有効求人倍率とは?意味・見方・利用方法をチェックしよう

有効求人倍率は労働市場を語るときや、経済学の分野などでよく出てくる言葉です。聞いたことはあっても、具体的に何を表しているのか分からない人もいるでしょう。有効求人倍率の意味や、転職活動にも生かせる読み解き方を紹介します。

有効求人倍率とは

電卓で計算する

(出典) photo-ac.com

有効求人倍率は経済紙だけでなくニュースなどにも登場するので、聞いたことがある人は多いでしょう。まずは、この言葉がどのような意味で使われているのか紹介します。

有効求職者数に対する有効求人数の割合

有効求人倍率は企業が人材を募集している求人の数と、求職者の数の割合を指します。有効求人倍率を見れば、求職者と求人がどのようなバランスになっているのかを知ることができます。

ハローワークに登録されている企業の求人数を「有効求人数」といい、仕事を求めている人の数を「有効求職者数」といいます。これらの割合は、景気の動向や世の中の動きを知るための重要な手がかりです。

特に、企業の採用担当者や経済の動向を深く理解しようとするビジネスマンにとっては、重要な意味を持っています。求職中の人にとっても、就職のしやすさを測る1つの目安になるでしょう。

厚生労働省が毎月算出している

有効求人倍率のもとになっているのは、ハローワークに登録されている求人情報 や求職者の情報です。厚生労働省が月に1回算出しており、厚生労働省のサイトに掲載される「一般職業紹介状況」の「集計結果」にある「結果の概要」を見ると、最新の有効求人倍率が分かります。

ただし、すべての企業がハローワークに求人登録をするわけではありません。求人サイトや新聞広告などを利用して、人材を募集している企業もあります。ハローワーク以外の求人は、計算に含まれていない点は覚えておきましょう。

参考:一般職業紹介状況(職業安定業務統計)|厚生労働省

有効求人倍率の見方

調べながらノートに書き込む

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有効求人倍率を見ても、見方が分からないと内容を理解できません。どのように読み取ればよいのか紹介します。

倍率が「1」を上回るときは求人が多い

有効求人倍率は、「企業からの求人数(有効求人数)÷ハローワークに登録している求職者(有効求職者数)」の計算式で算出されます。

有効求人倍率が1を上回るときは求職者よりも求人の方が多い状態で、下回るときは求人の方が少なく転職や就職がしづらい状態です。

例えば、有効求人数が2万4,000件で、有効求職者数が2万人と仮定すると「24,000÷20,000=1.2」で、有効求人倍率は1.2となり、求職者よりも求人の方がやや多いと判断できます。

もし有効求人倍率が0.1と言われたら、10件の求人に対し求職者が100人もいる計算になり、なかなかの就職難が起きていることになるのです。

就業形態別・産業別でも確認できる

有効求人倍率は全体だけでなく、就業形態別や産業別などでも確認が可能です。正社員のみのデータだけでなく、パートやアルバイトを含んだ有効求人倍率についての数値も発表されています。

これらのデータは前述の「一般職業紹介状況」に細かい統計資料がアップされているので、さまざまな角度から分析したいときに役立ちます。また、産業別のデータを見ると、どの業界で人手不足や人手過剰が起きているのかも理解できるでしょう。

有効求人倍率の利用方法

手帳に記入する男性

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有効求人倍率の見方を理解したら、どのように有効活用していけばよいのでしょう。代表的な利用方法を紹介します。

採用の難易度を測る

企業にとって有効求人倍率が高いほど、人員の確保が難しくなります。反対に、求職者にとっては有効求人倍率が高いほど有利な状態です。

有効求人倍率は、転職時に「どの業界や職業が買い手市場なのか」をチェックしたいときにも使えます。

例えば、全体の職業別の有効求人倍率を見ると、2022年7月の「一般事務の職業」の有効求人倍率は0.32ですが、「営業の職業」は1.85となっていて、営業職の方が人手不足であり、採用されやすいと分かります。

雇用状況から景気を知る

有効求人倍率から雇用状況を判断し、過去のデータと見比べて現在の景気をより詳しく分析することもできます。有効求人倍率は「経済指標」の1つとして使われており、景気が悪化すると有効求人倍率が下がる傾向です。

景気がよくなるときは企業が雇用を増やそうとするので、求人が多くなります。雇用だけが経済活動を読み解く情報ではないものの、労働市場は景気とほぼ一致して動く特徴があるので、状況を判断する材料として有効です。

有効求人倍率は金融機関に所属するアナリストや、経済の動向を深く知ろうとするビジネスマンなどに注目されています。転職を考えているときは、希望する業界の景気を探るヒントにもなるでしょう。

完全失業率も景気を知る手がかり

有効求人倍率だけでなく完全失業率も、景気を知るための経済指標です。有効求人倍率だけでは経済状況を正しく分析する判断材料として心許ないので、複数の経済指標をもとに分析しなければなりません。

完全失業率は総務省が発表しており、就業者と失業者の合計に占める失業者の割合を示したもので、「(完全失業者÷労働力人口)×100」の計算式で求められます。

完全失業者は、「就業者ではない」「仕事があればすぐに働ける」「調査期間中に仕事を探していた、もしくは起業をする準備をしていた」などの条件を満たす人のことです。労働力人口は就業者と失業者の合計となります。

景気がよくなると、企業は人手を増やそうとするので完全失業率が下がるのです。景気がよくなりそうな気配を感じ、一度はやめていた職探しを再開する人が増えると、完全失業率が上がることもあります。

有効求人倍率を知って景気に敏感になろう

前向きな表情の女性

(出典) photo-ac.com

有効求人倍率を正しく読み解くことができれば、景気を判断する材料の1つにできます。職種別の有効求人倍率をチェックすれば、希望する職種がどれくらい採用されやすいのかチェックすることも可能です。

希望する業界の今後を知るヒントにもなり、正しく読み解くことができれば転職活動に生かせます。採用担当者ではなくても、ビジネスマンとして景気を意識することは大事です。

完全失業率もあわせてチェックし、より細かい業界分析に役立てましょう。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー