システムエンジニアとプログラマーの違い。スキルから目指す方法まで

IT業界でキャリアをスタートさせたい人の中には、「システムエンジニアとプログラマーの違いがわからない」という人もいるはずです。それぞれの仕事内容や必要なスキル、キャリアパスの違いを比較してみましょう。また、IT職の将来性も解説します。

システムエンジニアとプログラマーの仕事の違い

システムエンジニアのデスク

(出典) photo-ac.com

システムエンジニア(SE)とプログラマー(PG)は、現場では同じポジションの人を指すことが多いのが実情です。

ただし、企業によっては役割分担を明確に分けているケースもあります。その場合は、どのような分担がされているのかを紹介します。

システムエンジニアの仕事

プログラマーとシステムエンジニアの役割が分けられている場合、システムエンジニアは、システム開発における「上流工程」を担います。具体的には、システム開発を希望するクライアントの要望をヒアリングし、開発の目的や実装する機能・性能などを設定します(要件定義)。

システムの概要が決まった後は、要件定義をもとに「基本設計」や「詳細設計」を行い、設計内容を反映させた「設計書」「仕様書」を作成する流れです。

またシステムエンジニアは、プロジェクトのチームリーダー的な役割も担います。メンバーの進行状況を確認しながら、納期に間に合うようにスケジュールを調整していきます。

プログラマーの仕事

プログラマーの仕事は、システムエンジニアが作成した仕様書をもとに、プログラミングを行うことです。プログラミング言語を使ってソースコードを記述する作業は、「コーディング作業」と呼ばれます。

コーディング作業が完了した後は、システムエンジニアと一緒にテストを実施し、システムが正常に稼働するかをチェックします。

1回で思い通りに稼働することは少なく、バグの修正・テストを繰り返しながら完成度を高めていくのが一般的です。

以上の作業は、システム開発の「下流工程」に位置付けられます。人数の少ないチームでは、システムエンジニアがプログラマーを兼任することも珍しくありません。

システムエンジニアとプログラマーに必要なスキルの違い

タイピングする手元

(出典) photo-ac.com

システムエンジニアとプログラマーには、それぞれどのようなスキルが必要なのでしょうか?役割・スキルの違いを明確にすると、自分がどちらの仕事に向いているかがわかります。

システムエンジニアに必要なスキル

システムエンジニアには、システム開発の舵取りをする役割があるため、求められるスキルは多岐にわたります。

  • IT関連の知識・スキル
  • コミュニケーションスキル
  • プレゼンスキル
  • マネジメント力
  • 文書作成スキル

非IT企業のクライアントからすれば、システムエンジニアは「ITのプロ」です。プログラミングの知識はもちろんのこと、最先端のIT技術にも精通していなければなりません。

顧客折衝をするにあたっては、コミュニケーションスキル・プレゼンスキルなども必要です。社内外の利害関係をうまく調整して、スケジュール通りにプロジェクトを進めていかなければならないため、高いマネジメント力も要求されるでしょう。

プログラマーに必要なスキル

プログラマーの主な役割は、システムエンジニアの仕様書をプログラミングによって具現化することです。どちらかというと、技術面でのスキルが重要視されます。

  • プログラミングスキル
  • デバッグ(debug)スキル
  • アルゴリズムスキル

デバッグスキルとは、プログラム中のバグを見つけて原因を特定し、正しく修正するスキルのことです。プログラマーの仕事の半分はバグつぶしといっても過言ではないため、バグを見つけて素早く解決するスキルが欠かせません。

アルゴリズムとは、「問題を解決する手順・計算方法」を意味します。アルゴリズムを構築するスキルが身に付いていると、最適なアルゴリズムを選択できるため、質の高いプログラミングを効率よくできるようになります。

システムエンジニアとプログラマーの将来性

パソコンで作業する男性

(出典) photo-ac.com

ITエンジニア職は総じて将来性が高く、今後も大きな需要が見込めます。ただし、IT業界の技術進化は日進月歩で、時代が求めるスキルを身に付けなければ、生き残りは難しいといえるでしょう。

システムエンジニアの将来性

日本では、以前からIT人材の不足が問題視されてきました。現在もその問題は解決されておらず、今後も不足状態が一定期間は続くと予想されています。

中でも、開発の全工程に関わるシステムエンジニアの需要は高く、年収も安定しています。IT企業はもちろん、IT企業以外の大企業・中小企業でもシステムエンジニアを必要としており、スキルのある人材であれば仕事には困らないといってよいでしょう。

今後は、AI・IoT・ビッグデータなどの最先端技術が主流となります。時代の波に乗り遅れないためにも、新たな知識・スキルを習得し続ける姿勢が重要です。

プログラマーの将来性

一部では、「プログラミングの自動化技術やAIから職を奪われる」といった話もありますが、現時点ではそのレベルには達していません。近年は小学校でのプログラミング教育がスタートし、多くの人がプログラミングの重要性を認識しています。

今後は、受託開発・運用・保守をメインとする「従来型IT人材」の需要が減り、AI・IoT・ビッグデータ・機械学習などを扱える「先端IT人材」の需要が増えると予想されています。

市場価値の高いプログラマーになるには、最先端分野でのスキル習得が不可欠です。AIモデルを構築するAIプログラマーや、IoT向けプログラムが開発できるエンジニアは、活躍の舞台が大きく増えるでしょう。

システムエンジニアとプログラマーのキャリアパス

タイピングする手元

(出典) photo-ac.com

求められる人材・スキルは、時代と共に変わります。IT業界へのキャリアチェンジを検討している人は、業界全体の動向をよく把握した上で、将来を設計していく必要があります。それぞれの代表的なキャリアパスを見ていきましょう。

システムエンジニアの場合

システムエンジニアのキャリアパスは、「マネジメント系」と「スペシャリスト系」に大別されます。

  • プロジェクトリーダー
  • プロジェクトマネージャー
  • ITコンサルタント
  • ITアーキテクト

プロジェクト全体を統括する「プロジェクトマネージャー」は、チームを束ねるリーダーシップや物事を高い視点から捉える俯瞰力、問題解決能力などを備えていることが必要です。

「ITコンサルタント」は、IT領域における企業の課題を分析し、経営戦略に沿ったIT戦略を策定します。システム開発支援や業務改善のコンサルティングなどが、メイン業務となるでしょう。

「ITアーキテクト」は、企業の経営戦略・ビジネス戦略をもとに、ITシステムの設計・構築を行う職種です。システムの骨格構造を作る重要な役回りで、「ITの建築家」とも呼ばれています。

プログラマーの場合

プログラマーには、以下のようなキャリアパスがあります。

  • システムエンジニア
  • エキスパートプログラマー
  • フリーランスプログラマー

一般的なキャリアパスは、「システムエンジニア」です。職務範囲が広がるため、数十万〜100万円ほど年収がアップする可能性があるでしょう。

「エキスパートプログラマー」は、プログラミングのプロフェッショナルという位置付けです。非常に高度なプログラミングスキルが必要なため、「人の上に立つよりも、技術を極めていきたい」という人に向いています。

自分の裁量で自由に仕事をしたい人は、「フリーランスプログラマー」という選択肢もあります。稼げるフリーランスになるには、営業力やコミュニケーションスキル、セルフマネジメント力を身に付ける必要があるでしょう。

システムエンジニアとプログラマーに向いている人

ノートパソコンで作業する女性

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システムエンジニアとプログラマーは、どちらも「ITエンジニア職」です。IT業界へのキャリアチェンジを検討している人の中には、どちらを目指すべきかで悩んでいる人も多いのではないでしょうか?それぞれに向いている人の特徴を解説します。

人と関わるのが苦にならない

システムエンジニアは、クライアント・チームメンバーとコミュニケーションを取る機会が多いため、人と関わるのが苦にならない人が適しています。

要件定義では、クライアントのニーズを丁寧にくみ取る必要があり、コミュニケーションスキルが高い人の方が適職でしょう。

システム開発はチーム単位で行うので、プログラマーにもある程度のコミュニケーションスキルは必要です。ただし、顧客折衝がない分、技術力の方が重視される傾向があります。

プログラミングやものづくりが好き

プログラマーに向いているのは、プログラミングが純粋に好きな人や、ものづくりへの興味・関心が高い人です。

パソコンの前で黙々と作業をする印象がありますが、プログラミングは単純作業ではありません。正常に動作するためのコードを導き出さなければならないため、論理的思考力・クリエイティビティを備えている人に向いています。

納期前は残業が多くなり、肉体的にも精神的にもハードな日々が続くでしょう。仕事への情熱・忍耐力がない人でなければ、続けていくことは難しいかもしれません。

学習意欲が高い

どのような職種にしろ、IT業界では「高い学習意欲を持った人」や、「新技術への好奇心が強い人」が生き残れます。IT技術の進展は目覚ましく、常に知識・スキルを刷新していかなければなりません。

プログラマーであれば、新たな言語を習得したり、AIを扱えるような技術を学んだりすることで、活躍のチャンスが一気に広がります。

単なる請負開発・運用保守にとどまらず、新たな付加価値を創出できるエンジニアを目指す必要があるでしょう。

システムエンジニア・プログラマーになるには

パソコンを見ながら勉強する男性

(出典) photo-ac.com

IT業界未経験者がシステムエンジニア・プログラマーとして活躍するには、どのようなルート・方法を選択すればよいのでしょうか?転職活動を少しでも有利に進めたい人は、IT関連の資格を取得しましょう。

まずはプログラマーを目指して

深刻な人手不足もあり、IT業界では「未経験者でも可能」とする求人情報が多く見受けられます。ここでいう未経験者とは「エンジニアとして働いた経験がなくても、スキルがあれば応募可能」という意味です。

プログラマーの求人であれば、プログラミングができることが前提なので、スクール・通信講座などでプログラミングの基礎を身に付ける必要があります。

システムエンジニアは、プログラマーの上位職です。未経験者がいきなりシステムエンジニアに就くのは不可能に近いため、まずはプログラマーを目指しましょう。

おすすめの資格

システムエンジニア・プログラマーになるのに、必須の資格はありません。しかし、資格があると自分のスキルが客観的に証明でき、転職活動で有利になります。

【プログラマー】

  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 応用情報技術者試験
  • 各プログラミング言語の認定資格

【システムエンジニア】

  • 応用情報技術者試験
  • システムアーキテクト試験
  • 情報セキュリティマネジメント試験
  • データベーススペシャリスト試験
  • ネットワークスペシャリスト試験

業界未経験者は、「基本情報技術者試験」に合格するところからスタートしましょう。ITエンジニアの登竜門と呼ばれている国家資格で、IT人材に必要な基礎的知識・スキルを証明できます。

上位資格の「応用情報技術者試験」では、応用的な知識・スキルが試されます。難易度が高く、実務経験を積んだITエンジニア向けです。