コンサルタントは、クライアントの抱える悩みに向き合うのが仕事です。専門知識・経験を武器に、さまざまな課題の解決に挑みます。コンサルタントを目指す上で、どのようなスキルが必要なのでしょうか?仕事内容やなり方、転職に有利な資格を紹介します。
コンサルタントとは?
コンサルタントは、ビジネスに欠かせない職業の1つです。英語の「consult」には、「相談する・助言を聞く」といった意味があり、職業のコンサルタントもクライアントの相談に乗るのが主な仕事です。
クライアントの課題を解決する仕事
資金繰りや優秀な人材の確保、不採算部門の立て直しなど、多くの企業は経営に関して何らかの課題を抱えています。
コンサルタントの職務は、クライアントの抱える経営課題・事業課題を明らかにし、解決策・アプローチ方法を立案することです。提案・助言のみに留まらず、実行支援まで一気通貫で担当するケースも珍しくありません。
フリーランスで活躍するコンサルタントもいますが、コンサルティングファーム(consulting firm)という組織に所属して働くのが一般的です。
戦略系・IT系・医療系・人事系などさまざまな領域に分かれており、コンサルタントごとに得意分野が異なります。
コンサルタントの代表的な種類
一口にコンサルタントといっても、専門領域はさまざまです。経営戦略に関わるケースもあれば、業界に特化してコンサルティングを行う場合もあります。代表的な種類と仕事内容を見ていきましょう。
戦略系コンサルタント
企業戦略・事業戦略を得意とするコンサルタントは、戦略系コンサルタントと呼ばれます。会社のコア部分に関わるため、経営陣と一緒に業務を進めていくケースが大半です。
具体的には、M&AやIPOの実施・組織改革・新規事業の立案など、企業の成長と拡大に向けたソリューションを提供します。
戦略系コンサルティングファームは、欧米の外資系企業が中心です。主な顧客は大企業や上場企業、外資系企業などで、中小企業向けの戦略コンサルティングを行うケースはそれほど多くはありません。
IT系コンサルタント
IT系コンサルタントは、IT領域に特化したコンサルタントです。企業の業務課題を抽出し、課題解決に向けたシステムの設計・構築・運用・保守などを手掛けます。
ITエンジニアとの違いは、クライアントの課題解決に重きを置いている点です。多くの企業は、業務効率の改善や生産性の向上、競争力の強化を目指してITを導入します。
ただ単にシステムを構築するだけでなく、現状を分析した上で、戦略を具体的なオペレーションに落とし込んでいくのが役割といえるでしょう。ベンチャー企業から大企業まで、幅広いクライアントに対応します。
医療・ヘルスケア系コンサルタント
医療・ヘルスケア系コンサルタントは、病院・介護施設・医療用品メーカー・製薬会社などを相手にします。
医療・ヘルスケアの領域は、少子高齢化の進行で需要が右肩上がりに高まっています。一方で、現場では人手不足が深刻化しており、スタッフの業務効率化やサービスの質の確保に頭を抱える経営者は少なくありません。
医療・ヘルスケア系コンサルタントの役割は、経営分析や戦略立案、実行支援を通じて、クライアントの経営をサポートすることです。ニーズに応じて、開業支援・人材育成支援・営業支援・IT導入支援まで幅広く手掛けます。
建設コンサルタント
建設コンサルタントは、インフラ整備を担う組織を支援します。道路・鉄道・河川・橋・ダム・公園といったインフラは、公共事業で整備されるのが一般的です。建設コンサルタントは、発注者の技術パートナーとして以下のようなサービスを提供します。
- 事業計画書の策定
- 開発コストのシミュレーション
- 工法の選定
- 環境調査・各種測量
- プロジェクト管理・現場監理
公共事業には税金が投入されるため、公平性・透明性を担保する必要があります。設計者と施工者を別にする「設計・施工分離の原則」があり、建設コンサルタントが設計・管理を行い、ゼネコンが施工を担うのが基本です。
人事系コンサルタント
企業にとって人材は重要な資産であり、企業の成長は優秀な従業員の確保・育成にかかっているといっても過言ではありません。人事評価制度や教育制度、福利厚生などを見直し、組織・人事面での課題を解決に導くのが人事系コンサルタントです。
近年は、企業の経営戦略としてM&Aを行う企業が増えています。M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の頭文字を取ったもので、「企業の合併と買収」を指します。
M&Aの成立後は、異なる複数の企業を1つにする統合作業が必要です。人事系コンサルタントは、M&A後の人事諸制度の統合が円滑に行われるように力を尽くします。
総合コンサルタント
総合コンサルタントとは、あらゆる領域に幅広く対応できるコンサルタントを指します。チームは大きく「業界別チーム」と「機能別チーム」に分かれており、クライアントの業界・課題に応じてメンバー編成が行われます。
また、戦略の提案・課題の洗い出しといった上流工程はもちろん、導入・運用といった下流工程まで一貫して手掛けるのも総合コンサルタントの特徴です。
クライアントは上場企業・大企業が多く、プロジェクトには多くの人員・予算が投入されます。規模・内容によっては、グループファームと協働してプロジェクトを進めるケースもあるでしょう。
コンサルタントに求められる能力
コンサルタントは、経営者や事業責任者に提案・助言を行う立場であるため、さまざまなスキルを備えておく必要があります。代表的なスキル・資質にはどのようなものがあるのでしょうか?
論理的思考力
クライアントの課題を分析し、課題解決までの筋道を考えていく上では、論理的思考力(ロジカルシンキング)が欠かせません。論理的思考力とは、因果関係を整理しながら、シンプルかつ合理的に物事を捉える力です。
論理的思考力が高い人は、複雑な問題でも解決法が見出せると同時に、他者にその思考プロセスをわかりやすく説明できます。主観や過去の経験ではなく、客観的な事実に基づいて物事を判断するため、他者からの同意も得られやすいでしょう。
コミュニケーション能力
どんなに論理的思考力があっても、それだけではよいコンサルタントとはいえません。論理的思考力に加え、高いコミュニケーション能力を有するコンサルタントは、クライアントと深い信頼関係が築けるでしょう。
コミュニケーション能力は、以下のような複数の要素から構成されています。
- 相手の言いたいことを理解する力
- 相手の心に寄り添う力
- 自分の意見・考えをわかりやすく伝える力
- 相手の本音を引き出す質問力
- 他者を巻き込む力
幅広く学ぼうとする姿勢
コンサルティングファームには、これまでの経験がナレッジとして蓄積されています。クライアントの課題解決に素早く活用できるように、蓄積された経験をインプットしなければなりません。
クライアントを取り巻く状況は日々移り変わるため、情報のアップデートも常に行う必要があります。
コンサルティングファームにおいて、プロジェクトはチーム単位が基本です。あまり経験のない分野にアサインされるケースもあり、「自分の専門分野さえ追求すればよい」という姿勢では、業務に支障が出てしまいます。
問題解決能力
かつては、コンサルタントの業務は戦略の立案に重きが置かれていました。しかし近年は、戦略立案から実行支援までを一気通貫で担当し、結果にコミットすることが求められています。
問題の本質を見極め、適切な解決方法を見出して実行する問題解決能力は、コンサルタントに不可欠なスキルといえるでしょう。問題解決能力の高い人は、以下のようなプロセスで問題を解決に導きます。
- 問題を正しく捉える
- 問題が生じている原因を分析する
- 問題を解決する手段を考える
- 解決方法を実行する
- 実行した結果を検証する
コンサルタントが取得しておきたい資格は?
コンサルティング業務を行うために必要な資格はなく、誰でもコンサルタントを名乗れます。ただし、営業活動や転職活動を行う上では、自分の知識・能力を証明できる資格があると有利でしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題にアプローチする専門家です。中小企業支援法に基づく国家資格で、自分の経営コンサルティング能力を対外的に証明できます。
中小企業診断士試験には、第1次試験と第2次試験があります。2022年度の第1次試験の合格率は28.9%でした。中小企業診断士の登録を受けるには、第1次試験合格後に以下のいずれかの方法を選択します。
- 第2次試験を受験し合格した後、実務補習を修了または診断実務に従事
- 中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了
中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士)とは、社会保険労務士法に基づく国家資格です。労働社会保険諸法令に基づく申請書の作成や申請書の手続き代行、人事労務管理のコンサルティングなどを行います。
人事労務管理のコンサルティングは、社会保険労務士の独占業務ではありません。しかし、有資格者でなければ判断・助言が難しいケースもあるため、人事系コンサルタントを目指す人は取得を目指しましょう。
第54回(2022年度)社会保険労務士試験の合格率は、5.3%です。合格率が10%にも満たない難関試験なので、計画的に学習を進める必要があります。
TOEIC
TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)は、英語でのコミュニケーション能力を測定する世界共通の試験です。他の試験と違ってスコア評価(トータル10~990点)されるため、その人の英語能力が一目でわかります。
外資系のコンサルティングファームに勤務する上では、多かれ少なかれ英語でのコミュニケーション能力が必要です。どの程度のレベルを求めるかはファームによって異なりますが、業務で支障がないレベルというと、800点以上を指すのが一般的です。
英語が必須ではないコンサルティングファームでも、今後のキャリアを考えて、ある程度の英語力は身に付けておくのが望ましいでしょう。
コンサルタントのやりがい
仕事に対するやりがいは、日々のモチベーションを維持する上で欠かせないものです。現役のコンサルタントは、どのような点に仕事の価値・魅力を感じているのでしょうか?
課題解決時の達成感
コンサルタントが取り組む企業の課題は、誰もが容易に解決できるようなものではありません。調査や分析、検証を繰り返しながら、クライアントと一緒に解決方法を探っていきます。
コンサルタントがやりがいを感じるのは、課題が解決したタイミングです。クライアントから感謝の言葉をかけられると、達成感とともに「この仕事をやっていてよかった」という喜びが湧き上がるでしょう。これまでの苦労が報われる瞬間といえます。
自分のスキルを高められる
コンサルティングファームでは、プロジェクトのたびにチームが編成されます。チームメンバーの中には弁護士・社会保険労務士などの資格を持った人材もおり、それぞれがスペシャリストです。
優秀なメンバーとともに仕事をするうちに自分の知識量が増え、論理的思考力や問題解決能力、分析力といったスキルもどんどん磨かれていきます。
業務は多忙を極めますが、日々多くの知識を吸収するので、1〜2年後には自分が大きく成長したのを実感できるでしょう。
たくさんの人・企業に出会える
仕事を通じて、多くの人に出会えるのもコンサルタントの魅力・やりがいの1つです。プロジェクトが終了すれば、また新たなクライアントとの出会いがあり、ミッションに合わせてプロジェクトチームが再編成されます。
プロジェクトの規模・内容によっては、グループファームと連携して進める場合もあり、人の輪はさらに広がります。ルーティーンワークが苦手な人・チームで仕事をしたい人にとって、コンサルティングファームの環境はぴったりでしょう。
外資系ファームに勤務すれば、文化・習慣の異なるメンバーと一緒に、グローバルに活躍できます。
コンサルタントの大変なところは?
コンサルタントに憧れを抱く人の多くは、「収入が高い」「自分の能力が試せる」などのよいイメージを持っているのではないでしょうか?一見華やかに見える職種でも、実は苦労の連続だったり、人一倍の努力が必要だったりします。
仕事が常に忙しい
コンサルタントの大変なところは、仕事が多忙を極める点です。一定の期間内に成果を上げなければならないため、1日の拘束時間が長くなります。
クライアントとのミーティング・資料作りなどに追われ、退社が夜中になる場合も珍しくありません。1つのプロジェクトが完了しても、すぐにまた次のプロジェクトがスタートし、休む暇がないのが現実でしょう。
プライベートの時間がなかなか確保できず、ワークライフバランスの実現が難しいと感じる人もいるようです。心身ともにタフでなければ、コンサルタントの仕事は務まらないといえます。
結果を出し続けなければならない
クライアントは、コンサルティングファームに高額な報酬を支払って仕事を依頼します。たとえ新人でもクライアントにとってはプロフェッショナルであるため、「経験が浅いから」では通用しない世界です。
期間内に必ず結果を出さなければならないため、コンサルタントには重いプレッシャーがのしかかります。誤った判断をすれば、クライアントの経営に大きな影響を及ぼす恐れもあるでしょう。
結果を出せば、クライアントからはより大きな期待をかけられます。期待値を上回るためにはさらなる努力が必要であり、立ち止まっている暇はありません。
努力家で「目の前の山が高いほど燃える」というガッツのある人は、コンサルタントに向いているでしょう。
コンサルタントになる方法は?
コンサルタントの働き方としては、企業に所属する方法とフリーランスで働く方法があります。実力と人脈がなければ独立は難しいため、業界未経験者はコンサルティングファームへの就職を目標にしましょう。
ポテンシャル採用を狙う
多くのコンサルティングファームでは、キャリア採用とポテンシャル採用の両方を行っています。ポテンシャル採用とは、求職者の実績・スキルよりも、ポテンシャル(潜在能力)に重きを置いた採用方法です。
主に新卒採用で使われる方法ですが、優秀な即戦力人材は転職市場になかなか姿を現さないため、中途のポテンシャル採用を行う企業も増えているのが実情です。
コンサルタントは考えることが仕事なので、思考力が高い人・積極的に学ぶ姿勢がある人は、未経験でも評価される可能性があるでしょう。
ポイントは、採用担当者にどれだけ本気度を見せられるかです。関連資格を取得したり業界知識を学んだりして、コンサルタントになる準備をしていることをアピールしましょう。
まずは求められるスキルを磨こう
クライアントにとって、コンサルタントは課題解決のプロフェッショナルです。机上の空論を説くのではなく、「解決する」という結果を出さなければなりません。プレッシャーが重い分やりがいも大きく、業務を通じて自分の成長を実感できます。
コンサルタントへの転身を検討している人は、ポテンシャル採用を目指して求められるスキルを磨く努力をしましょう。
求人検索サイト「スタンバイ」には、コンサルタントの求人案件が豊富です。仕事内容・待遇をチェックし、自分にふさわしいかどうか判断しましょう。