学校事務は公務員?仕事内容や年収・目指す方法を解説

学校事務が公務員なのか、疑問に思う人は多いのではないでしょうか。結論をいうと、公務員かどうかは勤務先の学校によって異なります。学校事務への転職を考えている人に向け、仕事内容や目指す方法、やりがいなどを解説します。

学校事務とはどんな仕事?

学校の教室

(出典) pixta.jp

自分が通学していた頃は、学校事務がどのような仕事なのか、よく分からなかった人も多いでしょう。教員と事務の人を同じように見ていたかもしれません。まずは学校事務の仕事内容や、年収事情を解説します。

生徒・学生を授業以外の面からサポートする仕事

学校の職員は、大きく教員と事務の2種類に分けられます。教員は授業を行うこと、学校事務は備品の整備や各種事務手続きなど、子どもたちが快適に学校生活を送れる環境を作ることが主な役割です。

学校事務は、他の教職員の給与計算や勤怠管理、来校者への対応なども担います。学校事務は保護者や地域との窓口になる仕事であり、学校の顔ともいえる存在です。

1人の学校事務が担当する業務範囲は、学校の規模によって異なります。一般的には規模の大きい学校の方が業務が細かく分担されており、学校の規模が小さいほど1人でさまざまな業務をこなすことが多いと考えてよいでしょう。

公立学校の事務は公務員

公立学校の事務員は、地方公務員です。そのため公立学校の事務員になるには、まず各都道府県の公務員試験に合格する必要があります。

また、地方公務員の宿命として、数年おきの転勤は避けられません。ただし学校事務の場合、転勤先が原則として採用された自治体内のため、頻繁に引っ越すケースは少ないと考えられます。

公立学校の事務は学校だけでなく、教育委員会に配属されることもあります。子どもと関わりたくて学校事務を目指したとしても、必ずしも希望通りにいかない可能性を覚えておきましょう。

一方の私立学校は民間が運営しているため、学校事務も公務員ではなく、一般的な会社員と同じ立場です。学校の事務員として働くために特別な資格は不要で、求人情報誌や転職サイトなどから採用されるチャンスもあります。

学校事務の年収

厚生労働省の職業情報サイトによると、学校事務が含まれる職業分類の年収は約440万円(「令和3年度賃金構造基本統計調査」より)です。

公立学校の事務員地方公務員のため、エリアや配属先による待遇の差は少ないと考えられます。一方で私立学校の場合は、運営する組織によって待遇が変わるのが特徴です。

厚生労働省のサイトを見ると、例えば東京都の平均年収は約513万円ですが、沖縄県では約320万円と200万円弱の開きがあります。特に民間が運営する私立学校の事務で、地域による差が大きいと考えられるでしょう。

収入面を重要視する人は、公立・私立どちらを選ぶかに加え、働く場所も考えて動く必要があります。

参考:学校事務 - 職業詳細 |厚生労働省

学校事務の仕事内容

学校で働く女性

(出典) pixta.jp

一口に学校事務といっても、その仕事内容は多岐にわたります。いくつかの種類に分け、詳しい仕事内容を見ていきましょう。

一般事務

学校で一般事務に当たる仕事には、以下のようなものがあります。

  • 学生証の作成・管理
  • 学割・在学証明書の発行
  • 教材の発注
  • 設備の管理・修理業者への発注
  • データ入力
  • 郵送物の管理

データ入力や郵送物管理といった一般的な事務作業の他に、教材発注や入学・転校の手続きなど、教育機関ならではの業務もあることが特徴です。

中学校や高校・大学の場合は、入試・進学・就職に関わる事務作業も発生するでしょう。子どもたちの将来がかかっているというプレッシャーや、入学金の振込確認・卒業証書発行などの作業は独特で、初めのうちは慣れるのに苦労するかもしれません。

経理業務

学校事務が行う経理業務としては、以下が挙げられます。

  • 教職員の勤怠管理や給与計算
  • 予算の管理
  • 伝票入力
  • 経費精算
  • 教材や外注費の代金の支払い
  • 授業料・給食費・修学旅行費の徴収

経理はお金を扱う重要な業務です。大規模な学校なら経理課が設けられている場合がありますが、小規模な学校では学校事務が他の業務と兼務するケースも少なくありません。

特に給食費や教材費など、各家庭から徴収するお金については未払いや金額不足などのトラブルが発生しやすく、対応に追われる可能性があるでしょう。

窓口対応・広報

学校事務は学校の代表として、来校者や保護者などへの一次対応を担います。以下の業務がその例です。

  • 来校者の案内
  • 問い合わせメール・電話応対
  • 学生・保護者向けの文書作成
  • 説明会やオープンキャンパスの企画・実施
  • 授業料や奨学金の相談
  • 願書の受付

学校特有の業務として注目したいポイントは、説明会やオープンキャンパスの企画・運営でしょう。普段は縁の下の力持ち的な存在に徹している学校事務も、このときは保護者やその他関係者と多く接する機会があり、表に立って活躍できます。

学校事務を目指す方法

学校で働く女性

(出典) pixta.jp

学校事務を目指すには、どのような方法があるのでしょうか。国公立と私立それぞれの採用ルートを紹介します。

国公立なら公務員試験に合格

国公立の学校で働くためには、公務員試験に合格する必要があります。試験内容は都道府県によって異なりますが、筆記試験と面接の形を取っているところがほとんどでしょう。

筆記試験の科目や難易度、面接の回数も都道府県により異なります。区分は「学校事務」「教育事務」「一般事務」で募集するケースが多くなっています。

なお東京都の2022年度の試験では、事務職の倍率は4.4倍でした。倍率が高い上に面接ではプレゼンテーションを求められることもあり、しっかりとした対策が求められるでしょう。試験問題や試験日から逆算し、計画を立てて勉強することが重要です。

国立の学校で働きたい人は「国立大学法人等職員採用試験」を受けます。独立行政法人化した国公立学校では、独自試験を実施していることがほとんどです。

参考:
令和4年度職員採用試験(選考)実施状況|東京都人事委員会
国立大学法人等職員をめざす方へ | 国立大学協会

私立は民間企業への転職とほぼ同じ

私立学校の場合、進め方は一般的な就職・転職活動に近いと考えてよいでしょう。各学校がホームページや求人サイトなどで求人を出しているので、応募して選考を受けるのが主な方法です。

採用試験の内容は学校によりますが、筆記試験や小論文・面接を課すところが多いようです。

正社員だけでなく、派遣会社から学校に派遣される働き方もあります。むしろ昨今は、事務作業を非正規雇用者や外注先に頼るケースが増えています。学校事務になりたい人は、正社員以外の働き方も視野に入れながら転職活動するのがよいといえるでしょう。

私立学校の募集状況は人員の充足度によるため、探して見つかるとは限りません。気になる求人を見つけたら、積極的に応募してみましょう。

学校事務のやりがい

職員室

(出典) pixta.jp

学校事務として働く上で、満足感を覚えたりメリットに感じたりすることは何なのでしょうか。主なやりがいや魅力を3つピックアップして紹介します。

学校教育をサポートできる

学校事務は学校の運営に必要不可欠であり、教育現場を支える存在です。教職免許を持っていなくても、子どもたちの学校生活をサポートできます。

特に小規模の学校では事務員の人数が少ないこともあり、子どもたちだけでなく教員・保護者からも頼りにされる場面が多いでしょう。

自分が学校を支えているという誇りは、大きなやりがいといえます。何らかの形で教育に携わりたいと思っている人には、おすすめの仕事です。

公務員なら社会的信用が高い

公立学校の場合は地方公務員として働くため、社会的信用が高いこともメリットの1つです。公務員は雇用が保障されており、定年まで安心して働けます。

公務員であればローンが組みやすかったり、クレジットカードの審査に通りやすかったりと、プライベートでも得することが多いでしょう。

公務員であることに、よい印象を持つ人も少なくありません。私立学校も、学校という社会的意義の高い職場で働いていることに、プラスの印象を持たれやすいでしょう。

ワークライフバランスが取りやすい

一般的な会社員と比べると、学校事務の仕事はプライベートとのバランスが取りやすいといえます。勤務時間は8~9時から17~18時までが一般的で、土日祝日は基本的に休みです。

運動会や学校祭などの行事で休日出勤することもありますが、スケジュールがあらかじめ決まっているため、友達との予定を入れたり旅行の計画を立てたりしやすいでしょう。

原則カレンダー通りに休めるのでプライベートの時間を確保しやすく、メリハリをつけて働きたい人にはおすすめです。

学校事務の大変なところ

電話を受ける女性

(出典) pixta.jp

どんな仕事にも大変なことはあります。学校事務で苦労しがちなポイントを3つ紹介するので、転職活動の参考にしましょう。

保護者や近隣住民からクレームを受けやすい

事務員は学校の窓口となる存在です。保護者や近隣住民などから、所属する子どもが学校外で起こしたトラブルについて問い合わせが来る可能性が常にあります。

自分にはまるで関係のない事案でクレームを受けることも多く、ストレスを感じる人もいるでしょう。保護者や近隣住民のクレームは、ほとんどの場合教員や子どもたちの行動に対して向けられます。両者の板挟みになって、嫌な思いをする恐れもあります。

対応する家庭によってはセンシティブな問題に触れることもあり、神経がすり減る思いをするかもしれません。しかし学校の平和を守るためには、事務員の調整役としての活躍が不可欠です。

公務員は大幅な昇給が見込めない

一般企業と同じく、事務系の仕事は大幅な昇給が見込めない傾向にあります。特に公立学校の事務職員は地方公務員のため、給与は職務の級や号級によって計算されます。仕事を頑張ったからといって、必ずしも昇給するわけではないのです。

さらに公立の場合は学校ごとに定員が決まっているため、勤務先によっては人手が足りず、多忙な日々を送ることになります。忙しすぎて、業務量と給料が割に合わないと感じる人もいるでしょう。

私立なら職場次第でよい待遇を期待できますが、人員は充足気味で外注化の傾向もあるため、狭き門となります。長く働き続けるためには、給与以外の面でやりがいを見出す必要があるでしょう。

参考:
給与決定と算出のしくみ|東京都人事委員会
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律|e-Gov法令検索

人間関係にストレスを感じることがある

他の職業と同じく、学校事務にも人間関係が原因で辞めてしまう人は少なからずいます。学校は一般企業に比べて、閉鎖的な空間ともいえます。

外部の人と関わる機会が少なく、学校内での人間関係が、職場の居心地にダイレクトに影響するでしょう。

保護者や教員から理不尽な要求をされて自尊心が傷つけられたり、これでよいのかと悩んだりすることもあります。事務の人数が少ない学校では他に頼れる人がおらず、悩みを1人で抱え込みがちです。

学校事務に求められる能力

職員室での作業

(出典) pixta.jp

学校事務になるために、特別な資格はいりません。ただし、以下に挙げる能力は、持っていると活躍の場が広がります。学校事務に求められる能力を見ていきましょう。

パソコンスキル

学校事務はWordやExcelを多用するため、Officeソフトを使えるスキルが求められます。基本的な使い方は就職後にいくらでも覚えられますが、事前に身に付けておくに越したことはありません。

体系的なスキルを身に付けるなら、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)検定の勉強や取得がおすすめです。MOSを持っていると、選考においてプラスに働く可能性もあります。

他にはコピー機やファックスなど、オフィスワークで使う機器の使い方にも慣れておくと即戦力になれるでしょう。

MOS公式サイト-マイクロソフト オフィス スペシャリスト

コミュニケーション能力

学校事務として活躍するには、コミュニケーション能力が欠かせません。仕事中は子どもや教員だけでなく、保護者や近隣住民とコミュニケーションを取る機会があります。

業務を円滑に進めるには、関係各所へ正確かつ迅速に連絡しなければなりません。学校のフロントに立って外部の人とやり取りをするため、言葉遣いや所作のマナーも身に付けておく必要があります。

特に説明会やオープンキャンパスの時期は、事務員の態度次第で学校の印象が変わることもあります。普段から、人からどう見られるかを意識しながら働く姿勢も大切といえるでしょう。

スケジュール管理能力

学校事務は業務量が多くなる時期があるため、スケジュール管理能力も求められます。特に一般事務から経理まで複数業務を兼任する場合は、抜け漏れがないようタスクを管理しなければなりません。

教職員や子ども・保護者に対して書類や教材費、経費などの提出を促す業務では、期日に間に合うようにゆとりを持って作業を進める必要があります。

少しのミスが近隣住民や保護者からのクレームの原因となることもあり、正確に業務をこなす能力も欠かせません。

また、学校事務の仕事は細かく地道な作業がほとんどです。コツコツとした業務を根気よくこなす、メンタルの強さも必要でしょう。

学校事務に向いている人

職員室で事務作業をする女性

(出典) pixta.jp

学校事務に向いているのは、どのような人なのでしょうか。学校事務にやりがいを感じられる人の特徴を2つ解説します。

子どもと触れ合うのが好きな人

子どもが好きな人や、子どもの成長を見守りたい人は学校事務に向いています。学校事務の仕事は、突き詰めると子どもたちの快適な学校生活を守ることです。

主役である子どもたちの生活を支える学校事務は、子ども好きな人にとっては絶好の職場といってよいでしょう。

学校事務は、保護者や地域住民・自治体の職員などと関わる機会も多くあります。大人でも子どもでも、人と接することが好きな人なら前向きに仕事に臨めるでしょう。

事務系のスキルを高めたい人

学校事務として経験を積むと、基本的なパソコンスキルはもちろん、学校の規模によっては経理やイベント企画など幅広い事務系スキルが身に付きます。入学式や卒業式などのイベントでは来賓への対応もするため、ビジネスマナーも覚えられるでしょう。

パソコンスキルやビジネスマナーは、どの職場でも求められる必須スキルです。これから事務系のスキルを高めたい人にとっては、学校事務は魅力的な仕事といえます。

特定のスキルについて専門性を高めたい人は、業務が細分化されている大規模な学校がおすすめです。幅広いスキルを身に付けたい場合には、1人1人の役割が大きい小~中規模の学校が向いているでしょう。

学校事務は快適な学校生活を支える仕事

職員室で働く女性

(出典) pixta.jp

学校事務は教育現場を支える重要な仕事です。一般的な事務作業に加えて学校特有の業務もあり、カバーする範囲は幅広くなっています。

ワークライフバランスが取りやすい反面、「学校事務は楽」と思わないよう注意が必要です。それでも子どもたちの成長を見届けたいという思いがあれば、多少の困難は乗り越えられるでしょう。

転職を考えているなら、スタンバイの活用がおすすめです。学校事務も求人を多く取り扱っており、給与水準や業務内容を知る手がかりとなります。公務員志望の人もそうでない人も、スタンバイで学校事務の実態を探ってみましょう。

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