派遣社員の3年ルールとは?個人と事業主それぞれの立場を解説

派遣社員の3年ルールを大まかには理解できていても、詳しい内容や理由までは知らない人もいるはずです。説明を受けたけれど、詳細を忘れてしまった場合もあるでしょう。派遣社員の3年ルールを、個人と事業主それぞれの視点から説明します。

派遣社員の3年ルールとは

雇用契約書類とペン

(出典) pexels.com

日本には派遣社員の権利を守るための法律、労働派遣法(正式名称「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)があります。

この法律で定められた派遣期間についての決まりが、同じ職場では基本的に3年までしか派遣として働けないという「3年ルール」です。3年ルールを事業所単位と個人単位に分け、考え方を確認しましょう。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索

個人単位における3年ルール

働く個人の立場から考えると、連続した3年を超えて同じ職場に派遣してもらうことはできません。たとえ派遣先との相性がよくても、一定期間が過ぎればほかの職場へ移らなければならない決まりです。

派遣会社を変更したとしても関係なく、1つの職場での労働期間は3年までに制限されます。派遣社員として働き続けたい場合、派遣先を変更する必要があるということです。

ただし、3年が過ぎる前に同じ派遣先の企業内で部署を変えた場合は、さらに3年間働けます。

事業所単位における3年ルール

事業所の立場で考えると、同一事業所の同一部署が派遣社員を受け入れられる期間は3年までです。派遣社員Aが営業課で1年間働いたと仮定すると、その直後に同じ部署へ配属された派遣社員Bは、2年を超えて働けません。

派遣社員Bから見ると、まだ3年以内なのに派遣先を変えざるを得ない状態になりますが、個人単位よりも事業所単位が優先される決まりです。

ただし、企業側が労働者の過半数で組織される労働組合(または過半数の労働者の代表者)に意見聴取をして反対されなければ、派遣社員を受け入れる期間を延長できます。

派遣を受けることにメリットを感じている企業では、期間を延長して派遣社員を受け入れるケースが少なくありません。

「抵触日」の考え方に注意

抵触日とは、派遣社員が働き続けられる期間が終了した翌日のことです。雇用契約書で日付を確認できます。個人単位で考えると、2022年3月15日から働き始めた場合、2025年3月16日が抵触日です。

しかし、事業所単位では考え方が異なります。派遣社員Aが2022年月3月15日から働き始めて2023年3月16日で契約終了し、3月17日から派遣社員Bと新しく契約すると仮定しましょう。

この場合、派遣社員Aの後に入ってきた派遣社員Bは2025年3月16日までしか働けません。個人単位で考えれば派遣社員Bの抵触日は2026年3月18日ですが、個人単位よりも事業所単位が優先されるためです。

該当部署で先に働いていた派遣社員がいる場合、派遣社員の受け入れ期間を延長しない限り、後任者は3年も働けないことになります。

3年ルールが設けられた理由

時計とカレンダー

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派遣社員が3年を超えて同じ場所で働けないことに、不満を感じる人もいるはずです。なぜ、このようなルールが設けられたのか知っておきましょう。

派遣社員の雇用を安定させるため

同じ派遣先で3年以上働けないことを疑問に思う人もいるでしょう。よい派遣先であれば、引き続き同じ職場で働きたいと考えるのは自然です。

国は派遣社員の雇用を改善するため、あえて3年という制限を設けて派遣先による直接雇用や派遣会社との無期雇用契約を促し、雇用を安定させようとしています。

新しい人を一から教育するよりも、慣れている人を雇い続けた方がメリットがあると考える企業は少なくありません。

企業側が3年を超えて派遣社員を雇用し続けられないというルールが設けられたことで、正規雇用や契約社員などの雇用形態で採用してもらえる可能性が高まったといえます。3年ルールの存在は、派遣社員にとってもデメリットばかりではないのです。

3年ルールが適用されないケース

カレンダーとマーカー

(出典) unsplash.com

派遣の3年ルールは、どのような場合でも適用されるわけではありません。ルールが適用されないケースを押さえておきましょう。

3年ルールの例外一覧

一定の期間が過ぎると同じ派遣先で働けなくなるといっても、例外はあります。以下に当てはまる場合はルールから除外される決まりです。

  • 派遣会社に無期雇用されている(派遣会社で正社員になっている)
  • 産休・育休・介護休業中の社員の代わりに働いている
  • 終了期限の決められたプロジェクトに従事している
  • 月の勤務日数が10日以下かつ通常の労働者の半分以下
  • 抵触日の時点で年齢が60歳を超えている

いずれかに該当するなら、働き始めて3年が過ぎても派遣先を変える必要はありません。自分の状況と照らし合わせ、同じ派遣先で3年を超えて働けるかどうかを判断しましょう。

参考:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省

クーリング期間がある

派遣におけるクーリング期間とは、派遣先との契約が終了した後、次の派遣先で働き始めるまでに一定の期間を置くことです。

3年間働いた後3カ月と1日の期間を置くと、リセットされます。個人単位・事業所単位いずれの場合にも適用されるのがポイントです。

ただし、クーリング期間を挟むとブランクができてしまい、派遣社員にとってキャリアを形成しにくいというデメリットがあります。

本人の希望と関係なく、派遣会社や派遣先企業が同じ職場で働かせることを目的としてクーリング期間を設ける行為は、推奨されていません。

企業が派遣可能期間を延長する手続きを避けたいがためにクーリング期間を使うように指示すれば、雇用の安定が遠のき、法の趣旨に反してしまうことになります。

3年ルールにどう対処すればよいか

握手する人たち

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派遣社員に特有のルールがあることを知って、今後の働き方に悩む人もいるでしょう。抵触日を迎えた後も不安なく働き続けるには、どのように対処していけばよいのかを紹介します。

派遣会社に無期雇用される

派遣会社に無期雇用してもらえば、期限を気にせず同じ職場で働けます。無期雇用してもらうには、登録型派遣として同じ派遣会社から派遣された期間が通算5年以上必要です。

ただし、年数を重ねれば必ず無期雇用になるわけではなく、面談や採用試験を経て合格しなければなりません。5年も待てないという場合、初めから無期雇用派遣の求人に応募する方が効率的でしょう。

無期雇用派遣は、派遣会社と期間を定めずに雇用契約を結ぶ方法です。登録型派遣とは違って月給制となり、昇給されたりボーナスを受け取れたりする見込みもあります。待機期間中に、一定の給料をもらえる点もポイントです。

派遣先に直接雇用してもらう

派遣先に直接雇用してもらうのも、抵触日を迎えた後に働き続ける方法の1つです。

派遣先が正社員登用を設けていて実力が認められたなら、正社員になれる可能性があります。企業側が納得できる仕事ぶりを見せれば、よい条件で採用してもらえるでしょう。

派遣会社に登録する際、契約の終了後に直接雇用することを前提とした「紹介予定派遣」を利用する方法もあります。最初は派遣でも、いずれは直接雇用で働きたいと思っている人におすすめです。

ただ、登用の際、正社員ではなくアルバイトや契約社員としての採用を打診される場合もあることは心に留めておきましょう。

また、紹介予定派遣では直接雇用への移行に双方の合意が必要なので、働きぶりによってはそのまま契約終了となる可能性もあります。

同一の企業で部署を異動させてもらう

部署を異動した場合は期間がリセットされるため、派遣先の企業が気に入っているなら同一企業内で部署を異動する方法もあります。

例えば、営業部で2年間働いた後に人事部へ異動したケースでは、人事部でさらに3年間働ける可能性があるということです。

ただし、希望すれば必ず異動させてもらえるわけではない点に注意しましょう。企業側から力を認められなければ部署の異動は期待できない上、そもそも人手が不足している部署が見つかるとも限りません。

派遣先を変えるか転職する

今後も派遣社員として働き続けたいなら、新しい派遣先を紹介してもらいましょう。派遣という働き方を気に入っているとしても、同じ企業の同じ部署に原則3年を超えて派遣され続けることはできません。

派遣社員として働いた3年間で培った能力を生かし、直接雇用を視野に入れて転職先を探すのも、安定して長く働く方法です。それまでに身に付けたスキルをうまくアピールすれば、希望する企業に採用される可能性は十分にあります。

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3年ルールを理解してキャリアを築こう

手を重ねる人たち

contract documents

3年ルールは、派遣社員の雇用を安定させることを目的として作られました。このルールがあるおかげで、登録型派遣で働く人が直接雇用や無期雇用の選択をしやすくなったといえます。

ずっと派遣社員として働き続けたい場合、3年ごとに派遣先を変える、同一企業内で部署を変更してもらうといった動きが必要です。

派遣社員から直接雇用や派遣元での無期雇用になると、収入が安定します。登録型の派遣社員として十分な経験を積んだ後、新たに直接雇用の仕事を探すのも1つの道です。自分が何を求めているのかを軸に、今後の働き方を考えましょう。