大学教授になるには?一般的なルートから社会人がなる方法まで

教職や研究職に憧れを持つ人の中には、将来は大学教授になりたいと思っている人もいるでしょう。大変な道のりですが、ある特定の分野を究めたいと考えているなら、挑戦する価値はあります。社会人が大学教授を目指すために、やるべきことを確認しましょう。

大学教授になるための一般的なルート

大学教授

(出典) pixta.jp

大学教授になる方法は1つではありませんが、大体の道筋は決まっています。一般的にどのようなルートがあるのか、見ていきましょう。

大学院を卒業して博士号を取得

大学教授になる一般的なルートとして、大学を卒業後に修士課程・博士課程へ進んで、博士号を取得するというものがあります。

課程分類は大学によって違いますが、博士前期課程を2年間、後期課程を3年間かけて修了するケースが一般的です。前期課程を修了するには、修士論文の作成と発表が必要になります。

修士を取得したら後期課程へ進み、さらに高度な研究を進めて博士論文の発表を目指しましょう。論文が認められれば、博士号を得られる流れです。

最短でも大学卒業から5年はかかる計算になりますが、博士号の取得は非常に難しく、既定の3年を超えても修了できない例も少なくありません。人によっては、さらに何年間か月日を費やすことも覚悟しなければならないでしょう。

就職活動をして大学教員に

博士号を取得したら、大学教員を目指して就職活動を行います。博士号があればすぐに大学教授になれるわけではなく、さらなる実績を磨くことや、うまくチャンスを掴んで職を得るスキルも重要になります。

一般的な求人誌などに大学教員の求人情報が掲載されることは珍しいので、各大学のサイトの教職員公募ページや、教育機関の求人を扱うサイトを利用して探しましょう。

大学教員からステップアップを目指す

博士課程と並行してできることとして、自分の専門分野の助手や講師をすることも教員を目指す場合の足がかりになります。助手や講師として働きながら研究を続けることは簡単なことではありませんが、そこからコネクションや採用情報が得られたり、将来的に大学教員の選考を受ける際に、履歴書に実績として書くこともできたりします。

大学教授になる

自分の専門分野を究めるために研鑽を続け、特に優れた知識や研究上の業績があると認められて、初めて大学教授になる準備が整います。

准教授になったとしても、さらにそこから努力をして研究の成果が周囲に認められなければ、大学教授にはなれないのです。

専門分野によっても、道のりの険しさが変わります。例えば、医学部の教授になるためには権威のある雑誌に、たくさんの論文が掲載された実績がなければなりません。

大学によって細かい条件は異なりますが、ほかの論文に自分の論文がどれだけ引用されたかも、価値のある研究をしていると認めてもらうための重要な要素になります。

社会人から大学教授になれる?

勉強する手元

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学生時代からずっと大学にい続けてそのまま教員になる人もいれば、社会人から大学教授になる人もいます。場合によっては、社会人の経験が有利に働くこともあるのです。大学教授を目指す前に、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

大学教授には年齢制限がない

大学教授になるための年齢制限は、特に設けられていません。中には、50歳を過ぎて、ようやく大学教授になったという人もいます。

助手や講師を経てうまく准教授になれたとしても、そこから大学教授になるために十数年かかることは珍しくありません。

研究の成果を出すには、何度も試行錯誤を繰り返さなければならず、発表するまでに時間がかかるのが普通です。それに研究がうまく進んだとしても、必ず高評価を受けられるとは限りません。

また、大学によって定年が決まっている点には注意しましょう。一般的な企業と同じように、65歳を定年としている大学もあります。大学教授になるための準備を始めるなら、早い方がよいでしょう。

社会人から大学教授になるルート

大学を卒業後に一般企業で社会人を経て大学へ戻り、修士号や博士号を得て大学教員を目指す人もいます。また、博士号を得てから就職した人が、大学に戻るパターンもあるでしょう。

また、社会人をしながら身に付けた専門性を武器に、大学教員になる人もいます。博士号を持っていなかったとしても、それに匹敵するくらい優れた実績を持つ人が、特別に大学教授に招かれるケースもゼロではありません。

例えば、特に成功している起業家や企業のトップなどを経験したビジネスマンが、その知識を買われて大学教授になる例もあるのです。

あくまでも、特定の分野で極めて優れた功績を残した人が対象であり、その分野における知名度や受賞歴なども考慮されます。

大学教授は狭き門

大学教授になるには大学教員になる必要がありますが、その募集自体が毎年必ずあるとは限りません。募集が少ない分、ライバルも多くなりがちです。

また、募集があったとしても、自分の専門分野が対象である可能性は低く、運やタイミングもかなり重要になってきます。

自分が所属している研究室で教授から実力を認められ、推薦してもらうなどのきっかけがあれば別ですが、ライバルが多い場合は困難です。大学教授は非常に狭き門であることを理解し、どんなに小さなチャンスも逃さないようにしましょう。

社会人から大学教授になるには

セミナーで話す男性

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社会人から大学教授になるために、何をすればよいのか悩む人もいるはずです。大学教授を目指す際に、効果的な方法を見ていきましょう。

博士号を取得する

社会人から大学教授を目指す場合、大学に戻って研究を行い博士号を取得する方法が一般的です。

博士号を取得するだけでなく、多くの論文を発表して有名な専門誌に掲載されるといった実績が必要です。ほかの研究者たちから多くの引用をされるなどして、価値があるものだと認めてもらわなければなりません。

企業の研究職に就いている人などが功績を認められた結果、大学教授として招かれるケースもあります。大学教授になるために、博士号が絶対に必要というわけではありません。

しかし、制度として問題がないだけで、一般的な方法ではない点を押さえておきましょう。ほとんどの人が自主的に大学に通い直し、修士号や博士号を取得する道を選ぶことになります。

専門性を高める

自分が携わっている仕事の専門性を高めることで、大学教授になれる可能性が出てきます。企業で研究職に就き、その分野に関する優れた知識や実績を持っていると判断されると、教授を必要としている大学から声がかかることもあるのです。

また大学に所属していなくても、論文を執筆することは可能です。ただし仕事と並行して行うのは骨が折れる作業ということは認識しておきましょう。

自分の研究や発見が価値のあるものとして広く認められ、在籍していた大学から客員教授として招かれるケースもゼロではありません。また、推薦を受けられなくても、研究上の実績を武器に自ら応募する方法もあります。

大学教授に相応しい実績や高度な専門知識を持っていると認めてもらえるように、より高度な研究や成果を出すための努力を惜しまないことが大事です。

大学教授に必要なスキルや資格は?

勉強する男性

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文部科学省が定めている「大学設置基準」によれば、大学教授になるために必要な特定の資格は設けられておらず、教員免許は存在しません。

しかし、大学教授になるために持っていた方がよいスキルはあります。どのようなスキルが求められるのか、見ていきましょう。

参考:大学設置基準 第十三条 | e-Gov法令検索

研究を続けられる忍耐力や探求心

大学教授になるには、なかなか結果が出なくても研究を続けられる忍耐力や、対象を粘り強く追い続ける探求心が必要です。研究の成果を出すには、文系・理系問わず仮説を立てて何度も検証をしていきます。

誰も成し遂げていない領域の研究は、一朝一夕で結果が出るものではありません。何年もかかって、ようやく1つの結論にたどり着くケースもあるほどです。また、独自性のある研究をすることも必要となります。

ほかの研究者が既に実績をあげているテーマでは、ライバルに差を付けるのが難しく、よい評価を受けにくいでしょう。これまでに研究されたことがなく、希少価値があるテーマを見つける独創的な視点も必要です。

高いコミュニケーション能力

大学教授はただ研究に没頭していればよいわけではなく、学生に教えるための高いコミュニケーション能力が必要です。学生への指導だけでなく、教授同士でミーティングが行われる機会も頻繁にあり、コミュニケーション能力がなければ務まりません。

学会で研究の成果を発表する際にも、分かりやすく伝える力が求められます。優れた成果を出しても、周囲にうまく伝えられなければよい評価を受けにくいでしょう。

同じような研究をしていても、より分かりやすく伝えられる人の方がよい評価を受けやすくなります。

大学教授の仕事内容も紹介

研究をする男性

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大学教授の仕事の範囲は幅広く、大学内の研究センターで働くケースのほか、学外で働くケースもあります。

功績が認められて有名になれば、メディアで意見を述べたり国の施策に関わったりする立場になることもありますが、学内に拠点を置くことに変わりはありません。

一般的な大学教授の仕事内容を見ていきましょう。

研究

大学教授のほとんどが、何らかの専門分野を究めるために研究を行っており、自分の研究室を持っています。さまざまな研究をもとに論文を作成し、学会で発表することは重要な仕事の1つです。

研究室に所属する学生たちは教授から指導を受けるだけでなく、ときには手伝いをしながらそれぞれの研究をしています。

また、研究にかかる費用を得る活動も、教授が担当しなければなりません。どのような価値があるものなのかを大学の上層部や文部科学省にプレゼンし、多くの予算を勝ち取ることも大切な仕事の1つなのです。

講義

大学教授の代表的な仕事として、学生への講義が思い浮かぶ人は多いはずです。多くの大学教授が自分の専門分野に関する講義を受け持ち、学生たちを指導しています。

ゼミを受け持っている場合は、学生たちそれぞれにテーマを与えて、卒業論文を仕上げるための指導も行わなければなりません。

どのように研究を進めていけばよいのか、論文にまとめるにはどうしたらよいのかなどを教え、提出されたレポートや論文の添削もします。

大学内での職務

大学教授は自分の研究や学生たちの指導だけでなく、割り当てられた大学内での職務も行わなければなりません。例えば、研究科長・専攻長・学部長などに就くと、その組織をまとめるための管理職のような役割も担います。

学内の運営にも関わる立場であり、「学生を増やすにはどうしたらよいか」「より質の高い教育を行うために改善できることはあるか」などを考えることも、重要な仕事です。

また、学校教育法に基づき、学校の教育や運営状況に対する評価をする役割もあります。

参考:学校教育法|e-Gov法令検索

大学教授の将来性は?

研究発表のイメージ

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大学教授への道のりは、非常に険しいことが分かりました。苦労して目指すからには、将来的に成功したいと思う人が多いはずです。大学教授に将来性はあるのか、見ていきましょう。

少子化により大学数が減少傾向

少子化の影響により、大学の数は減少傾向にあります。学生が集まらず経営難になったり、将来的な存続が危ぶまれたりしている学校も少なくありません。

新しい大学を作ろうとしても、少子化を理由に認めてもらえないケースもあるのです。大学の数が少なくなればその分大学教授のポストも減るので、大学教授になりにくい状況は継続するでしょう。

ただし、子どもの数が減ったとしても、優秀な教員が必要なことに変わりはなく、大学教授の存在自体が不要になるわけではありません。

文部科学省が公表している大学入学者選抜関連基礎資料集を見ると、高等学校の普通科を卒業する学生の大学進学率は約60%を超えており、増加傾向であることが分かります。

参考:9.大学入学者数等の推移|文部科学省

大学教授が活躍する場所

大学教授の仕事は大学内だけとは限りません。著作を発表して話題になったり、各メディアでコメンテーターとして、専門分野の解説をしている姿を見かけたりする機会も多いはずです。

中には、研究を通じて地域活性化に貢献している大学教授もいます。その地域が抱える課題を解決するための、研究事業を行う例も少なくありません。

例えば、地域の活性化に不可欠な人材を育成するためにどうすればよいのか、といった問題に対し、研究の力で解決法を導き出そうとしている大学教授もいます。

また、大学と企業が共同で研究を行い、これまでにない価値のある商品や新しいサービスを生み出す試みが行われていることからも、将来性が感じられます。

大学教授になるには地道な努力が必要

勉強する男性

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大学教授になるには、専門分野における優れた知識や経験が求められます。大学を卒業後、修士・博士課程を修了するために最低でも5年間を費やす計算です。

その後さらに研究を続け、その分野で一定の評価を受け続けなければなりません。大学教授になるには、かなりの長い道のりを地道に努力し続けなければいけないと分かります。

社会人から大学教授になるには、企業で研究職に就きながら地道に研究を続けて専門性を高めていくか、大学や大学院に入り直すことが必要です。

大学教授を目指す人には、絶対にこの道でなければいけないという強い意志が求められるでしょう。