職場に伝えるのに適した休職理由とは?休職時に受け取れる手当も紹介

220850職場に休職したいことを伝えるときは、どのような理由が適しているのでしょうか?退職ではなく休職を選ぶメリットや、受け取れる手当と併せて紹介します。休職中やその後の転職活動で注意すべき点についても確認しましょう。

休職の主な理由

休職願いと社員証

(出典) photo-ac.com

一般的に使われる休職理由は、2種類あります。具体的にどのような理由があるのか見ていきましょう。一般的とはいえないものの、休職に使われるその他の理由についても紹介します。

傷病による休職

傷病による休職には、大きく2つのパターンがあります。

一つは、会社とは関係のない病気やけがです。例えば、風邪をこじらせて肺炎になり入院が必要とされる場合や、休暇中のスキーで骨折をしてしまった場合などです。

もう一つは、仕事に関連する傷病です。特に近年はストレス社会といわれており、仕事で精神に不調をきたす人が増えているといわれています。通勤中・業務中の身体的な病気やけがだけでなく、適応障害やうつ病などのストレスによる精神的な病気も理由に含まれます。

傷病休職の場合は、「療養が必要」とする医師からの診断書が必要です。医療の観点から療養が必要とされていることが示されているため、会社に認めてもらいやすい休職理由といえるでしょう。

自己都合による休職

個人的な理由で休職する人も少なくありません。例えば、親の介護や幼い子どもの入院などで休職せざるを得ない状況の人もいるでしょう。

キャリアアップのためなどの理由から短期留学で休職する場合は、「留学休職」とする会社もあります。こちらは帰国後にスムーズに復職できるのがメリットといえるでしょう。また、災害地でボランティア活動などを行った場合に、社会貢献の一環として手当が支給される会社もあります。

しかし、昨今はどちらも自己都合休職扱いになるケースが多いようです。会社によって制度が異なるので、就業規則を確認してみましょう。

他にもある休職の理由

一般的ではありませんが、休職として認められるその他の理由には、以下があります。

・事故休職
・公職就任休職
・組合専従休職
・起訴休職
・出向休職

例えば「組合専従休職」は、労働組合員の従業員が組合業務に専従する際に用いられる休職です。「起訴休職」は、従業員が起訴された場合に休職の必要性があると判断された際に用いられます。

休職について正しく理解しておこう

休職届

(出典) photo-ac.com

今までに休職したことがない人や取得を考えたことがない人の中には、どのような状態を休職というのか、よく分からない人もいるでしょう。そこで、休職について正しく理解するために、休職制度とはどのような制度なのかについて紹介します。

休業との違いについても確認しましょう。

休職とは労働者側の事情で休みをもらうこと

休職は労働基準法などの法令に定められた制度ではありませんが、多くの企業で採用している制度です。一般的に会社側ではなく、労働者側の事情により長期にわたって会社を休むことを指します。

労働契約は維持されたままですが、会社が独自の給与補償制度を導入していない限り、原則として給与は発生しません。ただし、健康保険や厚生年金保険は継続されるので、休職中も会社側は社会保険料を支払う必要があります。

「休業」との違い

休業は労働者側ではなく、会社側の事情や制度による休みを指します。例えば、不況による業績不振といった会社の事情や、育児・介護休業などの制度によるものです。地震などの自然災害によって休業せざるを得ないケースもあるでしょう。

会社都合の場合は、給与が支払われることもあり、労働基準法によって休業手当を支払うことも義務付けられています。また雇用契約が維持されているため、健康保険や厚生年金保険も継続して支払われます。

退職ではなく休職するメリット

スーツの男性の後姿

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休職と退職は異なるものですが、どちらにすべきか迷う人もいるでしょう。休職を選択することには、多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるのか紹介するので、決断する際の参考にしましょう。

まとまった休養期間ができる

病気やケガの場合は、休職することでまとまった休養期間ができ、治療や療養に専念できるというメリットがあります。職場の人間関係や仕事のストレスによる体調不良が原因の場合も、会社から離れることでストレスから解放されます。

仕事をしながら通院することも可能ですが、状況によっては体力的にも精神的にもつらくなることが珍しくありません。心身の負担を減らして、じっくりと治療や療養に専念することで、早い回復も望めるでしょう。

自由な時間を持てる

忙しい職場では、多くの時間を仕事に取られ、自由な時間を確保するのが難しいことも珍しくありません。休職することにより自分1人の時間が持てたり、家族と向き合う時間が持てたりするようになるでしょう。

また、時間に追われていると、自分と向き合うゆとりがなくなる傾向があります。自由な時間を持つことで心のゆとりが生まれ、現在の仕事や将来のキャリア、今後の生活についてなど、じっくり考えられるようになるのもメリットです。

復職が前提のため安心して休める

休職の大きなメリットは、雇用関係が維持されており復職が前提のため、安心して休めることです。退職してしまうと、再び働けるようになったときに再就職先を探さなければなりません。

すぐに希望の仕事に就ければよいですが、なかなかうまくいかないこともあります。長引くほどに不安が募り、人によっては金銭的な不安が大きなストレスになることも珍しくありません。

また、休んでいる間も「再就職先が見つからなかったらどうしよう」と不安に駆られ、安心して治療や療養に専念できないこともあるでしょう。

休職時に手当を受けることはできる?

お札の入った封筒

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休職時に、条件を満たせば受けられる手当があります。どのような手当を受けられるのか、受けるための条件とともに紹介します。自分が条件を満たしているか確認し、忘れずに申請をしましょう。

けがや病気が理由なら傷病手当がもらえる

長期的な療養や治療が必要な病気やけがが理由の場合は、「傷病手当金」がもらえます。健康保険から支給される手当で、働けない期間の生活の保障を目的としたものです。ただし、一定の条件を満たす必要があり、必ず全員が受給できるとは限りません。

手続きする際は、まず会社に休職の相談をし、保険組合や協会けんぽの窓口で「傷病手当金支給申請書」を取得して必要事項を記載しましょう。医師や会社に記入してもらう項目もあるため、早めに準備を進めることが大切です。

書類がそろったら、各地域の支部宛に会社経由もしくは自分で郵送しましょう。

傷病手当を受ける条件

傷病手当を受けるためには、4つの条件を満たす必要があります。

1つ目の条件は、業務に関係のない病気やけがであることです。通勤中や業務中のけがは、業務に関係していることとみなされるため対象に含まれません。

2つ目は、療養や治療のために通常通りに業務ができない状態であることです。入院に限らず通院の場合も含まれますが、自己判断ではなく医師や健康保険組合の判断が必要になるので注意しましょう。

3つ目は、連続する3日間を含み4日以上、仕事に就けない状態が続いていることです。連続する3日間には、土日祝日や有給休暇も含まれます。

そして最後、4つ目は、休んでいる期間に給与が支払われていないことです。ただし給与の支払いがある場合でも、その額が手当金よりも少ない場合は差額が支給されます。

傷病手当金の受給期間・金額

傷病手当金を受給できる最長期間は、支給開始日から通算して1年半です。支給期間中に就労し手当金の支払いがない期間がある場合は、1年半を超えても繰り越して支給されます。

手当金の額は、支給開始日以前の継続した12カ月間に基づいて計算されます。この期間の各月の標準月額を平均した額を30日で割り、2/3を掛けた額が1日当たりの金額です。

例えば、12カ月のうち6カ月間の標準月額が25万円、残りの6カ月間が30万円の場合は、「(25万円 × 6カ月 + 30万円 × 6カ月)÷ 12カ月 ÷ 30日 × 2/3」で算出します。

休職後に転職したいと考えている場合は?

履歴書と封筒

(出典) photo-ac.com

休職中に他の仕事に就きたくなった場合は、転職活動が可能なのでしょうか?また、転職活動の面接で、休職について聞かれることもあるでしょう。マイナスの印象を与えないためには、どのように回答すればよいのかポイントを紹介します。

休職中の転職活動は避けた方がベター

休職中に転職活動をしてはならないという法律はありません。従って法律的な観点からすると転職活動をすることは可能ですが、さまざまなリスクを伴うため、避けた方が無難でしょう。

例えば、会社側にばれるリスクがあります。転職先が決まらず復職することになった場合、働きづらくなってしまうことも考えられます。会社に不信感を与え、人間関係やその後の出世に影響がでることもあるでしょう。

また転職先が決まったとしても、同じ業界の会社に転職した場合は、顔を合わせる機会があるかもしれません。そのときに気まずい思いをしたり、仕事がしづらかったりと、業務に支障が出ることも考えられます。

休職中は転職準備に留め、復職後もしくは退職後に本格的に活動するのがおすすめです。

転職活動で休職の理由を話すポイント

面接で休職の理由を聞かれることもあります。大切なのは、応募先の企業にマイナスの印象を与えないことです。たとえ休職の原因が前職に関係していることだとしても、悪口はマイナスの印象を与えるだけなので控えましょう。

重要なポイントは、業務に支障なく働けることをしっかり伝えることです。詳しく話す必要はありませんが、定期的に病院に通い健康管理をしているなど、きちんと向き合っていることをアピールするとプラスの印象を与えられます。

また、応募先の企業でどのような働き方をしたいのか、キャリアを築く上で復職ではなく転職を選んだ理由など、今後の展望にフォーカスして話を進めるとポジティブな印象を残せるでしょう。

休職の理由は事実を話すのが基本

資料を見ながら打ち合わせをする女性

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休職は労働者側の事情で休みをもらうことで、主な理由は傷病によるものと自己都合によるものに分かれます。

休職は復職することが前提のため、安心して療養や治療に専念できるのが大きなメリットです。まとまった自由な時間を確保でき、自分を見つめ直したり家族と一緒に過ごしたりもできます。

また、病気やけがが理由の場合は、一定の条件を満たせば「傷病手当」をもらえるので、忘れずに確認することが大切です。休職中の転職活動は、会社側にばれたときに働きづらくなるなど業務に支障が出るリスクがあるため控えましょう。

中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」