年間休日とは?法的な位置づけや最低ライン、休日の多い業界を解説

年間休日数は就業先によって異なりますが、法的な位置づけはどうなっているのでしょうか?特にプライベートを重視する人は、できるだけ休日の多い業界に就職・転職したいと思うはずです。年間休日の概要と業界による休日数の違いについて解説します。

年間休日とは

カレンダーと赤鉛筆

(出典) pixta.jp

年間休日とは、企業に勤めている人が1年間に取得できる休日数を指します。企業によって休日数は異なりますが、全体の平均や最低ラインはどうなっているのでしょうか?

1年間に社員が休める日の合計

年間休日は、企業がそれぞれ定めている、1年間に社員が休める日の合計です。国内のすべての企業が一律に同じ休日を設定しているわけではなく、労働基準法の範囲内であれば、企業が休日を任意に設定可能です。

休日の合計数は、企業によってそれほど大きな違いはないものの、業界・業種によって若干の差があります。

詳しくは後述しますが、IT業界や金融・保険業界のように平均休日数が多めの業界もあれば、飲食業や宿泊業のように少なめの業界もあるのです。

年間休日の平均は120日程度

一般的なビジネスパーソンの年間休日の平均は、120日程度とされています。かつては休日といえば日曜日が中心でしたが、近年は土曜日と日曜日を休日に設定している企業が一般的です。

土曜日と日曜日を休日とするのを前提として、お盆休みや年末年始の休日の平均を加えると、合計で120日程度になる企業が多いでしょう。

厚生労働省の調査によると、2022年における国内企業の年間休日の平均は、115日程度とされています。勤め先の年間休日が多いのか少ないのかを判断した人は、この数字を参考にするとよいでしょう。

出典:令和4年就労条件総合調査(P3)|厚生労働省

年間休日の最低ライン

オフィス

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年間休日数は企業によって異なりますが、最低ラインはどこにあるのでしょうか?企業は、まったく休日を定めずに社員を働かせることはできません。労働基準法の規定に従って、最低ライン以上の休日を設定する必要があります。

労働基準法による規定は?

まずは、労働基準法における労働日数や労働時間の規定を確認しましょう。労働基準法第35条では「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回、または4週間に4回の法定休日を与えなければならない」とされています。

さらに第32条において、労働時間の上限は1日8時間、かつ週40時間までと決められています。1日8時間労働という企業は数多くありますが、その根拠は労働基準法にあるのです。

これらの規定に従って年間休日も設定しなければいけませんが、裏返せば、この規定に準拠している限り、どれぐらいの日数を休日とするかは、企業が自由に決められます。ただし、最低ラインよりも若干多めの休日を設定している企業がほとんどです。

出典:労働基準法|e-Gov 法令検索

年間休日の下限は105日程度

労働基準法に照らして、年間休日の最低ラインを算出すると105日程度となります。これは認められた法定労働時間を基準として、社員にフルで勤務してもらった場合の日数です。

勤め先の休日が少ないと感じている人は、この基準をクリアしているか確認してみましょう。時間外労働が発生していないかという点も、チェックが必要です。

ただし上記のように、労働基準法35条において、会社は雇用している労働者に対して週に1日以上、または4週のうちで4日以上の休日を与えなければならないと定められています。

そのため、いわゆる週休二日制でなくても違法ではなく、他の企業に比べて年間休日が少なかったからといって、ただちに違法とはいえません。

また後述するように、労働者と「36(サブロク)協定」を結んでいる場合、会社は法定の労働時間を超過したり、休日労働をさせたりすることも可能です。

加えて、変形労働時間制を導入している場合は、労働時間が偏る可能性があります。変形労働時間制の場合、社員の労働時間は月(あるいは年)単位で計算されます。残業が重なる時期もあれば、労働時間が短めの時期も出てくるでしょう。

「36協定」を結んでいる場合

企業は労働基準法に準拠して、年間休日を設定しなければいけません。しかし社員との間に「36協定」を結んで、時間外労働や休日労働を可能にしている場合は、年間休日が少なくなる可能性があります。

「36協定」とは、時間外労働および休日労働に関する協定の通称です。労働基準法第36条が根拠になっているため、「36協定」と呼ばれています。

企業(使用者)と労働者との間で協定を書面で締結し、労働基準監督署に届出をすれば、時間労働や休日労働も可能になります。

ただし、36協定を結んだからと言って、社員を無制限で働かせられるわけではありません。どれほど業務が忙しくても、時間外労働と休日労働を⽉100時間未満(2〜6カ⽉平均80時間以内)に収める必要があります。

参考:36(サブロク)協定とは|厚生労働省

年間休日に含まれるもの・含まれないもの

有給申請

(出典) pixta.jp

年間休日には毎週土曜日や日曜日などの定休日に加えて、どういった休日が含まれるのでしょうか?ここで整理・確認しておきましょう。

夏季(お盆)や年末年始の休み

土曜日・日曜日を中心とした毎週の定休日に加えて、企業が就業規則において定めているならば、いわゆる「お盆休み(夏季休暇)」や年末年始の休暇も年間休日に該当します。

これらの期間は、当然のように休みだと考えている人も少なくありませんが、就業規則に休日と定められていなければ、企業が出勤日として設定しても問題はありません。

飲食業や宿泊業、アミューズメント業界などを中心に、一般的な夏季休暇の期間や年末年始に売上増が期待できる業界では、繁忙期として休日がほとんどないという企業は多くあります。

有給休暇

有給休暇は年間休日には含まれません。年間休日は社員全員が就業規定によって、一律に休みになる日です。

そのため、各社員が個別に取得する有給休暇は年間休日には含まれず、取得できる日数も社員によって異なります。

複数の社員が同じ日に有給休暇を取得する可能性はありますが、すべての社員が同じタイミングで休むことはないでしょう。もし社員の有給休暇によって事業運営が妨げられる場合、企業側は社員の有給休暇の取得時期を変更することが可能です。

国民の祝日

「建国記念の日」や「天皇誕生日」「敬老の日」など、国民の祝日が年間休日に該当するといった法的な規定はありません。祝日を休業日とするか否かは、各企業に委ねられています。そのため、基本的に国民の祝日は年間休日には該当しません。

ただし、就業規則で年間休日にすると規定することは可能です。実際、「元日(1月1日)」は国民の祝日の1つですが、元日を含む年末年始を年間休日に設定している企業は多くあります。

慶弔休暇や育児休暇など、会社が定める休暇

有給休暇と同様に、葬儀のための休みや結婚・出産、あるいは育児休暇なども、社員全員が一斉に取得する休日ではありません。

個々の社員が任意のタイミングで取る休暇であるため、年間休日には含まれず、これらの休暇が有給休暇となるかは各企業の就業規則によります。

ただし、産前産後の休業中に関しては、原則として有給休暇を使うことはできません。一方で、年間休日には含まれないものの、近年は社員のリフレッシュのための休暇やバースデー休暇などを、有給休暇に設定する企業が増えています。

業界・業種による年間休日の違い

飲食店

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業界・業種による年間休日の違いも紹介します。年間休日が多めの業界に転職したいと考えている人は参考にしましょう。ただし、あくまでも全体の平均なので、実際の休日数に関しては、応募先企業の情報をよく調べておく必要があります。

年間休日が多めの業界・業種

年間休日が多い企業の代表例としては、IT(情報通信)業界や金融・保険業界などが挙げられます。特にIT業界は、週休二日制が一般的であり、さらに社員の仕事へのモチベーションを高めるため、さまざまな休暇を設定する企業の多い業界です。

また、学術研究分野や専門技術を提供するサービス業なども、年間休日の平均が多めといえます。さらに近年では、製造業界でも休日の多い企業が増えている傾向です。

年間休日が少なめの業界・業種

年間休日が少なめの業界の代表例としては、飲食業や宿泊業などのサービス業や小売業、建設業などが挙げられます。

慢性的な人手不足に陥っている業界が多く、人材が不足しているために、既存の社員に十分な休みを提供できない企業も少なくありません。

また、業界全体の慣習により休みが少なくなっているケースもあります。運送業界や郵便業界も、休日が少なめです。

年間休日が少なすぎる場合は?

有給申請書とスマホ

(出典) pixta.jp

勤め先の年間休日が少なく、休日を増やしてもらいたい場合は、以下の対応が考えられます。法的には問題ない企業がほとんどですが、まずは1日8時間かつ週40時間の法定労働時間が守られているか、サービス残業が発生していないかなどを確認しましょう。

積極的に有給休暇を取得する

法的には問題ないものの、企業の就業規則で年間休日が少なめに設定されているならば、積極的に有給休暇を取得して、休める日を増やすとよいでしょう。

企業が有給休暇を設定していても、社員側がほとんど消化せず勤務を続けているケースは決して少なくありません。

有給休暇を取得しても休日が少ないと感じるならば、年間休日を増やしたり代休をもらえたりしないか、企業側に交渉してみるのもよいでしょう。

労働基準監督署に相談してみる

違法に年間休日が少ない場合、人事部にかけあって状況を改善してもらう方法があります。

しかし、いわゆるブラック企業の場合は体質が変わらないばかりか、改善を求めた社員が不利な状況に追いやられるおそれもあります。基本的には外部機関に相談するのがよいでしょう。

労働基準監督署に相談すれば、労働環境の実態を調査してもらえます。もし違法性が確認された場合には指導が入るので、状況が改善される可能性があります。

転職を検討する

どうしても状況が改善されない場合は、思い切って転職を検討するのも有効です。自分の経験・スキルを生かせる業界ならばスムーズに転職でき、より多くの休日がもらえる可能性があります。

特に現職で心身に過度な負荷がかかる状況で、病気やケガをしそうになっているならば、すぐに転職を考えた方がよいでしょう。体を壊してしまうと働けなくなるので、早急な対応が必要です。

年間休日に関する決まりを知ろう

腕時計を見るビジネスマン

(出典) pixta.jp

年間休日は、企業が労働基準法の規定に従って任意に設定している、1年間の休日数を指します。法律の範囲内であれば、どれぐらいの休みを設定するかは企業の自由です。

業界・業種によって年間休日の平均は異なり、IT業界や金融業界、技術サービス業、学術研究分野などは休日が多めの傾向にあります。休日の多い業界への転職を考えているならば、これらの業界を選択肢に入れるとよいでしょう。

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