仕事でミスをしたらクビ?適切な対処法とミスを減らす方法を解説

仕事でミスが重なると、会社や取引先に迷惑を掛けてしまいます。同じ失敗の多発を防ぐには、原因の特定と対策の立案・実行が欠かせません。素早く対処して気持ちを切り替えるのも大切です。ミスの原因や対処法、気持ちの切り替え術について解説します。

仕事で大きなミスをしたらクビになる?

顔を覆う男性

(出典) photo-ac.com

仕事で深刻なミスをすると、クビになってしまうのではないかと不安になる人もいるでしょう。実際にミスが原因で解雇される可能性はあるのでしょうか?

1回のミスで解雇される可能性は低い

労働契約法では、経営者の恣意的な判断により不当に解雇されることがないよう、労働者が守られています。第16条には解雇に関して以下の記述があり、1回のミスで解雇される可能性は低いといえるでしょう。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

ミスが多くて周りに迷惑を掛けてしまっていたり、同僚や上司から苦情が出ていたりするからといって、簡単に解雇できるものではありません。しかし、ミスがあまりにも多く会社への損害が大きい場合は、業務遂行能力が足りないと判断されてクビになる可能性もあります。

とはいえミスを恐れるだけだと、状況は悪くなる一方です。次にミスしないための仕組み作りをしたり、失敗したときの対処法を身に付けたりする方が賢明です。

ミスで迷惑を掛けてしまったとしても、これからは会社にしっかりと貢献したいという心意気を持って仕事に取り組めば、解雇される可能性も低くなるでしょう。

出典:労働契約法 第16条 | e-Gov法令検索

仕事でミスをしたときの適切な対処法

パソコンを前に考える男性

(出典) photo-ac.com

仕事でミスをした場合、その後の対処の仕方によって周囲からの評価が大きく変わります。自分の落ち度はしっかり認めて、適切な対処をすることが重要です。ミスしたときに取りたい行動を解説します。

まずはミスを報告して指示を仰ぐ

ミスをしたときは八方塞がりのように感じて、必要以上に焦ってしまうものです。しかし、失敗に気付いたときこそ冷静さが求められます。

失敗を取り繕おうとして勝手に動いたり、気付いていないふりをしたりすると、取り返しの付かない状態にまで事態が悪化しかねません。

ミスをしたらまずは、上司にありのままを伝えることから始めましょう。自分では対処できない事態でも、知識と経験が豊富な上司なら解決できる場合もあります。

言い訳をしたい気持ちは抑えて、ミスに至るまでの経緯と現状を端的に報告しましょう。

関係者に謝罪をする

自分のミスが原因で迷惑を掛けてしまったら、取引先や顧客・社内の関係者に対して謝罪する必要があります。謝罪は相手のところまで出向いて、直接お詫びの言葉を伝えるのが基本です。

ただし遠方の場合は先に電話で謝罪した上で、後日に改めて直接謝罪するのがよいでしょう。メールは誠意が伝わりにくいため、あくまでも対面での謝罪後に補助的な役割として使用するのが適切です。

相手に対するときは言い訳せず、誠心誠意謝るのがポイントです。心の中でどこか反省していない部分があると、態度に表れてしまいます。余計な言葉は盛り込まず、ミスの原因が自分にあることに加えて、これからの対応予定を丁寧に伝えます。最後にもう一度、お詫びの言葉で締めくくりましょう。

原因を探って予防策まで伝える

ミスを犯したとき、謝って許してもらうのが目的にならないように注意が必要です。謝罪することが目的ではなく、今後同じミスをしないような工夫や意識が求められます。

原因を突き止めた後は対策を打ち立てて、上司や関係者に共有しましょう。対策を考えたところで終わらせるのではなく、確実にその対策を実行していき、同じ失敗が発生するのを未然に防ぐところまで意識する必要があります。

仕事でミスをする原因

パソコンを前に頭を抱える男性

(出典) photo-ac.com

仕事でミスをする原因の多くは、業務に取り組む姿勢にあります。ミスの原因として代表的なものをチェックし、自分に当てはまっているか考えてみましょう。

仕事に集中できていない

仕事への集中力を欠いていれば、細かい確認が不足し、ミスが増えるのは当然です。集中力が低下してしまう原因は、主に2種類考えられます。

1つは心身状態が安定していないことです。生活習慣が悪かったり仕事にやりがいを見出せていなかったりすると、うまく頭が働きません。

もう1つは職場の環境に問題があるパターンです。仕事に集中するためには、途中で作業が遮られる心配のない静かな環境で取り組む必要があります。

ミーティングの回数が多すぎて何度も作業が中断される場合や、極端に雑談や物音の多いオフィスでは集中力を維持するのが困難です。環境が原因でミスが起こっている場合は、上司や人事など環境を変えられる立場の人に相談する必要が出てきます。

理解が曖昧なまま仕事を進めている

新しい業務に取り掛かるときは、疑問や不安が多くあって質問の切り口に困るものです。これまでの業務と似た点があったとしても、勝手に進めてしまうと上司の意図と噛み合わなくなる可能性もあります。

疑問点はあっても恐らく大丈夫だろうと、自己判断で仕事を進めてしまうとミスにつながります。業務の目的をよく分かっていないと、失敗したことにすら気付けない場合もあるでしょう。

また、曖昧な理解のままほかの人に情報を伝えるのも、職場全体で起こるミスの原因になります。「企画書は明日までに作成できると思います」「売上は増加…はい」のように、相手に誤解を与えかねない曖昧な表現は避けた方がよいでしょう。

時間に追われて仕事をしている

焦って仕事をしているときも、精神的な余裕がなくミスが多発しやすいといえます。期限ギリギリに仕事をしていると、とにかく時間内に完成形まで持っていく点に執着してしまい、完成品の質に目を向けられなくなります。

もし期限までに仕事が終わったとしても、最後に一通り内容をチェックする時間の確保は困難です。普段であれば再チェックのときに気付くようなケアレスミスでも、そのまま放置して提出したりプレゼンしたりして、後で困る事態にもなりかねません。

仕事のミスを減らすには?

デスクワークをする男性

(出典) photo-ac.com

仕事上のミスを今後減らして行くには、考えられる原因それぞれに対して予防策を用意する必要があります。過去に犯したミスや想定されるミスを書き出して、適した対策を考えましょう。

十分な休息を取る

勤務時間内に十分なパフォーマンスを発揮するには、十分な休息が欠かせません。しっかり睡眠と栄養を取って、万全の体制で仕事に臨むことが大切です。休日には趣味に打ち込んだり十分に疲れを癒やしたりして、仕事への英気を養うのも集中力アップにつながります。

勤務中も根を詰めてばかりいては、徐々に頭の回転が遅くなっていきます。小まめに休憩を取って集中力を維持した方が、結果的にミスが少なくなって成果物のクオリティ向上につながるでしょう。

分からないことは聞く

意図の食い違いによるミスを減らすには、分からないことは上司に尋ねて、疑問をしっかり解消する姿勢が重要です。ただし、むやみに質問すればよいわけではありません。自分なりの考えに対するアドバイスを受ける形を取れば、有意義な質問になります。

また、一度聞いた内容について質問をするのは非効率的で、上司もよい顔をしないでしょう。二度手間にならないよう、話を聞くときは必ずメモを取る姿勢が大切です。

要点だと思った内容はメモに残しておき、後からいつでも確認できるようにしておくのが社会人としてのマナーです。

ダブルチェックの体制を作る

ミスを防ぐためにはダブルチェックが効果的です。作った成果物を自分で見ると、どうしても先入観が入ってしまいます。ほかの人にチェックしてもらえば、自分では気付かない間違いも発見できるため、ミスの確率を大きく下げられます。

取引相手や顧客との打ち合わせでも、自分と相手の間でダブルチェックできるのが理想です。口頭のやり取りだけではしっかり合意を取れていない可能性もあるため、可能であればメールや書面など、文字に残る形で確認しましょう。

ミスの原因に合わせた改善策を練る

ミスの再発を防ぐには、過去に起きた失敗の原因を徹底的に分析する作業が重要です。表面的な原因の特定だけでは根本的な解決にはならず、同じミスが繰り返される可能性が残ります。

例えば、書類からの入力ミスを減らす目的でダブルチェックの体制を整えたとしても、原因が大元の書類の不備にあれば、実際に起こった失敗への対策にはなっていません。

ミスのきっかけになった本当の原因が何なのか特定した上で、間違いが起こる頻度や性質に合わせてベストな改善策を打ち立てましょう。

仕事でミスをした後の気持ちの切り替え術

会話する2人

(出典) photo-ac.com

ミスをして会社をクビになる可能性は低いとはいえ、同僚や上司への申し訳なさから、気持ちが落ち込んでしまう人は多いでしょう。次の仕事に悪影響が出ないように、うまく気持ちを切り替えるスキルも身に付けておくと安心です。

上司や同僚に相談する

失敗のモヤモヤが残っているなら、ミスで迷惑を掛けてしまってつらい気持ちを、上司や同僚に打ち明けてみるとよいでしょう。

1人で塞ぎ込んで考えていると、頭の中で整理しにくくなってきます。ネガティブな考えばかり浮かんでくると、またミスをするという悪循環に陥りかねません。

誰かに相談するだけで考えが整理されて適切な判断ができるようになったり、アドバイスをもらえて心が軽くなったりします。社内で相談できる相手がいない場合は、家族や友人、相談窓口に相談するのも手です。

ただし社外の人に相談するときは、社外秘の情報を漏らさないよう注意しましょう。

プライベートで気分転換をする

自分の犯したミスのことばかり考えていると、まともに仕事が手に付かない上に、どんどん自分を追い詰めてしまいます。終業後や休日にも犯した失敗について考えているような状況では、逃げ場がないと感じて一層つらくなるでしょう。

ミスをした後こそ、プライベートでは仕事でのミスは忘れて、趣味に没頭する時間を作ることが大切です。

好きなことや楽しいことに目を向けてストレスを発散すると、ミスへの対策や次の仕事への活力が養われ、高いパフォーマンスを発揮できるようになるメリットがあります。

自分の努力で改善しないケースも

スーツの男性の後ろ姿

(出典) photo-ac.com

中には個人の努力では改善につながらないミスもあります。集中できない環境のほかにも、会社側でしか改善できないミスの原因は少なくありません。自らの努力で失敗を防げるのかどうかを考え、必要があれば環境を変える行動も検討しましょう。

業務量がキャパシティを超えている

ミスが多発しているとき、冷静になって原因を分析してみると、労働環境の過酷さが原因になっている場合があります。業務量が多かったりノルマが厳しすぎたりすると、長時間労働にならざるを得ません。

あまりに長く働いていると集中力が落ち、真面目に仕事に取り組んでいてもミスが発生しやくすなります。

自身の能力に対して業務量が多すぎると感じたら、上司に業務量の調整をお願いしてみましょう。もし頭ごなしに調整を拒まれる場合は、転職も視野に入れる必要があるかもしれません。

会社の教育体制に問題がある

理解不足によるミスを減らすには、疑問点を上司に聞いて解消する必要があります。しかし、質問できる体制が整っていなければ、曖昧な理解のまま業務を進めることになり、結果的にミスが発生してしまうでしょう。

職場の雰囲気や教育体制は会社ごとにさまざまです。質問できない会社に居続けることで失敗が続く場合、研修制度や社風が自分に合っている会社に転職すれば、能力を十分に発揮できるようになる可能性があります。

業務内容が合っていない

人にはそれぞれ得手不得手があります。クリエイティブ能力に長けている人がルーティンワークの多い事務作業をしていては、十分な成果を上げられないばかりか、意欲がわきにくいためミスも多くなります。

現在の業務で能力を生かすことに限界を感じたら、自分の得意な仕事ができる会社に転職するのも選択肢です。

ただ、業務内容が自分に合っているかどうか判断できるまで、一定の時間が掛かる場合もあります。入社後すぐに判断できないケースも多く、全く違う職種へのジョブチェンジには慎重さが求められます。

転職を検討するなら、豊富な求人が掲載されている「スタンバイ」の活用がおすすめです。Web上の求人を網羅しているため、じっくり求人を見比べながら自分に合った仕事を探せるでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

仕事のミスを減らして成果を上げよう

資料に書き込む男性

(出典) photo-ac.com

仕事でミスをしたとしても、すぐに解雇される心配は通常ありません。ただ、クビにならないからといって失敗を放置するのではなく、原因を特定して対策を練る意識が必要です。失敗をいつまでも引きずらず、上手に切り替えて再発防止に取り組みましょう。

ミスをする原因には自分の力では改善できないものもあります。会社側に問題がある場合は、転職で環境を変えれば、ミスが減って自分の能力を十分に発揮できるようになる可能性があります。

原因が自分と会社のどちらにあるにせよ、根本的な原因を特定した上で適切な対策を取り、業務のクオリティを向上させましょう。

小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト

著書:
人材紹介の仕事がよくわかる本
エンジニア55歳からの定年準備