「アルバイトでも有給休暇は使えるの?」と、疑問に思う人は少なくないでしょう。有給休暇は正社員でない人にも、決められた日数が与えられる決まりになっています。有給休暇が付与される条件や、使い方のポイントなどを見ていきましょう。
アルバイトでも有給休暇を取得できる!
正社員だけが有給休暇を取得できると誤解している人もいますが、アルバイト・パートにも権利が発生します。まずは、有給休暇が付与される条件を見ていきましょう。
有給休暇が発生する条件
有給休暇は「労働者に与えられた権利」であることが、法律で定められています。アルバイト・パートでも労働者に変わりはないので、取得可能です。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。
- 入社日から継続して半年以上勤務している
- 雇用契約で決められた出勤日数の8割以上出勤している
これらの条件を両方とも満たしていないと、有給休暇は発生しません。6カ月以上アルバイトを続けている人で、欠勤も少ない場合、有給休暇が付与されている可能性が高いのでチェックしてみましょう。
シフトと勤続期間から付与日数が分かる
有給休暇の日数は、「勤続年数」や「週に何時間働いているか」によって異なります。フルタイムで働いていなくても、労働時間に応じた日数の有給休暇を取得可能です。
労働時間が、週30時間以上または週5日のシフトで働くアルバイトの付与日数を、継続勤務年数ごとに見てみましょう。
- 6カ月…10日
- 1年6カ月…11日
- 2年6カ月…12日
- 3年6カ月…14日
- 4年6カ月…16日
- 5年6カ月…18日
- 6年6カ月以上…20日
また労働時間が、週30時間未満かつ週4日以下の場合、週の所定労働日数ごとに付与日数が変わってきます。例えば、週4日の場合の、継続勤務年数ごとの付与日数は以下の通りです。
- 6カ月…7日
- 1年6カ月…8日
- 2年6カ月…9日
- 3年6カ月…10日
- 4年6カ月…12日
- 5年6カ月…13日
- 6年6カ月以上…15日
所定労働日数が週3日以下でも有給休暇は付与されるので、詳しい付与日数を知りたい人は確認してみましょう。
参考:労働者の方へ | 年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト 厚生労働省
アルバイトの有給休暇の賃金計算方法は?
就業規則を確認すると、有給休暇取得時の賃金計算方法が分かります。通常の賃金で計算するほかにも、平均賃金や標準報酬日額で計算する場合があることを押さえておきましょう。
通常の賃金で計算
所定労働時間が毎回同じである場合、通常の賃金で計算されるケースが少なくありません。
例えば、時給1,200円で雇用契約を結び、所定労働時間が5時間の場合「1,200円×5時間」で6,000円が支払われます。
通常通り働いたときの1日分の賃金が支給されるので、計算は難しくはないでしょう。勤務日数が固定されている、シフト制のアルバイトで使われることが多い計算方法です。
平均賃金で計算
勤務日数が月ごとに異なる契約になっている場合は、平均賃金を使って計算します。以下の2種類の計算式で金額を出し、どちらか高い方を採用する方式です。
- 直近3カ月間の合計賃金÷直近3カ月間の日数
- 直近3カ月間の合計賃金÷直近3カ月間の労働日数×0.6
例えば、直近3カ月間の合計賃金が30万円で、労働日数が30日間なら以下の計算式になります。
- 30万円÷90=3,333円
- 30万円÷30×0.6=6,000円
いずれか高い方を採用するので、有給休暇を1日取得したときに支給される金額は6,000円です。
標準報酬日額を使う
標準報酬日額は、健康保険料を計算するときに使用されるものです。健康保険料は従業員それぞれの収入によって、支払う額が変わります。
標準報酬日額は、収入に応じた区切りのよい幅で分けられ、地域によっても変動する仕組みで、標準報酬月額により割り振られています。自分がどの区分に属しているのかは、加入している健康保険組合のホームページなどで確認しましょう。
有給休暇取得時の賃金が標準報酬日額である場合、以下の計算式で計算すれば、1日あたりいくらもらえるのかが分かります。
- 標準報酬月額÷30日
なお、この方式で有給休暇の賃金を決定するには、従業員と企業が労使協定を結んでいなければなりません。また、健康保険に入っていないアルバイト・パートの場合は、あまり用いられることはないでしょう。
有給休暇のよくある疑問
初めて有給休暇を取得する場合、さまざまな疑問が湧いてくるものです。有給休暇に関する、よくある疑問を解消しましょう。
希望日に取得できる?
有給休暇は原則として「労働者が希望した日」に与えられます。従業員が有給休暇を取得する日を、雇用主が勝手に決定することはできません。
なお、「年10日以上」の有給休暇が付与されている従業員に対しては、雇用主が「年5日分」は時季を指定することが可能です。これを「時季変更権」と呼びます。
しかし、従業員に意見を聞いて、できるだけ希望通りに休めるよう配慮しなければならない決まりです。
雇用主側から従業員の意見を聴取することで、周囲に気兼ねなく有給休暇を取りやすくする狙いがあります。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
取得理由は聞かれる?
有給休暇の申請をする際、理由を書いて提出する形式になっている場合があります。会社によっては、上司に口頭で申告する決まりになっていることもありますが、詳細な理由は言わなくても問題ありません。
聞かれた場合は「私用のため」というように、簡単に説明しましょう。有給休暇は法律で認められている労働者の権利であり、理由次第で却下される性質のものではないからです。
心配して理由を聞いているだけという場合もあるので、可能な範囲で簡単に理由を説明するとよいでしょう。
ただし、職場が相応の事情がないと休みにくい空気になっていて、「ウソの理由でごまかそう」と考える人もいるかもしれませんが、ウソの理由は後々問題になる可能性があるため注意が必要です。
就業規則に虚偽の申告を行わない決まりがあるときは、処罰の対象にもなりかねません。
時給が下がることはない?
従業員が有給休暇を取得したことを理由に、会社が従業員にとって不利益な行為をしてはならないと、法律で決まっています。
時給を下げたり、有給休暇を取らないように圧力をかけたりといった行為は、禁止されているのです。休んでいた分の業務を押し付けることも、不利益な行為に該当します。
たとえアルバイトであっても、付与された有給休暇を取得したことを理由に、給料を下げられる心配はありません。
翌年度への繰越は可能?
有給休暇には時効があり、付与された日から「2年間」で消滅してしまいます。有効期限が過ぎたものに関しては、取得しようと思っても会社側に拒否する権限があるのです。
しかし有効期限が過ぎていないものなら、翌年度に繰り越せます。例えば、フルタイムで6カ月以上働いているアルバイトに、10日の有給休暇が付与されたとします。
そして10日のうち7日分を使用した状態で、勤務開始から1年6カ月が経過したとしましょう。この場合に残っている3日の有給休暇は、次年度に新しく付与される有給休暇に加えることができます。
退職時に残った有給休暇について
家庭の事情・転職などで急に退職が決まると、多くの有給休暇が残ってしまうことがあります。この場合はどうすればよいのか、見ていきましょう。
会社は時季変更権を行使できない
アルバイトであっても、正社員と同じように退職時に残っている有給休暇をまとめて取得できます。原則として、会社側は従業員の有給休暇に対し、時季変更権を行使できません。
退職後は有給休暇を使えないので、残さずに退職できるよう計画的に使っていくことが大切です。多くの有給休暇が残っている場合、退職日までに使い切れるよう「最終出勤日」を設定しましょう。
職場に迷惑をかけないよう引き継ぎに必要な時間を計算し、無理なく休めるように考慮することが大事です。
会社に買い取ってもらえる可能性も
有給休暇は、労働者のリフレッシュやゆとりのある生活のために設けられています。そのため、会社側に買い取ってもらい、現金化することは原則として認められていません。
しかし、従業員と会社が合意しているのであれば、退職時に使い切れなかった分を買い取ってもらうことは可能です。
退職時に有給休暇を使い切れそうにない場合や、有効期限が切れたなどのやむを得ない事情がある場合には、会社側に買い取ってもらえないか交渉してみましょう。
付与条件を把握して計画的な取得を!
「アルバイトだと有給休暇はもらえない」と、誤解している人もいるでしょう。本来は使えるはずの有給休暇が、知らないうちに消滅していたということがないように、付与条件を確認することが大切です。
付与された有給休暇は、好きなときに理由を問わず使用できます。しかし、繁忙期は取得時期をずらすようにお願いされることもあるので、計画的に取ることが大事です。
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