面接で学生と社会人の違いを尋ねられたとき、面接官の意図を理解しないまま答えると失敗しやすくなります。面接官は質問の答えから、何を読み取ろうとしているのでしょうか?答えるときのポイントや回答例、面接全般の受け答えで大切なコツを紹介します。
学生と社会人の違いは?
学生と社会人には、さまざまな違いがあります。一般的な立場から見たときの、学生と社会人の違いをチェックしましょう。
責任の有無・重さ
学生と社会人の大きな違いに、「責任」を挙げる人は少なくありません。
学生だからといって責任がゼロというわけではありませんが、学生が多少責任感に欠ける行動をしたとしても、基本的には自分の評価が下がるだけです。場合によっては、「まだ学生なのだから」と、大目に見てもらえる部分もあるでしょう。
一方、社会人が責任感に欠ける行動をしてしまうと、会社の評判にまで大きな影響を与えかねません。社会人には、自分が会社の看板を背負う立場であるという自覚が求められます。その責任の重さは、学生のときと比べものにならないでしょう。
評価の方法や軸
学生は試験の成績で評価されるのが一般的です。素行や学習態度なども見られてはいますが、基本的に成績と評価は直結していることが多いでしょう。一方、社会人は学生とは違って、数字だけでその人の働きぶりを評価するのは難しい傾向があります。
営業職の場合は比較的成績を数値化しやすいものの、会社は労務部や経理部など、さまざまな部署で働く社員が各分野で力を発揮することによって成り立っています。
サポート役に回っている人たちを評価する方法は、企業によってさまざまです。数字で働きぶりを明確にできない場合、ゴールや目標の設定が難しいため、真面目な勤務態度や意欲の表れといった過程が評価の軸に加わります。
後輩や部下を指導する立場の人であれば、指導した相手がどのような結果を出すかによって、評価が左右されることも珍しくありません。
時間に対して求められる意識
時間に関する意識も、学生と社会人の違いといえます。個人差はありますが、学生時代は主に学業に集中していれば問題ない場合が多いため、自由に使える時間が多かったと感じる人は多いでしょう。
しかし、社会人になると仕事で結果を出すことを常に求められ、新しい技術や知識を身に付けるための勉強も並行して進めていく必要があります。場合によっては、仕事の仲間や取引先と親睦を深めるための時間が求められ、自由に使える時間はごくわずかという場合も少なくありません。
また、学生は少々時間にルーズでも注意を受けるくらいで済みます。しかし、社会人になると時間の厳守は「できて当然のこと」と認識されるので、計画性を持った時間の使い方が必須です。
関わる人間の立場や価値観
社会人は学生と比べて、人間関係が幅広くなる傾向があります。学生時代に周囲にいるのは、ほとんどが同年代の人ばかりです。
教師にはさまざまな年齢の人がいますが、生徒とは立場が違います。違う年代の人と関わるための努力をしなくても、学生のうちは何とかなる場合が多いでしょう。部活やサークル活動で上下関係を学ぶ機会があったとしても、ごく狭い範囲内のことです。
しかし、社会に出れば社内の関係者だけでなく、顧客や取引先の人など、幅広い年代の人と関わりながらスムーズに仕事を進めるスキルが欠かせません。
また、学生時代は相性が悪い人とは付き合わなければよいだけの話ですが、社会人になればどんなに相性が悪い人とも、業務上必要なやり取りは避けられないでしょう。
社会人として活躍するには相手の立場や価値観を問わず、与えられた環境で人間関係を築いていく能力が求められます。
面接で質問される理由
面接で質問を投げかけられたとき、聞かれる理由が分かっていないと的外れな回答をしやすくなります。面接官が学生と社会人の違いを聞く意図には、何があるのでしょうか?
社会人に必要な素質を見るため
面接で学生と社会人の違いを尋ねるのは、応募者が社会人として必要な素質を備えているかをチェックするためです。
「学生は楽だけれど社会人は大変そう」というように曖昧な印象でなく、社会人としてうまく振る舞うために何が必要なのかを、自分なりにイメージできているかが問われています。
社会人として必要な能力が分かっていれば、入社後も正しく振る舞えるでしょう。社会人としての意識を持って働くイメージができていない人を採用すると、企業にとってリスクが大きいので、素質があるかどうかが重要視されます。
意欲や価値観を見極めるため
社会人に求められるものが何なのかを回答するには、その人の働く意欲や社会人としての価値観を掘り下げる意識が必要です。
「社会人は責任が重くてつらそう」というような回答をしてしまうと、社会人になりたくない印象を与えます。質問の意図もよく分かっていないと判断されるでしょう。
また、学生と社会人の違いをどのように認識しているかで、応募者の仕事に対する価値観が分かり、応募者と企業のマッチングも図れます。自社とは価値観が合わないと感じさせてしまうような回答では、採用が遠のいてしまうでしょう。
学生との違いにプラスして、自分が社会人として働いているイメージをしっかりと持って回答することが大事です。
学生と社会人の違いを伝える例文
学生と社会人の違いを答える際は、仕事への意欲や価値観を伝えられる内容にするのが理想です。例文を見て、回答を考えるときの参考にしましょう。
例文1「責任について」
責任の重さは、学生と社会人の違いでよく挙げられる要素です。どのように伝えればよいのか例を見ていきましょう。
学生とは違い、社会人には「どうすれば会社の利益になるか」を考えて行動する責任が求められると感じています。
組織の一員としての自覚をしっかりと持つことが、社会人として必要だと思っています。私は学生時代に飲食店でのアルバイトを経験しましたが、店長やマネージャーの指示に従って仕事をすることが中心でした。
「こうしたらお客様に喜んでもらえるのではないか」という視点を持てていなかったと、今振り返ってみて思います。社会人となったからには、お客様のためになって、利益も上げるためにはどのような工夫ができるかを考えて、取り組んでいきたいです。
企業は応募者を採用するとどんなメリットがあるかを、1番に知りたいと思っています。責任感を持って働くだけでなく、どのように貢献していきたいかも伝えると、働く意欲をアピールできるでしょう。
例文2「立場の違いについて」
学生と社会人は立場が異なり、社会から求められることも違います。どのような回答をすればよいのか、見ていきましょう。
学生と社会人では、置かれている立場が違うと考えています。学生だと保護者に生活費や学費を払ってもらうことが多いですが、社会人は自分が価値のあるサービスを提供して、給料をもらう立場です。
会社に利益をもたらすには、お客様が納得できるような仕事をしなければなりません。自分の行動によって売上だけでなく、会社の評判も左右される立場であることを常に意識して振る舞う必要があると思っています。
お客様に満足していただく仕事をするためには、日々の努力が欠かせないと思います。まずは商品知識を高め、接客に必要な技術も高めていけるように学んでいきたいです。
学生と社会人の立場の違いを説明するだけでなく、「どのような努力をすれば価値を提供できるのか」を自分なりに考えた回答をするのがポイントです。
面接での質疑応答のコツ
面接で質問にうまく答えるには、質疑応答の基本を押さえておく必要があります。どのような答え方をすればよいのか、大切なポイントに絞って見ていきましょう。
結論からはっきりと答える
面接では、結論を言ってから理由を話し、具体例を挙げて内容を分かりやすくする流れで話す方法がおすすめです。
例えば、面接で学生と社会人の違いを聞かれたら、まず自分が思う違いからはっきりと答えましょう。結論から話し始めることで、「何が言いたいのか分からない」と思われるリスクを減らせます。
ただ、結論だけでは話に説得力を持たせられないので、理由や例を挙げて補足しましょう。自分が用意しておいた例で面接官が納得していない様子のときは、ほかの言葉で言い換えるとコミュニケーション力の高さもアピールできます。
伝える内容を絞る
面接では、1つの質問に対して答えを用意しすぎるのはおすすめできません。
学生と社会人の違いを聞かれたときを例に取ると、できる限りたくさんの違いを伝えた方が、面接官によい印象を与えられると考えてしまいがちです。
しかし、面接官は「どのような考え方を持っている人か」という視点で質問をしています。あれもこれもと思い浮かんだことを並べると、結局自分の考え方や魅力が伝わらないまま、面接を終える事態になりかねません。
ほかの質問への回答でも、できれば伝えたいことは1つに絞り、そのことを掘り下げて話しましょう。多くても1~2個に絞って答えた方が、考え方の軸を伝えやすくなります。
仕事への前向きな姿勢を見せる
面接での回答は、働く意欲を伝えることが大事です。例えば学生と社会人の違いを答える場合だと、学生時代の方がよかったと解釈できるような回答はやめましょう。
学生時代への未練を感じさせてしまうと、「社会人としてどのような姿勢で仕事をしてくれそうか」という面接官が知りたがっている部分をアピールできません。
「できることの幅が広がる」「自分の働きぶりで企業を成長させられる」というように、前向きなビジョンを意識して答えましょう。
一般論だけでなく自分の考えを伝える
面接官は、世間一般で認識されている内容を聞きたくて質問するわけではありません。質問を通じて、応募者の考え方や価値観を測ろうとしています。そのことをきちんと理解できていないと、一般論だけを答えてしまいがちです。
例えば、「学生は学業が中心で、社会人は仕事が中心」というのは単なる一般論といえます。自分の考えも交えながら伝えるように意識しましょう。
学生時代とは違って社会人は仕事が中心になるため、多くの人と関わりながら仕事をしていけます。どうすれば人間関係をよくできるのかを考えながら、仕事をすることが重要だと思います。
というように、自分の考えも入れることがポイントです。
だらだらと長話をしない
面接で質問の回答をする際、特に回答時間の指定がないのであれば、1つの質問に対して長くても1分程度で話し終えるようにしましょう。話が長いと、聞いている方は話の要点をつかみづらくなります。
自分で話の要点をつかめていない人は、長話をしがちです。長く話しても、中身が薄い内容だとよい評価はもらえません。話が長くなりがちな人は、伝えたい要素を箇条書きにしてみましょう。
事前に回答を考えるときは、いったん紙に書いて整理すると話をまとめやすくなります。本番ではメモを見て話せないので、頭の中で要点を思い浮かべて話すイメージを持つとよいでしょう。
社会人としての自覚をアピールしよう
学生と社会人には、責任の重さや立場の違いなどがあります。面接で聞かれたときは、一般論だけでなく、自分の考えを織り交ぜて働く姿勢をアピールすることが大事です。
企業は学生と社会人の違いに関する考え方から、その人が社会人として働いていく自覚を持っているかをチェックしようとしています。
面接での受け答えが苦手な人は質問の意図を理解し、結論から話し始めて要点をまとめるように心がけましょう。