事務職への転職を検討しているなら、給料の平均を知っておくのがおすすめです。コツを押さえて転職すれば、今より収入が多くなる会社で働けるでしょう。事務職の給料の平均や、転職で給料を上げるためのポイントを解説します。
事務職の平均給料はいくら?
事務職への転職を希望する場合は、実際に給料をどのくらいもらえるものなのか気になるでしょう。厚生労働省の「令和3年度 賃金構造基本統計調査」を参考に、ケース別の平均給料を紹介します。
なお、以下で紹介する数字は、「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」の計算式で試算したものです。
男女別の平均
男性事務従事者の平均年収は、20~24歳が約329万7,000円、25~29歳は約439万4,000円です。30~34歳では約513万8,000円となっています。
女性事務従事者の平均も見ていきましょう。20~24歳が約297万1,000円、25~29歳は約356万4,000円、30~34歳は約375万8,000円です。
なお、全年代を含む男女計の平均年収は約469万1,000円となっています。事務従事者の平均年齢は42.9歳です。
参考:令和3年度 賃金構造基本統計調査 表番号6 | 厚生労働省
雇用形態別の平均
厚生労働省のデータからは、事務職の雇用形態別平均年収も試算することが可能です。男女計の平均を見ていきましょう。
正社員・正職員の平均年収は約501万4,000円、正社員・正職員以外の平均年収は約306万4,000円です。年収換算で200万円近い差があることが分かります。
正社員・正職員をさらに分類すると、雇用期間の定めがない人の平均年収は約504万円、雇用期間の定めがある人の平均は約394万1,000円です。
参考:令和3年度 賃金構造基本統計調査 表番号9 | 厚生労働省
種類別の平均
事務職にはさまざまな種類があり、携わる業務によって平均年収にも差が生じます。主な事務職の種類別に、男女計の平均年収を見てみましょう。
年収が比較的高くなる事務職の種類としては、企画事務員や秘書が挙げられます。企画事務員の平均年収は約580万4,000円、秘書の平均は約489万1,000円です。
その他の主な事務職の平均は、庶務・人事事務員が約421万5,000円、受付・案内事務員は約306万円、会計事務従事者が約407万2,000円となっています。
参考:令和3年度 賃金構造基本統計調査 表番号3 | 厚生労働省
事務職の給料が低いと言われる理由は?
事務職の給料は低いというイメージを持たれがちです。実際に厚生労働省の資料を見ても、専門・技術・販売職に比べると平均収入は低くなっています。事務職の給料はなぜ他の職種より低くなってしまうのでしょうか。
利益に直結する仕事ではないから
事務職は、営業や販売といった直接利益を生み出す職種ではなく、企画・専門のように商材開発に関わるわけでもありません。これらの職種を事務で支えるのが主な仕事です。
利益への貢献度が低いとみなされやすいため、事務職はどうしても給料が低くなってしまいます。企業にとって欠かせない存在ではあるものの、年収を上乗せしにくい職種でもあるのです。
企業としても、利益に直結した仕事をする職種に歩合や賞与を出すことで、売上をより増やしたいと考えます。企業全体の給料が底上げされて初めて、事務の給料も底上げされる会社が多いでしょう。
残業が少ないから
事務職の給料が低くなる理由の1つに、残業が少ないことも挙げられます。事務職はルーチンワークが基本になるため、残業を必要としないケースが多くなるのです。
残業が多くなりやすい職種は、給料に残業代が加算されるため収入も増えます。営業職・企画職・技術職といった職種は、特に残業が発生しやすい職種です。
ただし、残業が少ないことは働く上での大きなメリットにもなります。考え方次第では、給料が少なくてもワーク・ライフ・バランスを実現しやすい職種だと捉えられるでしょう。
事務職への転職で給料を上げるポイント
できるだけ給料が高い事務職に転職するためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。事務職への転職で給料を上げるポイントを紹介します。
専門性が高い職種を目指す
事務職にはさまざまな種類があり、携わる業務によっては給料が上がる可能性があります。収入アップを狙えるのは専門性が高い種類の事務職です。
貿易事務・医療事務・経理事務といった事務職なら、一般事務より給料を増やしやすいでしょう。いずれも特定の業務に特化した専門性が高い事務職です。
ただし、これらの仕事に就くためには、スキルを身につけたり資格を取得したりしなければなりません。転職前にある程度の努力が必要です。
給与水準が高い業界を選ぶ
事務職への転職で収入を増やす方法としては、業界で転職先を選ぶことも挙げられます。給与水準が高い業界を選べば、事務職の給料も高くなりやすいのです。
金融・メーカー・総合商社・IT・建設・メディカルといった業界は、平均年収が高い傾向があります。これらの業界に転職できれば、事務職でも高めの給料を期待できるでしょう。
業界によっては専門スキルや資格を求められるケースもあるため、各業界の特徴や求人票をしっかりとチェックしておくことが大切です。
都市部の会社に転職する
同じ業種や職種でも、都市部は地方より給与水準が高い傾向があります。事務職への転職で高い給料を望むなら、都市部への転職を図ってみるのもおすすめです。
都市部は地方より求人数が多いため、転職先の選択肢も増やせるでしょう。地方に比べ業界や職種の種類が多いことも、都市部への転職を検討するメリットです。
ただし、都市部は給与水準だけでなく生活費の水準も高くなります。実家から通える会社やテレワークが可能な会社を探すといった工夫が必要です。
今より給料が高い企業を探す
給料を上げる最も手っ取り早い方法は、今の会社より多く給料をもらえる企業を探すことです。求人情報を確認するだけで、給与水準が高い会社が見つかります。
転職先の給料を確認する際は、残業代や各種手当が給料に含まれているか、手取りはいくらになるのかなどを確認しましょう。間違った見方をしてしまうと、今より給料が下がってしまうことにもなりかねません。
今より給料が高い企業を探すなら、求人特化型検索エンジン「スタンバイ」を利用するのがおすすめです。豊富な求人情報が掲載されているため、収入が増える事務職を募集中の企業も探しやすいでしょう。
未経験でも事務職に転職できる?
今まで事務職を経験したことがない場合でも、事務職への転職は十分に可能です。事務職に適している人の特徴や習得しておきたいスキルを紹介します。
事務職に向く人の特徴
事務職ではさまざまな仕事をこなすことになるのが一般的です。幅広い業務を任されても苦にならない人は、事務職に向いています。
資料整理やデータ入力など単調な作業が多くなる点も事務職の特徴です。同じ業務を何時間も黙々とこなせる人なら、事務職としてストレスをためずに働けるでしょう。
他の従業員のサポートに徹する事務職には、仕事の依頼を受けやすい雰囲気や、人の気持ちが理解できる性格も重要です。
転職前の習得におすすめの資格
事務職に転職するためにはパソコンスキルが必須です。MOSを習得しておけば、ExcelやWordが使えるスキルを証明できるため、大きなアピールポイントになります。
ビジネス実務マナー検定を習得するのもおすすめです。電話や顧客の対応が多くなる企業なら、ビジネスマナーが身についていることは転職時の強みになります。
余裕があるなら秘書検定の習得も目指してみましょう。秘書検定を勉強すれば秘書業務だけでなく、敬語の使い方やビジネス文書の書き方など、社会人に欠かせない能力を身につけられます。
目的別のおすすめ事務職
事務職の種類選びに迷う場合は、基準を決めて業界や種類を選ぶとよいでしょう。目的別のおすすめ事務職を紹介します。
専門スキルを生かせる「医療・貿易系」
専門性の高いスキルを仕事に生かしたいのなら、医療系や貿易系の事務職に転職するのがおすすめです。いずれも専門スキルが業務に役立ちます。
貿易系の事務は、英語のスキルや輸出入の知識を仕事に生かすことが可能です。国家資格を取得して通関士になったり、バイヤーに転職したりするキャリアアップも図れます。
医療事務は資格が必須ではないものの、専門の資格があれば転職に有利になる上、転職後の給料アップも期待できます。
利益向上を支援「営業・マーケティング系」
営業活動やマーケティング施策を支援する営業・マーケティング系の事務職は、売上アップへの貢献を実感しやすいことがメリットです。
一般事務や人事・労務・経理系の事務は、ルーチンワークが中心になるため会社への貢献を実感しにくいでしょう。一方で営業・マーケティング系事務は、チームの一員として働いていることを実感しやすいため、やりがいも感じやすくなります。
営業・マーケティング系事務は、顧客や営業とのやりとりが多くなるため、コミュニケーションを取るのが好きな人にもおすすめです。
プライベート重視なら「バックオフィス系」
定時に退社できることが多い人事・経理・労務・一般事務などのバックオフィス系は、プライベートを充実させたい人に向いています。
家族と過ごす時間や趣味の時間を増やしたい人は、バックオフィス系の事務職を目指すとよいでしょう。前職で残業が多かったことに嫌気がさしている人にもおすすめです。
一般事務でも実績を積めば、他の専門系事務へキャリアチェンジできる可能性があります。日々の業務を頑張りながら、スキルアップに励んでみてもよいでしょう。
これからの事務職は専門性の高さも重要
事務職は給料が低い傾向があるものの、コツを押さえて転職すれば収入を増やせる可能性があります。スキルや資格を習得し、専門性を高めておくことがポイントです。
給与水準は業界間で差があるため、転職する際は業界選びも意識する必要があります。専門スキルを生かせる分野を見つけて、給料アップを図れる業界の事務職を目指しましょう。
若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー