20代薬剤師の年収は低くない!年代別の推移と年収アップの方法も!

大学を卒業して薬剤師になったけれども、「思っていたよりも年収が低い」と感じている人は少なくないはずです。20代薬剤師の年収は本当に低いのでしょうか?他職種とも比較しながら実態を解説するとともに年収アップのポイントも紹介します。

20代薬剤師の年収は高い?低い?

薬を渡す薬剤師の女性

(出典) photo-ac.com

20代の薬剤師の年収が本当に低いのか、薬剤師の平均年収を確認します。さらに、他の医療従事者の年収と比べてみましょう。平均年収に関する数値は厚生労働省が公表する「賃金構造基本統計調査」の2021年版に基づき、従業員10人以上で計算しています。

年代別・男女別の薬剤師年収

年代別・男女別に算出した薬剤師の平均年収は以下のとおりです。

20~24歳:378.4万円(男性422.9万円・女性358.6万円)
25~29歳:473.3万円(男性497.9万円・女性460.8万円)
30~34歳:547.0万円(男性586.1万円・女性504.8万円)
35~39歳:613.6万円(男性659.5万円・女性565.6万円)
40~44歳:640.8万円(男性707.7万円・女性592.4万円)
45~49歳:635.4万円(男性718.5万円・女性584.5万円)
50~54歳:683.1万円(男性762.2万円・女性641.4万円)
55~59歳:642.1万円(男性732.5万円・女性610.5万円)
60~64歳:601.7万円(男性630.8万円・女性565.1万円)
65~69歳:577.6万円(男性568.3万円・女性586.3万円)

20~24歳の平均年収は378.4万円で、男性が422.9万円、女性が358.6万円です。20代・30代は順調に上がっていきますが、40代以降はややペースが落ちています。50~54歳で男女ともピークを迎えます。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

他の医療従事者と比較してみる

医師や看護師など20代の医療従事者の平均年収は以下の通りです。

【20~24歳】

  • 薬剤師:378.4万円
  • 医師:583.1万円
  • 診療放射線技師:333.5万円
  • 臨床検査技師:336.5万円
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:328.5万円
  • 看護師:388.4万円
  • 准看護師:311.8万円

【25~29歳】

  • 薬剤師:473.3万円
  • 医師:654.7万円
  • 診療放射線技師:437.3万円
  • 臨床検査技師:412.1万円
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:379.6万円
  • 看護師:460.1万円
  • 准看護師:348.8万円

医師を除けば、薬剤師は同年代の医療従事者の中で高い年収を得ているといえます。

業種別の薬剤師年収

給与とデータ

(出典) photo-ac.com

薬剤師の年収は勤務先の業種によって大きく差が出ます。求人票に掲載されている年収・報酬から判断すると、業種別の年収は以下の通りです。

  • 病院 400万~450万円
  • 調剤薬局 450万~500万円
  • ドラッグストア 500万~550万円
  • 製薬会社 500万~600万円

病院薬剤師

 

病院薬剤師の年収が低い理由の1つは、1980年代に社会全体の動きとして薬局と病院の分業化が進んだことにあるでしょう。そのため院内薬局の収益は減少し、管理職のポストも減ったため平均年収が下がっているのです。

ただ、病院薬剤師にはメリットもあります。それは病院勤務のため患者や医療従事者と交流を持ち幅広く知識を身に付けられることです。年収が低い割に病院勤務を希望する薬剤師が多いのはそれが理由でしょう。

調剤薬局

病院と薬局の分業が進んだ結果、調剤薬局は現在でも増加を続けています。薬剤師の募集も多く、新卒時から高めの年収が得られますが、管理職のポストが少ないこともあり年収は伸び悩み傾向です。
会社によっては福利厚生に力を入れているところも多く、スキルアップを後押ししてくれるところもあります。人材を必要としている会社では、このような方針を前面に打ち出しているので人気があります。転職の際には福利厚生面も注意して見てみましょう。

ドラッグストア

ドラッグストアの店舗数が伸びているのを背景に、薬剤師の需要も高まっています。他の薬剤師の職場に比べて、年収もやや高めです。大型チェーン店では研修制度を設けたり、育児サポートなど福利厚生を重視したりしている会社も増えています。そのため30代・40代以降の人生を見据えた設計がしやすいでしょう。
さらに、管理薬剤師として店長になったり、大型チェーン店では複数店舗を統括する責任者になったりすることも可能です。

製薬会社

薬剤師として最も高い年収を期待できるのが企業薬剤師になることです。少ない求人に多くの応募者が押し寄せるので、まず面接まで進むのが大変です。
製薬会社で勤務する薬剤師の仕事は、管理薬剤師・MR・研究開発・治験など多岐にわたります。自分の知識と経験を生かせる反面、苦手分野の部署に配属されることもあります。
製薬会社に勤務するメリットの1つは福利厚生がしっかりしていることです。産休・育休の制度も整っているところが多く、長期休暇が取りやすいようです。

スキルアップ・キャリアアップして年収を上げる

薬を処方する女性

(出典) photo-ac.com

さらに年収を上げるには、社内で昇進・昇給していく方法があります。そのためには20代から自身の技能を磨いていくのがよいでしょう。

薬剤師としての基本スキルを磨く

薬剤師に必要なスキルは専門知識だけではありません。人としての基本的な素養でもある、コミュニケーションスキル・集中力・探求心です。

  • コミュニケーションスキル:
    医師や看護師・ケアマネージャー・ヘルパーなどとのコミュニケーション、患者との意思疎通は信頼を築いていく上でとても重要です。
  • 集中力:
    言うまでもありませんが、正確に調剤するためには集中力が欠かせません。ミスをすると人の体・命に関わる重要な仕事です。
  • 探求心・吸収力:
    専門分野の情報は日々新しくなっていきます。2021年に承認された医薬品は100種類を超えるほどです。常に新しい情報を取り入れていく姿勢が必要です。

資格を取ってスキルアップする

資格は体力と時間のある20代に取得しておくのがよいでしょう。30代以降になると結婚・育児などプライベートが忙しくなり、生活にも余裕がなくなることが多いからです。

認定薬剤師・専門薬剤師は特定の分野・領域において専門的な技能をもつことが証明された薬剤師のことです。日々の研さんが求められる難易度の高い資格ですが、取るメリットは大きいでしょう。

社内でキャリアアップする

社内で役職に就くと役職手当を出す企業が多いので、年収にすると30万~60万円上がります。責任ある立場になるので、能力だけではなく経験と実績が求められます。部署内の他の薬剤師がライバルなのでハードルは高いといえます。

勝ち抜くためにも、20代からキャリアプランを明確にして地道に努力を続けることが大切です。上司や同僚から信頼される薬剤師になることが、キャリアアップの一番の近道かもしれません。

転職して年収を上げる

履歴書と封筒とペン

(出典) photo-ac.com

もう一つの年収アップの方法は、年収が高い職場に転職することです。薬剤師の年収は地域・業種によって差が大きいので、年収の高い求人を探すこともできるでしょう。

Uターン・Iターン転職で平均年収の高い地域を選ぶ

上述の2021年「賃金構造基本統計調査」を基に薬剤師の年収を都道府県別に見てみると、以下の通りです。

  • 1位:山口県 667.1万円
  • 2位:香川県 652.9万円 
  • 3位:茨城県 649.2万円 
  • 4位:滋賀県 639.6万円
  • 5位:石川県 638.2万円

最下位は山形県の477.7万円で、1位の山口県との差は約200万円です。
このような格差が生じるのは、薬剤師の需要と供給のバランスによります。薬剤師が不足している地域では高い年収で薬剤師を募集しています。

企業薬剤師として勤務する

年収の高い企業薬剤師になるのも有効な方法です。管理職になれば年収1,000万円も目指すことが可能です。さらに福利厚生も充実している企業が多いので人生設計も立てやすいでしょう。

ただ、製薬会社など大企業の募集は少ない上に、人気が高いので応募者も多くなってしまいます。かなりの狭き門を予想しなくてはなりません。

こまめに転職サイトをチェックしてチャンスをつかみましょう。
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高年収の転職を成功させるには

通帳と札束

(出典) photo-ac.com

20代薬剤師の年収を他の職業と比べると、決して低くとは言い切れません。さらに年収を上げる方法としては、社内で昇給・昇進を目指す方法や転職する方法があります。

年収の高い職場を探すには、常にアンテナを張り巡らせ情報をキャッチしなくてはなりません。しかし、個人でできることには限度があります。そのようなときに役に立つのが転職サイトです。転職サイトをうまく利用して新鮮な情報をつかみましょう。

高垣育
【監修者】薬剤師・ライター高垣育

調剤薬局、医療専門広告代理店などの勤務を経て、2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行う。

著書:
犬の介護に役立つ本(山と渓谷社)

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