公務員試験には年齢制限が設けられています。公務員にはさまざまなポジションごとに試験が設けられていて、それぞれ年齢の上限と下限もさまざまです。一般的には何歳まで公務員試験を受けられるのでしょうか?試験の種類ごとに年齢制限の目安も紹介します。
公務員試験には年齢要件がある
公務員試験を受けるに当たって、自分の年齢で受験できるのか確認するステップは欠かせません。公務員試験の年齢制限には独自のルールや目安があるため、受験資格の有無を確かめるときは注意が必要です。公務員試験における年齢制限の目安や考え方を解説します。
30歳前後が一般的
公務員試験の年齢要件は年々緩和されている傾向にあり、幅広い年代の人が公務員試験を受けられるようになってきています。試験によって違いはありますが、現在では30歳前後が年齢要件の上限として設定されているのが一般的です。
年齢の下限は22歳とされることが多いものの、試験の種類によっては下限がもっと高く設定されているケースも珍しくありません。高卒程度区分の公務員試験であれば、17歳から受験できるものもあります。
試験種別、職種・区分によって異なる
公務員試験の年齢要件は試験種別や職種・区分によって変わります。試験の種類は大きく分けて、国家公務員と地方公務員・公安系公務員・準公務員の4つです。職種には行政職や専門職、資格免許職などがあります。
公務員試験には高卒程度や大卒程度・院卒(国家公務員のみ)といった区分があり、高卒程度試験なら20代前半・大卒程度試験なら30歳前後の年齢制限が設けられている試験が多くなっています。
さらに国家公務員なのか地方公務員なのかだけでなく、試験を受ける自治体によっても年齢要件は変わってくるため、受験を申し込む前にしっかり年齢要件を確かめておきましょう。
入職時の年齢で判断される
年齢制限について考えるとき、受験時の年齢が要件を満たしていれば大丈夫だと思っている人が多いでしょう。しかし、公務員試験の要件として提示されている年齢制限は受験時のものではなく、「入職時点の年齢」とするのが基本です。
ただ、実際には「22〜30歳」のように年齢で要件が記載されていることよりも、「1992年4月2日〜2001年4月1日生まれ」のように生年月日で記載されていることが多くなっています。
記載されている生年月日の間に生まれていれば、公務員試験の受験資格を持っていると判断できるため、わざわざ入職時の年齢を考えなくてもよいことが多いでしょう。
試験種別の年齢要件
公務員試験の年齢要件の目安と傾向を、試験の種類ごとに紹介します。ただ、公務員試験の年齢要件は年度ごとに変わるため、申し込み前に改めて公式サイトでの確認が必須です。
国家公務員
大卒程度の国家公務員試験では、年齢要件が21〜30歳とされるのが一般的です。実際に2022年度の国家公務員の総合職と一般職(大卒程度)を見てみると、どちらも2022年4月2日時点で21〜30歳であることが年齢要件とされています。
20歳以下でも大学をすでに卒業している人、または翌年の3月までに卒業する見込みのある人、それと同等だと人事院に認められた人も受験できる決まりです。
ただ、国立国会図書館や参議院総合職など、上限が30歳から前後する国家公務員試験も見受けられます。例えば、国立国会図書館では総合職・一般職(大卒程度)ともに、2022年4月2日の時点で20〜34歳が年齢要件とされました。
参考:
総合職試験(大卒程度試験)|国家公務員試験採用情報NAVI
国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)|国家公務員試験採用情報NAVI
令和4年度国立国会図書館職員採用試験について|国立国会図書館―National Diet Library
総合職試験:参議院
地方公務員
年齢要件の面を考えると、行政職の地方公務員の勤務先は大きく2つに分けられます。1つは都道府県か政令指定都市・東京特別区、もう1つは政令指定都市以外の市町村役場です。
都道府県や政令指定都市・東京特別区では年齢の上限が比較的低めなのに対して、政令指定都市以外の役所では、年齢の上限が高い自治体があります。
例えば東京都の「1類B採用試験(一般方式)」では、22〜29歳に受験資格が与えられています。東京特別区の「I類」では、事務職の場合22〜31歳の人が受験可能です。
政令指定都市以外の市役所の例として、瀬戸内市を見てみましょう。瀬戸内市の一般事務職(大卒程度)は59歳以下が年齢要件とされており、かなり幅広い年齢層の人が応募できるようになっています。
参考:
1類B採用試験(一般方式)|令和3年度実施|試験・選考情報|東京都職員採用
採用試験の概要|特別区人事・厚生事務組合
令和4年度 瀬戸内市職員採用候補者選考試験受験案内 【一 般 事 務 職】
公安系公務員
公安系公務員とは、治安の維持や危険の排除を担う公務員を指します。警察官や消防官・自衛官が代表的な例として挙げられます。公安系公務員の年齢上限は、30歳前後に設定されているのが一般的です。
警視庁の場合、警察官I類は21〜35歳、警察行政職員I類は21〜29歳に受験資格があります。東京消防庁の場合は、消防官I類と一般職員のI類事務ともに21〜29歳の年齢要件となっています。
参考:
採用案内(警察官) | 採用情報 | 令和4年度警視庁採用サイト
採用案内(警察行政職員)警察行政職員I類 | 採用情報 | 令和4年度警視庁採用サイト
令和4年度東京消防庁採用情報サイト|採用情報 採用試験(選考)について
準公務員
準公務員とは、民間企業に勤めつつも公共性や公益性の高い仕事をしている人のことです。準公務員になるために公務員試験を受ける必要はありませんが、独立行政法人では同様の筆記試験を課すケースもあり、難易度が高くなっています。
準公務員には国立大学法人の職員や文部科学省が管轄する文教団体の職員、各種支援機構の職員が当てはまります。
例えば、東京大学の職員になるためには「関東甲信越地区国立大学法人等職員採用試験(統一採用試験)」に合格する必要があり、試験は30歳以下の人だけが受験できる決まりです。日本芸術文化振興会では29歳、日本学生支援機構は総合職で39歳以下が年齢上限となっています。
参考:
統一採用試験|東京大学職員採用案内
事務職員募集|独立行政法人 日本芸術文化振興会
職員募集要項(一斉試験) | JASSO
30歳を超えてから公務員試験を受けるには?
試験の種類によって年齢要件が変わるとはいえ、30歳を過ぎると公務員になる道を選びにくくなるように思うでしょう。ただ、実質的に年齢制限がない応募枠を狙えば、30代に入っても余裕を持って公務員を目指すことは可能です。
経験者採用枠なら実質的に年齢制限がない
公務員試験には「経験者採用試験」があり、一般的に40歳程度まで、場合によっては59歳まで応募できることもあります。
経験者採用試験は「社会人採用試験」や「キャリア採用試験」とも呼ばれ、民間企業や他の公務員・NPO法人などで勤務経験がある人向けの採用枠です。
一定の勤続年数が必要ですが、必ずしも民間企業で正社員として働いていた経歴がなくても問題ありません。アルバイト勤務でも、条件を満たしていれば受験可能な自治体もあります。
参考:
経験者採用試験(係長級(事務))|国家公務員試験採用情報NAVI
キャリア活用採用選考|令和4年度実施|試験・選考情報|東京都職員採用
なぜ公務員試験に年齢制限があるのか?
民間企業の採用では、年齢によって応募者を選別するのは原則として禁止されています。では、なぜ公務員試験には年齢制限が設けられているのでしょうか?
部署異動による知識習得が前提だから
特に行政職の場合、公務員としての職務を全うするためには幅広い知識が求められます。公務員になってからは2〜3年おきに所属部署を異動して、時間をかけて偏りのない知識を身に付けていくのです。
このとき、一般に若い人の方が環境に柔軟に対応する力があるという考えから、年齢上限が設定されています。
職員の年齢の偏りをなくすため
また、公務員の仕事は、全ての国民に対して平等に奉仕するのが理想的な形です。しかし年齢上限がなければ、職種によっては知識と経験に優れた40〜50代の人ばかりが試験に合格して、公務員全体で年齢に偏りが生まれてしまうような事態もあり得ます。
幅広い年齢の人を取り込んだ組織であり続けるためにも、年齢の上限は重要な役割を果たしているのです。
特別職では体力が求められるから
警察官や消防官・自衛官に加えて、内閣総理大臣秘書官や国会職員などの特別職も、国家の治安維持や国防に大きく貢献している公務員です。特別職の多くは、体力を消耗する業務や頻繁な出張が必要になってきます。
特別職の仕事をこなすためには、十分な体力があることが前提です。歳を取るごとに体力はなくなっていくため、年齢上限を設けて若い人を中心に採用する方針は自然だといえるでしょう。
年齢要件を確認して公務員試験を受けよう
公務員の年齢バランスと仕事に必要な能力という面から、公務員試験には年齢要件が設けられています。
全体で見れば30歳前後までとされる試験が多くなりますが、試験の種類や職種・区分によって多様です。年齢要件が緩い自治体の地方公務員試験や経験者採用試験なら、59歳まで試験を受けられるケースもあります。
30歳を超えているからといって、公務員になるのを諦める必要はありません。受けたい試験があればホームページをチェックして、まずは年齢要件を調べてみましょう。