インセンティブとは何か?制度のメリットやデメリットを理解しよう

インセンティブという言葉は多くの場面で使われており、人によって定義が異なったり、意味を正確に理解しないまま使っていたりする人もいます。そこで、主にビジネスシーンにおけるインセンティブの意味と、インセンティブを導入するメリットなどを解説します。

インセンティブとは?どういう意味?

考え事をする男性

(出典) photo-ac.com

インセンティブとはどういう意味なのでしょうか?使われる状況や文脈によって意味合いが異なるので、まずは本来の意味や、ビジネスシーンでの使われ方を理解しておきましょう。

本来は「動機付け」の意味

インセンティブ(Incentive)とは、直訳すると「動機」や「刺激」といった意味になります。外部から刺激を与えて対象者の意欲を引き出し、何らかの行動を起こさせることを指す言葉です。

さまざまな状況で用いられている言葉であり、人間の動機に関する意味を持つ点は共通しているものの、本来の意味から派生した定義で使われるケースも珍しくありません。なお、インセンティブの語源はもともとラテン語で、「励ます」という意味を持っています。

インセンティブとモチベーションとの違いは?

インセンティブと混同されがちな言葉に「モチベーション」があります。両者をまったく同じ意味合いで使っている人もいますが、実際は意味が違います。

モチベーションは「内発的動機付け」と呼ばれ、人間が何か行動を起こすために、自分の内側から生まれる動機・欲求をのことです。一般的には、何かを成し遂げるため、人間が自分自身を励ましたり奮い立たせたりする要素や行動などを指します。

一方インセンティブは、人間が行動し続ける上で、外部から提供される刺激や報酬などを意味します。つまり「外発的動機付け」であり、主に他者に行動を起こしてもらうための施策や行動を指す言葉です。

企業から提供される報酬や褒美を指す

インセンティブという言葉は、さまざまな文脈で使われます。ただし、ビジネスシーンにおけるインセンティブは、一般的に社員の労働意欲の向上や業績アップなどを目的として何らかの報酬や褒美などを指します。

インセンティブの提供は、社員のやる気を引き出すことによって、自社の売上や業績アップにつながるため、多くの企業が社員に対して何らかのインセンティブを与えています。

社員側としては、企業が何らかのインセンティブを導入すれば、仕事の成果に応じて給与以外の報酬をもらえる可能性が出てくるので、歓迎すべき制度といえるでしょう。

インセンティブの主な種類

お札と電卓

(出典) photo-ac.com

企業のインセンティブ制度に関して、主な種類や導入のメリット・デメリットを解説します。まずは、会社が社員に提供するインセンティブの例を紹介します。

金銭的・物質的インセンティブ

金銭的・物質的なインセンティブは、給料やボーナス、報奨金といったものが代表例です。最も多い例としては、営業で一定以上の成績を上げた社員に対して、基本給に加えてインセンティブとして報奨金が与えられるケースです。

社員は自分の頑張り次第で収入アップが狙えるため、日々の仕事のやる気につながります。能力やスキル次第で、収入を大きく伸ばせる可能性があります。

なお、金銭ではなく、物質的インセンティブとして物品や賞品をもらえるケースもあります。

評価的インセンティブ

社員に昇進の機会を与えたり、実際に特定の役職に就かせたりすることで、当該社員のやる気を引き出し、業績の向上につなげようとする企業もあります。一定の成果に対して、社内で表彰するのも評価的インセンティブの一種です。

いま所属している企業が評価的インセンティブを導入していれば、仕事で高い成果を出すことにより、昇進の可能性が高まります。管理職を目指している人にとっては、理想とするキャリアアップのチャンスが広がるため、特に嬉しい制度といえるでしょう。

人的インセンティブ

社員間の関係を円滑にすることで、仕事のやる気を高めるタイプのインセンティブです。例えば配置転換によって、一緒に仕事をしたいと思っている上司のもとで、対象社員を働かせる方法があります。

尊敬できる上司のもとであれば、自ら成長する意欲がわいたり、自然にパフォーマンスが高まったりする人は多いでしょう。

職場の人間関係は仕事の生産性に大きな影響を与えるため、人的インセンティブを提供している企業に勤められれば、自らの努力で労働環境を変えられるチャンスがあります。

理念的インセンティブ

企業の目指すべき方向性や理念、事業の意義などに共感してもらうことで、社員の労働意欲を高める活動も、インセンティブの一種です。

価値観や理念が社内にしっかりと浸透することで、組織全体の生産性が高まる傾向があります。理念的インセンティブを導入している企業に入社すれば、周知と価値観を共有しやすく、チームワークも発揮しやすいでしょう。

自己実現的インセンティブ

社員が望むキャリアを後押ししたり、夢や目標を企業として支援したりすることで、労働意欲を高めるタイプのインセンティブです。

さまざまな施策が考えられますが、教育プログラムや訓練プログラムを充実させ、社員の成長を後押しするケースが多いでしょう。

自己実現的インセンティブは社員にとっても恩恵が大きく、特に自分の理想とする道が明確になっている人であれば、インセンティブを利用してキャリアアップしやすくなります。

企業によっては、将来の独立を支援してくれる場合もあるでしょう。実際、社員の独立・起業を積極的に後押ししている企業もあります。

インセンティブ制度を導入するメリット

パソコンで作業する男性

(出典) photo-ac.com

インセンティブ制度は企業にとって多くのメリットがありますが、社員側もインセンティブで労働意欲を高めたり、キャリアアップの機会を勝ち取ったりできるメリットがあります。社員がインセンティブ制度を歓迎すべき具体的な理由を確認しましょう。

日々の労働意欲が向上する

インセンティブ制度の導入により日々の労働意欲が向上し、仕事の成果アップが期待できます。

努力次第で高額な報酬を得られたり、昇進やキャリアアップの可能性が高まったりする点は、社員にとってインセンティブ制度の最大のメリットといえるでしょう。インセンティブを得ながら自己実現ができる可能性も高まります。

たとえ毎日の仕事がつまらないと感じている人でも、インセンティブによって報酬アップやキャリアアップの道が開ければ、目の前の仕事に対するモチベーションがわくでしょう。日々の仕事が充実し、新たな目標に向かって仕事を進められるようになります。

成果に注目してもらいやすくなる

一定の成果を基準にインセンティブが付与されるケースがほとんどなので、仕事の成果に注目してもらいやすくなるのもメリットです。

インセンティブを付与する社員を決めるためには、結果の平等を徹底する必要があるため、これまで評価基準が曖昧だった企業でも、制度の導入をきっかけに、公平な人事評価が行われる可能性があります。

また、チームでプロジェクトに取り組んでいる場合などは、チーム全体がインセンティブ付与の対象になる可能性があるので、チームワークが向上し、より成果を出しやすくなるでしょう。

インセンティブ制度のデメリット

パソコンを前に悩む女性

(出典) photo-ac.com

インセンティブ制度は社員側にもメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。これからインセンティブを導入する企業で働いている人は、制度の注意点も確認しておきましょう。

収入にばらつきが出る可能性がある

インセンティブによって収入アップが期待できる反面、成果を出せないと収入が伸びない可能性があります。

特に営業担当者の場合、成果を出せる人と出せない人で、収入に大きな差が出てしまうのも事実です。またインセンティブを得られても、毎月の収入にばらつきが出てしまい、安定しないケースも考えられます。

制度の導入自体は社員にとってメリットが大きいですが、思うように収入を伸ばせないと、逆に労働意欲が下がってしまうおそれがあります。

過度な競争や、モラル面での課題が生まれるリスクがある

インセンティブの付与を目指して多くの社員が競争するようになり、仕事に過度なストレスを感じるようになる可能性もあります。

適度な競争環境は業務生産性の向上に役立ちますが、過度になると職場の人間関係に悪い影響が出てしまうでしょう。インセンティブの付与を狙って、周りをないがしろにしたり、チームワークを乱したりする人が出てくるかもしれません。

さらに、多くの人がインセンティブを意識するあまり、インセンティブに関係のない仕事がおざなりになるケースも考えられます。それによって、インセンティブ目的で仕事を進めていると全体のパフォーマンスが低下し、制度自体が廃止されてしまう可能性もあるので注意しましょう。

インセンティブには税金がかかる?

家計簿をつける

(出典) photo-ac.com

インセンティブには多くの形がありますが、金銭的な報酬を得た場合、税金がかかる点は知っておかなければいけません。インセンティブにかかる税金について理解しておきましょう。

所得税の課税対象となる可能性に注意

インセンティブとして報奨金や物品を得た場合、所得税の課税対象となります。いわゆる成果報酬や出来高払いの給料と同じ扱いであり、金額に関係なく税金の負担が発生するので注意しましょう。

チーム全体にインセンティブが付与される場合であっても、最終的に個人に分配されるのであれば課税対象です。

さらに、業績に応じて付与される金銭的インセンティブ(歩合給)の場合は、社会保険料の対象でもあります。ただし、金銭や物品以外のインセンティブに関しては、内容によって非課税になるケースも多いでしょう。

課税・非課税の判断については、内容ごとに判断しなければいけません。金銭や物品は基本的に課税対象となるという点だけは覚えておきましょう。

インセンティブ制度について理解しよう

パソコンを前に考え事をする女性

(出典) photo-ac.com

インセンティブとは本来「動機付け」の意味であり、さまざまな文脈で用いられる言葉です。ビジネスシーンにおいては、社員の労働意欲を高めるために付与される金銭的・物質的な報酬や評価などを指します。

インセンティブにはさまざまな種類があり、社員の意欲を高められるならば、どういった形でもインセンティブになり得ます。

社員側からすれば、インセンティブの導入は収入アップやキャリアアップの機会につながるので、歓迎すべき制度といえるでしょう。ただし、収入の偏りや過度な競争が発生する可能性もあるので、その点は注意が必要です。

現時点で転職を考えているならば、インセンティブ制度の充実した企業を選ぶのも、有効な選択肢の1つです。

多くの求人の中から自分に合った転職先を選ぶには「スタンバイ」を利用してみましょう。全国の豊富な求人案件の中から、さまざまな条件で自分に合ったものを検索できます。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら