年間休日の最低ラインはどこ?休日が少ない場合の対処法も併せて解説

「こんなに休日返上で働いて法律違反にならないの」と思った経験はありませんか?従業員に与えなくてはならない年間休日には最低ラインがあるので、それを下回ると労働基準法違反に該当します。社会人なら知っておきたい、年間休日の最低ラインを解説します。

年間休日の最低ラインとは

手帳とカレンダー

(出典) pixta.jp

労働基準法には、従業員に与えるべき年間休日について「○日以上を取らせなくてはならない」と言及している規定はありません。ただ労働基準法の労働時間に関する規定を紐解くと、従業員にどれだけの年間休日を与えるべきなのか見えてきます。

年間休日の最低ラインは105日

労働基準法第35条では、休日について以下のように言及しています。

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

1年は約52週なので、この規定から導き出せる年間休日の日数は52日です。

ただ年間休日を52日と設定すると週6日勤務になるので、1日8時間勤務の場合、1週間の労働時間が48時間になってしまいます。労働基準法第32条では、1週間の労働時間を40時間以内とも定めているため、52日では法律違反となってしまうのです。

労働時間の観点から最低ラインを計算すると、1年間の法定労働時間は40時間×52週で2080時間、1年間の労働日数は2,080時間÷8時間で260日となるので、最低限の年間休日は365日-260日で105日と考えられます。 

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

休日と休暇の違いとは

年間休日について理解するためには、休日と休暇の違いを頭に入れておく必要があります。休日とは、労働の義務を負わない日のことです。労働基準法では週に1日以上、または4週に4日以上の休日を与えるように規定しています。

一方で休暇とは、本来なら労働をする日において、労働の義務を免除される日のことです。休日は与えるのが義務ですが、休暇は従業員の権利としてもらえるものです。

なお夏季休暇や年末年始休暇が休日と休暇どちらになるのかは、企業によって異なります。就業規則において休日とされていれば、長期休暇も年間休日数に含まれます。取得する人によって日数や時期が異なる有給休暇は、年間休日には該当しません。

年間休日の平均は?

厚生労働省が発表した「令和4年就労条件総合調査」によると、全企業規模で見た場合、最も多くを占める年間休日数は120~129日です。全体の30.2%という結果で、ゆとりのある働き方を実践できている人が多いことが分かります。

120~129日に次いで多いのが、年間休日を100~109日もらっている人(29.6%)です。余裕のある働き方をしている人が多い一方で、下限ギリギリで勤務している人も一定数いることが分かります。

同調査を企業規模別に見ると、企業規模が小さくなるにつれ、付与されている年間休日数が少なくなる傾向が見て取れます。しっかり休める会社に勤めたいなら、規模の大きな企業を狙うべきといえるでしょう。

参考:令和4年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

最低ラインを下回った場合の罰則

弁護士

(出典) pixta.jp

従業員に年間休日を105日以上付与しないと、労働基準法違反として処罰される可能性があります。従業員に十分な休日を与えなかった企業に科せられる罰則について確認しましょう。

6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

労働基準法第35条で規定されている法定休日は、「1週間に1日以上」もしくは「4週間に4日以上」です。最低限この休日を従業員に与えなければ、法定休日の付与義務違反に問われます。

具体的な罰則の内容は労働基準法第119条で規定されており、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

対価のない休日出勤も違法

割増賃金の支払いや代休の付与がない休日出勤も、労働基準法違反に問われます。労働基準法第36条では、法律が定める休日(法定休日)の出勤は原則禁止されています。休日出勤を従業員に強いるには、36協定の締結が不可欠です。

36協定とは、従業員に時間外労働や休日労働をさせるために必要な、労使間で結ばれる協定を指します。ただし、36協定を結んでいるからといって、無制限に休日出勤を強制できるわけではありません。

代休を取得させずに1カ月の休日数が3日以下になってしまったり、振替休日を設けずに法定休日に出勤させ、休日手当を支給しなかったりする場合には、36協定を結んでいても懲役または罰金が科せられます。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

最低ラインを下回っても処罰されないケース

労働協定の書類

(出典) pixta.jp

年間休日が105日未満になっているからといって、全てのケースで罰則が科されるわけではありません。一定の条件をクリアしていると、105日を下回っていても罰せられない場合があります。

労働時間を短く設定している

年間休日が105日未満になっていても、週の労働時間が短ければ、法定休日の付与義務違反に問われない可能性があります。

105日という数字は、1日の勤務時間を8時間と前提して計算した場合の最低ラインです。そのため年間休日数が少なくても、労働時間が1日8時間以内かつ週40時間以内であれば、法律違反には当たりません。

例えば1日6時間勤務なら、週6日勤務していたとしても、週の労働時間は36時間に収まります。1日6時間、週6日働いた場合の年間勤務時間は1,872時間で、日数に換算すると312日のため、年間休日は53日となります。

この場合は法定休日の規定の範囲内なので、法律違反にはなりません。

有給休暇を含めて年間休日を設定している

有給休暇も加えた日数を年間休日と会社が規定している場合、純粋な年間休日が105日を下回っていても、罰則を回避できる可能性があります。

年間休日には有給休暇を含まないのが一般的ですが、年5日の有給休暇の消化が義務化されたことで、年間休日に有給休暇5日分を含めて計算することが可能になりました。

5日間の有給休暇を加えて年間休日を105日とした場合、有給休暇を除いた実際の休日は100日となってしまいます。

このままだと「1週間に1日以上」「4週間に4日以上」という規定を満たせないため、有給休暇を含めた休日数で最低ラインをクリアする場合には、36協定の締結が必要です。

36協定を結んでいる

労使間で36協定を結んでいる場合も、年間休日が105日を下回っていても罰せられない可能性があります。36協定を締結していると、従業員に時間外労働や休日労働をさせられるようになります。

ただ36協定を結んでいるからといって、無制限に労働時間を延長できるわけではありません。延長できる時間の限度は、月45時間かつ年360時間と設定されています。

36協定を締結し、月々もしくは年間の限度時間を守ってさえいれば、1週間に1日または4週間に4日の休日を与えていなくても、労働基準法違反には問われません。

変則的な労働形態を採用している

特殊な労働形態を導入している場合も、年間休日が105日未満になっていても処罰されない可能性があります。105日を下回っていても罰せられない労働形態の代表例が、変形労働時間制です。

変形労働時間制とは、月単位や年単位で労働時間を調整する働き方を指します。変形労働時間制では、忙しい時期に突入して勤務時間が増えても時間外労働として扱われないため、繁忙期と閑散期で勤務時間の増減が激しい職種で採用されている働き方です。

繁忙期に休日が少なくなって年間休日が105日未満となっても、変形労働時間制を採用していれば、労働基準法違反に問われる可能性は低いでしょう。

年間休日が少ない場合の対処法

疲れている男性

(出典) pixta.jp

年間休日の最低ラインを知って、自分に与えられている休日の少なさにショックを受けている人もいるはずです。年間休日が105日を下回っている場合の対処法を紹介します。

勤めている企業と交渉を試みる

年間休日が105日を下回っていて、「健康的に働くのが難しい」「心身を休める時間がない」などの不具合が発生しているなら、企業側に掛け合って休日を増やしてもらいましょう。

労働基準法の規定通りに休日を取ることは、従業員に与えられた権利です。今の職場でこれからも働き続けたいと考えているなら、自ら行動して働きやすい環境を整えるのが賢明といえます。

ただ、労働条件の是正を個人で訴えるのはなかなか難しいものです。企業と交渉する際には、労働組合に相談したり同じ不満を持つ人と団結したりするなど、個人対企業の構図にならないような工夫が求められます。

労働基準監督署に相談する

企業側に年間休日数の底上げを交渉してうまくいかなかった場合には、労働基準監督署に相談してみましょう。労働基準監督署は、企業が労働関係法令を守って経営を行っているか監督・指導する機関です。

労働基準監督署に相談すると、問題解決に向けたアドバイスがもらえたり、企業に現状を聴取して実態を調査し、労働関係法令を守るように指導してもらえたりします。

労働基準法違反の条件下で働いているという人は、労働基準監督署の力を借りることで、現状を打破できる可能性があります。

年間休日別の働き方・休み方とは

仕事に疲れている男性

(出典) pixta.jp

年間休日105日や120日などといわれても、実際にどのような働き方になるのか、具体的にイメージするのは難しいでしょう。休日数から実現できる働き方と休み方を解説します。

年間休日105日の働き方

年間休日105日は最低ラインギリギリの休日数といえるため、厳しい働き方が想定されます。

1年は約52週なので、週休2日制だと年間の休日数は104日です。そのため、年間休日105日で週休2日制を採用している場合、長期休暇が取れない計算になってしまいます。

年間休日105日の働き方では、祝日も出勤することになります。3連休以上の連休はほぼないため、プライベートの予定が組みにくいということも起きてきます。

年間休日105日の人が満足に休みを取るには、有給休暇を活用するしかありません。ただ、病欠や家庭の事情で有給休暇を消化してしまえば、自由になる休日はぐっと少なくなるでしょう。

年間休日110日の働き方

年間休日110日の働き方は、最低ラインにプラスして5日間休めることになりますが、まだ余裕があるとはいえない働き方といえます。

完全週休2日制(年104日休める計算)だった場合、残りの6日間を夏季休暇や年末年始休暇に当てると、祝日は基本的に出勤となるため、3連休以上の休みは期待できないでしょう。

祝日にも休みがある企業の場合、夏季休暇や年末年始休暇は基本的に有給休暇として取得することになります。年104日の休みと全ての祝日を足すと120日になるため、年間休日110日の場合、全ての祝日を休日に設定することは困難です。

年間休日120日の働き方

最低ラインにプラスして15日休める年間休日120日では、ゆとりのある働き方を実現できるでしょう。

土日と祝日を休みに設定した場合、年間の休日数は120日になります。つまり年間休日120日は、ほぼカレンダー通りに休める働き方ともいえます。3連休以上の連休も取得可能なため、プライベートの予定も立てやすいでしょう。

夏季休暇や年末年始休暇などの長期休暇が充実している企業の場合、お盆と年末年始に5日ずつ休んだとしても、休日数は週休2日制で休める104日に長期休暇分の10日を足した114日になるので、さらに6日間も休める計算になります。

実際のカレンダーでは祝日や休暇が土日と被ることもありますのでぴったり計算通りにはなりませんが、休日が少ないと嘆くことはまずないはずです。

年間休日の最低ラインを知っておこう

職場の男性

(出典) pixta.jp

健康的かつ文化的な生活を送るには、最低限の休日が必要不可欠です。年間休日の最低ラインを知っていれば、自分の働き方が適正なのか否かが分かります。

もし勤務先が最低ラインを守っていないなら、労働組合に相談したり同僚と団結したりして企業と交渉し、休日を増やしてもらいましょう。

休日が十分に確保されている仕事を探すなら、スタンバイの活用がおすすめです。さまざまな条件の求人を数多く扱うスタンバイなら、理想的な休日数を実現してくれる仕事に出合えるはずです。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら