医師の年収はいくらなのか気になる人も多いでしょう。医師の給料は勤務先や働き方によって異なります。医師の平均年収をさまざまなケースに分けて紹介します。高収入を狙う方法も解説するので、最後まで読んで参考にしてみてください。
医師の年収の平均は?
一般的に、医師は年収が高いというイメージがあります。まず、医師の平均的な年収を、経験年数や診療科などさまざまな角度から見ていきましょう。
経験年数・年齢による医師の年収の違い
厚生労働省の「令賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、医師全体の平均年収は約1,248万円でした。しかし、経験年数や年齢によって年収には大きな違いがあります。
【経験年数による年収の違い】
- 1年未満…約573万円
- 1~4年…約685万円
- 5~9年…約951万円
- 10~14年…約1,247万円
- 15年以上…約1,663万円
【年齢別の収入の違い】
- 20代…約618万円
- 30代…約1,099万円
- 40代…約1,566万円
- 50代…約1,804万円
- 60代…約1,808万円
- 70代~…約1,607万円
このように、経験年数や年齢が上がるほど、年収も高くなることが分かります。
診療科別の年収ランキング
経験年数や年数のみならず、専門にする診療科によっても年収は異なります。
【診療科別年収ランキング】
- 1位:脳神経外科…約1,480万円
- 2位:産科・婦人科…約1,466万円
- 3位:外科…約1,374万円
- 4位:麻酔科…約1,335万円
- 5位:整形外科…約1,289万円
- 6位:呼吸器科・消化器科・循環器科…約1,267万円
- 7位:内科…約1,247万円
- 8位:精神科…約1,230万円
- 9位:小児科…約1,220万円
- 10位:救急科…約1,215万円
この調査は2011年12月に行われたものですが、上位に脳神経外科・外科・麻酔科・整形外科などが入っており、全体的に見て外科系の年収が高めだと分かります。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
開業医の年収
厚生労働省の資料(「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について)によると、開業医の年収は病院勤務の場合の約1.7倍だといわれています。厚生労働省の「第23回医療経済実態調査の報告(2021年実施)」を見ても、入院施設のない開業医の年収は約2,491万円と、医師全体の平均年収より多いことが分かります。
開業医の診療科別では、一番年収が多いのは精神科で約5,421万円です。次いで、皮膚科が約3,307万円、眼科が約3,053万円という結果になっています。ただし、開業医の場合は経営スキルや集患状況によっても年収は変わるので、安定しないのが特徴ともいえるでしょう。
参考:
「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について|厚生労働省
厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」
医師の年収の手取り額は?
医師に限らず、年収の見方は額面と手取り額によっても異なります。実際に医師が手にするのは、税金や社会保険料などを控除した手取り額です。
勤務医と開業医では手取り額にどのような違いがあるのでしょうか。具体的に見てみましょう。
勤務医の手取り額
医療機関で正規雇用として働いている勤務医の場合、一般企業の従業員と同じように、給与から税金や社会保険などを引いた金額が手取りです。給与から控除されるものは、所得税・住民税・健康保険・厚生年金保険・介護保険(40歳以上)・雇用保険などです。
扶養している家族の人数や住んでいる都道府県などによって、差し引かれる金額は異なります。所得税は、収入が上がるほど負担が大きくなる累進課税方式によって算出されるので、年収が上がれば引かれる税額も多くなる計算です。
例えば、東京在住で扶養家族が3人いる45歳医師の場合、月収120万円の手取り額は約92万円となります。
開業医の手取り額
開業医は、売り上げがすべて医師の収入になるわけではありません。売り上げからさまざまな経費や税金などを引いた分が、医師の手取り額となります。経費として認められているのは、原価や人件費、設備費などです。
- 原価…注射器・院内処方の医薬品・診療に使用するガーゼなどの消耗品など
- 人件費…スタッフの給料・福利厚生費・社会保険料など
- 設備費…家賃・光熱費・機器のリース料・減価償却費など
さらに、開業費を借り入れていた場合は返済金の支払いもあります。これらの経費に加えて、事業税や消費税などを差し引いたものが医師の収入です。各種社会保険料などが差し引かれる点は勤務医と同様です。
医師の年収の現実は?
医師の年収は確かに一般企業の会社員などに比べると高いといえるでしょう。しかし、仕事の内容や勤務状況などを考えると、金額は妥当なのでしょうか。医師の年収の実情を具体的に見ていきましょう。
収入は高いが労働も過酷
24時間体制で患者を受け入れている病棟などでは、緊急呼び出しに対応することもあるため、割に合わないと考える医師も少なくないでしょう。
厚生労働省の「医師の勤務実態について」によると、2019年の勤務医の週平均労働時間は男性で50~60時間、月当たりの当直回数は1~4回でした。
仮に週休2日の勤務として単純計算した場合、1日の勤務時間は、10~12時間になります。当直があることも考えると、収入は高めでも労働は過酷といえそうです。
アルバイトをして収入を維持することも
医師のなかには、給料だけでは足りずアルバイトで収入を維持している人もいます。勤務先によって異なりますが、一般的に大学病院は市中病院に比べて給料が安いといわれています。大学病院に勤務する医師のなかには、外来診療や当直、訪問診療などで非常勤のアルバイトで収入の不足分をまかなっている人も少なくありません。
基本的に、医師免許取得後の初期臨床研修を終えると非常勤などでも働けるため、特に研修医の間にアルバイトする人が多いようです。
研修医の年収は安い
医師免許取得後の研修医期間の年収は、医師全体の平均に比べると安いのが一般的です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)のデータによると、研修医の年齢に該当する20~24歳の医師の年収は約447万円でした。医師全体の年収1,248万円と比較すると1/3程度になる計算です。
とはいえ、同年代の薬剤師の年収は約365万円、看護師は約352万円なので、医療従事者のほかの職種に比べれば高額ともいえます。しかし、大学の奨学金の返済が残っている人もいるため、常勤の給料だけでは足りないと感じている人もいるかもしれません。
参考:賃金構造基本統計調査 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
医師で高収入を狙う方法
ひとくくりに医師といっても、年収には幅があります。それでは、医師で高収入を狙うにはどうすればよいでしょうか。具体的な方法を2つ紹介します。
開業する
開業して高収入を目指すという方法があります。経営がうまくいけば、勤務医よりはるかに多い年収を稼げる可能性もあるでしょう。開業すると自分のペースで働けるというメリットもあります。
しかし一方で、開業するにはまず開業資金を用意しなければなりません。物件探しから設備の調達、スタッフの募集など、細かい準備が必要です。また、医師が開業する際には、診療所の開設届や保健医療機関指定の申請、スタッフの社会保険や事業税などの届け出など多くの手続きも必要です。また、開業すれば必ずしも高収入を見込めるとは限らないことも理解しておきましょう。
年収の高い職場に転職する
勤務医のまま収入を上げるには、今より条件のよい職場に転職するのもよい方法です。収入面だけでなく、キャリアアップにつながる可能性もあるでしょう。
職場によって事情は異なるものの、都心より医師不足に悩んでいる地方病院の方か年収は高くなる傾向があります。大学病院などに比べて小規模な民間病院は年収の交渉をしやすいため、高収入を期待できるでしょう。
医師の転職市場が活発化してくるのは10~12月といわれています。ライバルも多くなるので、転職を考えているなら早めに計画的な行動をすることが大切です。
医師の年収は勤務先や働き方で異なる
専門職でもある医師の年収は、一般的な企業の会社員に比べると高くなる傾向にあります。しかし勤務先や働き方によっても年収に幅があり、職場によっては長時間の勤務になることもあるため、割に合わないと考えている医師も少なくありません。
医師になりたての研修医の場合は、アルバイトで収入を維持している人もいます。開業医になれば高収入は期待できますが、メリットばかりではありません。さまざまな働き方を検討しながら、自分に合った道を選ぶことが大切です。