パート収入のベストな金額はどのくらい?年収の壁を理解しよう

主婦や主夫がパートで働くにあたり、配偶者の扶養範囲内で働く場合とそうでない場合とでは、税負担がかなり変わります。パート収入のベストな金額は、どのくらいなのでしょうか?収入を調整するポイントを、「年収の壁」とともに理解しておきましょう。

パートの収入は調整が必要?

家計簿

(出典) pixta.jp

配偶者の扶養範囲内で、パートやアルバイトとして働いている人は多いですが、一定の収入を超えると扶養から外れることになります。扶養の範囲内で働く場合と比べ、税金や保険料などの負担が変わるので、状況によって収入の調整をしなければいけません。

扶養の範囲内で働くか考える必要がある

主婦や主夫としてパートやアルバイトをする場合、配偶者の扶養の範囲内で働くかどうかを決めることが、世帯全体の収入を管理する上で重要です。配偶者の扶養の範囲内で働くならば、働き損にならないためにも、収入の調整を考える必要があるでしょう。

日本の扶養制度は、次のように「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」に分けられます。

  • 税法上の扶養:扶養家族がいる場合、世帯の生計維持者の所得から、扶養人数に応じて控除(配偶者控除や配偶者特別控除)を受けられる。控除によって課税所得が減るため、納付する住民税や所得税の額を抑えられる
  • 社会保険上の扶養:生計維持者が加入している健康保険や厚生年金の被扶養者となり、保険料を負担せずに社会保険の恩恵を受けられる

生計維持者である配偶者の扶養範囲内で働けば、世帯全体の税金や保険料の負担が抑えられます。ただし後述するように、扶養を外れても大きく収入を伸ばせるのであれば、税金や保険料の負担が増えたとしても、世帯全体の収入は増加するでしょう。

単純に収入が増えるほど経済的に楽になる可能性が高いので、配偶者の扶養の範囲内で働くか、それとも扶養を外れて収入を伸ばすべきか、慎重に判断することが大事です。

扶養範囲内で収入を調整するメリット

通帳を見ながら家計簿をチェックする

(出典) pixta.jp

配偶者の扶養に入っている人が扶養の範囲内で働くメリットとして、以下の点が挙げられます。主に税金や保険料の負担が軽減されるので、パートやアルバイトとして収入を伸ばすのが難しい人は、扶養の範囲内で収入を調整する方がよいでしょう。

世帯全体の税負担を軽減できる

扶養の範囲内で働けば、世帯全体の税負担を軽減できます。

上記のように、生計維持者である配偶者の税負担を抑えられるのに加えて、一定の条件下ならば、パートで働く側の所得税や住民税が発生しません。税金の負担が発生しない分、世帯全体の負担も軽減できる可能性があります。

例えば、パートで働く側の収入が年間で103万円以下ならば、配偶者控除が受けられます。たとえ103万円を超えた場合でも、150万円までに抑えれば、配偶者特別控除の対象となり、満額で38万円の控除が可能です。

保険料なしで年金が受給できる

パートの年収が130万円未満の場合、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入っていれば、厚生年金保険の加入要件にあてはまる場合を除き国民年金の第3号被保険者に該当します。毎月の年金保険料を納めることなく、老後に年金の受給が可能です。

生計維持者である配偶者が代わりに保険料を納める形になるため、保険料を負担することなく年金制度の恩恵を受けられます。

配偶者の健康保険で医療費が3割負担となる

国民年金の場合と同様に、健康保険に加入している配偶者の扶養範囲内であれば、配偶者の勤務先の保険に加入できます。

健康保険料を納付することなく、3割負担で医療を受けられるので、医療機関に通う頻度が高い人は、扶養範囲内で働くメリットが大きいでしょう。保険証は扶養者である配偶者の勤務先が加入している保険組合から発行されます。

世帯全体の手取りが増えない

扶養範囲内に収入を抑えることで税負担は軽くなりますが、世帯全体の手取りはなかなか増えません。また収入を調整するため、働く時間を制限する必要が出てくる可能性もあり、働き口が制限される場合もあります。

収入を増やせるのであれば、配偶者の扶養に入らず収入を増やした方が、税金や保険料の負担を差し引いても世帯全体の手取り額は大きくなるでしょう。

収入を伸ばした分で蓄えを増やし、厚生年金の保険料をしっかり納めておけば、老後への備えも充実するでしょう。

パートが直面する年収の壁

電卓を操作する手元

(出典) pixta.jp

税制上および社会保険上の扶養内で収入を調整するには、「年収の壁」について理解しておく必要があります。年収の壁とは、配偶者の扶養から外れて、税金や保険料の納付義務が発生する基準を指し、具体的には以下が挙げられます。

100万円の壁

扶養内で働くパートの年収が100万円(自治体によっては93万円)以下ならば、住民税は課税されません。住民税は、条件に該当する人がその地域に住んでいる限り、必ず納める必要があるものです。

年間5,000円程度かかる住民税の均等割に関しては、住んでいる市区町村によっては課税される可能性はあるものの、個人の所得に応じた住民税である所得割は、年収100万円を超えなければ納付義務は生じません。

パートから得られる収入が100万円を少し超える程度ならば、あえて100万円以内に収める方が、住民税の課税対象にならないため、家計にとって有効でしょう。

参考:地方税制度(個人住民税)|総務省

103万円の壁

年収が103万円以下ならば、所得税は課税されません。給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円を足し合わせると控除分が103万円となり、課税所得額が0円になるためです。

また、扶養内で働くパートの主婦・主夫が年収103万円以下ならば、生計維持者である配偶者が所得控除(配偶者控除)を受けられます。所得から38万円を差し引けるので、課税所得額が控除分だけ少なくなり、所得税の節税になるのです。

参考:配偶者控除|国税庁

106万円の壁

勤め先の規模や勤務時間などの条件に該当する場合、年収106万円以上になると、パートやアルバイトでも自ら社会保険に加入しなければいけません。社会保険への加入が必須となる条件は、次の通りです。

  • 勤め先の被保険者が101人以上(2024年10月からは51人以上)
  • 週に20時間以上の所定労働時間
  • 月額賃金が8万8,000円以上
  • 2カ月以上継続して雇用の見込みであること
  • 学生ではないこと

月額賃金が8万8,000円以上という条件があるので、年収に換算して約106万円以上が条件となります。これらを満たすと配偶者の扶養外です。

130万円の壁

収入が年間130万円以上になると、どのような条件で働いていたとしても、パートやアルバイトで働いている人自身が社会保険に加入しなければいけません。この基準を超えると、配偶者の扶養から外れることになります。

収入の壁について議論される際、130万円の壁についてよく言及されるのは、130万円以上になると無条件で配偶者の扶養から外れ、保険料の納付義務が発生するからです。

勤め先での勤務日数や労働時間などにより、勤め先の社会保険に加入するか、自ら国民健康保険と国民年金に加入する必要が出てきます。加入する保険に従って保険料を収める必要があり、国民年金あるいは厚生年金の保険料、健康保険料の支払いも発生します。

150万円の壁

年収が150万円を超えた時点から、扶養から外れるだけでなく、配偶者特別控除額が段階的に減少します。最高控除額は38万円ですが、151万円の場合は36万円となり、156万円の場合は31万円と減っていく仕組みです。

年収が約201万円になると、配偶者特別控除はゼロになります。つまり、生計維持者である配偶者の所得から控除できる分がなくなるので、税負担が重くなるのです。

201万円の壁

厳密には201万6,000円の壁で、上記の配偶者特別控除がゼロになり、扶養に関する税金の控除が一切受けられなくなる基準です。しかし税金の控除は受けられなくても、パートやアルバイトとして収入を増やしていけば、世帯全体の手取り収入は増えていきます。

たとえ税金や保険料の負担が増えたとしても、それ以上に手元にお金が残るようになるので、年収201万円を超えて大きく稼げるならば、年収の壁を気にせず収入を伸ばすとよいでしょう。

将来に備えて蓄えをしておけば、年金だけに頼らず、余裕のある生活を送る助けになるはずです。

働き損をしないためのポイントは?

家計をつける

(出典) pixta.jp

配偶者の扶養の範囲内で働くことを前提とした場合、働き損にならないためのポイントは何なのでしょうか?扶養から外れるつもりがないならば、税金や保険料の負担により、手取りが減ってしまう事態にならないように注意しなければいけません。

扶養内でいくらまで収入を得るべきか考える

上記の年収の壁を意識して、扶養内でいくらまで収入を上げれば損にならないか、考えてみましょう。社会保険の扶養内で収めるための上限は月8万8,000円で、税制上の扶養内でいるための上限は月16万7,500円未満です。

これらの上限を超えると税金や保険料の負担が発生するので、上限を少し超えた程度の収入では、負担分を差し引くと手取りが減ってしまう可能性があります。

パートやアルバイトの収入がいくらになるか確認した上で、働き損にならない金額に調整できないか検討しましょう。

ただし前述の通り、年収を大きく上げられる可能性があるならば、年収の壁を意識せず稼いだ方がよい可能性があります。税金や保険料の負担を加味しても手取りが大きくなるため、大きく稼げるならば、扶養の範囲内に収める必要はないでしょう。

また、厚生年金に加入できれば、保険料の負担は発生するものの、老後に受け取れる年金の額が増えるので、将来を見越して働き方や収入を考えることが重要です。

パート収入に関する年収の壁を理解しよう

電卓を見つける女性

(出典) pixta.jp

配偶者が世帯の家計を支えており、主婦(主夫)としてパート・アルバイトで働く人は、配偶者の扶養範囲内で働く場合とそうでない場合とで税金や保険料の負担が変わります。

収入が一定の範囲内なのであれば、「年収の壁」を意識することで、負担を軽減できるでしょう。

ただし、年収201万円を超えて大きく稼げる場合には、扶養から外れても収入を伸ばした方が、世帯全体の手取りが増えます。どういった働き方や収入を目指すにせよ、長期的な視点で収入の計画を立て、将来に備えることが大事です。

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