CEOとは?社長や代表取締役との違いや役割をチェックしよう

CEOは企業にとって大きな意味のある役職です。しかし、どの企業でも設置されているわけではなく、役割を詳しく知らない人もいるでしょう。意外と間違えて覚えやすい、社長・代表取締役との違いや、詳しい仕事内容などを紹介します。

CEOとは何か

スピーチをしている男性

(出典) photo-ac.com

CEOという肩書を聞く機会は多いですが、具体的に何をする人なのか知らない人もいるでしょう。どのような役割を持っているのか、紹介します。

経営を統括する最高責任者

CEOとは「Chief Executive Officer」の頭文字を取ったものです。日本では実質的に、現場部門のトップという位置づけで「最高経営責任者」として、経営に関する最大の権限と責任を持っています。

CEOに求められる代表的な役割は、「経営方針や事業計画などの経営戦略を決め、最終的な意思決定をすること」だと覚えておきましょう。

昔の日本にはなかった役職ですが、企業の所有と経営執行を分けて運営するために、執行役員制度を取り入れだしたことがきっかけで設置されるようになりました。

会社運営上必須の役職ではない

CEOは、日本の会社法に定められた役職ではありません。会長・専務・社長などと同じで、内部的職制の名称の1つです。

CEOを設けていない会社もあり、法律上は代表取締役だったとしても、ほかの企業のCEOと同等の業務を行っているというケースも珍しくありません。

会社法で決まっていない以上、CEOを選任しなかったとしても規則上の問題はありませんが、誰が経営責任者なのか分からない状態になると社内外で混乱が生じてしまうので、会社法第362条で代表取締役を必ず選任することが定められています。

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設置目的はコーポレートガバナンス(企業統治)

CEOを設置する目的は、企業経営を管理監督するためです。コーポレートガバナンスは企業の利益を優先し、利害関係者が不利益を被らないように経営を監視する仕組みを指します。

これまで取締役が担っていた業務執行と経営を切り離すことで、取締役が企業の監督に集中できるようになり、組織ぐるみの不祥事が起きにくい体制を整えることが狙いです。

CEOに大きな権限を持たせることで業務を円滑に進められ、スピード感を持って必要事項の決定を行えるなどのメリットもあります。

CEOが導入されるようになった背景

対面での打ち合わせ

(出典) photo-ac.com

CEOという役職が日本でも用いられるようになったのは、わりと最近の話であり、どの企業にも設置されているわけではありません。CEOが導入されるようになった背景を見ていきましょう。

アメリカの企業統治制度にならって始まった

CEOが日本の企業に導入されるようになったのは、1991年ごろにバブルが崩壊し、その後の経済が低迷したことがきっかけです。これまでの企業の統治方法に欠陥があるのではないかと疑う人が増え、改革の必要を感じたためだとされます。

改革に踏み出した企業の中から、アメリカ企業の統治制度にならって、統治方法を変革する企業が現れました。そのときに、アメリカで使われていたCEOの名称も取り入れることになったとされています。

2003年に商法改正が行われ、米国企業統治に近い制度が導入されたこともあり、執行役員制度を設ける企業が増加したことも、CEOが設置されるようになったきっかけの1つです。

CEOとは何をする人なのか

打ち合わせ

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CEOは経営上の重大な役割を持っています。具体的にどのような仕事をしているのか、見ていきましょう。

経営方針や事業計画など経営戦略を策定

CEOがやらなければならない仕事の1つが、企業の目標や存在価値を明確にし、経営方針や事業計画などの、基本となる考え方を決めて方向性を作り出すことです。

株主総会で選任される「取締役会」で決定された内容をもとに、具体的な経営方針や事業戦略を実現するために何をすべきなのかを判断し、実行する役割を持っています。

利益を上げるために必要な人や物などの資源をどのように集めるのかを考え、業務に生かすための計画も立てなければなりません。

また、事業によって利益を上げることだけでなく、従業員が働く環境を整えるのも経営戦略の一環であり、CEOの仕事になります。

会社組織や各部署をまとめる

事業方針や経営方針の方向性を探るだけでなく、企業や各部署の状態を把握するのもCEOの重要な仕事です。経営の責任者として、各部門のトップたちをマネージメントしなければなりません。

各部門をまとめるのはそれぞれの責任者ですが、CEOは事業が経営戦略に基づき順調に進んでいるかをチェックし、適切な判断を下す役目を持ちます。

計画を順調に進めるには、現場で何か問題が起きていないかなど、各部門の状況を知り経営判断に必要な情報を収集することが必要です。

透明性が高く健全な経営を実現

株主や投資家など、企業の利害関係者に対する適切な情報開示も、重要な仕事の1つに数えられます。法律上の決まりを守ることはもちろん、「この市場は公正で信頼に値する」と、感じてもらえるように努力しなければなりません。

2015年に金融庁と東京証券取引所が策定した、ガイドラインである「コーポレートガバナンス・コード(企業統治方針)」でも、企業の情報開示を行うことが求められています。

企業経営の透明性や公正性を上げるため、外部監査人がCEOやCFO(最高財務責任者)と面談などを通じて、接触する機会を設けるように定めているのです。

CEOと混同しやすい役職

パソコン前でネクタイを整える男性

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CEOは経営に関する全責任を負う立場ですが、社長や代表取締役と何が違うのかイメージできない人もいるでしょう。

また、COOやCFOなど、CEOと名前が似ていて混同しやすい肩書もあります。それぞれの役割や違いなどを見ていきましょう。

社長とCEOの違い

社長は企業のトップであり、「業務を指揮する立場の人」に対する習慣的な呼び方です。会社法で決まっているわけではなく、商取引の過程で生まれた商習慣上の呼び名で、通常は代表取締役を社長と呼んでいます。

会長や副社長も、会社法で定められていない内部的職制の名称です。法律上の定義はないので、義務や権限などについては企業によって異なります。

海外ではCEOが社長よりも上の権限をもっていることが多く、日本でもそれにならっているケースもあれば、社長兼CEOとなっていることもあり、企業によってさまざまです。

代表取締役との違い

CEOと代表取締役は、どちらも企業の業務執行のトップであることに変わりはありませんが、代表取締役は会社法で定められている通り、「法的に会社を代表する人物」のことです。

法律上重要な意味を持つ肩書で、法律に基づいた責任や権限を持ちます。1つの企業に、2人以上の代表取締役がいるケースもありますが、CEOは1人であることが一般的です。

取締役会を設置している企業では、取締役会が代表取締役を選任します。CEOが法的に会社を代表するには、代表取締役兼CEOでなくてはなりません。

COO・CFO

「C*O」という表記の役職は多く、混乱しがちです。C*Oは「Chief * Officer」の頭文字を取ったもので、「*」の部分に担当の業務名が入ると覚えておけば、理解しやすいでしょう。

COOは「Chief Operating Officer」を略した言葉で、日本語にすると「最高執行責任者」となります。

COOは実際の業務を統括する責任者です。決定された経営方針に基づいて、業務で結果を出すことが求められます。

CFOは「Chief Financial Officer」の略で、最高財務責任者のことです。財務に関する業務執行を統括する立場だと覚えておきましょう。

CMO・CSO

CMOは「Chief Marketing Officer」の略で、最高マーケティング責任者のことです。CEOの方針を元に、マーケティングに関する戦略を立てる部署を統括します。

1つの部署内だけに責任を持つというよりも、部署を問わず自社のマーケティングに深く関わることが少なくありません。

CSOは、「Chief Strategy Officer」の略で、意味は最高戦略責任者です。CEOは全ての執行役員を統括しなければならない立場なのでやるべきことが多く、企業戦略だけに集中できません。

CSOはCEOをサポートし、CEOが対応しきれない業務を担当します。CSOを設置することによってCEOは企業戦略を練りやすくなり、計画を素早く実現できるところがメリットです。

CEOに求められるもの

指をさす男性

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CEOに求められるものが分かると、会社の経営に必要なものが見えてきます。CEOの仕事は責任が重く、企業において重要な役割を持っているので、並大抵の人物には務まりません。CEOの仕事をこなすには、何が必要なのか見ていきましょう。

積極的に行動し問題を先送りにしない

CEOは経営に関する全責任を負うだけでなく、積極的に行動して経営を引っ張っていく立場にあります。消極的な人や、問題を先送りにしてしまう人には向いていない仕事です。

世の中のさまざまなことに好奇心があり、ニーズを理解しながら「企業の利益を考えて積極的な行動を取ること」が求められます。

業務そのものだけでなく、従業員に対しても積極的なコミュニケーションをとりつつ、CEOの視点から従業員がまだ気付いていない問題にも思いを巡らせなければなりません。

企業を経営していくために、どのような問題が起きているかを積極的に知ろうとする気持ちがないと、問題点を改善できないリスクを負うことになってしまいます。

打たれ強く度胸がある

CEOには打たれ強さと度胸も求められます。メンタルが弱い人では経営を引っ張っていけず、各部門のリーダーたちをまとめるのも難しいでしょう。

事業方針を定め、利益を出すことは簡単ではありません。度胸がないと尻込みしてしまうような難しい判断を求められることもありますし、悪い流れを断ち切るために大胆な方策を打ち出す必要に迫られることもあります。

自社を発展させようと思うなら、常に上を目指し、困難なことに立ち向かっていく必要があるでしょう。時には、経営方針に対して利害関係者から批判を受けることもあり、精神的な強さは不可欠となります。

経験や知識

CEOは経営に関する経験や知識がなければ、務まらない仕事です。事業の方針を決定し、事業を発展させていくためには、企業の経営を熟知している必要があります。

経験が足りないと各部門から上がってきた情報を見ても、業績を伸ばすために必要な適切な判断を下せません。

経営の全責任を担うにはその業界や商材に関する知識を持っていなければならず、現場での実務経験やリーダーとしての経験がないと、判断が難しい場面で力を発揮できないでしょう。

外部からCEOを求める企業もありますが、豊富な経験と知識が必要であることを踏まえ、執行役員の経験があることをCEOの条件としている企業が少なくありません。

CEOに必要なスキル

パソコンの前に座る男性

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CEOには経験や実践によって身に付けられた、さまざまなビジネススキルが求められます。代表的なものを見ていきましょう。

数字でビジネスを語れる

企業の経営には数字がつき物です。経営を引っ張る立場であるCEOには、数字でビジネスを語れるスキルが必要となります。

感覚的なものに頼るだけでは、理論的にビジネスを成功させるために必要なものを導き出せませんし、従業員を納得させられません。さまざまな角度から、自社が置かれている状況を判断するには、数字を読み解く力が不可欠です。

数字に強く多角的な視点で読み解ける人は、物事の表面上だけでなく、深い部分まで理解できます。例えば、数字を読み解く力がない人は「売り上げが20%減ったから人員を削減しよう」と考えてしまいがちです。

一方、数字に強い人は「売り上げが20%減ったが、この業界は就職希望者が毎年約10%ずつ減っているので将来的な人手不足が見込まれる。今のうちに人材を確保・育成するための策を打ち出そう」というように考えられます。

卓越したビジネスセンス

CEOは根拠や理論に基づき、事業を発展させるための方策を打ち出さなければなりません。自社が置かれている状況を正しく理解し、ビジネスを伸ばすにはどうすればよいのかを考えるには、ビジネスセンスが必要です。

ビジネスを伸ばすためのアイデアが何も出てこないCEOでは、企業の発展は見込めません。事業を成功させるための戦略を立てるには、事業の大筋だけでなく微細な部分まで把握し、「自社の強み」を正確に把握していなければならないのです。

知識や情報などを体系的に捉え、本質を理解する力が不足していると、他社に比べて優れた強みがあることに気付かず、戦略に生かせないでしょう。

現場に目を向けたマネジメント力

CEOは現場に目を向け、従業員の育成や配置にも気を配れるマネジメント力が必要です。事業を発展させられるCEOは、「経営の土台を支える組織の人員」についても現状を把握し、考えを巡らせています。

執行役員をまとめるだけでなく、現場で働く従業員に関する注意が不足していると、うまく経営戦略を練ることが困難です。

部下の能力に合った役割や、人材の育成などにも目を向けていないと強い組織は作り出せません。

CEOを狙うには

パソコンを前に考える男性

(出典) photo-ac.com

CEOに求められる要素はさまざまなものがあり、頑張れば誰でもなれるわけではありません。企業の規模やタイミングなどの条件も複雑に絡み合っています。企業のCEOは、どのように就任するのが一般的なのか見ていきましょう。

昇格する

その企業で長く働いて実績を積み上げていくことで、執行役員に昇格したりCEOに抜擢されたりする場合があります。新卒で入社した社員が、最終的にCEOまで上り詰めるケースもゼロではありません。

自社の事業や業務内容に詳しく、現場での実績が十分にあり、経営を引っ張っていくのにふさわしい人材だと認められれば、CEOに抜擢されることもあり得るのです。

もし、その企業のCEOが、入社後の最終的なゴールとして現在の地位を成し遂げたのであれば、現場に目を向けた采配ができるだけでなく、強い愛社精神も持っているといえるでしょう。

執行役員やCEOを募集している企業に転職

外部から執行役員やCEOを求めている企業も存在します。執行役員として入社し、CEOになるケースもありますし、企業の経営に長けた人の中には複数の企業でCEOを務める人もいるのです。

優秀なら誰でもCEOになれるわけではなく、経営に関する全責任を持っているわけですから、ほかの企業で執行役員やCEOの経験があり、業務に関する知識も備えている人物であることを必須条件とする企業が多くなっています。

「スタンバイ」でCEOを検索すると、CEO自体の募集や、その直下で働ける仕事が見つかることもあります。十分な実務経験や実績を持っているなら、応募する価値があるでしょう。

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起業して自らCEOに就任する

独立して事業を立ち上げ、自らがCEOに就任する方法もあります。CEOは経営の核になる役割を持っているので、自分の会社であれば必然的に所有者兼CEOという立場になるでしょう。

ただし、起業したからといって必ずしもCEOになるわけではなく、会社の規模や考え方によっても必要な役割は変わってきます。

CEOは設置義務のある役職ではありません。会社の規模が小さいのなら、あえて設置する必要性を感じられないこともあります。

CEOの方針を知ると企業への理解が深まる

会議の風景

(出典) photo-ac.com

CEOはその企業の経営の全責任を負い、各部門のトップである執行役員をまとめる役割を持ちます。

代表取締役とは違い、会社法でCEOの定義が決まっているわけではないので、法的な代表者が別にいるケースもあれば、代表取締役兼CEOとなっているケースもあります。

CEOがどのような人物で、どのような経営方針を打ち出しているかを知ると企業への理解が深まり、その企業と自分の相性をより深く探ることもできるでしょう。