作業療法士に向いていない人の特徴を知ることは、作業療法士への挑戦を検討する際の大きなヒントになります。やりがいや具体的な仕事内容・どうしたらなれるのかなど、作業療法士にまつわる情報を整理しましょう。
作業療法士に向いてない人の特徴
作業療法士に挑戦してみたい気持ちはあるものの、自分が向いていないのではと、不安を抱えてはいませんか?作業療法士に向いていない人の主な特徴を紹介します。
コミュニケーションが苦手な人
作業療法士は、心身のリハビリテーションを通じ、患者がその人らしい生活を手に入れるためのサポートをする仕事です。
対応する患者は幅広く、「心に問題を抱えた人」「身体に問題を抱えた人」「発達期の人」「老齢期の人」のすべてが対象となります。
それぞれに合わせたケアが必要なため、患者の心身の状態を聞き取ったり、スムーズにリハビリテーションを進めるためのコミュニケーションを取ったりすることが必要不可欠です。
人と話をすること・自分から積極的に人に関わることに苦手意識がある人は、残念ながら作業療法士には不向きといえそうです。
すぐに結果を求める人
患者の状態によっても異なるものの、リハビリテーションは基本的に時間がかかるものです。どんなに尽力してもほんのわずかな改善しか見られなかったり、場合によっては後退してしまうケースも珍しくありません。
こうした実情を踏まえると、すぐに結果を求めるタイプの人にとって、作業療法士の仕事は日々フラストレーションが溜まるものとなるでしょう。思うようにならないことへの焦りや、自分の仕事に対する自信喪失などに悩まされる可能性も考えられます。
作業療法士がネガティブな状態では、患者にも良い影響を与えません。すぐに結果を求める人・せっかちな人には不向きな職業といえそうです。
体力に自信がない人
作業療法士は、体力勝負の仕事でもあります。患者の介助や支援に加え、訪問リハビリテーションでは移動も伴います。プログラムの内容によっては、重たい物を運んだり、動き回ったりする必要もあるでしょう。
また、慢性的に人手不足な施設も多く、十分な休憩が取れないケースも少なくありません。あまりにも心身の負荷が大きい場合には、現実的に続けられないと感じてしまうケースもあります。
職場環境による部分が大きい問題ではあるものの、もともと体力に自信がない人が目指すには、ややハードルの高い職業といえそうです。
作業療法士に向いている人の特徴
作業療法士に向いていない人の特徴が分かったら、併せて知っておきたいのが作業療法士に向いている人の特徴です。自分の適性を見極めるヒントとして確認しましょう。
観察力が鋭く共感力が高い
作業療法士は、個々の患者に対する適切なアプローチが求められる仕事です。抱えている問題が1人ずつ違うため、目の前の患者を丁寧に観察し、共感する姿勢が必要不可欠といえます。
例えば「今日は思うようにプログラムが進まない」と感じたとき、患者の表情がいつになく曇っていたり、言葉数が少なかったりという点に気付ければ、内面に寄り添ったより適切な対応ができるでしょう。
言動から人の気持ちを読み取るのが得意な人や、高い共感力を持つ人は、作業療法士として活躍できる素養があるといえそうです。
柔軟な発想や強い好奇心
作業療法士が行うリハビリテーションの内容は、患者の置かれた状況によって異なります。
患者が意欲的にリハビリテーションに取り組めるかどうかは、どんなプログラムを用意するかにかかっているといっても大げさではありません。
患者それぞれが前向きに挑戦できるプログラムを用意できるよう、マニュアルに縛られない柔軟性や、患者の個性や新しい知見への強い好奇心を持つことも作業療法士には必要です。
「いろいろなことに興味がある」「人を楽しませることが得意」という人は、作業療法士に向いているといえるでしょう。
作業療法士のやりがい
仕事を選ぶ上で、重要なポイントとなるのがやりがいです。作業療法士の仕事で得られるやりがいとはどのようなものなのか、ここで確認しましょう。
「らしさ」を取り戻すサポートができる
作業療法士は、リハビリテーションを通じて「作業」に伴う能力の習得や改善をサポートする仕事です。
ここでいう能力とは、運動や認知などの「基本的動作能力」、食事・排泄などの「応用的動作能力」だけではありません。就学や就労など、社会の中で生きていくために必要な「社会的適応能力」も含みます。
作業療法を通じ、これらの能力を習得・改善することは、患者が自身の尊厳と自分らしさを取り戻す助けとなります。
携わった患者の「らしさ」を取り戻すサポートができるのは、作業療法士にとって大きな喜びであり、何よりのやりがいといえるでしょう。
改善が見られたときの達成感
患者の状態が改善することで得られる達成感も、作業療法士の大きなやりがいの1つです。
作業療法士が担当する患者の抱える問題は多岐にわたります。勤務する施設にもよるものの、例えば事故や病気が原因で何らかの身体機能に大きなダメージを受け、深く傷ついている人をサポートするケースも少なくありません。
作業療法士の提案したプログラムによってうまく症状が改善すると、多くの患者は身体機能を取り戻すのと同時に、内面的にも大きな変化が現れます。
日に日に輝きを取り戻す患者を見守る中で、作業療法士は「力になれた」と心からのやりがいを感じられるのです。
専門家としてのスキルアップ
作業療法士が携わる患者はさまざまで、資格取得時の知識やスキルだけでは不十分だと感じるケースも少なくありません。そんな人に対応する資格として、作業療法士には「認定作業療法士」と「専門作業療法士」という上位の資格が用意されています。
認定作業療法士は、作業療法士として一定以上の水準のスキルを持つことを証明する資格です。
また専門作業療法士は、11の専門分野における高い専門性を有していることを証明する資格です。受験にあたっては、認定作業療法士の資格を取得していなければなりません。
資格を通じてスキルや自信を高められるのは、作業療法士ならではのやりがいの1つといえるでしょう。
作業療法士の仕事内容となり方
多くのやりがいを感じながら働ける作業療法士ですが、実際の仕事の内容とはどのようなものなのでしょうか?仕事内容の詳細について、なり方とともに紹介します。
仕事の内容
作業療法士の仕事の基本は、患者の動作能力の習得・回復を心身両面からのアプローチによってサポートすることです。
活躍の場は「病院」「介護老人保健施設」「児童発達支援センター」「特別支援学校」「ハローワーク」などさまざまで、勤務する施設によって仕事内容も変わります。
例えば病院勤務の場合、仕事内容は患者の身体機能回復を目的としたリハビリテーションがメインとなります。
一方で児童発達支援センターに勤務する場合、機能訓練はもちろんのこと、遊び方や道具の使い方を身に付けるためのサポートや、保護者との面談も仕事の一環です。
仕事の内容が幅広い分、自分は何がしたいのかを明確にする必要がある職業といえるでしょう。
必要な資格
前述の通り、作業療法士は国家資格です。作業療法士として働くためには、まず「作業療法士国家試験」の受験資格を得た上で、試験に合格しなければなりません。
受験資格を得るためには、養成施設として認められた所定の大学・短期大学・専門学校で3年以上学ぶ必要があります。
どの養成施設でも問題はありませんが、できるだけ短期間で受験資格を得たいと考えるのであれば、3年制の短期大学や専門学校が主な選択肢となるでしょう。
社会人から作業療法士になるには
中には、社会人から作業療法士を目指すのはさすがに無理なのではと考える人もいるのではないでしょうか。しかしその心配はいりません。作業療法士は、社会人からでも十分に目指せる資格です。
まず受験資格を得るまでの段階ですが、作業療法士の養成学校には通信課程がありません。通学が必須ですが、夜間部を設置している学校も多く、働きながらでも無理なく学べます。
また、作業療法士の就職率は100%で、なおかつ奨学金制度や教育ローン制度も充実しています。
資格取得までの時間や費用の負担が少ない作業療法士は、社会人から目指すのにぴったりの資格といえそうです。
作業療法士に関するQ&A
作業療法士の仕事は、一般的にどのくらいの年収が得られるものなのでしょうか?また、理学療法士との違いはどのようなものなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
年収はどのくらい?
厚生労働省が行っている「賃金構造基本統計調査」によると、2021年の作業療法士の平均年収は企業規模計(10人以上)で約405万円となっています。
ただし、この数字は作業療法士に加え「理学療法士」「言語聴覚士」「視能訓練士」も含んだ平均年収です。また、一般的に年収は性別や勤続年数・施設の規模によっても大きく変動します。
ここで紹介した数字は、あくまでも作業療法士を目指す際の1つの参考程度に捉えておくのがおすすめです。
参考:
理学療法士との違いは?
理学療法士は、立つ・座る・歩くといった基本動作の回復や維持を担う職業です。作業療法士と同じく国家資格で、所定の養成校で学んだ上で理学療法士国家試験に合格する必要があります。
作業療法士が「作業療法」によるアプローチをするのに対し、理学療法士は、「運動療法」と「物理療法」からのアプローチを行います。
物理療法とは、熱や光・マッサージなどを利用した物理的な治療のことです。物理療法の有無は、作業療法士と理学療法士との大きな違いです。
ともにリハビリテーションに関係する職業ではありますが、身体機能の基本的な部分を扱うのが理学療法士・身体機能の応用に加え、精神的な部分も扱うのが作業療法士といえるでしょう。
作業療法士のやりがいにも注目を
作業療法士は、リハビリテーションを通じて心と体の両面から患者をサポートし、その人らしさを取り戻す手助けをする仕事です。
夜間部でカリキュラム履修が可能だったり、奨学金制度があったりと社会人からも目指しやすい資格のため、転職で資格取得に挑戦する社会人も少なくありません。
仕事を通じて達成感を得たり、スキルアップを目指したりできる作業療法士について、選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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