転職を検討している人の中には、転職先で早めに有休を取りたいと考えている人もいるでしょう。いつから取得できるのか知っておけば、職探しに役立てることが可能です。有休を取得できるタイミングや条件など、制度の仕組みを紹介します。
有給休暇はいつから取得できる?
一定期間働いた労働者には、ゆとりある生活を保障するために、年次有給休暇(以下有休)が付与されます。まずは有休を取得できるタイミングと条件を見ていきましょう。
原則は入社半年後から
有休を取得できるタイミングは、原則として入社半年後以降です。正社員・パート・アルバイトなどの区分に関係なく、条件を満たした全ての労働者に有休が付与されます。
例えば、入社日が4月1日だった場合、取得条件をクリアしていれば同じ年の10月1日から有休を取得することが可能です。
2019年4月に労働基準法が改正され、企業側は確実に年5日の有休を取得させることが義務づけられました。義務に違反した企業には、違反者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
付与される日数
フルタイムで働く場合、初年度における有休の付与日数は10日です。付与される有休の日数は年々増えていき、継続勤務年数が6年半以上になると上限の20日に達します。
継続勤務年数が1.5年と2.5年に達した際に付与される日数は、それぞれ11日と12日です。3.5年目からは1年ごとに2日増え、6.5年に達すると20日の有休が付与されます。
有休は原則として1日単位で取得しますが、労使協定が結ばれていれば時間単位での取得も可能です。時間単位の有休は1年につき5日分まで取得できます。
出勤率8割以上が条件
有休は入社から6カ月間で8割以上の出勤がなければ付与されません。入社6カ月を超えている場合も、有休付与の条件として次の1年間に出勤率8割以上が必要です。
出勤率は「出勤日数÷全労働日数」の計算式で求められます。全労働日とは労働義務が課されている日のことであり、休日労働した日は全労働日数に含まれません。
実際には仕事をしていない日でも、産前産後休業・育児休業・介護休業で休んだ日は出勤日数にカウントされます。有給取得日や遅刻・早退をした日も出勤日扱いです。
有給休暇の前倒しはできるのか
転職後半年を待たずに有休が欲しいと考えている人もいるでしょう。有休を前倒しで取得することは可能なのでしょうか。
入社後半年経過する前の取得申請は可能
法律では有休の前倒しに関するルールは規定されていません。前倒しが禁止されているわけではないため、ルールは規定されていません。前倒しが禁止されているわけではないので、会社によっては前倒しを認めるケースもあります。会社の就業規則等で有給休暇がいつから取得可能か調べておきましょう。
前倒しで特別有休が付与されるケースも
企業によっては、入社後半年経過するまでの休暇取得申請を見越して、特別有休を取得できるように就業規則で規定しているケースがあります。
特別有休とは、年次有給休暇とは別に会社が独自で定めている休暇のことです。夏季休暇・冬季休暇・結婚・リフレッシュ休暇など、会社ごとにさまざまな特別有休があります。
企業によっては、入社日から特別有休を取得できるケースもあります。転職先の有休前倒しのルールが気になる場合は、面接でそれとなく質問してみるのもおすすめです。
有給休暇についてのよくある疑問
有休は複雑な仕組みになっているため、さまざまな疑問が生じがちです。有休に関する代表的な疑問とそれぞれの答えを紹介します。
未消化分は翌年度に繰り越せる?
有休を年度内に消化できなかった場合、未消化分は翌年度に繰り越せます。例えば、1回目の付与分が2日残ったケースでは、2回目の付与分11日に2日分を足せるのです。
ただし、有休には2年の時効があるため、繰り越し後に翌年度も使わなければ時効により消滅します。有休を同時に持てる日数は最大40日です。
前年度からの繰り越し分がある場合は、労働者にとって有利になるように、有休は先に取得した分から消化されると考えられています。
有休取得の理由を言わなければダメ?
有休を取得する際、会社に理由を伝える必要はありません。有給取得は労働者の権利であるため、条件さえ満たしていれば理由を言わなくても取得できます。
会社へ提出する申請書に理由を書く欄がある場合も、私用のためと一言書いておけば問題ありません。会社側は取得理由による拒否ができないためです。
ただし、うその理由が発覚した場合は、会社から処分される恐れもあります。取得理由は詳細に書かなくてよいでしょう。
退職前に有休を買い取ってもらえる?
有休は賃金が発生する休暇です。繰り越し分も消化しきれない場合、時効により消滅するのはもったいないと考える人もいるでしょう。
有休の買い取りは、労働者・企業のどちらからの提案であっても、基本的には認められていません。特約による買い取りも無効となります。
ただし、時効を迎えそうなケースや退職日が近いケースでは、会社の判断で買い取ることが例外的に許されています。
有給休暇が取れない場合の対処法
会社に有休取得を認めてもらえない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。有休が取れないときの対処法を紹介します。
取得できない理由を聞く
有休取得を会社に拒否された場合は、理由をきちんと聞きましょう。会社が時季変更権を行使している可能性があるためです。
労働基準法第39条で定められている時季変更権を行使すれば、会社は有休の希望日を変更できます。繁忙期に休まれるのを防ぐためによく使われる権利です。
ただし、時季変更権を会社に悪用された場合、いつまでも有休を取れない状況に陥りかねません。取得できない理由を聞く際は、いつだったら取れるのかも確認しましょう。
行政機関に相談する
有休をなかなか取れず、会社に有休取得の権利を訴えても認めてもらえない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。匿名での電話相談にも応じてもらえます。
労働基準監督署に相談する際は、証拠を準備しておくことが重要です。有休の日数を確認できる給与明細書や、会社に提出した申請書などをそろえておきましょう。
相談内容に問題があれば、労働基準監督署が間に入ってトラブル解決のために動いてくれます。行政機関への相談は、自分の認識が合っているかどうか確かめられる点でも意味があります。
転職を考える
そもそも休暇を取りにくい雰囲気の職場で働いている場合は、たとえ権利だと分かっていても、有休取得申請自体を言い出せないでしょう。
休みたくても休めない会社で我慢して働いていると、心身の調子を崩してしまいかねません。有休が取れない会社にいるなら転職を検討し、転職先が決まった段階で有休取得申請を出すのも1つの方法です。
転職を検討する場合は、国内トップクラスの求人検索サイト「スタンバイ」を利用するのがおすすめです。豊富な求人情報が掲載されているため、有休を取得しやすい求人も数多く見つかるでしょう。
仕組みを理解し有休を有意義に活用しよう
有休は入社半年後から取得できます。フルタイム勤務の場合、初年度は10日付与され、6年半働けば20日まで増えます。出勤率8割以上をクリアすることが条件です。
企業によっては有休を前倒しで取ることも可能です。有休については細かいルールが定められているため、法律や就業規定をきちんと理解し、有休を有意義に活用しましょう。
大学卒業後、銀行勤務を経て社会保険労務士資格を取得し独立開業。上場企業をはじめ数多くの企業の人事労務管理の相談指導、給与計算業務等に携わる。また年金問題についての執筆、講演も多数。
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