医師の種類や仕事内容は?診療科別の特徴や年収を詳しく紹介

医師を目指している人の中には、まだ専門を決めていない人もいるかもしれません。ここでは主な診療科別に医師の種類を紹介します。開業医と勤務医の収入の違いや、医師になるまでの研修制度などについても解説するので、参考にしてみてください。

主な診療科別の医師の種類

話を聞く医者

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医療機関には、診療科別にさまざまな種類の医師がいます。主な医師の種類を6つ紹介していくので、詳しく見ていきましょう。

内科医

内科医は、主に薬物療法を行う医師です。問診・触診・視診などのほか、血液検査などの結果も含めて総合的に診療します。総合病院などではさらに診療科が細分化しているので、医師も担当分野別に、より専門的な治療をするのが特徴です。

内科医になるには、医師免許を取得し2年間の初期臨床研修を修了したあと、内科の後期研修を行います。その後、日本内科学会が認定した医療施設での研修を修了すると、より高いレベルの治療を行う内科専門医または総合内科専門医として活躍できます。

参考:新制度について | 専門医制度 | 日本内科学会

小児科医

小児科医は、新生児から20歳ごろまでの子どもを診療する医師です。病気の治療だけでなく、予防接種や学校の集団健診なども行います。乳幼児期の子どもの定期健診や、保護者に養育指導するのも小児科医の仕事の一部です。

小児科医になるには、医師免許を取得して2年間の初期臨床研修を終えたあと、小児科で専門的な研修を行います。小児科医として経験を積み、さらに専門性を高めた小児科専門医になる医師もいます。

小児科医に向いている人は、子ども好きで、寛容さや粘り強さがある人です。痛みをうまく伝えられない子どもの不調を見抜くために、コミュニケーション能力も求められます。

整形外科医

整形外科医は、骨・軟骨・筋・靭帯・神経など、運動器官を構成している組織の疾病や外傷を治療する医師です。患者の年齢層は新生児から高齢者までと幅広く、スポーツによる疾患や関節リウマチ、外傷などさまざまな症状を診療します。

整形外科医になるには医師免許を取得し、2年間の初期臨床研修後、整形外科疾病の基本知識や治療技術を学ぶために、整形外科後期臨床研修プログラムを受けなければなりません。その後さらに、整形外科専門医認定試験を受けるために4年間の研修が必要です。

整形外科として開業している医師も多いですが、開業するには放射線技師や作業療法士などの専門職も置かなければなりません。

外科医

外科医は、外傷や病気を診断し、薬物や手術によって治療するのが仕事です。外科医には、一般外科や小児外科といった大まかな分類のほか、脳神経外科・消化器外科・心臓血管外科などの細かい専門分野に分かれています。形成外科・美容外科・泌尿器科なども外科の分類です。

外科医になるには、医師免許取得後に2年間の初期臨床研修を行ったあと、外科専門研修プログラムを3年以上受けて外科専門医の資格を得ることが必要です。外科医には、プレッシャーに強い人や向上心がある人、ハードワークに耐えられる人などが向いています。

産婦人科医

産婦人科医は、女性特有の症状を扱う医師です。病院によっては、産科医と婦人科医に分かれていることもあります。産科医は、妊娠の検査から出産までに関する診療を行うのが特徴です。妊娠や出産をケアする専門職としては助産師もありますが、助産師は産科医とは異なります。

婦人科医は、卵巣や子宮などの疾患の診療や、更年期障害やPMSなど女性特有の病気や症状の治療を専門に行います。産婦人科医になるには、2年間の初期臨床研修を修了後、日本産科婦人科学会の定めた先行医指導施設で通算3年以上の研修を受け、産婦人科専門医試験に合格することが必要です。

救急科医

救急科医とは、ER(救急外来)に勤務する医師のことをいいます。病気や事故などによる傷病者の治療だけでなく、災害の現場に行ってトリアージなどを行うこともあるため、迅速かつ幅広い症状への対応力が求められます。

救急科医になるには、医師免許取得後に2年間の初期臨床研修を終えたあと、日本救急医学会が定めるカリキュラムに沿って3年以上の専門研修を修めることが必要です。その後、救急科専門医試験に合格すると救急科医として診療に当たれます。

開業医と勤務医の違いは?

問診する医者

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医師には診療科の区別のほかに、開業医・勤務医といった働き方の種類もあります。それぞれの医師のメリットとデメリットを見ていきましょう。

開業医のメリット・デメリット

開業医には、自分の裁量で仕事ができる・人間関係によるストレスがないなどのメリットがあります。東京保険医協会の調査によると、勤務時間は週平均30~50時間と答えている開業医がもっとも多いことが分かりました。これは、男性勤務医の週平均50~60時間に比べてかなり短いことになります。

地域とのつながりも深くなり、住民の健康維持に貢献できている実感も持てるでしょう。高収入を見込めるのも特徴で、厚生労働省の資料によると、開業医の収入は勤務医の約1.7倍ともいわれています。

ただし、自分で集患しなければならないため、経営者としての能力も必要です。トラブルが起きたときの責任はすべて自分が負う、経営状態が悪化すると閉院に追い込まれるなどのデメリットもあります。

参考:
「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について|厚生労働省
《開業医の働き方調査》約2割が過労死ライン | 東京保険医協会
厚生労働省「医師の勤務実態について」

勤務医のメリット・デメリット

勤務医のメリットは、先進医療や専門医療などの高度な技術を習得できることです。チームで連携した医療が可能なため、さまざまな職種の人脈が広がります。トラブル時に、個人ですべての責任を負うケースが少ないのも勤務医の特徴です。研修や教育制度が整っていることが多いため、専門医の資格を取りやすいという利点もあります。

しかし、オンコール(待機)も含めて労働時間が長くなったり、希望しない部署異動を命じられたりすることもある点がデメリットといえるでしょう。診療だけでなく、学会に発表する論文の執筆に時間をとられることも多々あります。

医師になるまでのステップは?

勉強する女性

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医師になるには原則として大学で6年間の医学課程を修めていることが必要です。その後、どのようなステップを踏んで医師となるのか、具体的に説明していきます。

国家試験を受ける

大学で6年間の医学課程を修了したら、医師国家試験を受験します。医師国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。

  1. 学校教育法に基づく大学で医学の正規課程を修めて卒業した者
  2. 医師国家試験予備試験に合格し、合格後1年以上の診療および公衆衛生に関する実地修練を経た者
  3. 外国の医学校を卒業、または外国で医師免許を得た者で、厚生労働大臣が上記の1,2と同等以上の学力と技能を有し、かつ適当と認定した者
  4. 沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第17条第1項の規定により、医師法の規定による医師免許を受けたとみなされ、厚生労働大臣が認定した者

厚生労働省の発表によると、2021年度の医師国家資格の合格率は全体で91.7%、新卒は95%でした。

参考:
医師国家試験の施行について|厚生労働省
厚生労働省 第116回医師国家試験の学校別合格者状況

初期臨床研修を受ける

医師国家試験に合格したら、大学病院または厚生労働大臣の指定する病院(臨床研修病院)で、2年以上の初期臨床研修を受けなければなりません。初期臨床研修の1年目は、内科・救急科・外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療の7科目が必修です。2年目には、選択した科目について48週間の研修を受けます。

各診療科の専門医になるためには、初期臨床研修修了後に後期臨床研修として、3~5年の専門研修プログラムで専門的な知識を深めることが必要です。

日本医師会認定の資格もある

日本医師会が認定する、「産業医」や「健康スポーツ医」という種類の医師も存在します。産業医とは、一般企業などで労働者の健康管理を行う医師のことです。産業医になるには、厚生労働省が指定した法人で、労働者の健康管理などについての研修を修了することが必要です。有効期間は5年で、5年間に産業医学生涯研修を20単位以上修了していれば更新できます。

健康スポーツ医は、運動する人のメディカルチェックや、運動指導者などに指導助言を行う医師です。健康スポーツ医になるには、日本医師会が定める講習を修了して認定を受けることが必要です。有効期間は5年で、日本医師会が実施または承認した再研修を5単位以上修了し、なおかつ健康スポーツ医としての活動実績があれば更新できます。

医師の種類や仕事内容を理解して専門を決めよう

考える医者

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医師と一言でいっても、どの診療を専門にするかによって、研修などの手順は異なります。診療科によって医師に求められるスキルや素養なども異なるため、専門を決める前に十分仕事内容を理解しておくことが重要です。

また、開業医には医師としてのスキルに加えて、経営者としてのノウハウも必要です。勤務医・開業医それぞれにメリット・デメリットがあるので、しっかり検討したうえで目指すべき道を決めましょう。