保育士の仕事は、子どもの世話だけではありません。その詳細な仕事内容や、やりがい・1日の仕事の流れなど、保育士を目指す上で知っておきたいポイントを整理していきましょう。保育士になるための具体的な方法も紹介します。
保育士の仕事内容は?
保育士というと、「子どもの身の回りの世話や遊び相手をする人」といったイメージで捉えられがちですが、実際のところはどうなのでしょうか?保育士の仕事内容について詳しく見ていきましょう。
主な仕事は子どもたちの世話
保育士の仕事といえば、メインはやはり子どもたちの世話です。子どもたちが安全に楽しく1日を過ごせるよう、年齢に応じて援助します。
とはいえ、保育士の仕事は子どもの身体的な世話だけではありません。子ども同士の関わりを見守り、集団生活の中で子どもの情緒や社会性・協調性を育むのも保育士の大切な仕事です。
心身の発達のサポートを通じて子どもたちに寄り添いながら、基本的な生活習慣や人間関係の学びにつながるような活動や遊び、すなわち保育内容を計画することも、保育士の重要な仕事といえます。
保護者との連携や事務仕事も
保育士の仕事には、意外なほど多くの事務作業があります。保育士が担う主な事務作業は、以下の通りです。
- 連絡帳の記入
- 保育計画の作成
- 保育日誌の作成
- 保育経過記録(児童票)の作成
- 園だよりなど配布物の作成
求められる事務作業の量や頻度は施設によってさまざまですが、「事務作業は一切生じない」ということは基本的にありません。
中でも連絡帳の記入は、施設での子どもの様子やその日の出来事を保護者に伝えたり、反対に保護者から子どもについて情報を提供してもらったりと、保護者とのコミュニケーションを取る上で必要不可欠なものです。
保育士の仕事をする上で、事務作業は必要不可欠なものといえるでしょう。
幼稚園教諭との違い
未就学児のサポートをメインで行う仕事として、並び称されることの多い「保育士」と「幼稚園教諭」ですが、両者には以下のように明確な違いがあります。
- 保育士:保育士資格が必要。0歳〜就学前の子どもの保育が目的。管轄は厚生労働省
- 幼稚園教諭:幼稚園教諭免許が必要。3歳〜就学前の子どもの教育が目的。管轄は文部科学省
近年、幼稚園と保育園の両方の役割を担う「認定こども園」の増加に伴い、「保育士」「幼稚園教諭」の両方の資格・免許を持つ「保育教諭」の需要も高まっています。将来的なキャリアアップを目指すなら、選択肢の1つとして検討しましょう。
保育士の1日の流れは?
中には「保育士の1日のスケジュールはどうなっているのだろう?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。保育士の1日の一般的な流れを確認しましょう。
スケジュールの一例
保育士のスケジュールは、勤務する施設によって異なります。以下のスケジュールは、あくまで一般的なものとして参考にしましょう。
- 8:30:出勤・登園対応
- 10:00:朝の会・散歩
- 11:00:昼食準備・昼食
- 13:00:お昼寝準備・見守り
- 15:00:おやつ
- 16:30:お迎え対応
- 17:30:退勤
出勤時間・退勤時間は、シフトによっても変動します。また、連絡帳の記入などの事務仕事は、子どものお昼寝中などの隙間時間を利用して行うのが一般的です。
仕事時間は1日8時間が目安
多くの保育施設では、7:00頃〜19: 00または20:00頃まで子どもの保育を行っています。全ての時間に必要な人員を確保できるよう、保育施設の勤務形態は主に以下に挙げる3パターンです。
- シフト制:早番・中番・遅番など、主に3つのシフトを交代で勤務
- 固定時間制:7:00~16:00・8:30~17:30など、一定の時間での勤務
- 変形労働時間制:特定の期間内で労働時間を調整しての勤務
このうち、多くの保育施設で採用されているのは、シフト制と固定時間制です。いずれも実働8時間を目安として、勤務時間が設定されています。
また、最近では、正規職員はメインの時間帯だけを受け持ち、クラス担任業務に従事し、朝と夜の延長保育は非正規職員(有資格者)が担当する、というように分けている園もあるようです。
保育士のやりがい
日々子どもと接する保育士の仕事は、たくさんのやりがいがある仕事です。保育士だからこそ感じられる主なやりがいを確認しましょう。
子どもたちに接する喜び
仕事を通じて得られるやりがいとして、多くの保育士が「子どもたちの成長を見届けられること」を挙げます。
保育士が担当する0歳〜小学校入学前の時期の子どもは、日々大きく成長していきます。昨日できなかったことが今日できるようになったり、自分のことで精一杯だった子どもが友達への思いやりを見せたりという姿を見るのは、まさに醍醐味といえるでしょう。
日々子どもたちの成長をサポートし、笑顔を見守ることに保育士は大きなやりがいを感じているのです。
保護者との連携で感じるやりがい
保育士は、保護者に代わって子どもの保育を担う仕事です。連絡帳や、送迎時の会話を通じて保護者とコミュニケーションをとる中で、育児にまつわる相談を受けるケースも少なくありません。
保護者から相談を受けることは、保育士にとって大きな喜びといえます。というのも、相談はすなわち保護者から信頼されている何よりの証だからです。
そんな保育士にとって、保護者からの「ありがとう」の言葉は、仕事をする上での大きな励みとなります。「この仕事をしていてよかった」と心から感じられる瞬間といえるでしょう。
卒園した子どもたちと出会えたときにも
日々の子どもの成長は、保育士に大きなやりがいを感じさせてくれるものですが、それは卒園後も同じです。
卒園後にも、保育士に会うために施設を訪れる子どももいます。また、保育士と施設に通う子どもとは生活圏が重なりやすく、卒園後に偶然再会するケースも珍しくありません。
自分が担当した子どもが健やかに育っていく様子を見る瞬間は、保育士が強い達成感や充実感を覚える瞬間でもあります。それぞれの子どもの成長は、そのまま保育士のやりがいにつながるといっても大げさではないのです。
保育士になる方法は?
実際に保育士を目指す上で、どのような方法があるのでしょうか?必要な資格と、そこに至るまでのルートを確認しましょう。
国家資格である「保育士資格」が必要
保育士になるためには、国家資格である「保育士資格」を取得する必要があります。保育士資格を目指すためのルートは複数あり、保育士試験の受験もその1つです。
保育士試験は、前期と後期の年2回実施されます。筆記試験・実技試験があり、それぞれ満点の60%以上を得点しなければなりません。
試験の難易度は高く、合格率は例年20%前後です。2022年には約30%でした。合格した科目は3年間有効なので、3年間かけて全科目合格すれば資格を取得できます。保育士試験を受験して保育士を目指すなら、ある程度の時間をかけて勉強に励む必要があるでしょう。
保育士になるための複数ルート
前述の通り、保育士になるためのルートは複数あります。
まず、厚生労働大臣が指定する「指定保育士養成施設」の大学・短期大学・専門学校を卒業した人は、無条件で保育士資格が得られます。資格を得るために改めて試験勉強や受験をする必要はありません。
また、指定保育士養成施設以外の大学・短期大学・専門学校を卒業している人は、保育士試験を受験して合格することで、保育士資格が得られます。
最終学歴が中卒・高卒の場合は、まず受験資格を得るために保育所ほか指定の児童福祉施設で、定められた時間の実務経験を積むことが必要です。受験資格を得ることができれば、試験に合格することで資格を取得できます。
複数のルートが用意されているため、誰にとっても目指しやすい資格といえるでしょう。
働きながら保育士になるには
すでに社会人として働いている人が、実際に保育士を目指すにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、一般的な大学・短期大学・専門学校を卒業している人の場合、すでに保育士試験の受験資格があります。試験勉強をする必要はありますが、試験に合格すれば保育士になれます。
最終学歴が高卒の場合でも、1991年3月31日以前に卒業している・もしくは高校の保育科を1996年3月31日以前に卒業している場合には、受験資格があります。このケースも、試験に合格することで保育士資格を取得できます。
上記にあてはまらない場合、定められた時間の実務経験を積み、受験資格を取得してから保育士試験に臨むことになります。または、指定保育士養成施設の大学・短期大学・専門学校に改めて進学するのもよいでしょう。
必要な時間や費用を計算し、自分に合った方法を検討してみましょう。
やりがいの十分な仕事を目指そう
保育士は、子どもの心身のサポートを通じ、その成長を見届けられるとてもやりがいのある仕事です。
保育士資格は国家資格ではありますが、保育士になるためのルートや受験資格の取得方法は幅広く、社会人から目指すことも十分に可能です。
心からやりがいを感じられる仕事を目指すなら、1つの選択肢として保育士を検討してみてはいかがでしょうか。
短期大学保育学科・専任教員。音楽、表現、キャリア教育等を担当している。保育所での音楽講師や保育士職としてのキャリアを生かし、2010年に保育士試験実技対策講座(音楽・言語)を開講。経験をもとに大学院修士課程にて学び、2017年より現職。
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