事務職への転職を考えている人の中には、「倍率が高い」と聞いて不安に思っている人もいるのではないでしょうか?事務職への転職事情や、面接を通過するコツを解説します。しっかりと準備をして、転職を成功させましょう。
この記事のポイント
- 事務職は人気が高い
- 2024年6月時点の東京都の事務職の有効求人倍率は0.46倍です。また、長く働ける職種であることから、欠員が出にくくなっています。
- 一般事務は未経験でも採用されやすい
- 事務職はいくつかの種類に分かれています。その中でも一般事務は、パソコンの操作ができ、最低限のビジネスマナーがあれば未経験でも採用されやすい傾向にあります。
- 転職を成功させるコツ
- 事務職で求められるスキルは、ほかの職種でも少なからず身に付けられるものです。キャリアを棚卸ししてアピールできることをまとめておきましょう。
事務職への転職は難しい?
事務職への転職は、本当に難しいのでしょうか?まずは、事務職への転職事情を解説します。
事務職は人気が高い
結論をいうと、事務職は人気が高く、転職は簡単ではありません。厚生労働省によると、2022年4月時点の東京都の事務職の有効求人倍率は0.39倍でした。
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す指標で、数値が低いほど転職が難しいことを意味します。
事務職の求人は1人あたり0.39件なので、1件の求人に対して2~3人が競争をしている状況です。
事務職はデスクワークが中心で、ノルマもなく体力的・精神的に負担が少ない職種という印象を持つ人が多くいます。また、残業も少なく土日もしっかり休めることが人気の理由です。
派遣やアルバイトと比較される場合も
事務職は、そもそも正社員の求人が少ないのが現状です。コスト削減の観点から、派遣やアルバイトで人員を補充する傾向があるためです。
また、事務職はもともと多くの人員を必要とせず、長く働ける職種であることから、欠員が出にくくなっています。
仮に求人が出されても、多くの人が応募するため競争が激しくなっています。このことからも、事務職への転職は難易度が高いといえるのです。
未経験から事務職への転職は可能?
事務職への転職の難易度は高いことを踏まえ、「未経験からでは転職が難しいのではないか」と不安に思っている人もいるでしょう。未経験から事務職への転職は、本当に難しいのかを解説します。
一般事務は未経験でも採用されやすい
事務職の中でも一般事務であれば、未経験でも採用されやすい傾向にあります。一口に事務職といっても、いくつかの種類に分かれています。
一般事務の仕事内容は、データ入力・書類の整理・来客対応など、多くの人が「事務職」と聞いて想像するものです。
パソコンを不自由なく操作でき、最低限のビジネスマナーがあれば務まることから、人気の高い職種の1つです。
ほかにも、営業チームのサポートをする「営業事務」や、勤怠管理・給与計算をする「総務事務」、帳簿の作成・経費精算などを行う「経理事務」などがあります。
ほかの職種で身に付けたスキルを生かせる
事務職は、ほかの職種で身に付けたスキルを生かしやすい職種です。例えば、パソコンスキルやコミュニケーションスキルは、ほかの職種でも身に付きやすいスキルです。
事務職は縁の下の力持ちの役割を果たしており、それゆえ細かな気遣いが求められるでしょう。
顧客や社内の人に連絡するときに心掛けていたことや、資料を分かりやすく作る工夫をしていたなど、現職の経験でもアピールできることは多くあります。
「これは大したことない」と決めつけるのではなく、一度キャリアを棚卸しすることが重要です。
事務職に求められるスキルや能力
事務職に求められるスキルや能力を解説します。自分の経験で生かせそうなものはどれかを考えながら、見ていきましょう。
パソコンスキル
事務職に求められるパソコンスキルとは、Windowsのパソコンを使いこなす能力と、Microsoft Officeを不自由なく使う能力です。
Officeの代表的なソフトにはWord・Excel・PowerPointがありますが、中でも特に重要なのはExcelです。データ入力・資料作成は、Excelを使って行うことが多いでしょう。
Excelを使うときは、ほとんどの場合で関数を使うので、基本的な関数を覚えておく必要があります。慣れてきたら、関数を使って一から資料を作れるようになることが望ましいでしょう。
また会社によっては、勤怠管理システムや会計ソフトを使うケースもあります。初めて触れるソフトでも、難なく使いこなせるとなおよいでしょう。
基本的なビジネスマナー
事務職の仕事の中には、電話・来客対応があります。これらの業務は会社の顔となって行うため、基本的なビジネスマナーは身に付けておかなければなりません。
ただしビジネスマナーは、ほかの職種をする中で自然と身に付いていることが多いでしょう。例えば、今まで営業や接客をやっていた人なら、特に意識せずとも自然とできている人は少なくないはずです。
社会人経験がある人なら、ビジネスマナーに関してはそこまで気負う必要はないかもしれません。
コミュニケーション能力
事務職は社内のサポート役のため、円滑にコミュニケーションを取れるかどうかは重要です。電話・来客対応はあるものの、事務職が普段一緒に仕事をするのは社内の人たちです。
指示を受けて不明点があればしっかりと確認し、コミュニケーションエラーを起こさず業務を進めるよう心掛けましょう。
また事務職は、ほかの部署から頼みごとをされるケースも多くなっています。タイミングによっては、忙しいときに追加で依頼を受ける場合もあるでしょう。
しかし、自分が大変なときでも嫌な顔をしないことが重要です。不機嫌そうにしていたら、依頼する側も頼みづらくなり、業務が円滑に進まない原因となってしまいます。
社内の人と良好な関係を築くことも、事務職に求められるスキルです。
事務職の志望動機の書き方
事務職への転職を考えている人に向けて、応募書類の志望動機の書き方を解説します。基本的な構成や書くべきではないこと、例文を紹介します。
志望動機の基本構成
志望動機の構成は、以下の3ステップが基本です。
- 事務職を志望する理由
- その考えに至ったエピソード
- 入社後の意気込み
志望理由を書くときは、「なぜ事務職でなければならないのか」「なぜその企業でなければならないのか」が分かるように書く必要があります。そのためには、自己分析や企業研究が欠かせません。
また、志望理由に説得力を持たせるため、具体的なエピソードも記入します。ここで重要なのが、その経験から事務職を志望するに至ったことが、客観的に納得いくかどうかです。
例えば、過去にサポート的な立ち回りをしたことがあり、感謝をされ充実感を得たなどです。事務職の仕事に近い経験があり、それにやりがいを感じたことが伝われば、説得力が増すでしょう。
最後に締めとして、「入社後はどのように会社に貢献していきたいか」を述べます。直前に述べたエピソードから分かる自分の強みを、仕事に生かしていくことを伝えるのがポイントです。
志望動機に書くべきではないこと
以下のような内容は、志望動機に書かないよう注意が必要です。
- 前職の不満
- 「楽そうだから」という気持ちが伝わる内容
- 病気・ケガの履歴
「前職がきつかったから事務職を志望した」というような、後ろ向きな内容はよい印象を与えません。「ノルマがないから」「土日は休めるから」などの理由は、本当にやる気があるのかを疑われてしまいます。
また、過去に患った病気・ケガについては、現在は支障がなかったとしても、あえてこちらから述べる必要はありません。不用意に相手に懸念を抱かせてしまう原因になります。
一般事務職の志望動機の例文
一般事務職の志望動機は、まず結論(理由)を述べ、具体的なエピソードで補強していきます。PCスキルがあれば、アピールすることもポイントです。最後に、入社後の意気込みを述べて締めましょう。
【例文】
私が事務職を志望した理由は、人のサポート役が得意だと感じているためです。私は前職で営業を担当しており、その際成績が落ち込んでいる同僚や後輩の相談に乗ることが多くありました。
私が相談に乗ることで、前向きな気持ちになった彼らから感謝の言葉を述べられたとき、自分もうれしい気持ちになりました。このような経験から、より直接的に人助けをできる仕事に就きたいと考えております。
現職では、提案資料やそのほかの資料の作成にあたり、ExcelやPowerPointを使っているため、基本的なパソコンスキルに問題はありません。
入社後は持ち前のパソコンスキルを生かし、貴社の社員が気持ちよく働ける環境作りに貢献していきたいと考えております。
事務職の面接対策
書類選考に通った後は、面接が控えています。面接対策のポイントを3つ紹介するので、しっかりと準備をしましょう。
面接でよく聞かれる質問と回答例
面接でよく聞かれる質問と回答例を見ていきましょう。面接での受け答えも、志望動機と同じように「結論→理由→具体例」の順番で話すことがポイントです。
【質問と回答例】
Q.「パソコンに関して、どのようなスキルや資格を持っていますか?」
A.「WordとExcelの基本的な操作は心得ております。前職では営業として提案資料の作成や、社内向けの稟議書の作成をしておりました。Excelに関しては、基本的な関数も使えます。」
Q.「事務職で最も重要だと思うスキルと、その理由を教えてください。」
A.「事務職で最も重要なのは、コミュニケーション能力だと思います。事務職は社内のサポート役なので、相手からの依頼に正確に対応することはもちろん、むしろ先回りして行動することが大切だと考えています。
そのためには、相手の意図を正確に理解したり、引き出したりするコミュニケーション能力が欠かせません。」
逆質問を用意しておこう
通常は面接の最後に、逆質問の時間が設けられます。逆質問とは、候補者から面接官に対する質問タイムのことで、候補者の志望度・企業との相性の見極め・疑問点の解消などが主な目的です。
逆質問で好印象を与える質問例は、以下の通りです。
【質問例】
「御社で活躍されている社員の共通点は何ですか?」
「事務職にはどのくらいの年齢層の方が多くいらっしゃいますか?」
「転職にあたりMOSを取得しましたが、御社の業務で生かせる機会はありますか?」
逆質問は、自分の疑問点を解消したり、自分をアピールしたりする最後のチャンスといえます。入社後の自分をイメージするための質問をすることで、入社意欲の高さをアピールできます。
逆質問で何も言わないと、志望度の高さや積極性が疑われてしまうため、逆質問はするのが原則です。緊張で質問が思い浮かばなさそうな場合は、事前に用意しておきましょう。
身なりや受け答えにも気を付ける
事務職は会社の顔として来客対応をすることもあるので、面接時には身だしなみもチェックされています。
シャツにはアイロンをかけ、長髪の人はしっかりと髪を束ねましょう。メイクはナチュラルメイクが基本です。派手なアクセサリー類を付けていないかも、家を出る前にチェックしましょう。
普段着でOKとされている場合でも、シャツ・ジャケット・スカートまたはパンツといったオフィスカジュアルが無難です。
事務職への転職を成功させるコツ
事務職への転職を成功させるコツを、3つ紹介します。全てはできなくても、できることは実践するのが重要です。
必要なスキルを身に付ける
採用の確率を高めるには、事務職として必要とされるスキルを身に付けることが重要です。
事務職において重要視されるビジネスマナー・パソコンスキルに不安がある場合は、書籍やオンライン講座で勉強をしてみましょう。
基本的なパソコンスキルは、インターネットで検索してもたくさんノウハウがヒットします。備えあれば憂いなしともいうように、しっかりと準備をしておくことに越したことはありません。
資格を取得する
事務職に特別な資格は必要ありません。しかし、事務職に関係のある資格を有していれば、採用に有利に働く可能性があります。
事務職を目指す上で役に立つ資格の例は、以下の通りです。
- MOS(Microsoft Office Specialist)
- 秘書検定
- ビジネスマナー検定
特にMOSは、Word・Excel・PowerPointのスキルを客観的に証明できるので、採用する側としては安心材料になるでしょう。
また、秘書検定やビジネスマナー検定を取得していれば、「来客対応も安心して任せられる」と思ってもらうことが期待できます。
紹介予定派遣を選択肢に入れる
正社員での転職を目指していたものの叶わなかった場合は、紹介予定派遣を検討してみましょう。
紹介予定派遣とは、派遣先での正社員・契約社員採用を前提に、派遣される制度のことです。派遣期間の終了時に、お互いの合意があれば雇用契約の締結ができます。
社員登用される前に職場の雰囲気を知れるため、入社後の不安を軽減できることが大きなメリットです。もし転職がうまくいかなかった場合の選択肢として、覚えておくとよいでしょう。
事務職への転職は準備が重要
事務職は人気が高く求人も少ないため、転職を成功させるにはしっかりと準備をすることが大切です。
事務職で求められるスキルは、ほかの職種でも少なからず身に付けられるものなので、キャリアを棚卸ししてアピールできることをまとめておきましょう。
必要と思うのであれば、資格の取得も有効です。ぜひ事務職への転職を成功させ、自分に合った働き方を手に入れましょう。
転職をするなら、スタンバイで情報収集するのがおすすめです。スタンバイでは、正社員や高年収の求人を含む全国1,000万件以上の求人を取り扱っています。事務職への転職を狙うなら、ぜひ一度チェックしてみましょう。
国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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