めるに当たって、年齢制限はあるのでしょうか。一般的には、35歳が転職の限界ともいわれています。年齢ごとの転職率や「35歳の壁」について詳しく見ていきましょう。

年齢が上がるほど転職率は低くなる

一般的に年齢が高くなるほど転職率は低くなるといわれています。

総務省が行っている労働力調査によると、2017〜2021年の過去5年間で転職した人のうち、最も多かった年代は15~24歳で、5年間の平均は約11%でした。次いで25~34歳の約7%、35~44歳の約4.5%という順になっています。

2021年だけのデータを見ても、15~34歳までの転職者比率の合計は35~54歳までの2倍ほどと、34歳以下で転職している人の数が35歳以上に比べて多いことが分かるでしょう。

原則として、求人に年齢制限は設けることは認められていません。しかし、長期的にキャリアを形成してもらうためといった理由があれば、若手に絞って募集することも可能です。応募する求人数は年齢とともに少なくなれば、転職率もやはり下がります。

参考:
労働力調査 長期時系列データ 表10(3)年齢階級(10歳階級)別転職者数及び転職者比率|総務省統計局
募集・採用における年齢制限禁止について |厚生労働省

「35歳の壁」が正しいとは言い切れない

調査結果の数値を見れば、確かに35歳からは転職しにくいように思えます。以前は転職するなら35歳までが限界ではないかと考えられ、「35歳の壁」という言葉も聞かれました。

しかし20代の労働人口が減ってきている昨今、35歳以上の経験豊富な人材に着目する企業も増えており、「35歳の壁」という考え方は必ずしも当てはまらなくなっています。

スキルや経験を身に付けた35歳以上のミドル層は、即戦力として雇いたい企業も多い年代です。40代や50代で転職に成功している人の数も、増加している傾向にあります。

30代以上の転職事情

面接を受ける女性と男性の面接官

(出典) photo-ac.com

転職の成功に必ずしも年齢だけが関係するわけではありませんが、20代と30代以上で同じような転職活動をしても、採用をつかみ取るのは困難です。年代別の転職の特徴を押さえておきましょう。

30代は相応のスキルや経験が求められる

30代になると、20代の転職と違ってポテンシャルの高さだけで採用されることが少なくなります。30代を中途採用する企業では即戦力があることを前提として募集しているため、年齢相応のスキルや経験が求められ、採用基準も高くなるでしょう。

未経験の業種・職種への転職は難しくなるので、経験がある・または経験が近い仕事への転職が一般的です。

どうしても新しい仕事への転職を希望するなら、異なる業界でも職種は変えない・職種を転向しても経験のある業界を選ぶなと、スキルや資格が生かせる方法を考えるとよいでしょう。

40代にはマネジメント力や専門性が必要

40代は部下の育成やプロジェクトの管理に携わる年齢のため、マネジメント経験やリーダーシップ・業務に関する専門的な知識が求められます。

これらは長年の経験によって得られるため、若い年代にはない、40代だからこそ持てる強みともいえるでしょう。ただし、求められるようなスキルや経験が少ない40代の転職は、やはり難しくなる可能性があります。

その場合は、未経験者でも採用されることが多い業界・職種への転職や、契約社員や派遣社員など正社員以外の雇用形態も視野に入れましょう。柔軟性のある転職活動が必要になってきます。

50代は転職活動が長期化しやすい

50代の転職の場合、そもそも求人数が少なく転職活動が長期化しやすい傾向にあります。原則として求人に年齢制限は設けられないとはいえ、長期キャリア形成のために若い年代だけを募集している企業も少なくありません。

また、20代や30代のような若い年代に比べて給与が高く、採用にコストがかかるのも転職が難航しやすい理由の1つといえるでしょう。採用しても定年までの期間が短いといった、年齢に起因する理由で不採用になることも少なくありません。

現職である程度高いポジションを得ていた人は、転職先にも同様の待遇を期待している可能性もあります。企業側としても、50代の採用に慎重にならざるを得ない状況があるのです。

40代よりさらに、企業側が求める人物像の把握や、柔軟な転職活動が必要になるでしょう。

30代の転職を成功させるポイント

履歴書に記入する手元

(出典) photo-ac.com

30代の転職がキャリアアップや別業種へのチャレンジなど、人生の転機と重なる人も多いかもしれません。30代の転職で必要なポイントを2つ紹介します。

長期的な目で転職の目的を考える

30代で転職を考えるなら、何のために転職するのか、目的をはっきり決めておきましょう。30代の転職は、今後のキャリアの方向性を決める重要なターニングポイントでもあります。

転職したい理由を整理して、本当に転職が必要なのかどうかから考えてみましょう。今の職場に不満で状況をただ変えたいという理由では、転職しても同じ不満にぶつかる可能性があります。

自分のキャリアをどうステップアップさせていきたいか、長期的に考えることが大切です。ライフイベントも考慮した上で、自身のキャリアプランをしっかり設定しましょう。

年収だけで判断しない

収入アップを目的に転職を考える30代も少なくないでしょう。待遇アップを狙うのは悪いことではありませんが、年収だけにこだわりすぎると転職先が見つかりにくくなる可能性もあります。

たとえ年収が多くても、業務内容がハードだったり残業が多かったりすれば、結果的に収入に見合った業務量を超えてしまうこともあるでしょう。

目先の年収だけにとらわれず、仕事のやりがいや働きやすさなども考慮して、キャリアを積みながら長く働き続けられる仕事を見つけることが転職成功のポイントです。

求人検索エンジンのスタンバイには、30代以上を対象とした求人も数多く掲載されています。希望に合った転職先を効率的に探したい人は、ぜひチェックしてみましょう。

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40代の転職を成功させるポイント

パソコンの前で電話をかける男性

(出典) photo-ac.com

40代で転職する場合、30代までとよりもさらに経験が重視される傾向があります。反面、現在の待遇をそのまま転職先に求めてもうまくいかないケースがあるでしょう。

キャリアを生かした転職に成功するためのポイントを紹介します。

条件にこだわりすぎない

40代で転職を成功させるには、条件にこだわりを持ちすぎないことが重要です。40代になるとマネージャーをはじめ管理職になり、それなりに高い報酬をもらっている人も多いかもしれません。

しかし、転職先でも同じような待遇にこだわりすぎると、選択肢を狭めることになります。

企業によってはマネージャーや管理職の求人を出しているところもあります。十分なマネジメントスキルがある人は、そのような企業に的を絞って応募してみるのも1つの方法です。

ただし、給与面でも現職と同様かそれ以上の待遇を求めると、希望通りの仕事を見つけにくくなるでしょう。

自分のスキルや経験を客観的に把握する

40代の転職では、自らのスキル・経験が転職市場でどの程度の価値があるのか、客観的に把握しておきましょう。それなりの実務経験があり専門性も身に付いている年齢とはいえ、現在の職場でしか通用しないケースもあります。

多くの業務を経験してきたために何が最大の強みなのか明確に伝わらず、せっかくのチャンスをつかみ損ねてしまうケースもあるでしょう。

転職先の企業で即戦力となれることを効果的にアピールするためにも、まずスキルや経験の棚卸しをして、自身の強みをしっかり伝えられるようにしておくことが大切です。

50代の転職を成功させるポイント

バインダーの資料に記入する男性

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50代の転職にはスキル・経験はもちろん、柔軟に条件を譲歩する姿勢や謙虚さも必要になります。長期化しがちな転職活動を、できるだけスムーズに進めるためのポイントを押さえておきましょう。

年収が下がるリスクを恐れない

50代の転職では、それまでより年収が下がってしまうケースも少なくないでしょう。しかし年収をキープすることにこだわりすぎると内定が出にくくなり、転職活動の長期化にもつながります。

たとえ転職直後は年収が下がっても、勤務年数とともに元のレベルまで戻る可能性も大きいので、年収だけにこだわらず選択肢を増やすことが大切です。

現職と比較してかなりダウンしてしまう場合は、家族ともよく話し合って今後の生活プランを考えながら決めるとよいでしょう。どうしても年収を下げられないなら、キープできる職場を地道に探すか、現職を継続することになります。

謙虚で柔軟な姿勢を忘れずに

50代になると、採用担当者も含めてほとんどの従業員が年下の可能性もあります。面接で尊大な態度を取ったりプライドが高いと思われるような発言をしたりすると、扱いにくい人材という印象を与えてしまい、採用への道が遠のきかねません。

必要以上にへりくだってもスキル不足の印象を与えてしまいますが、謙虚で誠実な姿勢は必要です。経験や持っている資格・実績といった事実をベースに、応募先の企業が自分を雇うメリットを丁寧に伝えましょう。

自身で把握している市場価値と転職先からの評価にギャップがある場合、柔軟さが強みとなります。すぐに受け入れて軌道修正できるため、結果的に転職活動を有利に進めやすくなるでしょう。

転職で大切なのは年齢だけではない

履歴書とスーツで転職のイメージ

(出典) photo-ac.com

年齢によって転職の事情は変わります。年を取るにつれて転職の難易度も上がってくるのは事実ですが、大切なのは年齢だけでなく、企業が求める人物像に当てはまるかどうかです。

例えば、マネジメント経験を持つ人材を求めている企業に、まだキャリアの浅い20代が応募しても採用されることはまれでしょう。あえて40代や50代を募集している企業も多く見られます。

キャリアアップやライフステージの変化に対応するために必要だと感じたら、次のステップに踏み出すために転職を考えてみるのもおすすめです。

小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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人材紹介の仕事がよくわかる本
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