アルバイトが雇用保険に加入できる条件は?必要な手続きとともに解説

雇用保険といえば、正社員が加入するイメージがありますが、アルバイトでも加入は可能でしょうか?アルバイトが雇用保険に加入できる条件や、加入のメリットなどを解説します。すでにアルバイトをしている人や、これから始める人は参考にしてみましょう。

アルバイトは雇用保険に加入できる?

倉庫での軽作業

(出典) pixta.jp

アルバイトとして働いている人は、一度も雇用保険について考えたことのない人も、決して少なくないでしょう。しかし条件によってアルバイトでも雇用保険には加入でき、実は知らない間に勤め先の手続きにより、雇用保険に加入しているケースも珍しくありません。

条件によっては雇用保険に加入する

雇用保険は業務形態に関係なく、条件に該当する場合は必ず加入が必要です。つまり、一般社員はもちろん、契約社員やアルバイト・パートの立場でも、条件に当てはまれば加入することになります。

アルバイトの立場なので、雇用保険や福利厚生などは自分に関係ないと思っている人は多くいますが、一定の条件に該当する限り、必ず加入しなければいけません。実際、アルバイトとして働いている人の多くが雇用保険の対象となっており、勤務先の手続きにより加入しているケースが多いのが実態です。

また事業主の立場からすると、条件に当てはまるアルバイトは、必ず雇用保険に加入させなければいけません。条件に該当しているにかかわらず、雇用保険に加入させていないと違法になってしまいます。

雇用保険の概要と加入条件

給与明細の雇用保険欄

(出典) pixta.jp

アルバイトの立場でも雇用保険に加入する場合が多いので、ここで雇用保険の概要と加入条件をしっかりと押さえておきましょう。

雇用保険の基本知識

雇用保険とは労働者が失業・休業した際などに、給付を受けられる保険です。働いている間に保険料を納めるもので、雇用主と従業員がそれぞれ負担します。失業等の給付に加えて、子どもの養育のために休業する際や、教育訓練を受けた場合など、さまざまな場面で給付を受けられるので、仕組みや条件をよく知っておくことが大事です。

特にアルバイトの人は、自分が雇用保険に加入していることを知らないケースが多くあります。失業・休業にあたる状況でも、雇用保険に加入している事実を知らないことから、給付の手続きをしないまま他の仕事を探している人もいるので、注意しましょう。

アルバイト・パートの加入条件

次の条件を満たす場合、アルバイトやパートでも雇用保険に加入が必要です。

  • 1週間で20時間以上の所定労働時間の者
  • 31日以上の雇用期間が見込める者
  • 学生ではないこと(例外あり)

1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用期間があるアルバイト(学生以外)の場合、雇用保険に加入しなければいけません。

例えばアルバイトを始めて3ヶ月目で、1日4時間で週に5日働いているならば、週の労働時間が20時間以上となるため、雇用保険の対象です。一方、1日3時間で週に5日ならば、週の労働時間は15時間にしかならないので、雇用保険の対象にはなりません。

また、雇用期間が31日に満たない場合でも、その後31日を過ぎて雇用されるに至った場合は、その時点から対象となります。正社員のように雇用期間の定めのない場合も、当然ながら雇用保険に加入しなければいけません。

参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

学生は原則として雇用保険の対象外

学校教育法第1条において、規定されている学校(高等学校や大学、高等専門学校など)に所属している昼間の学生は、原則として雇用保険の対象にはなりません。ただし、卒業見込証明書を有する者がすでにアルバイトとして就業しており、卒業後もそのまま勤務を続ける場合は、上記の条件を満たす限り雇用保険の対象とされます。

また、休学中の学生や夜間学部・高等学校の定時制課程に所属している者、事業主の承認を受けて大学院に所属している者なども、雇用保険の被保険者となり得る可能性があります。

参考:
学校教育法|e-Gov法令検索
雇用保険被保険者の範囲|厚生労働省 滋賀労働局

条件から外れると対象外に

雇用保険の加入条件を満たした状態でアルバイトをしている場合でも、条件から外れた時点で対象外になります。例えば、1日6時間で週4日の勤務から、週3日の勤務に変わった場合、その時点で被保険者の立場を喪失するわけです。

雇用保険について意識していない人は、勤務日数と時間の調整によって、気付かないうちに雇用保険の対象外になっているケースは珍しくないので注意しましょう。被保険者の立場を維持しつつアルバイトをしたい人は、対象となる条件をしっかりと理解しておき、その範囲内で勤務できるように調整や相談をする必要があります。

雇用保険に入るメリット・デメリット

電卓とお札

(出典) pixta.jp

雇用保険に加入するメリットとデメリットも、ここで整理しておきましょう。雇用保険に加入しておけば、失業時に給付を受けられるだけではなく、職業訓練も可能になります。

離職・失業時に給付を受けられる

アルバイトやパートの立場でも、雇用保険に加入していれば、離職した際に給付を受けられます。失業して無収入になった場合でも、ある程度は給付で生活を支えられるため、経済的・精神的な負荷を軽減できるのは大きなメリットといえるでしょう。

さらに、再就職した場合には就業促進手当を受けられるほか、障害などで就職が困難な場合には、常用就職支度手当なども受けられる可能性があります。

しかし、離職や求職中に失業給付が受けられることを知らない人は、決して少なくありません。これまで説明してきたように、雇用保険に加入できる条件をよく理解した上で、後述する手続きの方法を知っておくことが大事です。

参考:就職促進給付|ハローワーク インターネットサービス

職業訓練を受けられる

雇用保険では離職・休職した際の給付に加えて、教育訓練給付金や教育訓練支援給付金なども受けられます。国指定の教育訓練機関で職業訓練を受ける場合に、一部費用の給付を受けられるので、教育訓練で特定の技能を習得し、アルバイトから正社員としての就業を目指す人も少なくありません。

受けられる教育訓練の種類としては、一般の教育訓練に加えて、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練があります。詳しくは厚生労働省の教育訓練給付制度のページを確認してみましょう。

参考:教育訓練給付制度|厚生労働省

保険料の支払いが必要

当然ながら、雇用保険の給付を受けるには保険料の支払いが必要で、これが唯一のデメリットといえます。アルバイトの場合も一般社員と同様に、給料から天引きされる形で毎月、保険料を納付する仕組みです。

ただし天引きされる金額は、給与額のわずか「3/1000」なので、アルバイトの場合は特に大きな金額にはなりません。例えば、月に10万円アルバイトで給料を受け取っている場合、保険料の負担は月額300円なので、ほとんど負担にはならないでしょう。実質的にデメリットはないといっても、過言ではありません。

雇用保険に加入する方法

受付窓口

(出典) pixta.jp

それでは、雇用保険に加入する方法を解説します。雇用保険の加入手続きは事業主側がするので、アルバイト側は事業主の指示にしたがって、必要な書類に記入して提出すれば問題ありません。

事業主が手続きを行う

事業主は雇用するアルバイトが雇用保険の加入条件を満たす場合、その都度加入の手続きをしなければいけません。具体的には次の書類に必要事項を記入した上で、労働基準監督署およびハローワークに提出します。

  • 保険関係成立届(提出先:労働基準監督署または公共職業安定所)
  • 雇用保険適用事業所設置届および、保険関係成立届の控え(提出先:ハローワーク)
  • 雇用したアルバイトの雇用保険被保険者資格取得届(提出先:ハローワーク)

アルバイト側は特に手続きの必要はありませんが、後述する準備書類に加えて、事業主から書類の提出に関して情報の提示を求められたときは、すぐに応じるようにしましょう。

アルバイト側が準備するもの

雇用保険の加入に関して、アルバイト側が用意するのは「雇用保険被保険者番号」と「マイナンバー」です。雇用保険被保険者番号は保険証に記載されているので、事業主に番号とマイナンバーを伝えれば問題ありません。

マイナンバーは通知カードや、個人番号通知書で確認ができます。手元にどちらもない場合は、居住地の役所窓口にて、マイナンバーの記載された住民票を取得しておきましょう。

失業給付を受給するには?

電卓と申込書類

(出典) pixta.jp

雇用保険の失業給付を受けるには、一定の条件を満たした上で、アルバイトをしていた者が自ら、ハローワークで給付の申し込みをする必要があります。

アルバイトが失業給付を受ける条件

アルバイトが失業給付を受けるためには、離職する前の2年間に、12カ月以上の被保険者期間が必要です。2年間の間に、12カ月以上は雇用保険に加入していなければ、それ以上長くアルバイトを続けてきたとしても、失業給付が受けられないので注意しましょう。

ただし企業の倒産や解雇など、やむを得ない事情がある場合は、離職前の1年間に6カ月以上の被保険者期間があれば、失業給付を受けられます。

ハローワークで給付を申し込む

失業給付の受給資格のある状態で離職した場合、次の書類をハローワークに提出して給付の手続きをします。

  • 雇用保険被保険者離職票1(勤務先から交付される)
  • 雇用保険被保険者離職票2(勤務先から交付される)
  • 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードや通知カード、個人番号記載の住民票など)
  • 印鑑
  • 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 証明写真(縦3.0cm・横2.5cmのサイズ)
  • 通帳あるいはキャッシュカード(給付金の振込先にする口座のもの)

ハローワークでこれらの書類を提出して、受給資格があるか確認を受けましょう。ハローワーク側で確認が済めば、基本手当の金額や受給開始日、受給期間などが決定されます。どういった条件であっても、決定してから7日間は給付が受けられないので、その点は注意しましょう。

雇用保険に加入していなかった場合は?

パソコンを操作する作業員

(出典) pixta.jp

雇用保険の加入条件に当てはまるにもかかわらず、アルバイト先が加入手続きをしていないケースも考えられます。その際は、勤め先の管理者や人事に早急に対応を求めましょう。

管理者や人事に対応を求める

まずは上司や店舗管理者、人事部門などに状況を確認します。条件を満たしているならば、雇用形態によらず雇用保険には必ず加入しなければならないので、早急な対応を求めることが可能です。事業主の経験が浅い場合、雇用保険の加入を忘れている可能性もあるので、アルバイト側も自分の状況を知っておくことが大事です。

なお、ハローワークでも雇用保険の加入状況をチェックできます。「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」が各ハローワークに設置されているので、必要事項を記入して確認してもらいましょう。

雇用保険の加入条件を知っておこう

お店のアルバイト

(出典) pixta.jp

アルバイトが雇用保険に加入できる条件や、失業給付を受けるための手続きなどを解説しました。アルバイトでも一定の条件を満たせば、誰でも雇用保険に加入できます。

雇用保険に入っておけば離職時や休職時に失業給付を受けられるほか、職業訓練を受けることも可能です。失業給付を受けられる条件や、手続きに必要な書類も押さえておきましょう。

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