栄養士資格の取得方法は?栄養士になるメリット・デメリットも解説

飲食業や食品関連で役立つ資格として、栄養士が知られています。栄養士とは、どんな資格なのでしょうか?類似資格との違いや、主な特徴を紹介します。栄養士になるメリットとデメリットや目指す方法も見ていきましょう。

栄養士・管理栄養士・調理師の違い

栄養士

(出典) photo-ac.com

食に関する資格は、栄養士以外にも複数あります。管理栄養士や調理師とはどんな違いがあるのでしょうか?それぞれの特徴と違いを解説します。

栄養士は食と栄養のスペシャリスト

栄養士法の定義によると、栄養士は都道府県知事による免許を受け、栄養の指導に従事する人とされています。免許を持っている人だけが、栄養士を名乗れます。

栄養の指導とは、主に栄養学に基づいた献立作成や調理することです。学校給食や福祉施設の献立作成・調理を担当します。そのほか、食堂や飲食店など仕事の幅は広くあります。

メニューの考案や調理に関する仕事に携わりたいなら、取得しておくと有利な資格といえるでしょう。栄養士は食材に含まれる栄養素や、人間が1日に必要な栄養素などを学び、おいしく、かつ効率よく食事を楽しめるよう工夫できる食と栄養の専門家ともいわれています。

参考:栄養士法 | e-Gov法令検索

管理栄養士との違い

栄養士と管理栄養士は、免許の発行元が異なります。栄養士は都道府県知事から、管理栄養士は厚生労働大臣から発行されます。管理栄養士は国家資格であり、栄養士よりも取得の難易度は高く、上位資格であると考えてよいでしょう。

管理栄養士は、配慮が必要な傷病者から、健康な人の個別指導にも対応します。アスリートのパーソナルトレーナーや、ダイエット関連のサポートなど、主に健康な人を対象とする栄養士よりも幅広い職に携わるのが特徴です。

栄養士の資格を取得し、一定の基準を満たすと管理栄養士の資格試験を受験できます。仕事の幅を広げたいなら、管理栄養士の資格取得を検討するのもおすすめです。

調理師との違い

主に飲食店で働く調理師は、食材を調理するのが主な仕事です。栄養学に基づくメニュー作成をするよりも、味や価格・盛り付けなどを重視して調理します。

一般的な飲食店で働くことが多く、栄養の専門家ではありません。そのため、栄養士が考案したメニューを調理師が作ることもあります。

料理を作る仕事をしたかったり、飲食店の経営を考えていたりする人は、調理師免許を検討するのも1つの方法です。学校・病院・福祉施設など、栄養バランスを重視した献立を作る必要がある場所では、栄養士や管理栄養士が活躍します。

栄養士を目指すメリット

カフェで勉強する女性

(出典) photo-ac.com

栄養士の資格は、手に職をつけたい人におすすめです。資格取得によってどんなメリットがあるのか、見ていきましょう。就職面やプライベートで得られるメリットも紹介します。

需要が高く安定している

栄養士は、飲食業界や施設など幅広い場所で活躍しています。栄養士を必須資格としている施設もあり、需要の高い資格といえます。

学校や病院など、安定した雇用が見込める職場が比較的多く、継続雇用やある程度の収入を求める人にも適しているでしょう。

メニュー作成から調理まで幅広くこなす栄養士は、食に関する業種にとって欠かせない職業といえます。

ライフステージに合わせて働ける

栄養士は需要が高いため、働く場所やライフステージが変わっても長く働き続けられます。アルバイト・パートとしての雇用もあり、家庭の都合でフルタイム勤務が難しい場合でも、柔軟に働けるでしょう。

結婚・妊娠・出産など環境が変わりやすい女性も、家事や育児で忙しい時期に配慮した、時短勤務できる職場もあります。産休・育休取得後・離職していた人が復帰しやすいところもメリットといえます。

家族の健康もサポートできる

栄養士になると、学んだ知識を生かして、自分や家族の栄養管理もできるようになります。仕事だけでなく、家族の健康維持のために、普段の食事にも知識が生かせるのはメリットといえます。

献立作りや調理の勉強をすることで、家庭料理を効率よく作るスキルも身に付くでしょう。基本を学んでおけば、スムーズに作業が進み、家事の時短にもつながります。

もともと料理に興味がある人や、しっかり家事もこなしたいと考える人は、資格取得を目指すのもおすすめです。

上級資格を取得すると仕事の幅が広がる

栄養士の上級資格は、管理栄養士です。栄養士として一定の実務経験を積むと、管理栄養士の資格取得を目指せます。

健康な人だけではなく、傷病者や個人向けのメニュー作成や、調理を担当したいと考えているなら、管理栄養士の資格取得を検討しましょう。

学校での仕事を考えているなら、栄養教諭免許が上級資格に該当します。栄養士は給食に関係する業務に携わりますが、栄養教諭は教員でもあります。子どもたちに食育を通して、食の大切さを教えることも仕事の1つです。

栄養士になって感じやすいデメリット

悩んでいる白衣の女性

(出典) photo-ac.com

栄養士として活躍する人の中には、デメリットを感じる人もいるようです。仕事に生かせる資格であっても、実際に働いてみると違和感を感じることもあるでしょう。栄養士の仕事で感じやすいデメリットと、働く上での注意点を解説します。

食の安全に関わるため責任が重い

栄養士は多くの場合、責任者として食の安全を意識しながら仕事を進めます。衛生管理や献立作成は、栄養士1人で担当することも多いため、必然的に責任が重くなるでしょう。

近年では、食物アレルギーがある人も増えているといわれ、1人1人に合わせた対応をする必要があります。

万が一、アレルギーの原因となる食材を提供してしまったら、命に関わる事態を招きかねません。食の安全を提供する責任者として、深い知識と配慮が求められるので、責任が重いと感じる人が多いと考えられます。

仕事量が多く意外にも重労働

栄養士の仕事は、献立作成だけとは限りません。多くの場合、調理にも携わります。家庭向けの調理とは異なり、学校や施設で作るのは大人数向けの食事です。

食材や調理器具も量や大きさが増すので、持ち運ぶには体力が必要です。食材のカットや調理にも時間がかかりやすく、毎日同じ作業を繰り返すため、重労働と感じる人もいるでしょう。

また、事務作業や現場の管理者としての業務もあるため、献立作成だけだと考えていた人にとっては、仕事量が多い栄養士として働くのはデメリットだと感じる要因といえます。

働きながら栄養士の資格は取得できる?

勉強机

(出典) photo-ac.com

社会人になってから、栄養士の資格は取得できるのでしょうか?資格取得までの主なルートを紹介します。学ぶ期間・時間帯で、働きながら資格取得が難しいと感じたときは、栄養士学校への入学までに貯蓄し、学業に専念できる環境を整えることも大切です。

全日制の学校でしか学べない

栄養士の資格を取得するには、全日制の大学・短大・専門学校などで学ぶことが必須条件です。講義や勉強量が多く、実習もあるため、夜間学部・通信教育課程はありません。

社会人になってから栄養士を目指す場合は、学校に通う時間と金銭的な余裕も求められるでしょう。学校に通うために仕事を辞めた場合は、一定の条件がありますが、専門実践教育訓練給付制度などを利用して入学する方法もあります。

費用に不安があるときや、給付制度の利用が難しいときは、アルバイトをしながら栄養士の学校へ通う必要があるでしょう。

参考:専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問

修学には最低2年間かかる

栄養士の資格取得を目指すため、大学では4年間、短大や専門学校では2年間の修学が必要です。最短ルートで栄養士になるには、最低でも2年間かかると考えておきましょう。

2年間・4年間コースのどちらでも、栄養士の資格は取得できます。ただし、学んだ期間によって、管理栄養士の受験資格が得られるまでの実務経験年数が異なります。

早く栄養士になって働きたいと考えるなら、2年間のコースがよいでしょう。各学校にもよりますが、2年間に凝縮して講義するため、勉強量は多くなりがちです。しっかりと学業に専念できる環境を整えてから入学を検討する方が得策といえます。

働きながら取得できる食に関する資格

生活費や学費の確保が難しいときは、栄養士を目指すのは困難です。全日制の学校に通うため、一般的なフルタイムの勤務は難しいといえます。

仕事を続けながら食に関する資格を取得したい場合は、通信教育や独学で学べる資格取得を検討してもよいでしょう。

食生活アドバイザーや、フードコーディネーターといった民間資格は、独学でも資格取得が可能です。ただし、栄養士とは需要の高さや、対応できる業務に違いがあります。自分が就きたい仕事でどんな資格が必要かを考え、もし栄養士が必須ではないなら、これらの資格取得の検討をするのも良いでしょう。

参考:
食と生活に関する資格なら食生活アドバイザー|FLAネットワーク協会
特定非営利活動法人 日本フードコーディネーター協会

栄養士の資格を取得する流れ

ノートに書き込む女性

(出典) photo-ac.com

栄養士の資格取得には、学校を卒業する以外に手続きが必要です。免許申請の方法や、資格試験の有無について解説します。卒業後に就職を控えているときは、忘れず手続きを済ませましょう。

養成施設を卒業後に各都道府県にて免許を申請

栄養士の資格取得には、厚生労働大臣指定の大学・短大・専門学校を卒業し、都道府県に免許の申請をします。

免許申請の方法は、各都道府県のホームページでも公開されています。東京都では、都庁窓口・電子申請・郵送での申請が可能です。

栄養士免許申請書・卒業証明書・単位履修証明書・戸籍抄本・身分証明書といった必要書類をそろえて提出します。手数料が必要なので、最新の情報を確認した上で手続きを進めましょう。東京都の場合は、栄養士の免許発行まで10日前後かかるとされています。

参考:栄養士・管理栄養士免許 東京都福祉保健局

栄養士免許の国家試験は不要

栄養士の資格取得の際に、国家試験を受験する必要はありません。大学・短大・専門学校で単位を履修・卒業・申請すると免許を取得できます。

ただし、栄養士の実務経験を積み、「管理栄養士」を目指す場合は、国家試験を受験する必要があります。いずれ管理栄養士になりたいと考えるなら、スキルと知識を身に付け、国家試験対策をしておきましょう。

栄養士の資格を取得したら

窓辺の履歴書

(出典) photo-ac.com

栄養士の免許が交付されたら、資格が生かせる職場を探しましょう。就職先の探し方や、主な勤務先について解説します。

就職先の探し方

栄養士の学校では、一般的に在学中に就職活動が行われます。就職活動の流れは、専門学校や大学と同じです。多くの学校には就職支援があり、サポートを受けながら新卒求人に応募します。

就職支援が少ない学校や、学校紹介の求人に希望するものがないときは、求人サイトを活用するのがおすすめです。

卒業見込みの時点で応募できるかは、募集条件によっても異なるため、新卒向けの求人を探すのが近道です。

栄養士がどのような仕事内容なのか知りたいときは、新卒向け以外の求人情報もチェックしてみましょう。スタンバイでも、栄養士の求人を探せます。

社会人が栄養士の資格を取得するのは、長い道のりといえます。求人内容を確認して、具体的な労働環境や収入をイメージしておくとよいでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

学校・自治体・食品会社など活躍の場は多い

栄養士の求人は、学校・自治体・福祉施設・一般の食品関連企業など、幅広い分野があります。食事の提供や、メニュー開発を行う場合は、業界を問わず活躍できます。

就職先は比較的、豊富にあるので、希望する働き方によっても選べます。子どもに食の大切さを伝えたかったり、おいしいご飯を食べさせてあげたかったりする人は、給食センターや学校関連で活躍できるでしょう。

安定した働き方を希望するなら、自治体運営の施設を選ぶのも1つの方法です。

栄養士の資格を取得して食関連の仕事に挑戦しよう

給食センターのイメージ

(出典) photo-ac.com

栄養士の資格を取得するには、大学・短大・専門学校で栄養学などについて、2~4年間学びます。まずは指定認可された学校を選び、卒業を目指しましょう。社会人から栄養士を目指す場合、夜間学部や通信教育課程がないため、学業に専念できる環境を整える必要があります。

資格取得まで、時間はかかりますが、食に関する専門業務に携わりたいと考えているなら、給付金制度や奨学金を活用し、栄養士を目指すのもおすすめです。

実際の栄養士の業務はどんなことをするのかスタンバイで確認しておけば、資格取得後のイメージもしやすいでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

瀧本博史
【監修者】転職コンサルタント・心理カウンセラー・著者瀧本博史

国家資格2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー。キャリアの専門家として就職指導や職業訓練校、大学講師、ハローワークや公共機関等の相談員歴29年。心理カウンセラーとして心の問題もケアする。著書複数。NHK総合の就活ドラマも監修。

著書:
オンライン就活は面接が9割
本気で内定!面接対策

HP:
https://careerconsultantlink.com/