介護職の賃上げは今後も期待できる?2022年に実施された内容とは

ここ数年、介護職の賃上げが続いています。2022年2月からは福祉・介護職員の収入を3%程度引き上げる制度がスタートしました。賃上げの恩恵を享受できるのはどのような職種の人たちなのでしょうか?制度の概要や介護職の魅力について解説します。

介護職の賃上げ制度

介護士のリハビリ

(出典) photo-ac.com

介護職というと「重労働で賃金が安い」というイメージを持つ人もいるでしょう。一方で、超高齢社会に突入した日本において、介護職はなくてはならない職業です。現状の慢性的な人手不足を解消するため、政府は介護職の賃上げを実施しています。

2022年2月から実施

2021年に発足した岸田政権は、医師、看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士といった社会基盤を支える現場で働く人たちの所得向上を重点政策の1つに掲げています。

2022年段階で実施されている賃上げ制度は「介護職員等ベースアップ等支援加算」と呼ばれるもので、2~9月に実施された「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」がベースです。これは、福祉・介護職員の処遇改善のために収入を3%程度(月額9,000円相当)引き上げる特例です。

2017年・2019年にも処遇改善あり

介護職の賃上げは今に始まったことではありません。2017年と2019年にも介護報酬の改定が行われており、介護職の労働条件は年々改善しています。

2017年には、介護報酬を1.14%引き上げる方針が打ち出されました。介護職員処遇改善加算※の区分を拡充して「加算(1)」を新設し、昇給に基づく賃上げを実施したのです。

2019年には、処遇改善加算に介護報酬を上乗せする「特定処遇改善加算」が設定されました。ベテラン職員の処遇改善を目的に、主に勤続10年以上の介護福祉士に対して「月平均8万円相当の賃上げ」または「年収440万円以上となる者を設定・確保」を実施する内容です。

※介護職員処遇改善加算:介護事業所で働く介護職員の賃金改善を行うための加算で、区分ごとの要件を満たした場合に一定の報酬が加算される。

参考:
2017年度介護報酬改定の概要|厚生労働省
2019年度介護報酬改定について|厚生労働省

2022年の処遇改善内容は?

車いすを押す介護士の女性

(出典) photo-ac.com

2022年に実施された処遇改善は「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金(2~9月)」と「介護職員等ベースアップ等支援加算(10月~)」です。

現行制度のベースとなっている福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金とはどのような制度なのでしょうか?内容を詳しく見ていきましょう。

補助金額

本制度は、一定の取得要件を満たした事業所に補助金が交付され、その補助金が事業所で働く職員の給与に賃上げ分として反映される仕組みです。

補助金額は「福祉・介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均9,000円の賃金引上げに相当する額」です。「全職員の給与が一律9,000円アップする」と思われがちですが、単純に賃金が上乗せされるわけではありません。

サービスごとに異なる交付率が設定されており、事業所の総報酬に交付率を乗じた額が交付されます。改善額は職員ごとに異なる点に注意しましょう。賃上げ対象の職員に対しては月給の基本給、または手当として支給するのが基本です(ベースアップ)。

参考:福祉・介護職員の処遇改善 |厚生労働省

取得要件

福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は、以下のような取得要件を満たした事業所が対象です。

  • 福祉・介護職員処遇改善加算(1)(2)(3)のいずれかを取得していること
  • 原則、2022年2月から実際に賃上げを行っていること
  • 交付金の全額を賃金改善に充てており、かつ賃金改善の合計額の2/3以上をベースアップ等に充てること

福祉・介護職員処遇改善加算(1)(2)(3)とは、職員の収入向上を目的に創設された加算区分で、それぞれに設定された「キャリアパス要件」や「職場環境等要件」をクリアしなければ取得ができません。

参考:「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」のご案内|厚生労働省

対象となる職種

賃上げの対象となるのは「福祉・介護職員処遇改善加算(1)(2)(3)を算定する事業所」に勤める福祉・介護職員です。正社員はもちろん、パートやアルバイトも含まれます。

そもそも福祉・介護職員処遇改善加算は、デイサービスや入所施設などで福祉・介護を直接的に行う職種が対象です。栄養士や事務職員などは賃上げの対象から外れますが、事業所の判断で他の職員の処遇改善に金額を配分することが認められています。

地域包括支援センター・訪問リハビリテーション・福祉用具貸与などのサービス種別は福祉・介護職員処遇改善加算に該当しないため、賃上げの対象ではありません。

10月からは新たな改善策が

福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は2022年9月に終了し、10月からは介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、ベア加算)がスタートしました。

取得要件および対象となる職種は、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金とほぼ変わりませんが、これまで国の補助金で賄っていた賃上げ分を介護報酬に組み込むルールとなります。

加算額は、事業所の総報酬に「サービスごとのベア加算率」を乗じた額です。ベア加算の加算率は補助金交付率よりも1.13%高く設定されており、福祉・介護職員のさらなる収入向上につながっています。

参考:令和4年度介護報酬改定について|厚生労働省

そもそも介護職の平均給与は?

カレンダーとお金と電卓

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介護職は将来性のある職業です。段階的な賃上げが実施されていますが、未経験者の中には「介護職の月給はどのくらい?」「収入が少ないって本当?」という疑問を抱く人も多いでしょう。ここでは、常勤の介護職員の平均給与を取り上げます。

月給はおよそ32万円

厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果(第79表 介護従事者等の平均給与額等)」によると、介護職員の平均給与額は月31万6,610円です。介護職員の平均給与額をサービス種類別で見てみましょう。

  • 介護老人福祉施設 :34万5,590円
  • 介護老人保健施設 : 33万8,390円
  • 介護療養型医療施設 :28万7,070円
  • 介護医療院:30万7,550円
  • 訪問介護事業所 :31万4,590円
  • 通所介護事業所:27万8,180円
  • 通所リハビリテーション事業所:29万7,980円

同じ常勤の介護職員でも、働く施設によって毎月の給与に数万円の差が生じることが分かります。

参考:第79表・第82表|令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省

介護職は目指したい職業?

車いすを押す介護士

(出典) photo-ac.com

介護職未経験の人は、「人のお世話をする仕事」という漠然としたイメージしかないかもしれません。介護は人の役に立つホスピタリティーに溢れた仕事です。介護職の魅力や必要な資格を解説します。

介護職の仕事内容

介護職の仕事は「生活援助」と「身体介護」に大別されます。生活援助とは、本人に代わって必要な家事(料理・掃除・洗濯など)を行い、快適な日常生活が送れるようにサポートすることです。

身体介護は、利用者の体に接触して身の回りの世話をすることです。代表的なものには食事介助・排泄介助・入浴介助・移動介助などがあり、生活援助よりも難易度が高いとされています。

生活援助は無資格者でも行えますが、単独で身体介護を行うには介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格を取得していなければなりません。身体介護のみを行う事業所もあれば、生活援助と身体介護の両方を行う事業所もあるため、業務内容をよく確認しておく必要があります。

介護職の魅力とは

介護現場で働く人は、仕事のどのような点に魅力を感じているのでしょうか?

多くの人は、利用者やその家族に感謝の言葉をかけられたときにやりがいを感じるといいます。笑顔で「ありがとう」「あなたがいてくれて助かる」と言われると、人の役に立つ喜びや充実感を覚えるようです。

キャリアパスが明確であり、自分の努力次第で介護福祉士やケアマネジャーなどの上位職が目指せるのもメリットです。また介護業界は慢性的な人手不足なので、安定して長く働けるでしょう。

「手に職をつけたい」「将来性のある職種を選びたい」「ホスピタリティーのある仕事がしたい」という人にはぴったりかもしれません。

働きながら資格取得も可能

事業所によっては生活援助と身体介護の給与を区別しています。以下のような資格があればできる仕事が格段に増え、収入アップにもつながるはずです。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護福祉士
  • 相談支援専門員

未経験者は、キャリアパスの入口である介護職員初任者研修からスタートしましょう。資格取得のための受講時間(通信課程+通学課程)は130時間で、修了試験に合格する必要があります。

土日コースや夜間コースを設ける養成校もあるため、働きながらの資格取得も可能です。

やりがいと収入を両立できる職に就こう

介護士と高齢者

(出典) photo-ac.com

介護職の収入は年々上昇傾向にあります。2022年は2月から賃上げがスタートしており、10月以降は加算額が介護報酬へ恒久的に組み込まれることになりました。

勤務年数の長いベテラン職員は特定処遇改善加算の対象となるため、モチベーションを維持しながら働けるでしょう。介護職はやりがいと収入アップが両立できる仕事といえます。

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