保育士不足が起きる原因とは?仕事が忙しいときの対処法もチェック

近年、保育士不足や待機児童の問題が取り上げられる機会が増えています。保育士が不足している原因は何なのでしょうか?考えられる理由と、改善に向けた今後の動向を解説します。保育士として働く中で、人手不足に悩む場合の対策も確認しましょう。

保育士は不足しているの?

並んでいる子供たちと保育士の女性

(出典) photo-ac.com

保育士不足は、ニュースでもよく聞く言葉です。保育施設は現在、どのような状態になっているのでしょうか?保育現場の現状について解説します。

以前から不足が続いている状態

保育士の不足は以前から問題になっており、2014年に厚生労働省が発表した資料にも、2017年には保育士が7.4万人不足するとの予測が書かれています。ただ、近年は国の政策として保育士不足の解消に取り組んでいる影響もあり、改善の傾向があるようです。

保育士と保育施設の不足を示す待機児童数は減少しているものの、同じく厚生労働省の資料によると、2020年時点の調査で1万2,439人とされています。地域によって二極化しており、人口増加率に伴って待機児童数が増える傾向です。

保育士が不足すると産休後の職場復帰や共働きが難しくなるため、社会的に大きな影響があります。今後も、保育士不足の解消に向けて取り組みが求められるでしょう。

参考:保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて P.17 P.19|厚生労働省

資格だけ持っている人も

保育士資格は保育士試験に合格するほか、都道府県知事が指定した養成施設の卒業でも取得できるため、有資格者は大きく増えています。

厚生労働省の調査によると、保育士の登録者数は年々伸びているものの、社会福祉施設等で仕事に従事していない「潜在保育士」の数も増加しています。保育士資格を取得している人の全員が、保育士として働いているわけではありません。

潜在保育士が多いことも、保育士不足の一因です。保育士資格を取得したとしても就職先の選択肢は多様で、賃金面や労働環境が合わず保育の現場で働くことを希望しない人も多いようです。

参考:保育を取り巻く状況について P.50|厚生労働省子ども家庭局保育課

保育士が不足している原因は?

悩むエプロンの女性

(出典) photo-ac.com

保育士が不足している原因は、何なのでしょうか?離職理由や就業先として選ばない理由は個々で違い、複数の原因が考えられるはずです。「令和4年版厚生労働白書」をもとに、代表的なものを見ていきましょう。

参考:令和4年版厚生労働白書 P.58〜59|厚生労働省

仕事の責任が重い

保育士の仕事は、子どもたちの見守りや世話です。保護者から子どもを預かり、責任を持って対応しなければいけません。子どもの命を預かる仕事に、プレッシャーを感じる人は多いようです。

「令和4年版厚生労働白書」では、厚生労働省職業安定局の「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査(2013年)」で調査した、資格取得後に保育士として働かない理由を掲載しています。

その中で、4割もの人から挙がっているのが「責任の重さ・事故への不安」です。子どものけがや病気など、突発的な事故をリスクと感じ、保育士としての就業をためらう層は多いと考えられるでしょう。

責任に比べて給与水準が低い

子どもたちを守る責任や仕事量を考えると給料が安い点も、保育士不足の原因と考えられています。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」から計算すると、保育士の平均年収は約382万円です。

国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者全体の平均年収は443万円となっています。保育士の平均年収は低めで、責任の重い仕事であると考えると、収入が見合っていないと考える人がいても自然でしょう。

実際、「令和4年版厚生労働白書」によれば、東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査」(2019年5月)で、退職した保育士の約29%が「給料が安い」を理由に挙げています。

保育士の離職が進むと、当然ながら保育士不足も加速します。離職を止めるためには、給与水準の改善が必要となるでしょう。

※保育士の平均年収は、賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計した金額です。
※賃金構造基本統計調査のデータは、一般労働者・企業規模10人以上のものを使用しています。

参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

人間関係に苦労しやすい

保育士は子どもたちだけでなく、同僚や上司・保護者など多くの人と接します。人間関係は幅広く、コミュニケーション力が必要な職場といえるでしょう。

「令和4年版厚生労働白書」によると、東京都福祉保健局の実態調査(2019年5月)で、保育士の退職理由として最も多く挙がったのは「職場の人間関係」です。「保護者対応等の大変さ」も挙がっています。

たくさんの人と接する分、人間関係に苦労しやすい背景があると考えられるでしょう。同僚や先輩との関係のほか、保護者に対しても気を遣う場面が多い点も、保育士の不足につながっている可能性が高いといえます。

保育士不足は改善される?

子供を抱く保育士の女性

(出典) photo-ac.com

人手不足に苦労している保育士は、今後この状況が改善されるのか気になるでしょう。人材が足りるかどうかは、保育士自身の努力では変わらない部分でもあります。運営側や国は、どのような改善策を取り得るのでしょうか?現状と今後を解説します。

現場でできる対策はある

保育士が不足しないように、現場ができることは少なくありません。保育士自身というよりは、主に運営側の意識が重要といえます。

多くの保育士が悩む人間関係を改善するには、上司からの働きかけが大切です。現場で起きている問題や悩みを相談しやすい環境を整え、保育士のストレスを減らすことが急務となるでしょう。

保護者からの意見やクレームが多い場合も、施設全体として対策すれば解消を望めます。相談しやすい環境整備ができていれば、保育士の負担が減るでしょう。離職理由となりやすい勤務時間を検討するのも、現場で取り得る対策です。

国も改善に向けて動いている

保育士の不足を解消するため、国もすでに施策を開始しています。保育士の数を増やすための「保育士確保プラン」として、保育士試験の回数を増やす・職場の環境改善を図る・学生の就職促進を進めるといった取り組みが行われています。

賃金を継続的に上げる「処遇改善等加算」は、収入面に不満がある保育士が注目したい施策です。関連して、保育士のキャリアアップを支援するための「キャリアアップ研修制度」も始まっています。

補助金や保育士確保のために予算も組まれており、国の支援を受ければ、現場でも魅力的な職場の整備が実現するでしょう。

参考:
保育士確保プラン|厚生労働省
保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ|厚生労働省

保育士不足による多忙に個人で取れる対策

頭を抱える保育士の女性

(出典) photo-ac.com

保育士として働く上で、人手不足は大きな問題です。保育士1人にかかる負担が増え、業務が圧迫されます。多忙なときに働く個人が取れる対策には、何があるのでしょうか?

書類仕事を効率化する

保育士は子どもたちの世話をしながら、書類仕事もこなさなければなりません。書類仕事で時間を取られてしまっているのなら、効率化を目指しましょう。

データ化できる紙の書類仕事があるようなら、積極的にデジタル化することで時短につながります。例えば、日報はフォーマットを作成して入力するように工夫すれば、効率的に時間を使えるでしょう。

業務が多く何から取りかかればよいのか悩む場合は、仕事をリスト化して取り組むのもおすすめです。Excelやアプリを使ってToDoリストを作ると、重要な仕事を忘れて後から二度手間になる心配もありません。

オンとオフをきちんと切り替える

保育士は、子どもたちの成長を助ける重要な役割を担っています。責任が重く、いつでも仕事のことを考えがちですが、休みの日は仕事を忘れることも大切です。

オンとオフの切り替えを意識するだけで、緊張が取れてリラックスできます。ずっと気を張っていると、疲れもたまりやすいものです。

仕事中に気を張っている分、休日はプライベートを楽しむ余裕を持ちましょう。休日をうまく使って気分をリセットできれば、仕事中は使命感を持って業務をやり遂げられます。

転職を検討する

勤務先の人手不足が深刻で、個人でできる対策を超えている状況もありえます。自分でできる対策がほとんどない場合は、転職を検討するのもおすすめです。

人手不足の解消や負担軽減の措置がなく、今の職場に限界を感じているなら、転職で道が開けるケースもあります。

本格的に転職を視野に入れるのであれば、転職の仕方を検討しましょう。別の保育施設で働くか保育士以外の仕事に就くかで、探すべき求人が異なります。保育士資格を生かせる別の仕事もあるでしょう。

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保育士不足の現状を考えて今後の行動を

笑顔の子供と保育士

(出典) photo-ac.com

保育士の不足や待機児童の問題は、国の施策もあり徐々に改善されています。現在でも保育士の不足は続いているものの、労働環境や賃金は今後の改善が期待できそうです。今後も処遇改善は継続される見込みで、保育士の増加も考えられます。

自分の工夫で人手不足による多忙をカバーできそうなら、紹介した対策を取り入れつつ様子を見てみるのも1つです。ただ、施設によって改善状況は異なるため、勤務先の状況が改善されない場合は転職も視野に入れましょう。