転職後の住民税はどう支払う?支払い方法と注意点をパターン別で紹介

住民税の支払い方法には「普通徴収」と「特別徴収」があり、会社員は原則、特別徴収として毎月の給与から住民税額が天引きされています。退職してから新しい仕事に就くまでの住民税の支払い方や注意点をチェックして、転職活動に役立てましょう。

転職先が決定したら住民税はどう支払う?

住民税を収める

(出典) photo-ac.com

現在の職場を退職してから住民税を支払う方法は、転職先が決まっているか否かによって異なります。まずは転職先が決まっている場合における、住民税の支払い方法を確認しましょう。

手続きをして「特別徴収」を継続

退職する時点で転職先が決定している場合には、「給与所得者異動届出書」に記載している特別徴収義務者を転職先に変更すると、特別徴収を継続することが可能です。

退職する勤務先に依頼し、徴収済と未徴収の住民税額や、1月1日から退職日までの給与・賞与の合計などの必要事項を記入してもらい、転職先に送付します。

「転勤(転職)等による特別徴収届出書」欄を転職先の担当者が記入し、退職日の翌月10日までに市区町村に提出すると手続きは完了です。基本的には会社間でやり取りが進むため、自分が何か手続きをする必要はありません。

なお、届出書の名称・様式は自治体によって違うため、住んでいる自治体のホームページを確認しておくとよいでしょう。

一度「普通徴収」に切り替える方法も

特別徴収を継続するためには、前の勤務先と新しい勤務先の間でのやり取りが必要です。事情があって転職先を知られたくない場合には、あえて普通徴収で住民税を支払う方法もあります。

特別徴収を継続しなければ普通徴収に切り替わるため、手続きは不要です。普通徴収になると、自治体から自宅に届く納付書を使って、一括か年4回(6月・8月・10月・翌年1月)のタイミングで自主的に住民税を納める必要があります。

特別徴収では、6月から翌年5月の12回に分けて、住民税額が給与から天引きされます。転職してすぐに手続きしたとしても、新しい職場で特別徴収がスタートするのは6月の給与分からです。

転職先が見つからない場合は退職時期に注意

スケジュール帳とペン

(出典) photo-ac.com

住民税のサイクルは6月から翌年5月までの1年間のため、転職先が見つからないまま退職する場合には、退職時期に注意しましょう。退職時期が1~5月の場合と6~12月の場合で異なる、住民税の徴収方法を紹介します。

1~5月の退職は「一括徴収」が原則

1月1日から5月31日までの間に退職する場合は、退職月から5月分までの住民税をまとめて天引きする「一括徴収」が原則です。

住民税額が高くて給与では支払いきれない場合には、退職金から徴収されます。退職金でも足りないなら、普通徴収により自分で不足分を納付する必要がある点も覚えておきましょう。

6~12月の退職は「普通徴収」に変更

一方6月1日から12月31日の期間に退職すると、給与から天引きされるのは、退職した月の住民税だけです。

例えば7月中に退職した場合には、7月分の住民税が給与から天引きされ、8月から翌年5月までの住民税は普通徴収で支払う必要があります。

手続きは会社が行うので、自治体から届く納付書を使って残りの住民税を支払うようにしましょう。

なお、希望すれば退職月の給与から残りの住民税を一括徴収してもらうことも可能なので、金銭的に余裕がある場合にはまとめて支払うのも1つの方法です。

転職に役立つ住民税の豆知識

電卓を持っている男性

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転職を希望しているけれど、住民税の知識に詳しくない人もいるのではないでしょうか?転職後に困らないためにも、住民税の仕組みや支払い方法などをチェックしておきましょう。

住民税の所得割額は前年の収入で決まる

住民税には、収入に応じて決まる「所得割額」と、金額が一定の「均等割額」があります。地方税に分類される住民税は、市区町村を通して都道府県にも納付されています。

収入に左右されない均等割額に対し、所得割の金額は前年の収入に応じて決まるのが特徴です。

そのため、転職前の収入が高い場合には、たとえ転職して収入が下がったり無職になったりしたとしても、高額な住民税が請求されます。

転職する前には、翌年の住民税に備えて、ある程度まとまったお金を用意しておくと安心でしょう。

普通徴収はコンビニ払いにも対応

普通徴収に切り替わると自治体から送られてくる納付書は、支払期限内であればコンビニでの支払いが可能です。納付書に、コンビニ払い専用のバーコードが記載されている自治体もあります。

コンビニで住民税を支払う際には現金払いが基本で、クレジットカードでの支払いはできないので注意が必要です。

ただし、クレジットカードや電子マネーで普通徴収の住民税を支払える地域もあるので、住んでいる自治体のホームページで普通徴収の支払い方法をチェックしましょう。

分割納付・猶予が認められる場合も

経済的な事情で住民税の支払いが難しい場合には、役所に相談するのがおすすめです。役所に事情を説明すると、無理のない金額での分割納付を認めてもらえたり、支払いを猶予してもらえたりするケースもあります。

住民税の支払いが難しいからといって、連絡をしないで未納を続けるのはNGです。支払期限を過ぎても未納のままでいると、住民税とは別に延滞金が発生する場合があります。

住民税の納付が困難な場合には、支払期限内に連絡をして分割納付や支払いの猶予について誠実に相談しましょう。

転職前に住民税の支払い方法を確認しよう

ファイルを広げる男性

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会社員の場合、住民税は特別徴収として毎月の給与から天引きされています。前の職場を退職した月の翌月10日までに継続の手続きをすると、新しい職場の給与から住民税の特別徴収を受けることが可能です。

手続きをしない場合には普通徴収に切り替わるため、転職先で改めて特別徴収の手続きをしたとしても、翌年5月までは納付書を使って自分で支払う必要があります。

住民税は5月から翌年6月までをサイクルとしているため、退職する時期によって住民税の徴収方法が異なります。さらに住民税の所得割額は前年の収入によって決まるので、住民税の請求に備えて貯金をしておく必要があるでしょう。

転職後に住民税の支払いに困らないためにも、退職前に住民税の支払い方法について確認しておきましょう。

本田和盛
【監修者】All About 企業の人材採用ガイド本田和盛

あした葉経営労務研究所代表。特定社会保険労務士。法政大学大学院経営学研究科修了(MBA)、同政策創造研究科博士課程満期修了。人事・労務・採用に関するコンサルティングに一貫して従事。マネジメント向けの研修やeラーニングの監修も行う。
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著書:
厳選100項目で押さえる 管理職の基本と原則 精選100項目で押さえる 管理職の理論と実践