ソムリエになるための資格とは。種類や難易度、試験内容を紹介

ソムリエは飲食店や酒類・飲料を販売する店舗で、ワインの紹介をしたり、専門的なアドバイスをしたりできるワインのプロです。管理や仕入れも含め幅広くワインを扱う、ソムリエの2種類の資格や、試験内容、学習方法を見ていきます。

ソムリエ資格は2種類

ワインをテイスティングする女性

(出典) photo-ac.com

フランスのソムリエは国家資格ですが、日本では民間資格です。「日本ソムリエ協会(J.S.A.)」と「全日本ソムリエ連盟(ANSA)」がソムリエ資格を与えています。2つのソムリエ資格はどのような点が違うのでしょうか?

日本ソムリエ協会認定資格のソムリエ

日本ソムリエ協会(J.S.A.)が、1985年から認定しているソムリエ資格は、一般の受験資格として以下の条件があります。

  • 酒類や飲料を提供する飲食サービスや、酒類や飲料の仕入れ・輸出入・製造、コンサルタント業務などを通算3年以上経験している
  • ソムリエ試験開催年度の基準日、8月31日にもこれらの仕事に従事
  • これらの仕事に、月90時間以上勤務

すでに酒類・飲料関係の仕事に就いていることが条件のため、初心者よりは経験者に向いています。

参考:呼称資格認定試験│一般社団法人日本ソムリエ協会

全日本ソムリエ連盟認定資格のソムリエ

1997年に設立された全日本ソムリエ連盟も、ソムリエの認定を行っています。ワインの製法・法律・歴史の知識はもちろん、セールスプロモーションも試験範囲です。

広範な内容を、効率的に学べる4コースの講座があり、講座を受けた後に試験に合格すれば、資格がもらえます。通信コースは課題の提出が試験代わりで、会場での試験はありません。

  • eラーニングコース:スマホで学べる(1.5カ月間)
  • 通信コース:送られてくる教材で学ぶ(3カ月間)
  • オンデマンド受講コース:動画配信サービスで講義を受ける(1日)
  • 2日間集中コース:2日間の講義で集中的に学ぶ

満20歳以上であれば誰でも受験できるため、お酒と無関係の業種で働く人にも受けやすいでしょう。

参考:ワインコーディネーター/ソムリエ | 全日本ソムリエ連盟(ANSA)

どちらの資格を取得すべき?

同じソムリエでも、日本ソムリエ協会認定資格は、全日本ソムリエ連盟の資格より認知度が高めです。ただし日本ソムリエ協会の資格は、受験するために、酒類・飲料関係の仕事に就いている必要があります。

お酒関係の仕事に就いている人がステップアップするなら、信頼度や認知度の高い、日本ソムリエ協会の資格がおすすめです。

一方、異業種からワイン関連の仕事へ転職したいなら、満20歳以上で受験できる全日本ソムリエ連盟の資格が向いています。自分の状況に合う方を選び、取得するとよいでしょう。

ソムリエ資格を取得するメリットとは

グラスにワインを注ぐ

(出典) photo-ac.com

ソムリエ資格は、取得過程で幅広くワインの知識を身に付けられます。また合格すれば、一定以上の知識やスキルが身に付いていると客観的に示せます。どちらのメリットも、ワインに関連する仕事へ転職するとき、有利に働くでしょう。

ワインについての知識を幅広く習得できる

ワインの知識を身に付けられるのは、資格取得を目指すメリットの1つです。ソムリエ資格に合格するには、世界中のワインに関する知識を持っていなければなりません。

テイスティングによる品質の鑑定スキルや、ワインの味や香りの表現方法も学ぶ必要があります。他にもサービス提供や、在庫管理の仕方が試験で問われます。合格レベルの知識や技術を習得できれば、ソムリエとして転職したときに、役立てられるでしょう。

顧客からの信頼を得られる

ソムリエ資格を取得すると、ブドウをデザインした金色の認定バッジを受け取れます。バッジを付けていれば、ワインに関する豊富な知識やスキルを持っていることを、客観的に証明できます。

ワインをおすすめするときに、ソムリエ資格を持ったスタッフだと分かれば、顧客からの信頼を得やすいでしょう。

お酒に詳しくない人でも、料理にぴったりのワインを楽しめるよう、サービスするのがソムリエです。ソムリエのいる店なら間違いないと評価され、次回の来店につながるかもしれません。

参考:認定バッジについて│一般社団法人日本ソムリエ協会

ソムリエ資格の試験内容

ワインを開ける

(出典) photo-ac.com

ソムリエ資格を取得するには、どのような試験を受けるのでしょうか?資格保有者の多い、日本ソムリエ協会認定のソムリエ試験について紹介します。2023年は1次試験が7月20日~8月31日、2次試験が10月16日、3次試験が11月27日の日程です。

幅広いワインの知識を問われる1次試験

800ページを超える、日本ソムリエ協会教本から、ワインの産地・ブドウの栽培方法・醸造の仕方・在庫管理など、幅広く出題されるのが1次試験の特徴です。

コンピュータを使い、選択肢から正解を選ぶ方式で行われます。試験時間70分間に、120問前後の問題に回答するため、素早さも求められます。

また出願するときに希望すれば、1次試験は2回まで受験可能です。回数を後で変更することはできないので、よく検討し出願しましょう。

参考:2023年度 J.S.A.ソムリエ・J.S.A.ワインエキスパート呼称資格認定試験│一般社団法人日本ソムリエ協会

テイスティングして特徴を答える2次試験

2次試験で行うのは、ワインとその他のアルコール飲料のテイスティングです。発泡していないワイン(スティルワイン)3種類と、ブランデーや日本酒など、ワイン以外のアルコール飲料をテイスティングします。

銘柄が分からない状態で味や香りを確認し、ワインはコメントや生産国などを回答します。その他のアルコール飲料は、選択肢から銘柄を選ぶ方式です。香りや味を客観的に判断できるか問うのが、試験の目的です。

また、3次試験の審査対象となる論述試験も、2次試験と同じタイミングで行われます。

参考:2023年度 J.S.A.ソムリエ・J.S.A.ワインエキスパート呼称資格認定試験│一般社団法人日本ソムリエ協会

サービス実技と論文の3次試験

3次試験は、サービス実技試験により、スムーズにワインをサーブできるかチェックされます。専用のかご(パニエ)に入れたワインの栓を抜き、ガラス容器(デキャンタ)へ移し替え、ゲスト役の審査員にサービスする内容です。

加えて、2次試験と同時に行った論述試験の結果も、3次試験の採点に用います。ワインと料理の相性・テイスティングしたワインの説明・ワインの知識など、3問の課題をそれぞれ200文字以内で、合計20分の制限時間内に回答する試験です。

参考:2023年度 J.S.A.ソムリエ・J.S.A.ワインエキスパート呼称資格認定試験│一般社団法人日本ソムリエ協会

ソムリエ資格の難易度

ワインを注ぐ

(出典) photo-ac.com

日本ソムリエ協会認定資格のソムリエは、どのくらい難易度の高い資格なのでしょうか?これまでの合格率や、1次~3次試験までの難易度を知り、試験準備に役立てましょう。

ソムリエ資格の合格率

ソムリエ資格の合格率は、毎年30%前後です。ワインについて幅広く知らなければ合格できない、難易度の高い資格といえます。特に細かな知識が問われる1次試験は難しく、試験勉強は最低でも半年以上かかると言われます。

これまでの合格率は以下の通りです。

  • 2016年:29.0%
  • 2017年:23.5%
  • 2018年:26.5%
  • 2019年:29.8%
  • 2020年:37.9%
  • 2021年:42.1%
  • 2022年:30.1%

資格保有者の推移を確認すると、毎年2,000~3,000人のペースでソムリエ資格保有者が出ていると分かります。

参考:資格保有者・合格率一覧|一般社団法人日本ソムリエ協会

1次試験から3次試験の難易度

1次~3次の中で、最も難易度が高いのは1次試験です。範囲が広いため学習が不十分な分野があると、合格から遠ざかってしまうかもしれません。受験生の半数以上が不合格になる難しさのため、十分な学習が必要です。

2次試験のテイスティングは、高度なスキルが要求される内容ですが、その分合格点は低めに設定されています。また3次試験のサービス実技は、練習していれば合格できる内容です。緊張し過ぎることなく、落ち着いて取り組みましょう。

ソムリエ資格の学習方法

ワインを注ぐ

(出典) photo-ac.com

合格率30%前後と、難易度の高いソムリエ資格に合格するには、十分な学習が必要です。費用を抑えつつ学べる独学の他、スクールや通信講座もあるため、自分に合った方法を選びましょう。

独学で合格を目指すことも可能

ソムリエ資格の勉強は独学でも進められます。自由なタイミングで学べますし、費用を抑えられるのがメリットです。まずは教本を分野別に読み進め、対応する分野の問題集に取り組みましょう。

問題集で間違えた部分をノートに書き出し、教本の該当箇所を読みます。これを分野ごとに行って、覚えていない箇所があれば、必要に応じて暗記カードを作っても便利です。試験まで1~2カ月になったら、試験に慣れるために問題集を中心に取り組みます。

効率よく学ぶならスクール

効率よく学びたいなら、スクールへ通う方法がおすすめです。ソムリエ資格に特化した大学や専門学校はないものの、民間のスクールが全国にあります。

決められた日時にスクールへ通い、カリキュラムに沿って勉強するため、試験に向けて着実に知識を身に付けられます。2次試験のテイスティングや、3次試験のサービス実技のスキル習得も可能です。

ただし、学費や交通費がかかるのはデメリットです。費用を考慮した上で利用するか決めましょう。

社会人には通信講座もおすすめ

通信講座を利用して学ぶ方法もあります。独学では何から始めればよいか迷ってしまうけれど、スクールに通う時間の余裕はない、という人もいるでしょう。通信講座なら、必要な教材が全てそろっている上、決まった日時に通う必要がありません。

パソコンやスマホで講座を受講するオンライン講座も、社会人には利用価値があります。繰り返し見返せる講座が多いため、復習しながら知識を身に付けられ、忙しい社会人でも利用しやすいといえます。

ソムリエ資格を取得して転職を有利に

ワインを開けるソムリエ

(出典) photo-ac.com

ソムリエ資格を取得すると、ワインに関する幅広い知識を得られる上、認定バッジを身に付けることで信頼にもつながります。ワイン関連業への転職を目指しているなら、知識やスキルを客観的に示すために、資格が役立ちます。

ソムリエとして活躍できる、飲食店やホテルへの転職を検討しているなら、「スタンバイ」の利用がおすすめです。条件を設定し検索すれば、希望の求人を見つけられるでしょう。

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