生活相談員として働くために必要な資格とは。基本の資格を紹介

介護職員としてレベルアップしていくには、資格を取得するのが近道です。生活相談員になるために求められる資格を紹介します。ただし、「生活相談員」という名称の資格はありません。紹介する資格を1つ取得しておくと、生活相談員への道が開けます。

生活相談員になるための資格要件

厚生労働省

(出典) photo-ac.com

生活相談員(ソーシャルワーカー)の主な仕事は、介護福祉施設等で介護福祉サービスに関する手続き業務や相談業務を行うことです。介護職員として働く人の中には、生活相談員へのキャリアアップを考えている人も多いのではないでしょうか?

「生活相談員」は職種名であり、生活相談員になるための資格試験は存在しません。とはいえ、誰もが従事できるわけではなく、厚生労働省や各自治体が定める一定の要件を満たす必要があります。

厚生労働省が指定する資格要件

特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準において、生活相談員として働ける人は「社会福祉主事任用資格を有する人」または「これと同等以上の能力を有する者」と規定されています。

社会福祉主事任用資格を有する者とは、社会福祉法第19条第1項のいずれかに該当する人のことです。以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 大学または専門学校で厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者
  • 都道府県知事の指定する養成機関または講習会の課程を修了した者
  • 社会福祉士
  • 社会福祉事業従事者試験に合格した者
  • 同等以上の者として厚生労働省令で定めるもの(精神保健福祉士が該当)

上記から、社会福祉士や精神保健福祉士の資格保有者は、生活相談員の資格要件を満たすことが分かります。

なお、「これと同等以上の能力を有する者」の詳細に関しては、厚生労働省では明言をしておらず、各自治体の判断に委ねている状況です。

参考:
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 | e-Gov法令検索
社会福祉法 | e-Gov法令検索
ページ9:社会福祉主事任用資格の取得方法

自治体が指定する資格要件

自治体によっては、社会福祉主事任用資格等を有する者でなくても、生活相談員として活躍できる場合があります。「同等以上の能力」の判断基準について、各自治体ではどのように定めているのでしょうか?

多くの自治体では、介護支援専門員や介護福祉士などを資格要件に挙げていますが、一定の実務経験があれば無資格でも可能とするところもあります。

青森県では、介護支援専門員や介護福祉士に加え、「社会福祉施設等で2年以上介護または相談業務に従事した者」も生活相談員として働けます。富山県の場合は、看護師や准看護師も対象です。

生活相談員を目指す際は、勤務を希望する自治体の要件を事前に確認するようにしましょう。

参考:
生活相談員の資格要件について|青森県健康福祉部高齢福祉保険課
指定事業者 申請関係のお知らせ|富山市公式ウェブサイト

どこでも生活相談員になれる3資格を深掘り

勉強をする女性

(出典) photo-ac.com

社会福祉主事任用資格・社会福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格を持っていれば、どの自治体でも生活相談員として活躍が可能です。それぞれの資格の詳細を解説します。

社会福祉主事任用資格

社会福祉主事任用資格とは、社会福祉主事になるために必要な任用資格です。社会福祉主事は、都道府県や市町村に配属されて社会福祉に従事する職員を指します。

任用資格とは、特定の職業に就くために取得が求められる資格のことです。社会福祉主事任用資格を手に入れたとしても、地方公務員試験に合格して公務員にならなければ、社会福祉主事として働くことはできません。

社会福祉主事任用資格は試験が設けられていない資格で、一定の条件を満たせば取得が可能です。具体的には、大学で社会福祉に関する科目を修めたり、都道府県が開催する19科目279時間の講習会を受講したりすれば、資格を取得できます。

参考:ページ9:社会福祉主事任用資格の取得方法

社会福祉士

社会福祉士とは、障害を持っている人や生活困窮者を対象とした相談・援助に関して、専門の知識とスキルを持っている人に与えられる国家資格です。高齢化や虐待の増加を背景に、ニーズが高まっている資格とされています。

社会福祉士の主な仕事は相談業務です。身体や心に障害を持つ人の話を聞き、相談者の悩みを解決に導く公的支援や福祉サービスを提案します。

社会福祉士の試験を受けるには、福祉系の大学に進学して指定科目を履修したり、高校を卒業後に4年以上の相談援助実務を経て一般養成施設に1年以上通ったりするなどし、受験資格を得る必要があります。

参考:[社会福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

精神保健福祉士

精神保健福祉士とは、精神保健福祉分野に関する専門的な知識とスキルを持った人に与えられる国家資格です。精神科ソーシャルワーカーともいわれ、1997年の精神保健福祉士法の制定により誕生しました。

精神保健福祉士の主な仕事は、心の病を抱えた人が快適な生活を取り戻し、社会復帰できるようにサポートすることです。勤務する施設の種類によって仕事内容は異なりますが、相談・生活支援・就労支援などを行うのが一般的です。

精神保健福祉士になるには、国家試験の受験資格を満たし、試験に合格する必要があります。受験資格が与えられるのは、保健福祉系大学の卒業生や、4年以上の相談援助実務を経て一般養成施設で1年以上学んだ人などです。

参考:[精神保健福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

自治体によって生活相談員になれる資格も確認

高齢者と女性

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多くの自治体では、介護福祉士か介護支援専門員の資格を持っていると、生活相談員として働けます。自治体によって生活相談員になれる要件は異なるので、就職希望の自治体がある場合には、資格要件をしっかり確認するようにしましょう。

介護福祉士

介護福祉士とは、高度な知識とスキルを持った介護のスペシャリストに与えられる国家資格です。数ある介護福祉系資格の中でも、唯一の国家資格として知られています。

介護福祉士の仕事は、その人らしい生活を実現するにはどうしたらいいのかを考え、介護で理想の生活を実現していくことです。具体的には、食事や入浴の介助に代表される身体介護をはじめ、利用者の生活を支える生活支援や相談業務などに従事します。

介護福祉士試験の受験資格は、福祉系の大学に通った後、介護福祉士養成施設に1年以上通った人や、実務経験を3年以上積んで研修を受けた人などに与えられます。

参考:[介護福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

介護支援専門員

介護支援専門員とは、要介護者が自立した生活を送るために必要な援助に関して、専門的な知識とスキルを持った人に与えられる資格です。「ケアマネジャー」とも呼ばれます。

介護支援専門員の主な仕事は、要介護者が介護サービスを受けるために必要なケアプランの作成です。そのほかにも、要介護者とその家族からの相談を受けたり、要介護認定を行ったりするのも介護支援専門員の仕事です。

介護支援専門員の受験資格は、保健医療福祉分野での実務経験が5年以上、かつ業務に携わった期間が900日以上ある人に与えられます。実務経験さえあれば受験できるので、チャレンジしやすい資格といえるでしょう。

参考:
[介護支援専門員]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
ケアマネ試験-一般社団法人北海道介護支援専門員協会

生活相談員を目指すなら知っておきたい基礎知識

面談をする男性

(出典) photo-ac.com

生活相談員を志す人に知っておいてほしい、生活相談員に関する基礎知識を紹介します。目指す仕事に対する解像度を上げて、資格取得への気持ちを新たにしましょう。

生活相談員の仕事内容

生活相談員の仕事は、介護サービスの利用者と施設とをつなぐ窓口役になることです。具体的には以下のような仕事に従事します。

  • 入所希望者への説明や施設見学への同行
  • 利用者やその家族との面談
  • ケアマネジャーや施設の介護職員との連絡・調整
  • 地域コミュニティとの連絡・調整
  • 介護スタッフのサポート
  • 苦情への対応

生活相談員の仕事内容は法律によって明確に定められていないため、任せられる仕事の内容は、施設の形態や規模によってさまざまです。施設によっては介護職と兼務し、現場に出て要介護者の介護をする場合もあります。

生活相談員の収入

厚生労働省が開設している職業情報提供サイト「jobtag」によると、生活相談員の平均年収は約404万円です。

国税庁が発表している「令和3年民間給与実態統計調査」によれば、日本の全給与所得者の平均給与は443万円なので、生活相談員の収入は日本人の平均よりもやや低いことが分かります。

ただし、他の介護職と比べると生活相談員は高収入です。jobtagによれば、訪問介護員の年収は約364万円、施設介護員には約353万円となっています。現場で実際に介護に携わっている職員と比べると、生活相談員は高収入といえるでしょう。

参考:
老人福祉施設生活相談員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
福祉ソーシャルワーカー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
訪問介護員/ホームヘルパー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
施設介護員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

生活相談員の活躍する職場

生活相談員は、さまざまな介護の現場で働いています。具体的には以下のような施設で活躍するのが一般的です。

  • デイサービス
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • ショートステイ
  • 障害福祉施設

デイサービス・特別養護老人ホーム・介護付き有料老人ホームなどについては、生活相談員の配置基準が設けられています。例えば特別養護老人ホームの場合には、利用者100人につき常勤の生活相談員を1人以上配置しなければなりません。

利用者の人数に合わせて配置すべき人員の数が決まっているため、生活相談員はニーズが絶えない仕事といえるでしょう。

参考:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について(検討の方向性)

資格取得を目指すのが生活相談員への第一歩

ノートを前にアイディアを思いつく女性

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自治体によっては実務経験のみで生活相談員になれるケースもありますが、確実に生活相談員になりたいなら、要件として求められている資格を取得するのが正攻法です。資格を取っておけば、生活相談員が務まる人材であることの証明にもつながります。

生活相談員を目指すなら、実際の求人をチェックして求められる資格を再確認してみましょう。より目標が明確になって、資格取得への意欲がわいてくるはずです。

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