研究者の年収は?条件による年収の違いや主な就職先を解説

研究者への転職を検討しているなら、年収や働く場所を事前に調べておくのがおすすめです。平均年収や活躍できる場を知っておけば、実際に転職するかどうかを考えやすくなるでしょう。条件別の研究者の年収や主な就職先を紹介します。

研究者の年収はいくら?

研究者のイメージ

(出典) pixta.jp

研究者の平均年収は比較的高めです。具体的な金額や全労働者の平均年収との差を見ていきましょう。

分野を問わない平均年収は約704万円

研究者の平均年収は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを用いて計算すれば算出できます。平均年収の計算式は次の通りです。

  • きまって支給する現金給付額×12カ月+年間賞与その他特別給与額

「令和4年賃金構造基本統計調査」の「研究者(男女計・企業規模10人以上)」のデータを使うと、2022年における分野を問わない研究者の平均年収は以下のように計算できます。

  • 44万9,100円×12カ月+165万200円=703万9,400円

なお、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、2021年における日本の給与所得者全体の平均年収は約443万円です。研究者の平均年収は職種を問わない平均年収より約260万円高いと考えてよいでしょう。

参考:
賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | 政府統計の総合窓口
令和3年分 民間給与実態統計調査 | 国税庁

年収の内訳は?

電卓と通帳

(出典) pixta.jp

研究者の年収の内訳を紹介します。一般的な職種と同じ基本給や手当以外に、副次的な収入も得られる点がポイントです。

基本給

研究者の年収は、一般的な職種と同様に基本給がベースとなっています。コツコツと働き実績を重ねていくことで、徐々に上がっていく項目です。

基本給に最も大きく影響するのは年齢ですが、ほかにも以下のような要素が影響を与えます。

  • 最終学歴
  • 専攻分野
  • 語学スキル
  • 海外勤務の経験
  • 共同研究の実績

最終学歴が高いほど、また専攻分野の需要が高いほど、基本給も高くなる傾向があります。海外に拠点を持つ企業の場合は、語学スキルや海外勤務の経験も重視されます。共同研究の実績では、柔軟性や発想力・人脈といった点を評価されるでしょう。

各種手当・ボーナス

企業の研究者は一般的な職種と同様に、交通費や住宅手当などの各種手当やボーナスをもらえます。

ボーナスの金額は企業や専門分野によりさまざまです。回数は一般的な職種と同じく年2回支給されるケースが多いでしょう。研究者としてのボーナスではなく、企業としてルールに沿って支払われることがほとんどです。

大学の研究者の場合、各種手当・ボーナスの有無は大学の方針によって異なります。年俸制を採用している企業に勤める場合、ボーナスは支給されません。

副次的な収入

研究者は所属先から得られる給与以外に、副次的な収入も得られます。副次的な収入は、実績や名を上げていくことで得られる、研究者独自の収入です。

研究者の副収入には次のようなものがあります。

  • 講演料
  • 講師料
  • 特許料
  • 原稿料
  • 印税

講演料や講師料は、学校や団体などに招かれて講演・指導を行った際に得られる収入です。特許料は自身が関わる特許で収入が発生した場合にもらえます。

研究内容を著書にしたり雑誌に寄稿したりしたときに得られるのが、原稿料や印税です。他者の著作物を監修した場合も、印税の一部をもらえます。

給料とは別に研究費が出る場合も

研究者には給料とは別に研究費が出ることもあります。研究費とは研究において発生する費用に宛てられるお金です。

ある研究のために書籍を購入したり実地調査を行ったりする場合、研究費がなければ基本的に費用は自腹となります。身銭を切れず思い切った研究ができなくなる恐れがあるため、研究の質を高めるために研究費が支払われるのです。

大学や公的機関の研究費は主に税金が原資となりますが、民間から研究費が捻出されることもあります。

研究費は研究関連以外の目的では使用できません。あくまでも研究のためだけに使えるお金であり、給料とは意味合いが異なります。

条件別に見る年収の違い

試験管を見る女性

(出典) pixta.jp

研究者の平均年収は、性別・企業規模・経験年数により差が生じます。条件別の年収の違いを知り、転職を検討する際の参考にしましょう。

男女で見る年収の違い

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを使うと、研究者の男女別の平均年収は次のように計算できます。

  • 男性:47万3,800×12カ月+180万6,100=749万1,700円
  • 女性:37万8,500×12カ月+120万4,600=574万6,600円

また、男女共同参画局が公表する資料を見ると、日本の研究者全体に対する女性研究者の割合は16.9%です。ほかの国と比較すると、日本の割合は極端に低い数字となっています。

女性研究者の平均年収が男性より低いことが、まだまだ日本国内の女性研究者のなり手が少ない現実に関連している可能性もうかがえます。

参考:
賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | 政府統計の総合窓口
I-5-7図 研究者に占める女性の割合(国際比較) | 内閣府男女共同参画局

企業規模別で見る年収の違い

「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータから、研究者の企業規模別の平均年収も計算できます。具体的な計算式をまとめました。

  • 10~99人:40万7,100×12カ月+104万6,700=593万1,900円
  • 100~999人:43万2,700×12カ月+151万2,200=670万4,600円
  • 1000人~:45万9,500×12カ月+176万300=727万4,300円

企業規模が大きくなるほど年収は高くなりますが、転職のハードルも高くなります。例えば今の職場や専門分野の平均年収が給与所得者全体の平均と同程度なら、10~99人の職場で研究者として働いても年収はアップするでしょう。

参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | 政府統計の総合窓口

経験年数別で見る年収の違い

研究者の経験年数別の平均年収は以下の通りです。「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを用いて算出しています。算出元となる「所定内給与額」には時間外労働などの「超過労働給与」は差し引かれています。

  • 0年:32万1,200×12カ月+33万5,800=419万200円
  • 1~4年:34万1,400×12カ月+120万2,300=529万9,100円
  • 5~9年:37万5,600×12カ月+150万3,000=601万200円
  • 10~14年:43万7,000×12カ月+182万5,400=706万9,400円
  • 15年以上:51万8,600×12カ月+227万5,000=849万8,200円

経験年数が増えると収入も増えています。年齢による基本給や賞与のアップが大きな要因といえるでしょう。研究者への転職後に収入を増やしたいと考えるなら、できるだけ長く研究者として働くことや、副収入を得られるだけの実績を積むことが重要です。

参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 14 職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | 政府統計の総合窓口 

研究者の主な活躍の場

研究している学生

(出典) pixta.jp

研究者が働く場所は、主に大学・研究所・民間企業の3つです。就職先によって研究の目的や内容が異なるため、違いを理解しておく必要があります。

教える側にも回る「大学」

大学で働く研究者は、学んだ大学の修士・博士・博士号取得・ポストドクター・助教・准教授を経て教授になる道が一般的です。

大学の研究室で行う研究内容は、応用研究の基礎となる研究です。場合によっては企業と協働して応用研究を行うこともあります。

自分が教授になるまでは、学んだ教室で教授の研究のサポートとして働くのが基本です。基礎研究は必ずしも商業的な利益を生み出すわけではないため、大学の研究者には研究に対する強い好奇心や熱意が求められます。

専門分野を極める「研究所」

研究者が活躍できる場には、専門分野の研究を極める研究所もあります。国が運営する公的機関や民間の研究所が、さまざまな分野に存在します。各分野の優秀な研究者が集まることが、研究所の大きな特徴です。

研究所で行う研究は、大学と同様に基礎研究がメインです。国・社会・人々のためになる研究に没頭できる側面はあるものの、それなりに雑務もこなさなければなりません。

より日常に役立つ研究を行う「民間企業」

研究者は民間企業で働くことも可能です。民間企業の研究者は、企業の商品開発や基礎研究に携わります。

民間企業の研究者の求人数は比較的多く、大学や公的な研究所に比べて収入も高めです。ただし、研究内容は企業の意向に左右されやすいため、自分がやりたい研究ができない可能性もあります。

研究職であると同時に企業での仕事でもあり、利益の追求が求められることが特徴です。また、研究者として成果を出せない場合は、他部署へ異動となるケースがあります。

研究者になるには?

顕微鏡で研究する二人

(出典) pixta.jp

研究者は高い専門性を求められるため、学歴は必須です。研究できる分野が多岐にわたることから、自分が研究できる分野のリサーチも必要となります。

博士号の取得が望ましい

研究者になるためには、大学院まで進んで博士号を取得していることが基本的な前提となります。ただし、民間企業の場合は修士号でも採用されるチャンスがあります。

博士号を取得するまでの期間が長いこともあり、根気強く学んでいく姿勢が必要です。研究に対する粘り強い姿勢は、どこで研究者として働くにしても生きてきます。

大学の学部を卒業してそのまま就職した人が研究者を目指すなら、修士課程や博士課程を目指して勉強し直す必要があるでしょう。

研究ができる場を広くリサーチ

研究者の研究対象は多岐にわたります。大学まで含めると、全ての分野に研究者が存在するといっても過言ではありません。

研究者といえば理系の研究者のイメージを強く持たれがちですが、法律や人文学など文系の分野も豊富です。研究者を目指すなら、自分が興味を持って研究できる分野を広くリサーチしましょう。

研究の分野や対象によっては、実地調査や共同作業が必要になることもあるため、必ずしも1人で黙々と仕事に取り組めばよいわけではありません。

コミュニケーション能力や協調性を求められる分野の研究者になりたい場合は、必要な資質が自分に備わっているか、転職前に自己分析しておくことも大切です。

社会に貢献する研究者を目指そう

研究者

(出典) pixta.jp

研究者の平均年収は一般的な年収より高めです。基本給や各種手当・ボーナス以外にも、スキルや実績を生かして副次的な収入を得られるケースもあります。

研究者になるためには高い専門性が求められるため、基本的には学歴が必須です。自分に合った分野を探し、社会に貢献できる研究者を目指しましょう。

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