高卒で目指せる公務員には、どのような職種があるのでしょうか?公務員になるための方法や試験についても紹介します。大卒との違いや公務員になるメリット・デメリットについても知り、公務員を目指すか検討する際に役立てましょう。
高卒でも公務員を目指せる?
高学歴でないと、国や地方自治体などの職員として働く公務員になれないと思っている人もいるのではないでしょうか?高卒でも公務員を目指せるのかを解説します。
公務員試験に学歴は求められない
高卒や中卒でも公務員を目指すことは可能です。公務員になるために必要な公務員試験の受験資格には、基本的に学歴は求められていません。
公務員試験は、一般的に「高卒程度」「短大・専門卒程度」「大卒程度」という形で難易度が分けられています。あくまでも試験の難易度の目安であって、高卒でなくても高卒程度とされている試験を受けることが可能です。
ただし、一部の試験では受験資格を大卒者以上としているものもあります。
ただし年齢制限には注意しよう
多くの地方自治体では、高卒程度の受験資格に年齢制限を設けているため、受験する際には確認が必要です。年齢の上限が高い自治体もありますが、一般的には上限を21歳としている自治体がほとんどです。
例えば、2023年度の国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)は、2023年4月1日の時点で高校もしくは、中等教育学校を卒業した日の翌日から2年を経過していない人と、2024年3月までに高校もしくは中等教育学校を卒業見込みの人が対象になっています。
高卒で目指せる公務員の種類
高卒で目指せる公務員には、どのような種類があるのでしょうか?種類によって仕事内容が異なるため、それぞれどのような仕事なのかの概要も紹介します。
地方公務員
地方公務員は、市区町村や都道府県など、地方自治団体に勤務する職員のことです。分かりやすい例としては、公立の小中学校の教員や、役所の職員・消防士・警察官などが挙げられます。
所属している部署によって具体的な業務内容は異なりますが、自治体が行っている多種多様な事業に関する企画や、立案・事務処理なども担います。
市区町村の自治体では、住民向けの窓口業務が主な役割です。都道府県の自治体では市区町村との連絡や、都市計画・産業振興など、より規模の大きい業務を行います。
国家公務員
国全体の業務に携わる職員が国家公務員で、一般職と特別職があります。一般職は、各府省に勤務する行政官や、税務職員・外交官などです。特別職は、大臣や裁判官・国会職員・防衛省職員などが該当します。
仕事の詳細は勤務する府省によって異なりますが、各府省と連携を取りながら、さまざまな政策を実現することが主な仕事です。例えば、政策・法令の立案や実現であったり、国民に対する行政サービスの実行だったりと、未来を見据えたニーズの探索などがあります。
高卒で目指せる公務員の主な職種
公務員の仕事は、多岐にわたります。高卒で目指せる公務員には、どのような職種があるのでしょうか?具体的な職種を知り、自分が望む仕事なのか検討してみましょう。
一般行政事務・学校事務
一般行政事務は公務員の中でも比較的、採用人数が多いため、採用されやすいといわれています。配属される部署が一定周期で変わるため、さまざまな業務を担当できます。
また、民間企業での事務仕事のようにデスクワーク中心というわけではなく、どちらかというと、住民と直接コミュニケーションを取る機会が多いのが特徴です。
学校事務の勤務場所は、主に小中学校などの教育機関です。国立・公立の博物館や美術館で働く事務員も学校事務に含まれます。担当業務によりますが、住民や保護者と直に接する機会もあり、苦情の対応などに対してストレスを感じる人もいるかもしれません。
警察官・消防官
国家の安全や秩序を守る公安職である警察官・消防官も高卒で目指せる職種です。
民間企業のように主に学歴で給料が決まるのではなく、階級が高くなるほど給料が高くなる仕組みを採用しています。学歴に関係なく、昇進のチャンスがあるのは魅力といえます。
ただし、どの仕事も体力がないと続けるのは難しく、昇進争いも激しい傾向にあるようです。長く続けたい場合は、警察事務などの選択肢もあります。
官庁職員や裁判所職員など
国家公務員になれると、官庁職員や裁判所職員などを目指せます。他には税務職員や皇宮護衛官・刑務官・入国警備官などです。ただし、高卒の場合は地方機関に勤務するのが一般的で、本省に配属されるチャンスはあまりないといわれています。
税務職員は、国税庁や国税局・税務署に勤務し、内国税に関する調査などをします。皇宮護衛官は、皇室関係者の護衛や皇居などの警備が主な仕事です。
刑務官は社会を守り、罪を犯した人を更生に導くことが主な役割です。入国警備官は、日本の安全を守るために、法律違反を疑われる外国人の調査や摘発をします。
高卒程度と大卒程度の違い
高卒程度と大卒程度には、どのような違いがあるのでしょうか?試験の難易度や、給料・採用人数について見ていきましょう。
試験の難易度
高卒程度と大卒程度は、試験内容が異なります。大卒程度の方が高い学力が求められる傾向にあり、難易度も高くなっています。
高卒程度の試験内容は、教養試験と作文です。一方、大卒程度の試験内容は、教養試験に専門試験が加わり、法律・経済・政治学など幅広い知識が求められます。作文も論文となり、自分の意見を述べるだけでなく、根拠なども論じなければなりません。
大卒程度の試験に合格するためには、広範囲にわたり勉強する必要があります。
給料・待遇
国家公務員の初任給は、2022年の場合、大卒一般職が18万5,200円なのに対し、高卒一般職は15万4,600円と、月収で3万600円の差があります。勤務年数が長くなるほど差が広がっていき、生涯年収や退職金に大きな違いが出ると予測できます。
また、昇進など待遇面にも違いがあり、キャリアアップが難しくなる可能性があるでしょう。高卒・大卒のどちらも、課長クラスまでの昇進スピードは同程度とされますが、上位区分になればなるほど試験に合格するのが困難になってくるため、高卒の場合、一定以上の役職に就くのは難しいといわれています。
役職が上がるほど昇給するシステムであり、同じ年齢でも、高卒・大卒では役職や給料に差が出やすいといえます。
採用人数
高卒程度の受験には年齢制限があり、受験者数が多くないことから、採用人数も大卒程度に比べると少ない傾向にあるといえます。
例えば「2022年度 国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)区分別実施状況」を見ると、事務の申込者数は9,416人で、最終合格者数は2,341人となっています。「2022年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況」では、行政の申込者数は2万3,711人で、最終合格者数は6,099人です。
また「自分が生まれ育った地元で働きたい」と考え、地方公務員を目指す人も多く、地域によっては競争率が激しくなるケースもあるようです。
参考:
2022年度 国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)区分別実施状況
2022年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況
公務員のメリット
数ある職種の中で公務員を目指すのは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主に3つを挙げて紹介します。
雇用が安定している
公務員になる大きなメリットは、景気悪化などに左右されることが少なく、雇用が安定している点です。民間企業の場合は、社員の給料は会社の売上から捻出されています。そのため、景気による業績悪化などで売上が下がると、給料や待遇にも影響しやすく、リストラされる可能性もあります。
公務員の給料は売上ではなく、納税された税金で賄われているため、景気悪化によるリストラの可能性は低いと考えられます。
また、公務員の給料は基本的に勤続年数に従って昇給する仕組みであるため、安定した暮らしが期待できるのもメリットといえます。
福利厚生の充実
充実した福利厚生が用意されていることもメリットの1つです。通勤手当・退職手当・住宅手当・扶養手当・児童手当・地域手当など、さまざまな手当があります。被扶養者や子どもがいる場合は、扶養手当や児童手当を受けられるのは、大きなメリットといえます。
育児休暇や、年次有給休暇・介護休暇なども充実しており、自分や家族の生活を向上させるための福利厚生がそろっています。福利厚生の充実は、近年推進されているワークライフバランスを大切にしたい人にとっても魅力です。
努力次第ではキャリアアップも
2014年の地方公務員法改正により、学歴ではなく能力や実力に基づいた人事評価が行われるようになったため、高卒程度であっても、努力次第でキャリアアップも期待できます。
定期的な人事評価の他にも、自己申告や面談なども行われており、上司の一方的な評価ではなく、公正な評価になるような仕組みになっています。
法改正により、自分の能力や実力をしっかりと評価してもらえるようになったことで、給料にも反映されるでしょう。
参考:地方公務員法第三節 人事評価(人事評価の根本基準)第二十三条・(人事評価に基づく措置)第二十三条の三|e-Gov法令検索
公務員のデメリット
「思っていたのとは違った」と後悔しないためにも、仕事を選ぶ上で大切なのは、メリットだけでなくデメリットも知っておくことです。どのようなデメリットがあるのか紹介します。
転職後も武器になるスキルが身に付きにくい
民間企業への転職を考えた際に、自分の市場価値を高められる役立つスキルが身に付きにくいことはデメリットといえます。
公務員の仕事は、一定周期で部署の異動があるのが一般的です。幅広い業務に携われるというプラスの面もありますが、専門的な知識やスキルが身に付かないというマイナスな面も懸念されます。
また、役所や官庁内では役に立っても、民間企業ではあまり役に立たないスキルもあるでしょう。結果的に転職が難しい状況に置かれる可能性があります。
年功序列制が根強く昇給ピッチが遅い
地方公務員法改正によって、能力や実績によって評価されやすくなったとはされるものの、年功序列制が根強く残っているというのが現状です。その影響で、どんなに頑張ったとしても、給料がなかなか上がらないというデメリットがあります。
社風にもよりますが、民間企業の場合は、実力によって高く評価されれば給料アップや、昇進につながるケースもあります。民間企業では若くても高収入を得られるチャンスがあるのに対し、公務員は長く勤務しないと高収入にならないのは難点といえるでしょう。
公務員になるには
公務員になりたいけれど、何から始めたらよいのか分からない人もいるでしょう。公務員になる方法と、公務員試験対策についても紹介します。
公務員採用一般職試験を受験する
地方公務員を目指す場合は、各自治体のホームページで募集要項を確認します。試験の名称は自治体によって異なり、高卒程度・初級職・高卒者などさまざまあるため、詳細を確認しましょう。
国家公務員を目指す場合は、人事院のホームページの高卒者試験の募集内容を確認します。試験の申し込みはインターネットで行います。
いずれの試験も申込期間が限られているため、ホームページを定期的にチェックして見逃さないように注意しましょう。
試験対策は筆記試験を重点的にする
合格を目指すには、試験の傾向を把握し、適切な対策をすることが大切です。公務員試験では、筆記試験の比重が大きいため、筆記試験対策を重点的にしましょう。
出題される問題の傾向は、ある程度決まっています。特に文章理解と数的処理の問題が多い傾向にあるため、早めに対策を始めましょう。過去に出題された問題や、問題集などを使って対策するのもおすすめです。
年齢制限を意識する必要はありますが、最初の試験で受からなかったからといって諦めずに挑戦しましょう。
高卒でも公務員を目指せる
公務員試験の受験資格には、基本的に学歴は必要とされていないため、高卒でも公務員を目指せます。ただし、年齢制限があるため注意が必要です。
公務員は、地方公務員と国家公務員に分かれており、一般行政事務や、警察官・裁判所職員などの職種も目指せます。雇用が安定していることや、福利厚生が充実しているなど、多くのメリットがあります。
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