パソコンインストラクターになるには・仕事内容と全国の求人

パソコンインストラクターとは

パソコンを操作する男性

(出典) photo-ac.com

パソコンインストラクターは、PC(パーソナルコンピューター)の使い方を指導する職種です。民間のパソコン教室や公共団体主催のパソコン講座の講師として活躍します。経験を積んで自分で教室を開いたり、フリーランスの講師として活動したりする人もいます。

パソコンインストラクターとして働くための必須の資格はありませんが、関連する資格としてマイクロソフト社が認定する「MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)」や、アドビシステムズ社が認定する「ACA(アドビ認定アソシエイト)」などがあるので、講師としての幅を広げ、信頼度を上げるためにも取得するのもよいかもしれません。

パソコンインストラクターの仕事内容

パソコンインストラクターは、主にパソコンの初心者に向けて、仕事や趣味でパソコンを活用するための方法を指導するのが仕事です。受講者のパソコンの利用目的により教える内容は異なりますが、以下のような指導や助言を行います。

パソコン選び

初めてパソコンを使う初心者や、特定の用途に最適なパソコンを選びたい人に向けて、OS(オペレーティングシステム)やパソコン本体の選び方を助言します。

OSとはパソコンを動かすための基本ソフトのことで、代表的なOSは「Windows」と「macOS」といった種類があります。パソコン本体の種類には、デスクトップ型・ノート型・タブレットという形状があります。処理性能は、メーカーやグレードによって異なりますので、用途に応じたパソコンを選んで提案するための知識が必要となります。 たとえば、ビジネス用途で文書作成や簡単な表計算を行うのであれば、処理性能が必要以上に高くないパソコンを薦めたり、同じビジネスユースでもクリエーターとのやり取りが多い場合には、ファイルの互換性を高めるため、クリエーターの利用シェアが高いmacOSを薦めたりすることもあるでしょう。 パソコンインストラクターによるパソコン選びの指導によって、受講者は利用目的に応じたパソコンの選び方が身につきます。

入力デバイスの使い方

初心者には、キーボードやマウスといった入力デバイスの使用方法から指導することもあります。

キーボードには「かな入力」と「ローマ字入力」があることや、マウスの右クリック・左クリックの役割などを説明します。受講者の習熟度に合わせて、ショートカットキーやタッチタイピング(ブラインドタッチ)なども指導します。

セキュリティーや安全な利用方法

パソコンの安全な運用方法を指導するのもパソコンインストラクターの役目です。

自身のパソコンにはパソコン起動時のパスワード設定を指導したり、共有パソコンでECサイトやSNSサイトを利用した場合には終了時にサインアウトするよう指導したりして、なりすましや悪用を防止します。また、インターネットを安全に利用するために必要なセキュリティソフトの導入や、ファイアウォールの設定、フィッシングサイトのような詐欺サイトの存在について教えることも重要です。

ソフトウエアやアプリケーションの使い方

ビジネスで利用頻度が高い表計算ソフトや文書作成ソフトの利用方法や、インターネットブラウザを使ったネットの閲覧方法、E-mailの活用方法などについて指導します。

ビジネス用途で使われることが多いソフトウエアとしては、表計算ソフトのExcel、文書作成ソフトのWord、インターネットブラウザとしてChromeやMicrosoft Edge、メーラーのOutlook、ブラウザベースのメールサービスであるGmailなどがあります。このうちExcel・Wordについては、後述するMOSというマイクロソフト公式資格があり、取得しておくと指導する際に役立ちます。最近ではGoogle社のクラウド型表計算ソフトであるGoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントなどを利用する企業も増えており、今後はそれらの使い方を教える機会が増えそうです。

さらに受講者のパソコン利用目的によっては、PhotoshopやIllustratorなどのデザイン系ソフトや、CAD、動画編集ソフトといった、より専門的なソフトウエアの使い方の指導をすることもあります。

バックアップやデータ保存の方法

作成したデータの保存や、万が一パソコンが壊れたときに必要となるデータバックアップについても、パソコンインストラクターが指導します。

近年ではスマートフォンのデータや、パソコンで作成したデータを、クラウドストレージというオンライン上の仮想ドライブに保存することが多くなりました。そこで、Google DriveやiCloud、Dropboxなどのクラウドストレージを活用したデータの保存についても教える機会が増えると見込まれます。クラウドストレージを活用すればスマートフォンとパソコンで同一のデータを編集するといった作業が容易になるため、スマートフォンとパソコンを連携させて場所を選ぶことなく、ビジネスなどでのデータ活用が進みます。クラウドストレージを使ったデータ保存に関する指導のニーズは高まっていくと考えられます。

働く場所

セミナールーム

(出典) photo-ac.com

同じ項目に関する指導でも、教える場所(教室のある地域)や環境ごとに受講者層は異なるため、内容を変える必要があります。インストラクターが指導する機会や勤務先には次のようなケースがあります。

企業向けの研修講師

商工会や自治体などが主催する企業向けの研修で、中小零細企業や個人事業主向けに企業経営に役立つPCの使い方を教えます。

Excelなどの表計算ソフトを活用した在庫管理・売り上げ管理や、Wordによる文書作成、PowerPointを使った営業資料の作成などのほか、会計ソフトの利用法なども説明します。最近では、インターネット通販に取り組みたい事業者向けに、インターネット上で商品を販売できるサービスの紹介やECサイトの開設方法・出品方法などについて解説してほしいといったニーズもあるようです。

街のパソコン教室や自治体が主催する市民講座の講師

業務で初めてパソコンを使うことになった中高年のビジネスパーソンや、趣味で使ってみたいという高齢者などにパソコンの使い方を指導します。

場合によっては、パソコンを使ってどんなことができるかという紹介や、パソコンの電源の入れ方やマウスの使い方などから説明を始めることもあります。さまざまな年齢・立場の人が教わりに来るため、ほとんどパソコンを触ったことがないような人にも理解できるよう、専門用語を簡単な言い回しに換えたりする気遣いが必要になります。講義だけではなく、何が分からないのかが分からない、といった受講者のための個別カウンセリングを行う場合もあります。ハローワークや自治体が主催する求職者向けパソコン講座などで講師になった場合は、文書作成ソフトを使った履歴書の作成方法や、社会人としてのメールマナー、表計算ソフトの基本的な関数などを教えます。

教育機関の職員

専門学校や大学などのIT関連部署などに所属し、学生に学内でのPCの利用法を指導するといったケースも考えられます。

研究発表のためのプレゼンテーション資料の作り方や、レポート作成方法など、学生生活に必要なソフトウエアの使い方を教えます。学校によっては、学内のネットワークを利用する前提としてネットリテラシーの講習が義務付けられていることもあり、そのような場合には講師を担当することもあります。最近では、SNSによる炎上事件の多発を受けて、SNSに関するリテラシーの講義などに力を入れている学校も増えているようです。また、小学校や中学校に非常勤講師のようなかたちで招かれ、ネット利用の注意点など基本的なリテラシーを教えることもあります。

パソコンインストラクターの将来性・キャリアパス

パソコンを操作する女性

(出典) photo-ac.com

インストラクターのキャリアパスとしては、パソコンの指導をするだけではなく、教室運営やマネジメントまで業務範囲を広げることも可能です。民間のパソコン教室に正社員として勤務するインストラクターは、勤務経験を積むにしたがって、教室の運営や営業、他の講師のマネジメントを行うこともあります。パソコン指導者としての業務とは異なる内容となりますが、マネジメントスキルや教室運営スキルは勤務先での役職や年収に影響する可能性があります。また、インストラクターとして経験を積むことで自身の教室を開いたり、フリーランスの講師として独立したりすることも視野に入れることができるようになります。そのような際にも、教室運営やマネジメント経験が生きてくるはずです。なかには、いきなりフランチャイズのパソコン教室の経営に挑戦して失敗し、借金を負うケースもあるようです。教室を自ら立ち上げるにあたっては、パソコンインストラクターとしての経験を積み上げると同時に、経営者としてのスキル・経験も積む必要があるでしょう。

また、近年はスマートフォンとのデータ連携やクラウドサービスの活用など、パソコンの使い方に変化が生まれています。このような変化をいち早くキャッチし、受講者のニーズをくみ取れるかが、パソコンインストラクターとしての将来を左右するものと考えられます。

パソコンインストラクターの年収

キーボードとお金とペン

(出典) photo-ac.com

パソコンインストラクターの働き方は、正社員のほかにアルバイトやパート、フリーランスなど多岐にわたり、勤務先の種類も多様なため、職種としての年収には大きな幅があります。募集求人の年収傾向を概観すると、200万円台から400万円台のグループと500万円台から600万円台のグループが存在します。

パソコンインストラクターになるには

パソコンの使い方を教える

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パソコンについての知見はもちろん必要ですが、人に教えるため、指導者としての資質も重要です。

これまでパソコンに触れる機会がほとんどなかったような初心者のなかには「何が分からないのかが、分からない」「パソコンを使って自分が何をしたいのか分からない」といった状態の人もいます。そのような一人一人に向き合って丁寧に問題点や要望を発見する観察力と、相手に合わせて出来る限りやさしい説明で教えるホスピタリティが求められます。コミュニケーションを避けずに、受講者と向き合う気持ちが重要となる仕事です。。

なお、パソコンを指導するために必須の資格はありませんが、以下のような資格があるとコンピュータやソフトウエアについての知識を証明することができるため、就職などに役立つこともあります。

マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)の概要

マイクロソフト社が認定する、ExcelやWordなど同社のソフトウエア製品の活用スキルを証明できる資格が、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)です。レベルはスペシャリスト(一般)とエキスパート(上級)の2段階に分かれています。

スペシャリストの試験科目はWord・Excelのほか、プレゼンテーションソフトのPowerPoint・データべース管理ソフトのAccess・メール管理ソフトであるOutlookの5科目です。これらの製品はバージョンごとに新機能が追加されているため、バージョンごとに出題形式や出題内容が異なります。新しいバージョンの資格を取得するには、改めてそのバージョンに対応した試験を受験する必要があります。受験資格に制限はなく、スペシャリストを取得せずにエキスパートから受験することもできます。

パソコンインストラクターの求人は、MOS資格の取得を応募の必須要件とするケースが多く、それらの求人に応募する際には事前に資格の取得が必要です。

アドビ認定アソシエイト(ACA)の概要

アドビ認定アソシエイト(ACA)は、PhotoshopやIllustratorといったアドビシステムズ社のデザイン系ソフトウエア製品の活用スキルに関する資格です。デザインや画像作成に必要なソフトウエア活用スキルや、デザイン関係の制作現場で必要な共通知識について証明することができます。

試験科目や出題形式は各ソフトウエア(Adobe Photoshop CC、Adobe Photoshop CS6、Adobe Illustrator CC)ごとに異なり、各ソフトウエアで資格が認定されます。受験資格に制限はありません。

同社のデザイン系ソフトウエアは、クリエイティブ職に限らずマーケティングや営業、広報などさまざまな職種で、プレゼンテーション資料の作成をはじめとするビジュアル表現が必要な業務で役立ちます。パソコンインストラクターが同社のソフトウエアの使用方法を指導する機会も増えると考えられるため、ACAを取得しておくと業務の幅が広がりそうです。

パソコンインストラクターの求人傾向

パソコンをタイピングする

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パソコンインストラクターの求人は、民間のパソコン教室の講師としての募集が多い傾向です。パソコン教室の求人では、インストラクター業務が未経験の場合は、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)資格を取得していることが応募の必須要件になることが多いようです。スキルについてはマイクロソフトOffice系ソフトのスキルだけを応募条件に挙げる求人も多いですが、Webサイト制作を専門に教える教室などではPhotoshopやIllustrator、Dreamweaverのスキルやディレクションのスキルなどといった条件を掲げているケースもあります。応募しようとする教室がどのような内容を教えているのかをよくチェックして、自分の持っているスキルと見比べてから応募するとよいでしょう。

雇用形態については、正社員の募集もありますが、契約社員、外部委託、アルバイトなども多く見られます。

なお、パソコン教室の求人以外には、インストラクター経験者を対象にしたパソコンを使った教材やテストの制作を行う募集も散見されます。

※文中に記載の各種数値・内容は、2017年7月時点のものになります。

出典:
アドビ認定アソシエイト(ACA)