内々定とは「内定を出します」という予告の意味を持つ、企業からの意思表示です。内定を出すタイミングが制限されている新卒の採用で使われることが多くあります。内定との違いや内定までの流れ、内々定が取り消しになるケースを紹介します。
内々定と内定の違いは?
内々定とは、内定の前に出される採用予定通知のことです。内々定と内定の違いについて、具体的に解説します。
内々定は内定の事前約束のこと
内々定とは、企業が応募者を「内々に採用者に決定した」とする状態のことです。特段の理由がなければ、応募者は内定へと進み、正式採用されることになります。
内々定が出されるのは、主に新卒採用のケースです。新卒採用では「正式な内定通達は、卒業・修了年度の10月1日以降にする」という取り決めがあります。
優秀な学生を逃がしたくないと考えている企業は、内定解禁日より前に内々定を出し、採用の意志を伝えます。
内々定は取り消しも可能
内定は労働契約が成立しているのに対し、内々定は法的に成立はしていません。
口頭で伝えられるケースが多く、口約束に相当します。契約書やサインを取り交わしていても、法的効力はなく、応募者・企業のどちらからでも内々定を取り消すことが可能です。
一方、内定は「始期付解約権留保付労働契約(しきつきかいやくけんりゅうほつきろうどうけいやく)」と見なされます。内定通知書や、入社承諾書・採用承諾書を取り交わした応募者と企業との間には、労働契約が発生したと考えるのが一般的です。
すなわち、内定の取り消しは、法律上では「解雇」の扱いとなります。学生から内定を辞退することは可能ですが、企業は十分な理由なく応募者の内定を取り消すことはできません。
内々定から内定までの流れ
内々定から内定までは、どのような流れになっているのでしょうか。タイミングや、自分がすべきことを紹介します。
内々定の通知
内々定は、内定通知解禁日となる10月1日より前に出されるのが一般的です。具体的なタイミングは企業によって異なりますが、6月1日以降となるケースが多いでしょう。
6月1日は、一般社団法人日本経済団体連合会が推奨する採用選考活動の開始日とされているため、それ以降は企業の採用活動が本格化し始め、優秀な学生を確保するために動く企業が増えます。
とはいえ、内定通知解禁日前に内々定を出す企業が多いように、採用選考活動の開始日より前に動く企業も少なくありません。
特に大手企業は、採用選考活動開始日前に内々定を出す傾向にあります。3~5月頃に内々定を出し、6月1日以降に形式だけの面接を行うケースも多くあります。
内々定の通知をもらったら企業へ返事をする
内々定の通知をもらったら、採用担当者にお礼の連絡をしましょう。選んでもらったことへの感謝と、内々定を受ける旨を伝えます。応募者・応募企業ともに合意すれば、内定さらには、正式な採用へと進みます。
内々定のお礼を伝える方法は、企業の通知方法に合わせます。メールならメールで、電話ならその場で、お礼と内々定承諾の意思を伝えましょう。
なお、すぐに返事ができない場合は、保留したい旨を伝えても構いません。保留可能な期間は企業によって異なりますが、3日から1週間程度が一般的です。待たせすぎると心証も悪くなるため、なるべく早めに返答しましょう。
内定通知書が交付される
内々定が内定になるのは、内定通知書を受け取ってからです。応募者は、内定承諾書にサインや押印することで、内定を受諾したことになります。
企業が内定通知書を交付するのは「内定後のトラブルを防ぐ」「応募者の内定辞退を抑制する」などの意味もあります。新規採用だけではなく、中途採用でも内定通知書や内定承諾書をやり取りするケースは珍しくありません。
中途採用で注意したいのは、内定通知書や内定承諾書のやり取りが終わるまでは離職しないことです。
企業が内々定を取り消す可能性は、ゼロではありません。突然の取り消しで無職にならないよう、退職の準備や交渉は内定が決まってからにしましょう。
内々定が取り消される理由は?
内定を取り消すことは「不当解雇」として訴えられる可能性があります。企業にとってはリスクが大きく、特段の理由がないと、内定取り消しとならないのが一般的です。
内々定についても同様と考えられますが、取り消しになるケースもゼロではありません。内々定が取り消しになる場合、どのような理由が考えられるのでしょうか?
企業側の業績が悪化したから
企業の業績が著しく悪化している場合、内々定の取り消しもあり得るでしょう。経営コストを削減するため、負担の大きい人件費を見直す企業も多くあります。
内定と同義と見なされる内々定は「やむを得ないと認められる」「社会通念上相当であると判断できる事由があれば取り消しできる」というのが一般認識です。
企業があらゆる経営努力を行っても状況が改善されなかったり、廃業の危機があったりするケースでは、企業からの取り消しもやむを得ないといえるでしょう。
事実、多くの企業が経営困難に陥ったといわれる、2008年のリーマンショックでは、内定者・内々定者の取り消しが相次ぎました。
内々定者が働ける状況ではなくなったから
入社予定日に入社できなくなったり、業務を遂行できなくなったりした場合も、内々定の取り消しになる可能性があります。
例えば、病気やケガで今後一切の業務ができなくなった場合、そのまま内々定が無効となるケースがほとんどです。また、新卒者が留年してしまった場合も、企業側から取り消しを通達されます。
ただし、新卒枠は将来性に期待されるため、入社の遅れが「ケガ・病気によるもの」「数カ月後には就労できる」「服薬しながら働ける」などの場合は、内々定取り消しは避けられるでしょう。
一方で採用予定の中途採用者は、入社後すぐに即戦力として働けることが採用の決め手となることが多いため、合意した入社日よりも大幅に遅れる場合は、内定取り消しになる可能性が高いといえます。
内々定者が問題を起こしたから
内々定者が刑事罰を受けたり、社会モラルに反した行動をとったりした場合も、企業側から内々定の取り消しになるでしょう。
特に近年は、SNSに迷惑行為をアップし、炎上する人が少なくありません。「その人を雇用することによって会社のイメージが下がる」などの恐れがある場合は、採用が見送られると考えられます。
また、スキルや学歴・実績などを詐称していた場合も、内々定の取り消しになる可能性があります。例えば、内々定者が業務遂行上で必要な資格やスキルを詐称していた場合や、高卒を大卒と偽ったりした場合です。
仕事の遂行や賃金設定などに関わる事由で虚偽の申告をした場合は、悪質な経歴詐称として、内々定の取り消しの対象となり得ます。
内々定が取り消しになった場合の対処法
内々定の通知を受けても、確実に採用されるかどうかは分かりません。万が一に備えて、取り消しになった場合の対処法をチェックしておきましょう。
労働相談コーナーを活用するのも1つの方法
内々定の取り消しに納得できない場合は、厚生労働省の総合労働相談コーナーに相談してみましょう。
総合労働相談コーナーとは、あらゆる労働分野の悩みを専門家に相談できるところです。全国の労働基準監督署・各都道府県の労働基準局に設置してあり、誰でも利用できます。
内々定には法的効力がないとするのが一般的ですが、過去には内々定の取り消しを不当として、損害賠償請求が認められた事例も報告されています。
自身のケースを詳しく相談すれば、泣き寝入り以外の解決方法が見つかるかもしれません。
前向きに捉えて次のステップへ
内々定を取り消されても、落ち込んだり自分を責めたりする必要はありません。内々定を一方的に破棄するような企業は、体質に問題があったり、何らかのトラブルを抱えていたりすることも多いと考えられます。
「もっとよい企業があるはず」と考え、ポジティブに就職・転職活動を行いましょう。
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内々定には誠実に対応しよう
内々定は、内定の前に企業が伝える採用の意思表示です。内定とほぼ同義ですが、企業と応募者に労働契約が成立していない点が異なります。内々定をもらった後は、内定・採用と進むのが一般的です。
内々定を受けた人の中には、法的効力がないことに不安を感じる人もいるかもしれません。確実に内定に進めるよう、企業に対して真摯な対応を心掛けることが大切です。内々定の知らせを受けたらすぐにお礼を伝え、承諾の意志を伝えましょう。