税込年収とは何?手取り年収との違いや税込額が必要な場面を紹介

「税込年収って何?」「手取り年収とどう違うの?」と疑問を持っている人は多いかもしれません。年収には、税金が引かれる前の税込年収と、引かれた後の手取り年収の2種類があります。それぞれの違いや税込額が必要になる場面について確認しましょう。

税込年収とは何を指す?

給料袋と通帳

(出典) pixta.jp

まずは、税込年収とはどのようなものなのか、詳しく説明します。

1年間に支払われた総支給額

税込年収とは、所得税などの税金や社会保険料なども全て含めた、1年間の収入の総支給額です。「額面金額」とも呼ばれ、税込年収に「額面」を付けて「額面〇〇万円」と表現する場合もあります。

その年の1月から12月までに支払われる収入を指し、一般的に「年収」と呼ばれるものと同一です。

税込年収には、基本給のほかに各種手当や残業代などが含まれますが、交通費は含まれません。源泉徴収票においては、「支払金額」の項目が税込年収に当たるので、自分でも確認できます。

手取り年収との違い

税込年収と混同しがちなのが、「手取り年収」です。手取り年収とは、税込年収から所得税や社会保険料などを差し引いた後に残った金額を指します。会社員のように、給与の支払いを受けている人が1年間で実際に手にするのは、手取り年収の方です。

税込年収から差し引かれる項目には、税金や社会保険料以外にも、積立金や会社の互助会費などが含まれる場合もあります。なお、手取り年収にも交通費は含まれません。

所得との違い

所得とは、給与収入(税込年収)から「給与所得控除額」を引いた金額を指します。給与所得控除額とは、給与収入の額に基づき算出されるものです。会社員が仕事をする上で必要と認められている経費と考えると、分かりやすいでしょう。

所得は所得税などを算出する元となる計算上の金額なので、実際に受け取る額との関連はなく、手取り額とも異なります。一般的な源泉徴収票では、「給与所得控除後の金額」という欄に記載されているのが所得です。

税込年収に含まれるものは?

給与明細

(出典) pixta.jp

税込年収から差し引かれるものとして、所得税・住民税・社会保険料の3種類が挙げられます。それぞれどのような目的で差し引かれるのか、具体的に確認しましょう。

所得税

所得税とは、1年間の所得に対して課される税金です。所得税の額は、税込年収から給与所得控除額を差し引いた所得から、さらに「所得控除」を差し引いた「課税所得金額」に対して、定められた税率を掛けることで決まります。

所得控除には、すべての人が一律に控除される基礎控除のほかに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告した内容に応じた控除額も含まれます。

所得税は、課税所得金額が多くなるほど税率が上がる「超過累進税率」によって計算されるため、年収が増えるほど納めるべき所得税も上がっていく仕組みです。

住民税

住民税とは、地域社会のために自治体へ納める地方税の1つで、都道府県民税と市区町村民税から構成されています。前年の所得に応じた「所得割」と、所得が非課税限度額を上回った人に対して一律に課される「均等割」を合わせたものが住民税です。

所得割は税率10%、均等割は年額4,000円(2023年度分までは年額5,000円)が基本ですが、自治体によって税率が異なるケースもあります。

前年の所得がない人に対しては住民税の徴収はありませんが、前年に一定の所得があれば、翌年に失業などで無収入となっても住民税を納付する義務が発生する点には、注意が必要です。

参考:総務省|地方税制度|個人住民税

社会保険料

厳密には、社会保険料は税金ではありません。しかし、税込年収から差し引かれる項目には社会保険料も含まれます。社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険と、40~64歳までの人が支払う介護保険料の5種類です。

健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は、給与などの報酬の月額を区分した「標準報酬月額」などを基に計算され、会社側と従業員が折半して納めます。

雇用保険料は、失業給付等に関する部分については会社と従業員の折半で支払いますが、雇用安定事業および能力開発事業に関する保険料は会社のみの負担です。なお、雇用保険料はほかの社会保険料とは異なり、月ごとに支払額が変動します。

手取り年収を確認する方法は?

資料をチェックする女性

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自分の手取り年収がいくらなのか確認するには、主に2つの方法があります。どのような方法なのか、具体的に確認しましょう。

計算して確認する方法

税込年収の金額が分かれば、計算によって手取り年収を確認できます。手取り年収は、税込年収から税金を差し引いたものです。税込年収から引かれる税金などの目安は収入の約20%で、残りの80%が手元に残る分とされます。

そのため、税込年収に80%を掛ければ、おおまかな手取り年収の算出が可能です。例えば年収500万円の人の場合、「500万円×0.8=400万円」なので、手取り年収は約400万円と分かります。

なお、手取り年収を12で割った額より、月額の受け取り額が少なくなるケースは珍しくありません。これは、ボーナスも年収に含まれているためです。

源泉徴収票で確認

年末に受け取る源泉徴収票でも、手取り年収の目安の確認が可能です。まずは、源泉徴収票に記載されている「支払金額」から、「社会保険料等の金額」と「源泉徴収税額」を引きます。

そこからさらに、別途受け取る「住民税決定通知書」に記載されている1年間の住民税を差し引いた金額が、手取り年収です。住民税決定通知書が手元にない人は、給与明細に記載されている住民税に12を掛ければ、年間の住民税額が分かります。

税込年収が必要なシーンは?

給与明細と電卓と給料袋

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税込年収と手取り年収の違いを知っておくと、さまざまな場面で役立ちます。税込収入に関する知識が必要となるシーンを2つ確認しましょう。

転職・求職をする際

税込年収は、転職や求職する際の面接などで必要になる場合があります。例えば、求人票に記載されている給与は、税金や社会保険料などすべてが含まれた税込年収なので、実際に手元に入ってくる金額ではありません。

また転職の面接では、前職の年収を聞かれたり、希望年収を聞かれたりするケースがあります。その場合も、年収は税込で答えるのが基本です。

税込年収より低い手取り年収を答えてしまうと、企業からスキル不足の人材だと判断されたり、待遇面でのミスマッチが起こったりする可能性もあるので注意しましょう。

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クレジットカード・ローンの審査に必要

新規にクレジットカードを作成する場合や、車や住宅を購入する際のローンを申し込む場合は、税込収入で審査を受けるのが基本です。クレジットカードを使ってキャッシングする場合、総量規制によって借りられる金額は年収の1/3までと決まっています。

誤って手取り年収で申告すると、実際の年収より少ない金額で登録されてしまうため、キャッシング可能な金額も低くなってしまうでしょう。住宅ローンの審査を受ける場合も、年間の返済可能額を判断する上で税込年収が使われます。

受け取る年収の定義を把握しよう

札束と封筒

(出典) pixta.jp

会社員の年収には「税込年収」と「手取り年収」の2種類があります。ほかにも、所得税の計算に必要となる「所得」など、定義の異なる用語が存在するので混乱してしまう人もいるでしょう。

しかし、それぞれの定義を把握しておくと、さまざまなシーンで思い違いによるトラブルの回避に役立ちます。税込年収と手取り年収の差を理解するためにも、引かれる税金などの仕組みを知っておきましょう。