貿易事務への転職を考えている人の中には、年収がどのくらいなのか気になっている人もいるでしょう。貿易事務の平均年収を紹介し、未経験者が貿易事務を目指す場合に押さえておきたいポイントについても解説します。
貿易事務の平均年収は?
貿易事務は業務が大変だともいわれるため、仕事内容に見合った給与をもらえるのか気になるところです。まずは貿易事務の平均年収を確認しましょう。
平均年収は約464万円
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」を見ると、貿易事務の平均年収を推測することが可能です。貿易事務は資料内の職業分類「営業・販売事務従事者」に属するため、営業・販売事務従事者のデータを使って平均年収を計算します。
平均年収の計算に使用する営業・販売事務従事者のデータ(企業規模10人以上)は、以下の通りです。
- きまって支給する現金給与額:31万3,200円
- 年間賞与その他特別給与額:88万5,600円
貿易事務の平均年収は31万3,200円×12カ月+88万5,600円=464万4,000円と計算できます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 _ ファイル _ 統計データを探す _ 政府統計の総合窓口
男女で年収に差がある
厚生労働省の資料からは、貿易事務の男女別平均年収も推測できます。営業・販売事務員の男女別データを用いた計算は、次の通りです。
- 男性:37万6,300円×12カ月+111万7,700円=563万3,300円
- 女性:26万9,100円×12カ月+72万3,600円=395万2,800円
平均年収の男女差が大きい理由の1つに、貿易事務として働く女性の平均年齢が若い点が考えられます。
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、女性の給与所得者の全国平均年齢は46.8歳です。一方、女性の営業・販売事務従事者の全国平均年齢は39.9歳となっています。
貿易事務として働く女性の中には、出産・育児を理由に退職するため、勤続年数が短い人が多い可能性があるのです。
参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 _ ファイル _ 統計データを探す _ 政府統計の総合窓口
令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁
企業規模別の平均年収もチェック
貿易事務の平均年収は企業規模によっても異なります。企業規模別の平均年収を把握し、転職活動で企業を選ぶ際の参考にしましょう。
10から99人までの企業
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」では、企業規模を3つに分けてデータが公表されています。10から99人までの企業における営業・販売事務従事者のデータは、以下の通りです。
- きまって支給する現金給与額:28万3,500円
- 年間賞与その他特別給与額:62万6,500円
10から99人までの企業における貿易事務の平均年収は、28万3,500円×12カ月+62万6,500円=402万8,500円と計算できます。10人以上の企業全体の平均より約60万円少ない金額です。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 _ ファイル _ 統計データを探す _ 政府統計の総合窓口
100から999人までの企業
企業規模が100から999人までの職場で働く貿易事務の平均年収は、「令和3年賃金構造基本統計調査」内の次のデータを用いて計算できます。
- きまって支給する現金給与額:30万3,000円
- 年間賞与その他特別給与額:91万2,500円
100から999人までの企業に勤務する貿易事務の平均年収は、30万3,000円×12カ月+91万2,500円=454万8,500円と計算できます。10人以上の企業全体の平均より、やや少ない金額です。
最初に紹介した平均年収約464万円を転職で目指すなら、少なくとも企業規模が100人以上の職場を探した方がよいと考えられます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 _ ファイル _ 統計データを探す _ 政府統計の総合窓口
1,000人以上の企業
企業規模が1,000人以上の企業で働く貿易事務の平均年収は、以下のデータを用いて求められます。
- きまって支給する現金給与額:35万3,100円
- 年間賞与その他特別給与額:108万7,600円
1,000人以上の企業で働く貿易事務の平均年収は、35万3,100円×12カ月+108万7,600円=532万4,800円と計算できます。10人以上の企業全体の平均より、約70万円高い金額です。
貿易事務未経験者が、いきなり1,000人以上の企業で働くのは難しいでしょう。企業規模で転職先を選ぶなら、まずは999人までの企業で実績を積むのが無難です。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 _ ファイル _ 統計データを探す _ 政府統計の総合窓口
貿易事務で年収を上げるには?
貿易事務として転職できても、いきなり平均年収レベルの給与をもらえる可能性は低いでしょう。専門性を高めたり事務職以外に仕事の幅を広げたりして、年収アップを図る必要があります。
専門性を高める
貿易事務は輸出入に関する仕事に携わる職種です。企業によって扱う商品が異なるため、貿易事務として必要とされる知識も異なります。
貿易事務で年収を上げるためには、輸出入で扱う商品の専門性を高めることが重要です。特定分野の商品について詳しくなれば、専門性の高さが収入に反映されやすくなります。
貿易実務の仕事には、難易度によりさまざまなレベルがある点もポイントです。最初は書類作成しかできなくても、取引全体を担当したり非定型的な業務を行ったりするレベルに達すれば、収入も上がりやすくなるでしょう。
おすすめの資格
貿易事務で年収を上げる方法の1つに、資格を取得することが挙げられます。貿易事務におすすめの資格は貿易実務検定と通関士です。
貿易実務検定は民間資格であり、貿易に関わる全般的な実務の能力を証明できます。レベル別に、A級・B級・C級の3種類の試験が提供されています。
通関士は財務省が認定する国家資格です。通関士になると貿易に関するさまざまな手続きを行えるようになります。難易度は非常に高く、通関士の資格があれば大幅な年収アップを図れるでしょう。
参考:
貿易実務検定|貿易実務のエキスパートの証明
8001 通関士制度の概要(カスタムスアンサー) : 税関 Japan Customs
事務職以外に手を広げる
貿易事務は取引先とやりとりする機会が多いため、交渉力も磨けます。貿易事務で培った交渉力を生かし、海外営業として活躍できる可能性もあるのです。
貿易系の営業は一般的な営業と違い、英語をはじめとした外国語のスキルが欠かせません。専門性が高い貿易に関する知識も必須です。
貿易事務として働きながら交渉力を身につけ、語学力を高めて貿易に関する知識も増やしていけば、営業やバイヤーにキャリアアップして年収を増やせる可能性があります。
未経験でもOK?必要とされるスキル
未経験者でも貿易事務への転職は可能です。貿易事務への転職を成功させるために、未経験者が持っておきたいスキルを紹介します。
ある程度の語学力
貿易事務は海外の取引先とやりとりを行うケースが多いため、ある程度の語学力が必須です。基本的には英語で書類を作成するため、英語の読み書き能力を鍛えておく必要があります。
貿易事務に求められる英語力の目安は、TOEICなら600点以上、英検の場合は2級以上です。TOEICの点数や英検を持っているなら、自分の英語力が足りているかチェックしましょう。
なお、貿易事務が取引先と会話でやりとりする機会は、それほど多くありません。あくまでも仕事の中心は書類作成であるため、読み書き能力を鍛えることが重要です。
貿易に関する専門知識
貿易事務の求人を出している企業は、基本的に即戦力を求めています。貿易事務として転職後すぐに活躍したいのであれば、貿易に関する専門知識が必須です。
何をしておけばよいのか分からない人は、資格取得のために勉強しましょう。貿易実務検定を取得しておけば、貿易に関する専門知識をある程度有していることが証明できます。
貿易に関する知識がほとんどない場合は、アシスタントや補助から始めるのが一般的です。アシスタントや補助として働けば、実務に携わりながら知識やスキルを身につけられます。
調整能力
貿易事務は自社と取引先との間でさまざまな調整を行う機会があるため、転職活動中に調整能力の高さをアピールできれば、採用担当者への印象を高められます。
コミュニケーション能力も貿易事務に欠かせない能力です。社内外の多くの人と関わることになるため、どのような相手ともスムーズにやりとりできなければなりません。
貿易では予期せぬ事態が発生しやすいため、貿易事務には柔軟性も求められます。イレギュラーな状況下でも、冷静に行動・判断できる能力が不可欠です。
海外に憧れがあるなら目指したい職業
貿易事務の平均年収は約464万円です。専門性を高めたり事務以外に仕事の幅を広げたりすれば、年収アップを図れます。
語学力や専門スキルを鍛えておくことで、未経験者でも貿易事務に転職しやすくなります。貿易事務を目指したいのであれば、しっかりと準備をしながら転職活動を進めましょう。
貿易事務の仕事を探すなら、国内最大級の求人サイト「スタンバイ」を利用するのがおすすめです。全国の豊富な求人が掲載されているため、自分に合った転職先を見つけやすいでしょう。