価値観や環境がめまぐるしく移り変わる現代においては、転職市場における自分の価値を意識することがとても重要です。市場価値を高めておけば、いつの時代でも求められる人材になれるでしょう。市場価値が高い人材になる方法や市場価値の診断方法について解説します。
市場価値はどうやって決まる？
市場価値とは、転職市場における人材としての価値のことです。自分に市場価値があるかどうかは、市場の需要と供給のバランスによって決まります。
需要と供給のバランスで決まる
市場において需要が高い状態とは、特定のスキルやキャリアを持つ人材を求める企業が多い状態です。一方、市場内で特定のスキルやキャリアを持つ人材が少なければ、需要に対して供給が追いついていないことを意味します。
このような状態の市場で特定のスキルやキャリアを持っていれば、その人は市場価値が高い人材だといえます。市場価値は市場における需要と供給のバランスで決まるのです。
現在働いている企業内での評価が高くても、市場価値が高いとは限りません。逆に、今の会社から正当な評価を得ていないと感じている人も、市場価値が高ければ転職市場で多くの企業から求められる可能性が高いのです。
市場価値を構成する要素
転職市場における人材の市場価値は、キャリアやスキル、活躍できる領域に左右されます。市場価値の主な構成要素を詳しく見ていきましょう。
キャリア
市場価値を構成する要素の1つがキャリアです。どのような経験を積んできたのかは、自分の価値を分かりやすく示せる要素となります。
ただし、単に経験が多いだけでは、市場価値を高めるのには不十分です。仕事で成し遂げた実績や会社への貢献度も示すことで、キャリアの持つ価値が高くなります。
自分の実績を示す際は、成果への関わり方にも注意しなければなりません。大規模プロジェクトの一員として参加していただけでは、100％の実績とはいえないためです。実績への影響度を意識して働く必要があります。
3つのスキル
仕事を行う上で役立つスキルが、ヒューマンスキル・テクニカルスキル・コンセプチュアルスキルです。3スキルのいずれも、業界・企業・階層を問わず、ビジネスに関わる全ての人が持つべきスキルだとされています。
3スキルを習得できれば汎用性の高さを証明できるため、市場価値の高い人材として認められやすくなるでしょう。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、対人関係をスムーズに構築する能力を意味します。自分の考えを的確に伝えたり、相手の考えを正確に理解したりするために必要なスキルです。
コミュニケーション力だけでなく、プレゼン・交渉をうまく進める力や、リーダーシップ・コーチング・マネジメントといったスキルもヒューマンスキルに含まれます。
ヒューマンスキルが高い人材は、他者とより良い関係を構築できるため、ビジネスを円滑に進めることが可能です。
テクニカルスキル
業務を遂行する上で欠かせない基本的な知識・技術がテクニカルスキルです。テクニカルスキルの内容は、業種や職種ごとに異なります。
例えば、事務職にとっての代表的なテクニカルスキルは、PCスキル・事務処理能力・資料作成能力です。企画職なら、情報収集能力・分析能力・市場理解力を求められます。
テクニカルスキルで市場価値を高めようとするなら、市場で求められているスキルの専門性を追求することが重要です。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは、情報や状況を分析して物事の本質を捉える能力です。職位や役職が上がるほど、より高いコンセプチュアルスキルを求められます。
コンセプチュアルスキルに含まれる主なスキルは、ロジカルシンキング（論理的思考）・クリティカルシンキング（批判的思考）・ラテラルシンキング（水平的思考）です。
コンセプチュアルスキルが備わった人は、複雑な事象を概念化し、課題を洗い出したり関係性を見抜いたりできます。組織の可能性を最大化できる人材として評価されるでしょう。
活躍できる領域
人材の市場価値は領域によっても左右されます。同じようなキャリアやスキルを持つ人がいる場合、どの領域を対象とするかにより、市場価値に大きな差が生じる可能性があるのです。
自分のキャリアやスキルを最大限に生かすためには、活躍できる領域を見極める必要があります。領域を絞ることで、キャリアアップやスキルアップを図る際も無駄が生じにくくなるでしょう。
また、領域を職種や立場で区分するなら、成果を上げられる領域が多いほど市場価値は高まります。複数の領域で価値を提供できる人材が少ないためです。
市場価値が高い人材とは？
どのような人のことを市場価値が高い人材というのでしょうか。市場価値を意識することの重要性と併せて解説します。
市場が求めるスキルや経験を持っている人
市場価値が高い人材とは、採用市場において多くの企業が求める経験やスキルを備えた人のことを意味します。ここでいう市場とは、業界や昨今のニーズ、働き方などのトレンドのことです。
今働いている企業や特定の企業が求める経験やスキルを持っていても、それだけで市場価値が高いとはいえません。あくまでも市場から見たときに、高いパフォーマンスを発揮できる人が、市場価値の高い人です。
市場価値は時代によっても変化します。ある時代において希少性の高いスキルを持っていたとしても、そのスキルを多くの人が持つようになれば、市場価値が下がる可能性があるのです。
市場価値を意識することの重要性
日本では多くの企業が、長い間、終身雇用制度を採用してきました。自分が勤めている企業内で評価を高めればよかったため、市場価値を考える必要がなかったのです。
しかし、終身雇用制が崩壊して正社員採用の縮小化が進む中、1社に一生涯勤めるという状況ではなくなってきています。
そのため、転職や再就職を考えたときに、勤めている企業ではなく市場全体で見た場合の自分の価値が重要になっているのです。
市場価値の診断方法
市場価値は相対的なものです。すなわち、「市場の平均」と「その中で自分はどこにいるのか」を考える必要があります。
市場価値を確認する方法には、「今の市場の高さを確認する」ことと、「その中の自分の位置を確認する」という2つのコンセプトがあります。このことを踏まえ、具体的な市場価値の診断方法を理解しましょう。
市場の規模・トレンドを確認する
自分の市場価値を確認する前に、まずは市場の規模・トレンドを確認しましょう。規模が拡大している市場や、トレンドに乗っている市場なら、市場価値を診断する意味があります。
官公庁が発行する資料を見れば、市場規模を確認することが可能です。経済産業省や財務省のホームページで公表されている資料を活用しましょう。
各業界団体が発行する資料でも、市場規模を調べられます。知りたい分野の団体がない場合でも、関連団体が情報を提供していることもあります。
参考：
統計（METI/経済産業省）
法人企業統計調査 : 財務総合政策研究所
転職市場から調べる
市場価値を調べる目的で、実際に転職活動をしてみるのもおすすめです。求人サイトに登録し、スカウトが来る企業の傾向を分析すれば、市場における自分の立ち位置をある程度把握できます。
自分の市場価値が高そうな領域で市場の反応をチェックしながら、高く評価してくれる企業があるなら、転職を検討するのもよいでしょう。
転職サイトで市場価値を調べるなら、国内最大クラスの求人サイト「スタンバイ」を活用するのがおすすめです。あらゆる領域で全国の企業が人材を探しているため、自分の市場価値を把握しやすいでしょう。
診断ツールを使って調べる
自分の市場価値は、オンラインの診断ツールで調べることも可能です。簡単な情報を入力するだけで、AIが市場価値を算出してくれます。
スキルや実務経験に応じた適正年収を推測してくれるツールもあります。ツールによっては、転職した領域で必要なスキルを知ることも可能です。
ただし、診断ツールの結果はあくまでもAIが簡易的に示すものであり、精度は期待できません。参考程度に考えましょう。
市場価値を高めるためにすべきこと
自分の市場価値を向上させるためには、業界で実績を積むのがおすすめです。市場における希少性を高めたり、ポータブルスキルを磨いたりすることも効果があります。
業界で実績を積む
市場価値に大きな影響を与えるのは実績とスキルです。活躍したい業界で実績を積めば、実績に応じて市場価値を高められます。
市場価値を意識して実績を積む場合は、論理的に説明できる実績でなければなりません。自分の貢献度が低い実績では評価を得にくいためです。
企業が実績を見る際は、再現性が高い実績かどうかを評価します。他の企業でも同様の実績を出せるのか、再現性を予感させられる根拠が必要です。
スキルの組み合わせで希少性を高める
たとえ専門性の高いスキルを持っていたとしても、そのことだけで市場価値が高まるとは限りません。同じスキルを他にも多くの人が持っている場合、そのスキルだけで差別化を図れないためです。
スキルで市場価値を高めようと考えるなら、スキルの組み合わせを考慮しましょう。複数のスキルを掛け合わせていくことで、希少性が高まり市場価値も向上します。
ただし、やみくもにスキルを増やしても、意味のない組み合わせになりかねません。特定の領域で求められているスキルを把握し、戦略的に習得していくことが重要です。
ポータブルスキルを磨く
時代の変化に対応していくためには、専門的なスキルだけでなく、どこでも通用するポータブルスキルを磨いておくことも大切です。
代表的なポータブルスキルには、コミュニケーション力・課題解決力・リーダーシップがあります。前述のヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルにも通ずるスキルです。
ポータブルスキルの重要性は業界・職種・時代などにとらわれないため、スキルの底上げにつながります。ポータブルスキルの向上を意識しながら、業界で実績を積むのがおすすめです。
市場価値が高い人材を目指そう
転職や再就職が当たり前になってきている昨今、自分の市場価値はより重要な意味を持ってきます。今働いている企業ではなく、市場全体における自分の価値を高めることが大切なのです。
業界で実績を積んだり、スキルを組み合わせて希少性を高めたりすれば、市場価値の向上を図れます。転職サイトや診断ツールも活用しながら、市場価値が高い人材を目指しましょう。
