超高齢社会に突入している日本では、ホームヘルパーのニーズが高まっています。ホームヘルパーは生活援助と身体介護の両方を行うため、介護の資格が必要です。必要な資格の取り方や、ホームヘルパーの仕事内容などについて解説します。
ホームヘルパーに介護の資格は必要?
ホームヘルパーは要介護者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行う介護職です。介護保険法での正式名称は「訪問介護員」ですが、一般的には「ヘルパー」や「ホームヘルパー」と呼ばれています。ホームヘルパーになるには、どのような資格が必要なのでしょうか?
「介護職員初任者研修」の修了が必要
介護職は、資格の有無によって仕事内容が変わります。デイサービスや有料老人ホームなどの介護施設には、無資格でも従事できる仕事がありますが、ホームヘルパーになるには法令で定められた資格が必要です。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
「介護職員初任者研修」は、介護職として働く上で最初に取るべき資格です。より深い知識や技術を習得したい場合は、介護職員初任者研修の上位資格に当たる「介護福祉士実務者研修」や、さらにその上の「介護福祉士」を目指しましょう。これらの資格は、介護施設で働く際にも役立ちます。
資格の名称が変わっている
介護職が未経験でも、ホームヘルパー2級という資格の名前を聞いたことがある人は多いでしょう。ホームヘルパー2級は、介護職員初任者研修の前身です。2013年3月に廃止され、4月からは介護職員初任者研修が新設されました。
資格の名称が変わっただけでなく、内容にもいくつかの変更点があります。
- 30時間の施設学習を廃止
- 実技スクーリング時間を42時間から90時間に変更
- 修了試験(筆記試験)を導入
ホームヘルパー2級の廃止後、介護職のキャリアプランは介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士→認定介護福祉士(または介護支援専門員)という流れができ、より分かりやすくなっています。
なおホームヘルパー2級の有資格者は、介護職員初任者研修を取得し直す必要はありません。
各資格の取り方をチェック
介護職に従事するには、専門知識と実践的な技術の習得が不可欠です。ただ単に試験に受かればよいというわけではなく、決められたカリキュラムを修了する必要があります。各資格の取り方を詳しく見ていきましょう。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修を取得するには、民間の養成スクールで合計130時間のカリキュラム(通学講習+自宅学習)を修了し、最後に修了試験(筆記)に合格しなければなりません。
養成スクールでは平日コース・土日コース・夜間コースなどを設けており、働きながらの資格取得が可能です。受講・受験にあたり、国籍や学歴・実務経験の制限は設けられていませんが、スクールによっては受講条件を16歳以上としているところもあります。
受講スケジュールにもよりますが、資格取得までの期間は1~4カ月とみておきましょう。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修(通称、実務者研修)は、ホームヘルパー1級の廃止後に新設された資格です。カリキュラムは合計450時間ですが、介護職員初任者研修を取得している場合は130時間分が免除されるため、320時間で修了できます。
介護職員初任者研修と違い、カリキュラム修了後の修了試験(筆記)は義務化されていません。試験の有無はスクールに確認しましょう。
資格取得までの目安期間は、無資格から目指す場合は最短6カ月、介護職員初任者研修を取得している場合は約2カ月です。受講・受験に国籍や学歴・実務経験の制限はありません。
介護福祉士
介護福祉士は、介護資格の中で唯一の国家資格です。介護職員の指導や育成も行えるようになり、仕事の幅が大きく広がります。多くの施設では資格手当が用意されているため、収入アップも期待できるでしょう。
介護福祉士を目指すルートには「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「実務経験ルート」などがありますが、受験者の大部分は実務経験ルートを選択しているのが実情です。
実務経験ルートの場合、介護福祉士実務者研修と3年以上の実務経験がなければ受験資格が得られません。受験資格を満たしたら国家試験を受けて、合格した人のみが介護福祉士に認定されます。
コストを抑えて資格を取る方法は?
求職中の人は、資格取得のためのコストをできるだけ少なく抑えたいものです。ハローワーク(公共職業安定所)には、再就職やスキルアップをサポートするための支援制度があり、給付金を受給しながら介護の資格取得が目指せます。
ハローワークで介護の資格が取れる
ハローワークの職業訓練(ハロートレーニング)を活用すれば、ほぼ無料で介護の資格が取得できます(テキスト代は自己負担)。職業訓練の種類は雇用保険の受給資格者を対象とする「公共職業訓練(離職者訓練)」と、雇用保険の受給資格のない求職者を対象とする「求職者支援訓練」です。
介護分野では、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士が訓練対象となっています。募集中のコースおよび定員は、住まいを管轄するハローワークに確認しましょう。
参考:ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)|厚生労働省
求職者支援制度の対象者
求職者支援制度は、雇用保険の受給資格がない離職者や収入が一定額以下の在職者を対象とした制度です。職業訓練が受講できる上、月10万円の生活支援給付金が受けられるため利用しない手はないでしょう。
以下は、給付金を受けながら訓練を受講できる対象者です。
- 雇用保険の受給資格がない離職者
- フリーランス・自営業を廃業した人
- 雇用保険の受給が終了した人
- 正社員への転職・転換を目指す人のうち、パートタイムなどの収入が一定額以下の人(在職者の場合)
訓練の受講にあたり、「ハローワークに求職の申し込みをしていること」や「雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと」などの要件を満たす必要があります。
ホームヘルパーの詳しい仕事内容
介護職への転職を希望する人の中には、在宅でケアをするホームヘルパーに興味がある人もいるでしょう。ホームヘルパーを利用する人は、高齢者や体が不自由な人です。仕事内容は、身体介護・生活援助・通院介助に大別されます。
身体介護
身体介護とは、利用者の体に接触して行うサービスのことです。具体的には、食事介助・排せつ介助・入浴介助・更衣介助・移動介助などが挙げられます。
喀痰吸引と経管栄養は医療ケアの領域ですが、社会福祉士および介護福祉士法の一部改正により、2012年4月1日以降は一定の研修を受けた介護職員でも行えるようになりました。
なお、散髪やかみそりを使ったひげ剃りは理容行為であり、身体介護ではありません。介護保険の適用範囲によって、ホームヘルパーができることとできないことが明確に区別されています。
生活援助
生活援助とは、「直接体に触れないこと」「本人の日常生活の援助に直結すること」を前提に、自立した日常生活のためのサポートを行うことです。具体的には、料理・洗濯・掃除・買い物・ベッドメイク・衣類の整理などが挙げられます。
来客の対応・植木の水やり・旅行への同行・嗜好品の買い物・ペンキ塗りなどは、日常的な家事の範疇を超えているため、利用者に頼まれても行えません。家事代行や家政婦と違い、日常生活における最低限の援助に限定されます。
通院介助
利用者の中には、病気やけがで定期的に通院している人がいます。通院介助は、通院のサポートをするサービスで、以下のような内容を含みます。
- 医療機関までの送迎・付き添い
- 車両から建物までの移動介助
- 病院の受付
- 調剤薬局での薬の受け取り
院内における「院内介助」は、院内スタッフの仕事です。ただし、病院側が対応できない場合に限り、ホームヘルパーが院内介助を行います。利用者の状態によっては、院内の移動介助だけでなく、食事介助や排泄介助も必要となるでしょう。
自分に合った資格の取り方を選ぼう
ホームヘルパーとして働くためには、介護の資格が必要です。主な資格には、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士があり、上位資格になればなるほど仕事の選択肢が広がります。
キャリアプランは、介護職員初任者研修からスタートして、ホームヘルパーとして実績を積む方法もあれば、上位資格の介護福祉士実務者研修から受講する方法もあります。自分に合った資格の取り方を選びましょう。
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