理学療法士は、リハビリに特化した国家資格です。資格を取るために一定期間学ぶ必要もあり、年収はどのくらいなのか気になる人も多いでしょう。理学療法士の平均年収について、適性や年収アップのポイントを交えて解説します。
理学療法士の平均年収
理学療法士として働くと、どのくらいの収入を得られるのでしょうか?基本的に、理学療法士になるためには養成学校で学ぶ必要があります。
仕事をしながら学校に通ってまで資格を取得する価値がある仕事なのか、気になっている人も多いでしょう。まずは目安となる平均年収について解説します。
平均年収は430万円ほど
日本政府が発表する賃金構造基本統計調査から試算すると、理学療法士の平均年収は約430万円です。内訳は月の給与が29万6,000円、賞与が71万3,400円となっており、給与の2〜3カ月分の賞与が支給されることが分かります。
ただし調査結果には、理学療法士のほか、作業療法士・言語聴覚士・機能訓練士の情報も含まれています。
この金額は、医療関係の職業としてはちょうど中間あたりの数値です。医師・薬剤師などには及ばないものの、介護福祉系の職業よりは高くなっています。
なお国税庁の民間給与実態統計調査では、給与所得者全体の平均年収は443万円となっており、理学療法士は平均年収と比べて同水準〜やや低めです。
国家資格が必要なうえに、患者のリハビリに向き合う大変さを考えると、給与面ではやや物足りないと感じるかもしれません。
参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
理学療法士の年収をもっと詳しく
理学療法士の年収は、性別・年齢・経験年数・企業規模によっても変化します。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
男女別の平均年収
賃金構造基本統計調査から理学療法士の平均年収を試算すると、男性は約440万円、女性は約410万円です。男性の場合は月の給与が30万6,700円、賞与は74万9,400円となっています。一方の女性は月の給与28万3,400円、賞与は67万1,300円です。
男性の方がやや高い傾向にありますが、それほど大きな差とはいえません。女性は産休・育休などを取得する機会が多いため、働き方の違いで年収に影響が出ていることも考えられます。
また給与所得者の女性全体の平均年収が302万円であることを踏まえると、理学療法士の女性は比較的高年収と考えてよいでしょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
年齢別の平均年収
一般的な企業と同様、理学療法士も年齢が上がるにつれて年収は上がっていきます。20代前半では約320万円、後半になると約370万円です。
30代前半になると約400万円、後半では約420万円に上がります。平均年収の430万円に到達するのは40代の頃で、理学療法士として長期間働く人が多いことが分かります。
その後も50代まで数十万ずつ年収は上がり、ピーク時には約560万円です。60歳を過ぎると年収は減少傾向になりますが、定年制度がある他の職業と比べても大きな違いはないでしょう。
理学療法士は年齢を問わず、ある程度の年収を維持できる職業といえます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
経験年数別の平均年収
理学療法士は、経験年数に比例して年収も上がる仕事です。初年度はボーナスがないため平均年収は約290万円になりますが、1~4年目には約360万円と、大幅に増加します。
5~9年目の年収は約390万円となり、少しずつ上がることが分かります。10~14年目では約430万円となり、給与所得者全体の平均年収と同じレベルです。
15年以上の経験を持つ理学療法士は年収が510万円以上と高く、長期間続けることで年収アップを見込める職業といえるでしょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
企業規模別の平均年収
勤務先の規模による年収に差についても見てみましょう。職員の数が1,000人を超える施設では、理学療法士の年収は約460万円と、給与所得者全体の平均年収よりも高い水準です。
10~99人では約410万円、100~999人では約420万円となり、全体の平均年収と比べるとやや低くなります。とはいえ、給与所得者全体の平均年収との差は10~20万円程度です。
また年収が高いからといって、大規模な職場が働きやすいとは限りません。小さな医療施設だからこそ、きめ細やかな対応ができることもあります。
小規模な職場に勤務することになっても、平均年収と大幅な差はない理学療法士は、働きやすさと収入のバランスが取りやすい仕事といえます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
理学療法士に向いている人の特徴
理学療法士は患者とのやり取りが多い職業です。どんな性質を持つ人が向いているのか、主な特徴を見ていきましょう。
人と接するのが好き
理学療法士の主な仕事は、患者のサポートです。特に理学療法士が対応するのは、立つ・座る・寝返りなど基本的な動作が不自由な患者です。
こうした患者と良好なコミュニケーションを取るには、相手を思いやる気持ちが求められます。相手が何をしてほしいのかをくみ取りつつ、明るく元気にサポートしなければなりません。
もちろん、患者だけでなく、患者の家族や周りのスタッフとも同じように接する必要があるでしょう。このため理学療法士には、人と接することが好きで、ポジティブに考えられる人が向いているといえます。
観察力があり我慢強い
患者の様子や状態から、問題の原因や度合いを見極め、リハビリのプログラムを組むのも理学療法士の大切な仕事です。患者の状態に気づくには、ちょっとした動きや表情の変化も見逃さない、観察力と洞察力が求められます。
患者によっては、リハビリが長い道のりになることもあります。このため理学療法士には、患者のペースに合わせてプログラムを着実に遂行するための、忍耐力や我慢強さも必須です。
理学療法士の年収を上げる方法は?
理学療法士が年収を上げるには、昇進や転職、資格の取得など、自分に合う方法を見つけるのがポイントです。年収アップに直結する、おすすめの方法を見ていきましょう。
施設内で昇進する
医療施設にも、一般的な企業と同じように主任や課長などの管理職があります。理学療法士も、管理職候補としてキャリアを積めば、年収アップにつながるでしょう。
理学療法士の知識を生かせる企業に就職し、マネジメントや管理職候補を目指すのも、年収を上げる近道です。
病院以外の施設や企業では、理学療法士の枠を超えたスキルや知識が求められるため、年収も上がりやすくなります。
資格を取ってスキルアップ
理学療法士の知識や経験は、同じ系統の医療資格の取得に役立ちます。複数の資格を取得することで、できる仕事が増え、職場での評価が高まるでしょう。
資格の種類によっては、手当を支給している医療機関も少なくありません。勤務先で資格手当の制度を設けているなら、該当する資格の取得を目指してみるとよいでしょう。
手当によって毎月の給与が上乗せされれば、年収にもよい影響を与えます。
給与がよいほかの医療機関・企業に転職
勤務先で昇給の見込みがない場合は、転職で年収アップが狙うのもアリです。基本給・歩合給・勤務時間などの条件を総合的に判断して、今より収入が高くなる求人を探しましょう。
手当の有無や福利厚生などの待遇もチェックしながら転職先を探せば、よりよい環境で働けるはずです。
管理職候補を募集する求人に応募することで、一気に年収がアップする可能性もあります。転職前に、理学療法士としてどのように働きたいのか考えてみましょう。
スタンバイでは、理学療法士の求人情報を効率的に探せます。一般職だけでなく、管理職候補も豊富です。転職で年収アップを狙うなら、複数の求人を比較して合うものを見つけましょう。
年収アップにつながるおすすめの資格
理学療法士の年収アップの方法の1つとして、資格の取得があげられます。とはいえ、どのような資格を取ればよいのか、迷う人も多いでしょう。年収アップに直結しやすい、おすすめの資格を紹介します。
認定理学療法士
認定理学療法士は、日本理学療法士協会が認定する資格の1つです。脳卒中認定理学療法士や発達障害認定理学療法士などの種類があり、得意分野で申請できます。
ただし資格を取得するためには、研修カリキュラムの受講や研修大会に参加しなくてはなりません。
研修は登録理学療法士の資格を取得してから始まるため、認定までには一定の時間がかかります。
参考:認定・専門理学療法士制度について|公益社団法人 日本理学療法士協会
専門理学療法士
専門理学療法士は、認定理学療法士と同じく、公益社団法人日本理学療法士協会が認める資格です。認定理学療法士よりも専門性が高い資格として位置付けられており、研修カリキュラムの受講や大会参加だけでなく、論文の提出も必要です。
取得のハードルが高いこともあり、専門理学療法士の数は少なく、2022年6月1日時点で1,715人となっています。日本理学療法士協会の会員数が13万人を超えていることを考えると、大変希少価値の高い資格といえるでしょう。
理学療法の専門家として、勉強会やセミナー講師の仕事もたくさんあります。年収アップを目指す人には、大変おすすめの資格です。
参考:認定・専門理学療法士制度について|公益社団法人 日本理学療法士協会
心臓リハビリテーション指導士
心臓リハビリテーション指導士は、特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会が2000年に認定した民間資格です。心リハ指導士とも略されます。
心リハ指導士は、医療に携わる人なら職種を問わず幅広く受験できるのが特徴です。理学療法士も、心臓リハビリ指導の経験が1年以上あり、必要な研修を受講していれば受験できます。
心臓リハビリは運動機能の改善にとどまらず、患者の生活指導や再発予防に価値が認められており、理学療法士が活躍しやすい分野でもあります。
循環器系の診療科で働きたい人や、少しでもキャリアアップしたいと考える人は、取得を検討するとよいでしょう。
参考:心リハ指導士とは? |JACR日本心臓リハビリテーション学会
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理学療法士の年収約430万円は、医療関係者としては中間に位置します。さらなる年収アップを目指すには、施設内での昇進や資格取得の他、転職も視野に入れる必要があるでしょう。
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