医療事務の仕事内容を詳しく解説!必要なスキルやメリットも紹介

医療事務は根強い人気がある仕事です。未経験でも始められるため、転職先として検討している人もいるでしょう。しかし、医療事務の仕事内容については、意外と知られていません。受付業務をはじめ、どのようなことをするのか詳しく解説します。

医療事務の主な仕事内容は?

事務作業をする看護師

(出典) photo-ac.com

「病院で受付・会計をしてくれる人」というイメージのある医療事務ですが、実際にはそのほかにもさまざまな業務をこなしています。大きく3つに分けられる、医療事務の仕事内容を見ていきましょう。

①医師と患者さんをつなぐ窓口業務

医療事務の仕事内容は多岐にわたりますが、代表的なのはやはり窓口業務です。

受付は、患者さんから診察券・保険証を預かり、症状を聞いて診察の順番を確保します。初めて来院する患者さんに問診票を記入してもらったり、カルテ・診察券を作成したりするのも、受付担当である医療事務の仕事です。

また、受付は個人情報・保険証の確認といった、事務的なことを処理するだけではありません。医療機関の顔として、明るい挨拶と笑顔で患者さんの不安・緊張を和らげるという大切な役割も担っています。

診察が終わったら、患者さんをなるべく待たせないように、会計処理をしなくてはなりません。個人経営のクリニックでは、受付・会計を兼ねることも多いので、正確さ・迅速さが求められます。会計に関する患者さんの質問に答えられる知識も必要です。

②医師の事務作業をサポートするクラーク業務

クラーク業務が行われるのは、主に入院設備があり、診察室が診療科ごとに分かれているような比較的規模の大きい病院です。

患者さんの受付やカルテの準備、検査データの確認などを担当する「外来クラーク」と、ナースステーションに常駐して入退院の手続き・カルテの管理などを業務とする「病棟クラーク」があります。

また、カルテの入力・診断書の作成といった、医師が行う事務作業を代行するのもクラーク業務の1つです。

本来は「医師事務作業補助者」という別の職種ですが、研修を受ければ特別な資格がなくてもできるので、医療事務が担当するケースも多く見られます。特に個人のクリニックでは、医療事務の仕事の一部に含まれていることも少なくありません。

③クリニックの経営に関わる診療報酬請求業務

医療事務の仕事内容に挙げられる診療報酬請求業務は、医療機関の収入にも関わる重要な業務です。

診察・投薬・注射など、医療行為にはそれぞれ診療報酬点数が設定されています。その点数をもとに算出された金額のうち、健康保険の被保険者である患者さんが負担するのは何割か(年齢によって1~3割)です。

医療機関はその残りを審査支払機関を通じて、国民健康保険や各健康保険組合(保険者)に請求しなくてはなりません。

近年では、電子カルテと連動している医療機関が多いので、負担は大きく軽減されています。しかし、診療報酬請求業務には細かいルールがあり、誤り・不備があると戻されてしまうので、最終的なチェックは人間の目で行うことが必要です。

医療事務が必要とされる場所

診察の風景

(出典) photo-ac.com

医療事務として働く場所は、医療機関だけではありません。主な活躍場所を見ていきましょう。

病院・個人のクリニック

医療事務の仕事先として特に多いのは、病院・個人のクリニックです。

複数の診療科がある中規模・大規模病院では、受付・会計・診療報酬請求など、それぞれ担当が分かれていることがほとんどです。そのため、1つの業務に専念したい人に向いています。

一方、小規模な個人のクリニックでは、医療事務員の人数が限られるため、一通りの業務をこなすことが必要です。

クリニックによっては、清掃や必要なものの買い出しといった総務的な業務や、診察のサポートをしなくてはならないこともあります。医療事務に関する総合的な業務を身に付けられるのがメリットです。

歯科医院・調剤薬局

歯科医院・調剤薬局でも、医療事務は不可欠です。診療報酬請求に使用する点数表は異なりますが、手順は病院・クリニックの場合と変わりません。

受付・会計などの窓口業務の流れも同じです。歯科医師・薬剤師が本来の業務に集中できるよう、医療事務担当者が事務作業を担っています。

特にニーズが高まっているのが、調剤薬局での医療事務です。近年は医師が処方し、薬剤師が調剤するという医薬分業が一般的になってきています。

街中には調剤薬局が多数あるので、医療事務が活躍するチャンスはあるといえるでしょう。

病院以外の医療・保健施設

日常的に介護・支援が必要な高齢者が増えていることから、介護施設・訪問介護サービスも増加傾向にあります。

こうした施設でも、サービスを提供する介護スタッフと、利用者・利用者の家族の橋渡し役となる医療事務は必要です。

介護施設・訪問介護サービスでは、医療事務は診療報酬ではなく、介護報酬の請求を行います。使用する点数表や請求先に違いはありますが、基本的なやり方は同じです。

また、窓口を担当する医療事務が、その施設の顔になるという点も変わりません。仕事内容が多少異なっても、明るく丁寧な接遇が求められるのは共通しています。

医療事務の特徴やメリット

病院の受付

(出典) photo-ac.com

男女ともに人気のある医療事務ですが、バックグラウンドの違いやさまざまな事情があっても比較的働きやすい仕事といわれています。その理由について探っていましょう。

資格や学歴は不問なことが多い

医療事務は、医療関係でも数少ない、特別な資格がなくてもできる仕事です。医療事務全般や診療報酬請求業務の技能を認定する民間資格も、就職にあたって必須ではありません。

資格があれば有利になったり、資格手当が付いたりする医療機関もありますが、基本的に未経験でも始められます。就職してから必要になった場合でも、働いて知識を身に付けながら挑戦することが可能です。

また、大卒・専門学校卒といった条件もほとんどありません。高卒または同程度の学歴があれば十分でしょう。

経験があれば全国どこでも働ける

医療事務の仕事内容は、全国どこでも大きな違いはありません。また、病院・個人のクリニック・歯科医院・調剤薬局などが、1つもない地域は少ないはずです。

医療事務の知識・技能があれば、結婚・引っ越しでほかの土地に移っても、仕事探しには困らないでしょう。

また学歴や年齢より、経験が重視されるのも医療事務の特徴です。ブランクもあまり問題にはなりません。経験者は即戦力になるため、比較的採用されやすい傾向にあります。

近年では調剤薬局を兼ねたドラッグストアも登場しており、医療事務の仕事の選択肢がさらに広がったといえるでしょう。

柔軟な働き方ができる

医療事務の勤務形態は、正職員・パート・派遣などさまざまです。特に個人のクリニックの場合、午前または午後だけ働くなど、比較的自分の都合に合わせた働き方を選びやすいというメリットがあります。

また医療機関によっては、子どもが小さいうちは時短勤務で働き、少し手が離れたタイミングでフルタイムとして復帰するという勤務形態も可能です。

自宅近くのクリニックなら、通勤時間も少なく済むので働きやすいでしょう。休憩時間に帰宅して家事をこなしたり、昼食を済ませたりすることもできます。

医療事務に必要なスキルは?

医療機関で働く女性

(出典) photo-ac.com

未経験でも始められる医療事務ですが、身に付けておくと重宝されるスキルはあります。これまでの職歴が役立つケースもあるので、チェックしておきましょう。

コミュニケーション能力

受付を担当する医療事務員には、不安・緊張を抱えて来院する患者さんの気持ちを和らげるような、明るい笑顔と話し方が求められます。

自分の症状をうまく説明できない患者さんに対しては、言いたいことを察してまとめたり、「こんな感じですか?」「どこが痛いですか?」と具体的な対応をしてあげたりなど、気配りをすることが大切です。

高齢者には大きめの声でゆっくり話すなど、患者さん1人1人に合わせた対応が必要となります。

迅速な事務処理能力

近年では、医療事務の仕事にパソコン操作は欠かせないものになっています。受付・会計・診療報酬請求業務などを迅速・正確に行うために、基本的なパソコン操作スキルは身に付けておくべきでしょう。

医療事務に限らず、事務仕事全般において「間違いのないこと」は重要です。しかし、正確性にだけ重点を置きすぎると、窓口業務だけでなく診察のスピードにも影響を及ぼしかねません。

体調が優れず来院している患者さんを必要以上に待たせないよう、迅速さを意識することも重要です。

トラブルへの対応力や判断力

医療事務には、臨機応変さも求められます。例えば、待合室で患者さんの体調が急に悪くなり、先に診察が必要になったときは、順番を待っているほかの患者さんに納得してもらえるような、適切な説明をしなくてはなりません。

患者さんからのクレームに対しても、誠意を持って応対し、場合によっては医師・医療スタッフに引き継ぐ対応力が必要です。

また、窓口業務ではいくつかの業務が重なったり、急な事務処理を頼まれたりすることもあります。そんなときにも慌てず、優先順位を付けて冷静に処理できる判断力があると、医師・医療スタッフからの信頼も高まるでしょう。

医療事務を目指すなら知っておきたいこと

資格の勉強

(出典) photo-ac.com

医療事務の仕事内容にはメリットが多くありますが、注意点もあります。転職を目指す前に、知っておきたいポイントを見ていきましょう。

医療事務の平均年収は日本の平均と同程度

医療事務を目指すにあたって気になるのが、収入です。厚生労働省が管理する「job tag」によると、令和3年度の医療事務の平均年収は439.7万円となっています。同年の日本の平均給与が443万円なので、同程度といえるでしょう。

ただし、統計にはさまざまな勤務先・勤務形態が含まれています。大規模病院の正職員で夜勤もある医療事務員と、個人のクリニックでパートで働く医療事務員とでは、当然大きな差があるでしょう。また、居住地によっても異なる場合があります。

参考:
医療事務 - 職業詳細 | job tag(厚生労働省)
令和3年分民間給与実態統計調査 |国税庁 長官官房 企画課

さまざまな業務を覚える必要がある

受付・会計・クラーク業務・診療報酬請求業務など、医療事務の内容は多岐にわたります。特に個人のクリニックでは、業務全般をこなさなくてはならないこともあるでしょう。そのため、初めのうちは業務を覚えるのが大変かもしれません。

特に診療報酬請求業務は、請求書を作成するにあたってさまざまなルールがあります。仕組みややり方を身に付けなくてはならない上、一般事務とは大きく異なる点が多いので、他業種から転職してきた人は戸惑うことが多いようです。

医療事務は未経験から始められる専門職

受付の女性

(出典) photo-ac.com

医療事務の仕事内容は、慣れるまでは覚えることが多く大変かもしれません。しかし、働いていくうちに一生使える技能を身に付けられます。

学歴や年齢よりも経験が重視されるので、全国どこでも仕事を探せるのもメリットです。これからの高齢社会において、医療事務のニーズはますます高まるでしょう。

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小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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